福利厚生で「選ばれる会社」へ!導入メリット・人気の種類と節税になるルールを解説

中小企業の経営において、人材の確保と定着は常に悩ましい課題です。「優秀な人材を採用したいが、大企業のような高い給与は出せない」「社員には長く働いてほしいが、具体的な施策が思いつかない」とお悩みの企業も多いのではないでしょうか。

そこで注目したいのが「福利厚生」の充実です。福利厚生は、単なる従業員へのサービス提供にとどまらず、企業としての魅力を高め、節税効果も期待できる重要な経営戦略の一つです。

この記事では、福利厚生の基礎知識から、中小企業におすすめの種類や選び方、経費として計上するためのルールまでをわかりやすく解説します。自社を「選ばれる会社」へと成長させるためのヒントとしてご活用ください。

福利厚生とは?意味を簡単に解説

福利厚生とは、一言で言えば「給与以外に会社から受け取れるサポート全般」のことです。従業員とその家族の健康や生活の安定、福祉の向上を目的として企業が提供する、賃金以外の報酬・サービスを指します。

英語では一般的に“employee benefits”(従業員給付)や“fringe benefits”(付加給付)と表現されます。「Benefit(ベネフィット)」には「利益」「恩恵」といった意味があり、企業が従業員に対して提供するメリットそのものを表しているのです。

近年では働き方改革や健康経営の流れを受け、単なる手当の支給だけでなく、ワークライフバランスの実現や自己研鑽の支援など、その意味や役割は大きく広がっています。

企業にとってはコストですが、それ以上に人材という資産への投資としての側面が強くなっているのです。

福利厚生導入で得られる3大メリット

福利厚生を充実させることは、従業員にとっての満足度向上だけでなく、企業経営にとっても大きなリターンをもたらします。ここでは、中小企業が意識すべき3つの大きなメリット「採用力強化」「定着率向上」「節税効果」について解説します。

採用市場における競争力の強化と「いい会社」のアピール

求職者が企業を選ぶ際、給与や業務内容と並んで重視するのが福利厚生です。とくに近年はワークライフバランスを重視する傾向が強まっており、充実した制度があることは「従業員を大切にするいい会社」という強力なアピール材料になります。

中小企業は大企業に比べて知名度や給与水準で劣りますが、ユニークな福利厚生や手厚い生活支援制度をアピールすることで、そのギャップを埋めることが可能です。

「住宅手当」や「食事補助」、「特別休暇」などのわかりやすいメリットは、求人票上でも目を引きます。

他社との差別化を図り、優秀な人材の母集団形成につなげるためには、自社の魅力を可視化する福利厚生の整備が非常に有効な手段となるのです。

エンゲージメント向上と離職率の低下

福利厚生は、今いる従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、長く働き続けてもらうための定着策としても機能します。会社が自分たちの生活や健康を気遣ってくれているという事実は、従業員の会社に対する信頼感や帰属意識を醸成するのです。

  • 健康診断のオプション追加やリフレッシュ休暇の導入など
    心身の健康維持に直結し、パフォーマンスの向上に寄与

  • 育児・介護支援など
    ライフステージの変化による離職を防ぐセーフティーネットとなる

離職率が下がれば、新たな採用コストや教育コストを削減できるため、結果として企業の利益率向上にもつながるのです。福利厚生は「コスト」ではなく、組織を強くするための「投資」と言えるでしょう。

参考記事:従業員エンゲージメントとは?満足度との違い、中小企業が実施すべき向上施策など

福利厚生費として経費計上できる節税効果

福利厚生を適切に導入し、「福利厚生費」として経費処理することで、会社側と従業員側の双方に大きな税務上のメリットが生まれます。

視点会社側従業員側
福利厚生の税務メリット法人税の節税所得税・社会保険料の非課税
詳細要件を満たした「福利厚生費」を経費に算入することにより、法人税の課税対象となる利益が圧縮され、納税額を抑えられる現金での「給与」として受け取ると課税対象となるが、現物給付などの「福利厚生」として受け取ると、所得税・住民税・社会保険料が非課税となり、手取りが増える

これらの「会社は経費で落とせ、社員は非課税で受け取れる」という仕組みを正しく理解し活用しましょう。

福利厚生は経費にできる?福利厚生費の仕組みと計上ルール

「福利厚生費」として経費計上するためには、税法上の厳格なルールを守る必要があります。何でも経費にできるわけではなく、不適切な処理は税務調査で否認されるリスクもあるのです。

ここでは基本的な計上要件と消費税の扱いについて確認します。

福利厚生費として認められる3つの要件

福利厚生費として認められるためには、一般的に以下の3つの要件を満たす必要があります。これらは主に法人向けのルールです。

  • 機会の平等性:役員だけ、特定の社員だけを対象とするのではなく、全従業員が公平に利用できる制度であること
  • 金額の妥当性:社会通念上、常識的な金額の範囲内であること
  • 管理の明確性:就業規則などで制度として明文化されていること

参考)国税庁「No.5261 交際費等と福利厚生費との区分」

一方で、個人事業主の場合、福利厚生費の計上は非常に限定的です。自分一人や家族のみの専従者がいるなど、従業員を雇用していない場合は、自身の生活費や給与とみなされ、原則として経費にはなりません。

従業員を雇っていれば認められる可能性はありますが、範囲は狭くなります。判断が難しいため、詳細は顧問税理士へ相談することをおすすめします。

福利厚生にかかる消費税の扱い

福利厚生費にかかる消費税は、その内容によって「課税仕入れ」になるものと「非課税」になるものに分かれます。ここを正しく区分することは、消費税の納税額計算において重要です。

区分課税仕入れ非課税・不課税
概要・会社が外部業者から商品やサービスを購入し、その代金を支払うもの
・消費税を支払っているため、原則として仕入税額控除の対象
・サービスの対価として支払うものではないものや、社会保険料、土地の取引など
・消費税が含まれていないため、仕入税額控除の対象外
具体例・食事代
・社員旅行の費用
・スポーツジムの会費
・外部の福利厚生サービスの年会費や利用料
・備品購入費
・慶弔見舞金
・各種祝い金などの現金支給
・社会保険料の会社負担分

経理処理の際は、内容ごとに課税区分をしっかり確認しましょう。

福利厚生の種類・人気のサービスと選び方

福利厚生には法律で決まったものと、企業が自由に決められるものがあり、近年は外部のアウトソーシングサービスを活用する中小企業も増えています。

ここでは具体的な種類や人気ランキング、自社に合った選び方を紹介します。

福利厚生には「法定福利」と「法定外福利」の2種類がある

福利厚生は大きく「法定福利(社会保険など)」と「法定外福利(会社独自のもの)」に分けられます。中小企業が差別化を図れるのは後者です。

かつては自社で保養所を持つなどが主流でしたが、最近は管理の手間を省くため、外部の福利厚生サービス(いわゆる“クラブ型”や“ポイント型”)を導入する中小企業が増えています。

例えば、「福利厚生倶楽部(リロクラブ)」や「ベネフィット・ステーション」のような会員制パッケージサービスと契約し、従業員が映画割引や宿泊補助などを自由に使えるようにするパターンです。

また、ネット上で従業員がカフェテリアプランのように好きなメニューを選べる“福利厚生プラットフォーム”型のサービスも普及しており、低コストで大企業並みのラインナップを提供できるのが魅力です。

法定外福利の具体的な種類

企業が独自に導入できる「法定外福利」は多岐にわたります。従業員のニーズに合わせて組み合わせることが大切です。

主な種類を以下の表にまとめました。

分類具体的なサービス例特徴
住宅・生活・住宅手当
・家賃補助
・社宅
・寮
・引越し手当
生活費の負担を大きく軽減するため人気が高い
健康・医療・人間ドック補助
・メンタルヘルスケア
・ジム利用補助
健康経営の視点から注目されている
食事・ランチ・食事補助
・社食サービス
・オフィスコンビニ
・飲料支給
毎日のことなので利用頻度が高く、満足度につながりやすい
育児・介護・育休
・産休の上乗せ
・ベビーシッター補助
・時短勤務
ダイバーシティ推進、女性活躍支援に不可欠
慶弔・災害・慶弔見舞金
・特別休暇
・災害見舞金
いざという時の安心感を与える伝統的な制度
自己啓発・資格取得支援
・書籍購入補助
・セミナー参加費補助
スキルアップ意欲の高い社員に響く
レジャー・社員旅行
・保養所利用
・レクリエーション費補助
社内コミュニケーションの活性化に役立つ

従業員から見て満足度の高い福利厚生人気ランキング

実際にどのような制度が使われているのでしょうか。

従業員から見て満足度の高い福利厚生人気ランキング

出典)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「わが国の福利厚生の導入と利用の実態とその諸要因、そして有効性の検証」p.13

上記資料の従業員利用率に関する調査データによると、以下のような傾向が見られます。

  • トップ3(利用率18%〜23%)
    1. 慶弔休暇制度
    2. 社員旅行の実施、補助
    3. 慶弔見舞金制度

    いざという時の休暇や金銭的支援、そしてリフレッシュや交流を目的としたイベントが依然として根強い人気を誇っています。

  • 利用率10%〜15%台
    「人間ドック受診の補助」や「家賃補助・住宅手当」が続きます。健康維持や生活基盤への直接的なサポートは、確実なニーズがあります。

  • 利用率10%以下
    「食事手当」や「自己啓発プログラム」、「金融関係の相談」などは利用率が一桁台にとどまります。介護サービス関連は利用者が限定されるため、数値としては低くなる傾向があります。

このことから、まずは汎用性の高い「休暇・慶弔・旅行」関連を押さえつつ、ターゲットに合わせて生活・健康支援を厚くするのが定石と言えそうです。

自社の規模に合った福利厚生サービスの選び方

企業の成長段階や従業員の構成に合わせて、適切な福利厚生の仕組みを選ぶことで、費用対効果を最大化できます。

企業の規模・フェーズ検討すべき福利厚生の形態特徴導入例
少人数・創業期手作り感のある個別制度・管理工数が少なく、全員の顔が見えるため、ニーズを反映しやすい
・小さく始めるのが鉄則
・食事補助
・通勤手当の充実
・社内表彰制度
・書籍購入補助
一定規模以上(数十人〜)外部パッケージサービス + 自社オリジナル制度の組み合わせ・管理工数が増えるため、外部サービスで多数のメニューを担保しつつ、自社らしさも追求・外部サービスによる映画や旅行など
・自社独自の特別休暇など
多様な人材がいる場合カフェテリアプランやポイント制・年代や家族構成が多様でも、付与されたポイント内で従業員が好きなメニューを自由に選べるため、満足度が上がりやすい
・不公平感を減らせる
・ベビーシッター補助
・自己啓発支援

福利厚生の費用対効果を最大化する戦略

制度を作って終わりではありません。福利厚生をコストで終わらせず、投資としてのリターン(=ベネフィット)を最大化するためには、導入後の運用戦略が不可欠です。

社内周知の徹底と利用促進

どんなに良い制度も、従業員に知られていなければ存在しないのと同じです。導入時には繰り返し情報を発信しましょう。

情報発信の例

  • 説明会
  • 社内報
  • チャットツール
  • 社内ポータルサイト

効果的なのは「利用者の声」を届けることです。「〇〇さんが育児休暇制度を活用して復帰しました」「先月のランチ補助でこんな美味しいお店に行きました」といった具体的なエピソードを共有することで、ほかの従業員の利用ハードルが下がります。

また、入社時のオリエンテーションで必ず説明するフローを組むなど、制度が当たり前に使われる空気感を醸成することが、利用率向上のカギとなるのです。

採用ブランディングへの活用

福利厚生は、採用活動における強力な武器になります。求人票の待遇欄に単に制度名を羅列するだけでは不十分です。採用サイトやSNSを通じて、「その制度があることで、どんな働き方ができるのか」「会社がどんな想いで社員を大切にしているか」というストーリーとして発信しましょう。

情報発信の例

  • 「年間休日120日以上」など福利厚生の事実
  • オフも全力で楽しむ社員の様子を写真付きで紹介
  • 資格取得支援によってキャリアアップした社員のインタビュー

これにより、求職者は入社後の自分を具体的にイメージでき、「この会社なら安心して働けそうだ」という志望意欲の向上につながります。

定期的な見直しと従業員ニーズの把握

従業員の属性やライフスタイルは、時代の変化や会社の成長とともに変わっていきます。数年前に導入した制度が、今の従業員にとっても魅力的であるとは限りません。利用率が低い制度を漫然と続けるのは、コストの無駄遣いです。

年に1回程度はアンケート調査やヒアリングをおこない、従業員のニーズを把握します。「今の制度に満足しているか」「どんなサポートが欲しいか」を直接聞くことで、真に求められているものが見えてきます。

使われていない制度は廃止し、リモートワーク手当やメンタルヘルスケアなどの新しいトレンドを取り入れるなど、定期的な新陳代謝をおこなうことが、福利厚生の価値を維持し続けるポイントです。

まとめ

この記事では、中小企業における福利厚生の重要性や具体的な種類、導入メリットについて解説しました。

福利厚生は、従業員への報酬であると同時に、企業の成長を支える投資でもあります。充実させることで、採用力の強化、離職率の低下、そして節税効果といった多くのメリットが得られるのです。

まずは食事補助などの手軽なものや、低コストで導入できる外部のパッケージサービスから検討してみてはいかがでしょうか。

自社の規模や課題に合った福利厚生を整備し、従業員が安心して長く働ける「いい会社」=「選ばれる会社」を目指すことが、結果として企業の持続的な発展につながります。

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