中小企業のための外国人雇用【虎の巻】状況届出書の書き方から労務士選び、助成金まで
中小企業の人手不足は深刻さを増しており、外国人雇用はもはや選択肢ではなく経営の必須課題となっています。しかし、採用には入管法や労働基準法といった複雑な法律が絡み、「不法就労助長罪」などのリスクを恐れて二の足を踏む経営者も少なくありません。
また、義務化されている「外国人雇用状況届出書」の提出や、最大80万円が支給される場合もある助成金の存在を知らずに損をしているケースも見受けられます。
この記事は、外国人雇用の「守り(コンプライアンス)」と「攻め(人材確保・助成金)」を両立させるための「虎の巻」です。採用フローから届出の実務、社会保険労務士(社労士、労務士)の活用法までを網羅し、貴社の成長を支援します。
採用はゴールではありません。長く活躍してもらうための組織づくりが重要です。外国人材の早期離職を防ぎ、定着率を高めるには「労務管理・定着支援・エンゲージメント」の体制整備が欠かせません。
自社の課題を可視化し、人の辞めない強い組織をつくるノウハウが凝縮した資料の無料配布をおこなっています。ぜひダウンロードしてご活用ください。
目次
中小企業における外国人雇用の現状と基本ルール
外国人雇用を検討する前に、まずは日本全体の「今」と、経営者が最低限知っておくべき法的な土台を理解しましょう。ここでは政府の最新データと基本原則を解説します。
外国人雇用の現状
内閣府の「令和6年度 年次経済財政報告」によると、少子高齢化による生産年齢人口の減少にともない、日本の労働供給制約は深刻化しています。
その中で外国人労働者は、人手不足の緩和という重要な役割を果たしており、特に建設業や介護・福祉分野、サービス業においてその存在感は増すばかりです。2024年には外国人労働者数が200万人を突破し、過去最多となりました。

かつては「技能実習生」中心の構造でしたが、現在はより長期就労が可能な「特定技能」や「高度専門職」へのシフトが進んでいます。

中小企業にとっても、外国人材は一時的な労働力の穴埋めではなく、事業継続と成長に不可欠なパートナーとしての位置づけが定着しつつあるのです。
外国人雇用の基本ルール
厚生労働省が定める外国人の雇用に関するルールの基本は、日本人との均等待遇です。
労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関係法令は、国籍を問わずすべての労働者に等しく適用されます。国籍を理由とした賃金や労働時間の差別的取扱いは厳格に禁止されています。
また、事業主には、採用時に外国人の在留資格(就労ビザ)を確認する義務があります。就労が認められていない在留資格の人を雇ったり、許可された範囲を超えて働かせたりした場合、不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
社会保険や労働保険への加入義務も日本人と同様であり、適切な労務管理が求められるのです。
外国人雇用のメリットと注意点
「人手が足りないから外国人を雇う」という消極的な理由だけでは、採用はうまくいきません。外国人雇用には、組織を活性化させる大きなメリットがある一方で、言葉や文化の壁による特有のリスクも存在します。これらを天秤にかけ、事前の対策を練ることが成功の鍵です。
単なる労働力ではない!外国人雇用によるメリット
法務省が推進する「共生社会の実現」において、外国人材は日本経済の活力の源泉とされています。企業が得られるメリットは以下のとおりです。
- 若年層の確保:高齢化が進む組織において、意欲ある若い労働力を確保し、職場を活性化できる
- 海外展開の足掛かり:母国語のスキルや現地の商習慣への理解を活かし、海外進出やインバウンド対応の戦力となる
- イノベーションの創出:異なる文化的背景を持つ人材が加わることで、従来の社内常識にとらわれない新しいアイデアやサービスが生まれるきっかけになる
- 社内体制の強化:マニュアルの整備などを通じ、日本人社員も含めた業務効率化が進む
言葉の壁や文化の違いによる注意点(デメリット)と対策
メリットを享受するためには、以下のデメリットやリスクを想定し、対策を講じる必要があります。
- コミュニケーションの齟齬:日本語のニュアンスが伝わらず、ミスや事故につながる可能性がある
- 対策:「やさしい日本語」の使用や、図解入りの業務マニュアルを作成する
- 文化・宗教上の摩擦:お祈りの時間や食事制限、労働観の違いがストレスになることがある
- 対策:採用時に相互の文化を確認し、社内ルールを明確に説明・合意する
- 生活支援の負担:住居探しや銀行口座開設など、公私にわたるサポートが必要
- 対策:登録支援機関への委託や、社内のメンター制度を導入して孤立を防ぐ
外国人雇用の手続きフローと必要書類の書き方
実際の採用プロセスは、日本人雇用とは大きく異なります。特に「在留資格」の確認と管理は、一歩間違えれば違法状態になりかねません。
ここでは、採用決定から入社後までの実務フローと、トラブルを防ぐ書類作成のポイントを解説します。
採用前の必須知識!在留資格の確認と入国管理局への申請実務
採用面接時には、必ず「在留カード」の原本を確認する必要があります。
チェック項目:
- 顔写真
- 有効期限
- 在留資格の種類
例えば、在留資格が「留学」の場合は、「資格外活動許可」が必要で、週28時間以内という制限があります。
海外から呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」、国内にいる外国人の職種が変わる場合は「在留資格変更許可申請」を、管轄の地方出入国在留管理局へおこないます。
これらの審査には通常1〜3か月を要するため、余裕を持った採用計画が必要です。特に2025年以降、特定技能の分野拡大などで審査が混み合う可能性もあるため、早めの着手が肝心です。
参考)厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。」
トラブル回避の要!外国人雇用契約書の作成と重要条項
雇用契約書(労働条件通知書)は、後のトラブルを防ぐための最重要書類です。たとえ本人が日本語を話せても、契約書は母国語または英語併記のものを作成しましょう。
厚生労働省が公開している「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を活用するのが便利です。 特に明記すべきは、賃金(日本人と同等以上)、労働時間、契約期間、そして「退職・解雇」に関する条件です。

また、寮費や水道光熱費を給与から天引きする場合は、労使協定を結んだ上で、その内訳を明確に説明し、本人の同意を得る必要があります。「言った・言わない」の争いを防ぐため、読み合わせをおこないましょう。
社会保険・労働保険の加入義務と外国人雇用管理主任者の選任
外国人であっても、適用事業所で働く要件を満たす場合は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険への加入が義務付けられています。
「数年で帰国するから年金は払いたくない」という本人の希望があっても、加入は法律上の義務です。帰国時に脱退一時金の請求ができる制度の案内をしましょう。
また、外国人を常時雇用する事業所には、「外国人雇用管理主任者」の選任が努力義務とされています。特別な資格は不要で、人事担当者などが兼務可能です。
この主任者が中心となり、ハローワークへの届出や職場環境の改善、生活相談などの対応をおこなうことで、コンプライアンス体制が強化されます。
忘れるとリスク大!ハローワークへの「外国人雇用状況届出書」
外国人(特別永住者を除く)を雇い入れた場合、および離職した場合、事業主にはハローワークへの届出が義務付けられています。これを怠ると罰則があるだけでなく、助成金の受給にも影響してしまうのです。
ここでは具体的な届出方法を解説します。
【記入例あり】外国人雇用状況届出書の書き方と提出期限・窓口

出典)法務省「外国人雇用はルールを守って適正に」p.5
- 届出の期限:雇入れ・離職ともに翌月の10日まで
- 記入すべき主な項目:氏名、在留資格、在留期間、生年月日、国籍、在留カード番号
- 雇用保険の被保険者となる場合は「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄などに記載して提出
- 被保険者とならない場合(週20時間未満のアルバイトなど)は、様式第3号「外国人雇用状況届出書」を使用
- 提出方法:ハローワーク窓口への持参、郵送のほか、24時間利用可能な「外国人雇用状況届出システム」による電子申請
詳細は法務省のPDF資料を参照し、在留カード番号の転記ミスがないよう注意してください。
外国人雇用状況届出書の届出を怠った場合の罰則
「外国人雇用状況届出書」の提出を怠ったり、虚偽の届出をおこなったりした場合、30万円以下の罰金を科される可能性があります。
| (Q4)外国人であると容易に判断できるのに届け出なかった場合、罰則の対象になりますか。指導、勧告の対象になるとともに、30万円以下の罰金の対象とされています。 |
出典)法務省「外国人雇用はルールを守って適正に」p.15
たかが届出と思われるかもしれませんが、この情報は出入国在留管理庁とも連携されており、不適切な管理をおこなっている企業としてマークされるリスクがあります。
また、届出違反があると、後に解説する外国人関係の助成金や、特定技能外国人の受入れ機関としての認定が受けられなくなるなど、将来的なデメリットが非常に大きくなります。コンプライアンス(守り)の第一歩として、確実な提出を徹底しましょう。
外国人雇用で活用できる助成金・補助金
外国人雇用をおこなう中小企業が活用できる主な助成金には、以下のようなものがあります。
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース):外国人社員に対して、職務に関連した日本語教育や専門的な訓練をおこなうなど、受給要件をすべて満たした場合、1制度導入につき20万円(上限80万円)が支給されます。
参考)厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
- キャリアアップ助成金:有期雇用の外国人社員を正社員化した場合などに受給可能です。
※受給には「雇用保険適用事業所であること」「過去に解雇などがないこと」など厳格な要件があります。また、年度により内容が変更されたり、申請が打ち切られることもあるため、公式サイトのご確認をお願いいたします。
外国人雇用を成功に導くための相談先と体制づくり
法律、手続き、助成金と、やるべきことは山積みです。すべてを自社だけで完結しようとすると、本業がおろそかになりかねません。専門家や公的機関をうまく活用し、持続可能な体制をつくりましょう。
自社対応の限界?外国人雇用に強い労務士に依頼するメリット
外国人雇用は、入管法と労務が複雑に絡み合います。外国人雇用に強い社会保険労務士に相談するメリットは以下のとおりです。
- リスク回避:就労不可のビザを見抜いたり、不法就労助長のリスクを未然に防ぐ
- 助成金の提案:自社が対象となる助成金(最大72万円など)の選定から申請代行までを任せられる
- 複雑な手続きの代行:毎月の給与計算や社会保険手続き、ハローワークへの届出を正確に処理してもらえる
外国人雇用協議会やハローワークの相談窓口を有効活用する
費用をかけずに相談したい場合は、公的機関を活用できます。
- 外国人雇用サービスセンター:留学生や専門的・技術的分野の外国人の採用支援、在留資格に関する相談に応じています。
参考)東京外国人雇用サービスセンター「外国人センターのご案内」
- 最寄りのハローワーク:外国人雇用に関する相談窓口があり、届出書の書き方などを指導してくれます。
- 民間団体である「一般社団法人外国人雇用協議会」など:外国人雇用に関するセミナーや情報発信をおこなっており、最新のトレンドや他社の成功事例を学ぶのに役立ちます。
まずはこうした無料のリソースを活用し、情報収集から始めるのも一手です。
まとめ
外国人雇用は、中小企業にとって大きなチャンスであると同時に、法的な責任を伴う「諸刃の剣」です。
成功の秘訣は、在留資格の確認やハローワークへの届出といった「守り」を徹底しつつ、助成金活用や戦力化といった「攻め」の手を打つことにあります。外国人材と共に成長できる強い組織をつくるために、この記事の「虎の巻」をぜひ実務にお役立てください。

マモリノジダイとは
会員登録







