DX事例でわかる!中小企業の課題解決ロードマップ|失敗しない始め方

中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を頻繁に耳にする時代になってきました。しかし、「具体的に何をすればいいのか?」「うちのような中小企業にもできるのか?」と、導入に踏み切れていない企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、さまざまな業種の中小企業が、いかに身近な課題をITで解決し、DXを成功させているのかを、わかりやすく事例を交えて解説します。

他社の面白い取り組みから、自社の課題解決と生産性向上のヒントを見つけられます。失敗を避け、DX推進を成功させるためのロードマップを明確にしていきましょう。

DXで解決できる課題の一つが、長時間労働です。残業の実態や具体的な削減の取り組み事例をまとめた資料を無料でご提供中です。

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中小企業のDX成功事例|面白い取り組みから学ぶ

DXは遠い世界のIT企業の話ではありません。ここでは、さまざまな業界の中小企業が、身近な課題をITで解決し、いかにDXを成功させたか、具体的な事例をわかりやすくご紹介します。

【製造業のDX事例】職人のノウハウを見える化し、多品種少量生産を効率化

株式会社 旭ウエルテックは、溶接構造部品の多品種少量生産を強みとしていますが、経験豊富な職人の技術やノウハウの伝承が進まない課題がありました。

とくに、新入社員の多くが未経験者であることから、このままでは今後の会社経営に支障が出ると懸念されていました。

また、従来の紙ベースの作業指示や工程管理では、口頭での伝達ミスやメールでの二重発注、受注変更時の手作業での変更による作業効率の悪さも深刻な問題でした。

DX施策事例

  • 受注・生産管理のシステムを自社で構築し、製品情報や不具合情報など、さまざまな情報をリアルタイムで自動収集できる仕組みを整備
  • 職人のノウハウを製品ごとにデータベースに集約し「トラの巻」として見える化
  • 作業者がノウハウを見逃さないよう、大型ディスプレイに自動でポップアップする仕組みを導入し、タブレットを現場で活用することで、情報共有の効率化とペーパーレス化

DXの結果

  • 現状の稼働状況を見ながらその日の残業の必要性を検討できるようになり、リピート製作時の不具合再発防止が可能になる
  • 年間15,000枚使用していた紙の生産指示書をゼロまで削減
  • タブレットで受注情報変更をどこでもすぐに確認できるため、作業効率が大幅に改善
  • 「トラの巻」が定着したことで、経験の浅い社員でも職人のように作業ができるようになり、技術伝承の課題解決に大きく前進

参考)IPA「中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書 Ver.2」p.17

【建設業のDX事例】ICT建機導入と多能工化で生産性を向上

土木工事を主軸とする大津建設は、建設業界全体が抱える人材確保の難しさや競争激化という厳しい環境下にありました。

中山間地域に位置するため、都市部と比べて専門業者への外注が困難で、熟練工に頼る属人化や、作業効率の悪さによる長時間労働が課題でした。従業員のワークライフバランス向上のためにも、生産性向上は急務でした。

DX施策事例

  • 調査・測量から施工・検査まで一連のICT建機(情報通信技術を活用した建設機械)を導入し、熟練工頼りの属人化と省人化を図る
  • 今いる従業員を育成する多能工化に注力し、さまざまな作業に携われるよう、技能講習の受講を支援
  • 働き方DXの一環として、段階的に4週6休から4週8休への移行をトライアルで実施し、従業員の休日増加に取り組む

DXの結果

  • ICT建機の導入により、作業の質が標準化され、熟練者でなくても作業が可能になる
  • 土工の作業時間が4〜5割程度削減されるなど、生産性が大幅に向上
  • 作業日数の短縮、人工の削減、そしてバックモニターなどによる事故発生リスクの低減も実現
  • 4週8休への移行により、従業員のワークライフバランスが向上

参考)厚生労働省「大津建設株式会社」

【介護のDX事例】クラウド化で時間と人手不足を解消

株式会社ささや木(介護業)は、「人と人との優しいつながり」を理念に介護事業を運営しています。

代表1人がケアプラン作成や介護給付費請求といったバックオフィス業務に追われ、夜間や休日に出社して業務をこなすという高い負荷が継続していました。

また、場所を選ばずどこでも業務ができるクラウド環境を数年前から検討していましたが、コスト面で厳しいと判断し、導入を見送っていました。

DX施策事例

  • IT導入支援事業者からのアドバイスを受け、IT導入補助金の対象になるクラウド型の介護業務支援ソフトを導入
  • 社内でDX推進担当者を任命し、テレワークの導入を明確な目標として、システムの導入と業務データの移行を推進

DXの結果

  • 介護業務支援ソフトのクラウド化により、場所を問わず業務が可能となり、代表の夜間・休日出社の負荷軽減に成功
  • 短時間勤務など従業員が希望する多様な勤務形態にも柔軟に応えられるようになり、人材確保につながる
  • データがクラウド上に保存されることで、災害などが発生しても業務を継続できるというBCP(事業継続計画)の観点からも大きな成果

参考)独立行政法人中小企業基盤整備機構「介護業 株式会社ささや木」

【観光業のDX事例】クレジット決済と在庫共有で予約管理を徹底

沖縄の宿泊施設「tinto*tinto」は、SNSや口コミで人気となり、インバウンドも増加し順調に予約を伸ばしていました。しかし、2部屋のみであるがゆえに、直前のキャンセルが経営に大きなダメージを与えるリスクがありました。

インバウンド客の増加に伴い、キャンセル料を払わない事象が散見され、このリスク回避が急務の課題でした。また、複数の宿泊サイトを運用する中で、ダブルブッキングの懸念もありました。

DX施策事例

  • 従来の現地精算から、予約時のクレジット決済を導入し、キャンセル時の未収金リスクを回避
  • 複数の宿泊予約サイトの在庫・料金・予約情報を一括管理できるクラウド型サイトコントローラーの導入により、ダブルブッキングのリスクを回避

DXの結果

  • 事前クレジット決済の導入は、予約数減少の懸念もなく、チェックアウト時の煩わしさがないと好評
  • 非日常の余韻を残した顧客の見送りにより、宿泊体験の価値が向上
  • 限られた部屋数でのダブルブッキングを回避しつつ、効率的に予約を埋めることが可能になる
  • サイトごとの管理労力が軽減され、その分、顧客へのサービスに注力する時間を確保

参考)中小機構「小規模ホテルならではの悩みをITシステムで解消」

バックオフィスから社内全体まで!身近な業務のDX推進事例

DXの事例は、コア事業だけではありません。中小企業の身近な経理や社内の情報共有といったバックオフィス業務のDX推進は、全社の生産性と社員のやりがい向上に直結します。

【経理のDX事例】会計ソフトで経営情報を見える化

時計関連総合卸の株式会社後藤では、ソフト導入前は経理情報を税理士にすべて任せており、リアルタイムでお金の流れを把握できないことが経営判断におけるネックとなっていました。

管理会計に関する情報がすぐに得られないため、流動的な市場環境の中で迅速な経営戦略を立てることが難しい状況でした。また、単純な事務作業に経理担当者の時間が奪われていることも課題でした。

DX施策事例

  • IT導入補助金を活用し、基幹システムとの親和性の高い会計ソフトを導入
  • リアルタイムで会計データを取得し、経営の課題を見える化
  • 年間の経費予測や利益率の高い商品の販売動向などを可視化できるように、細かい要求にも対応するようシステムをカスタマイズ

DXの結果

  • 会計ソフトの導入により、年間の経費予測が可視化され、達成すべき粗利目標について社員と具体的な会話ができるようになる
  • リアルタイムで得られるデータに基づき、期中に事業領域の見直し戦略を柔軟に実行
  • 新規事業が好調な滑り出しを見せるなど経営戦略のスピードと精度が向上
  • 経理が入力した数値を会議の場で全社共有することで、DX導入の成果が社内全体で理解される

参考)独立行政法人中小企業基盤整備機構「会計ソフトでのリアルタイム把握で経営戦略の指針に」

【社内DXの取り組み事例】情報共有ツールで部門間の壁をなくす

運送・機械機器設置業の株式会社ヒサノでは、2017年の業務多忙化をきっかけに、紙や電話による情報共有の煩雑さ、業務内容による人と車両の配分の不公平感から、社内で従業員のフラストレーションが溜まっている状態でした。

経営者側も何が悪いのか具体的な原因がわからず、部分的なIT導入では事務作業の付け回しになるだけで、業務改善の出口が見えない状況に陥っていました。そのような中、配車担当者の暗黙知に頼る業務体制は、属人化の問題も生んでいることがわかりました。

DX施策事例

  • 外部のITコーディネータを招き、経営ビジョンの策定から着手し、会社全体での業務プロセスを分析
  • 受注情報から自動的な配車システムをクラウド上に構築
  • 全従業員がいつでもコミュニケーションできるよう、情報共有ツールを導入し、社内のIT環境を整備

DXの結果

  • 配車業務のシステム化により、配車がスピーディーに最適化され、現場や担当者間での情報共有が促進
  • 暗黙知だった業務がシステムによって平準化され、特定の担当者に依存しない体制が構築される
  • 情報共有ツールは、全国にいる従業員間のコミュニケーションを円滑にし、IT活用への抵抗感の排除につながった
  • 経営者自身が率先してDXに取り組み、外部機関と連携する「チーム・ヒサノ」という体制でDX推進を進めることで、経済産業省のDX認定事業者にも選ばれる成功事例となった

参考)IPA「フラストレーション発、DX経由 熊本の運送会社ヒサノの変革への道のり」

参考記事:DXの意味とは?求められる背景や導入のステップをわかりやすく解説

DX導入・推進を成功させるには?信頼できる事例集から学ぶポイント

中小企業がDX導入・推進を成功させるには、他社の事例から共通の成功要因を学ぶことが重要です。

ここからは、DXの取り組み事例から見えてきた、失敗しないためのポイントをわかりやすく解説します。

小さな成功を積み重ねる!最初からすべてを変えようとしない

DXは「大きな変革」を意味しますが、中小企業は身近な課題から着手し、小さな成功体験を積み重ねるのが鉄則です。

たとえば、従業員が身近にメリットを感じられるデジタル化からスタートすることで、デジタルへの抵抗感を排除し、DXを推進できます。

現場の「困った」に寄り添う!使いやすさとメリットを追求する

どんなに高機能なシステムでも、現場が使いにくいと感じれば定着しません。DXを成功させるには、現場の視点が不可欠です。

旭ウエルテックが「トラの巻」を自動ポップアップや大型ディスプレイに変更したように、作業者の使い勝手を考慮し、現場の声に寄り添うことが、DX導入を定着させる鍵となります。

「何のためにやるか」を共有!目指すゴールをみんなで確認する

DXは単なるITツールの導入ではなく、経営の変革です。大津建設がICT建機導入と多能工化を休日増加というワークライフバランス向上と結びつけたように、DX推進の目的を生産性向上だけでなく働きがいや事業継続といった社員にとってのメリットと結びつけ、会社全体で共有することが成功の秘訣です。

トップが率先して関わる!会社全体で変わる姿勢を見せる

中小企業のDXは、社長などトップが率先して関わることが推進力となります。旭ウエルテックの社長は、自らプログラム作成や現場へのヒアリングをおこないました。

経営者自らがDXを自分ごととし、情熱をもって取り組みを推進することで、社員を引っ張り、会社全体で変わる姿勢を確立できるのです。

専門家やパートナーを頼る!社内だけで抱え込まず知恵を借りる

DXはITだけでなく、経営戦略や人材育成など多岐にわたります。株式会社ヒサノは、ITコーディネータや金融機関など外部機関と連携してDX推進体制を築きました。

デジタル人材が不足しがちな中小企業こそ、外部の専門家やパートナーの知恵を借りることが、失敗しないための近道なのです。

参考記事:DX化とは何か?その意味をわかりやすく解説!中小企業が参考にすべき具体例も紹介

まとめ

DXの事例を通して、中小企業でも身近な課題をITで解決し、大きな成果を上げられることがわかりました。

製造業の技術伝承や建設業の生産性向上、経理のリアルタイム経営など、DXは業務効率化に留まらず、経営戦略の加速や働きがいの向上に直結します。

DX推進を成功させる鍵は、小さな一歩と現場に寄り添う姿勢、そして「トップの関与です。このロードマップを参考に、まずは自社の課題に焦点を当て、DX導入の最初の一歩を踏み出しましょう。

従業員の離職理由や離職対策に関する調査


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