会社法施行規則とは?実務とリスク回避のために知っておくべき基本ガイド

会社法施行規則は、会社法を実務レベルで運用するための細かなルールを定めた、重要な省令です。円滑に会社を運営し、コンプライアンス体制を構築するには、規則を正しく理解し、遵守する必要があります。

この記事では、会社法施行規則の基本的な目的や構成、実務面におけるポイントについて解説します。

会社経営における法的な側面をしっかりと押さえ、安心して事業に集中するためにも、ぜひ参考にしてください。

会社法施行規則とは?

会社法施行規則とは、会社法の内容を具体的に実施するための細かなルールを定めた省令のことです。

第一条 この省令は、会社法(平成十七年法律第八十六号。以下「法」という。)の委任に基づく事項その他法の施行に必要な事項を定めることを目的とする。

出典)e-Gov 法令検索「会社法施行規則

法律である会社法が基本的な枠組みを示すのに対し、施行規則は、会社設立時の手続き、株主総会の運営方法、計算書類の様式といった、実務レベルでの詳細な規定を設けています。

したがって、企業が日々の運営において会社法を遵守するためには、施行規則の理解が不可欠であり、経営に直接的な影響を与えるものと言えます。

会社法施行規則の目的

会社法施行規則の主な目的は、会社法で定められた抽象的な規定を、実際の企業活動において円滑に適用できるように具体化することです。

会社法だけでは判断が難しい手続きの詳細や、提出書類の具体的な記載事項、計算方法などを明確に定めることで、企業が法令を遵守しやすくするための指針を提供しています。

会社法施行規則の構成

会社法第施行規則の構成は、以下のとおりです。

  • 第一編 総則
  • 二編 株式会社
  • 第三編 持分会社
  • 第四編 社債
  • 第五編 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付
  • 第六編 外国会社
  • 第七編 雑則

各編はさらに章や節に分かれています。

たとえば株式会社に関する編では、設立、株式、新株予約権、機関、計算といった項目ごとに詳細な規定が置かれています。

企業の種類やライフサイクルの各段階に応じた具体的なルールが網羅されているのです。

参考)e-Gov 法令検索「会社法施行規則

株式会社設立手続きに関する規定

ここからは、法人数構成比率の多い「株式会社」において、設立時にどのような規定が設けられているのかを解説します。

株式会社設立時には、会社法施行規則に従った正確な手続きが必要です。設立手続き、役員選任、議事録作成の重要性を理解し、適切に対応しましょう。

項目内容
発起人の決定会社設立までの手続きを進める人。1名以上で、法人も発起人になれる。発起人は 1株以上の出資が必要。
基本事項の決定会社の目的、社名、事業内容、本店所在地、資本金の額、持株比率、役員構成、決算期など。
定款作成・認証会社の基本規則を定める重要な書類。公証人の認証を受ける必要がある。
法人の印鑑を作成代表者印(実印)や銀行印、角印などを作る。
出資金の払込発起人は引き受けた株数に相当する金額を、金融機関に払い込む。通帳のコピーと一緒に「払い込みを証する書面」を作成する。
設立登記申請定款や役員選任書類を揃え、設立後2週間以内に登記申請を行う。

参考)J-Net21「株式会社の設立手続き

参考)法務省「商業・法人登記 Q&A

なお、取締役会を実施した際は、必ず議事録を作成して保存しなければなりません。

以下の項目を記載した議事録を作成しましょう。

  • 取締役会が開催された日時及び場所

※当該場所に存しない取締役等が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。

  • 取締役会が特別取締役による取締役会であるときは、その旨
  • 取締役会が特別の招集に該当するときは、その旨
  • 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
  • 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
  • 取締役以外が発言できる場合等により取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
  • 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
  • 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名

出典)内閣官房「株式会社における取締役会の議事録について

会社法施行規則を遵守するための実務面でのポイント

経営者や法務・総務担当者は、日々の業務において、会社法施行規則が定める具体的な手続きや要件を常に意識する必要があります。ここからは、とくに注意すべき実務上のポイントを解説します。

参考)e-Gov 法令検索「会社法施行規則

参考)法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です

株主総会の招集手続き

株主総会を開催する際には、原則として開催日の2週間前までに、株主に対して招集通知を発送しなければなりません。この通知には、日時、場所、そして会議の目的事項(議題)を記載します。

書面投票や電子投票制度を採用する場合は、その旨を通知する必要があります。これらの手続きを誤ると、株主総会決議の有効性が問われる可能性もあるため、細心の注意を払いましょう。

参考)J-Net21「株主総会の招集手続きについて教えてください。

議事録の保管と閲覧義務

株主総会や取締役会を開催した後は、その議事録を作成し、保管することが義務付けられています。

作成された株主総会の議事録は、本店に10年間保管しなければなりません。株主は権利行使のために必要があるときは、株式会社の営業時間内はいつでも閲覧請求が可能です。

参考)内閣官房「株式会社における取締役会の議事録について

決算報告と事業報告の作成

企業は、毎事業年度終了後、定時株主総会で計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)を作成し、株主へ報告する義務があります。

また、事業報告には、以下のような事項を記載しなければなりません。

【会社法施行規則118条】株式会社の状況に関する重要な事項業務の適正を確保するための体制に関する決定・決議、運用状況の概要会社の支配に関する基本方針特定完全子会社に関する事項親会社等との取引

参考)e-Gov 法令検索「会社法施行規則

参考)J-Net21「会社法上の計算書類について教えてください

参考)首相官邸ホームページ「事業報告 記載例

計算書類の承認と株主総会での手続き

監査役、会計監査人および取締役会設置会社の場合、作成した計算書類及びその附属明細書は、株主総会に提出する前に、監査役(または監査役会、会計監査人)の監査を受け、取締役会設置会社の場合は取締役会の承認を得る必要があります。

その後、これらの計算書類は定時株主総会に提出され、株主の承認(または報告)を受けます。

ただし、取締役会設置会社かつ、会計監査人設置会社の場合、法務省令で定める要件に該当していれば、定時株主総会の承認は不要です。このとき、定時株主総会の報告は必要となるため、覚えておきましょう。

参考)J-Net21「どのような場合に、株主総会で計算書類などの承認が必要となりますか?

役員選任と解任手続き

役員選任の流れと辞任時の手続きの流れは、以下のとおりです。

役員選任の手続き株主総会での選任取締役や監査役などの役員は、株主総会で選任する。選任議案が決議されたら、議事録にその内容を記載し、出席者全員が署名・押印する。
就任承諾書の取得役員として選任された人物は、就任承諾書を提出する。
役員解任手続き株主総会での解任決議議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数が賛成する。

参考)J-Net21「役員変更の手続きについて教えてください。

参考)J-Net21「役員の解任を行う際の具体的な手続き方法を教えてください。

役員変更の登記手続き

役員の就任、退任(辞任、解任、任期満了、死亡など)があった場合、会社は変更が生じた日から2週間以内に、その旨を法務局に届け出て変更登記を申請しなければなりません。

登記申請の際には、変更内容を証明する書類として、株主総会議事録、取締役会議事録(代表取締役選定の場合など)、就任承諾書、辞任届などを添付する必要があります。

参考)法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です

リスク管理とコンプライアンス体制の強化

企業を健全に運営するためには、法的リスクの回避と、適切なコンプライアンス体制の構築が不可欠です。

会社法施行規則を遵守することは、企業が法的に適切に運営されるための基本であり、リスク管理の中心です。ここからは、遵守すべき規定や法的リスク、そして罰則規定に対する対応策を解説します。

参考)e-Gov 法令検索「会社法

遵守すべき規定と法的リスク

会社法施行規則は、会社の設立から解散、組織変更、役員選任、株主総会、決算報告に至るまで、あらゆる業務運営に関して具体的なルールを定めています。

たとえば、株主総会や取締役会の招集手続きを怠ると、議決の有効性が問われる恐れがあります。

また、役員の解任についても、適切な手順を踏まずに行うと、損害賠償を請求される可能性があるのです。

罰則規定と対応策

会社法施行規則に則った手続きを行わず、会社法に違反した場合、企業やその役員に対して罰則が科されることがあります。

過料・株主総会の議事録を作成しなかった場合、100万円以下の過料が科せられる。・会社の登記を怠った場合に、代表取締役が100万円以下の過料が科せられる。
損害賠償責任取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人が、その任務を怠ったとき損害賠償責任が発生する。
刑事罰特別背任罪、虚偽の申述、会社財産を危うくする罪、利益供与、収賄などによって刑事罰に問われる可能性がある。

企業が罰則を回避するためには、適切な内部統制システムを構築し、法令遵守を徹底する必要があります。

  • コンプライアンス体制の構築: 企業内にコンプライアンス担当者を置く
  • 内部監査の強化: 定期的な内部監査を実施する
  • 外部専門家に依頼する: 弁護士やコンサルタントに相談、業務委託をする

こうした対策を取り、リスクを回避しましょう。

参考)e-Gov 法令検索「会社法

参考)参議院法制局「法人企業の処罰

まとめ

会社法施行規則は、会社法の規定を具体的な実務レベルに落とし込んだ省令です。設立手続きの細かな要件から、株主総会の招集・運営、議事録の作成・保管、計算書類や事業報告の様式、役員変更の登記手続きに至るまで、多岐にわたる詳細なルールが定められています。

この規則を正しく理解し、遵守することは、企業のコンプライアンス体制を強化するために不可欠です。違反した場合には過料などの罰則が科される可能性もあるため、会社法施行規則の内容を理解し、不明な点があれば、専門家への相談も検討しましょう。

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