中小企業のクラウドセキュリティ対策まとめ!|認証からサービス比較まで徹底解説
中小企業にとって、クラウドサービスの活用は事業成長に不可欠となっています。しかし、その利便性の裏側には情報漏えいやサイバー攻撃といった深刻なセキュリティリスクが潜んでいるのです。
自社は大丈夫だという思い込みが、取り返しのつかない事態を招くかもしれません。この記事では、専門家がいなくても実践できる具体的なクラウドセキュリティ対策を、サービスの選び方まで含めて網羅的に解説します。
そもそも情報漏えいがなぜ起こるのか、その原因から対策を学びたい方は、ぜひこちらの資料もご活用ください。
目次
中小企業にクラウドセキュリティ対策が必要な理由
クラウドサービスは利便性が高い一方、不正アクセスや情報漏えいなどのリスクも存在します。特に中小企業は、一度のセキュリティ事故が事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、クラウドに特化したセキュリティ対策が不可欠です。
参考)IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」
中小企業を襲うサイバー攻撃の実態
中小企業もサイバー攻撃の例外ではありません。実際に、以下のような被害が報告されています。
- 不正アクセスによる情報漏えい:クラウドサービスへの不正アクセスをきっかけに、個人情報や研究情報が漏えいした事例
- 顧客データの消失:事業者側の作業ミスにより、5,000件以上の顧客データが消失した事例
- 脆弱性を狙った攻撃:サーバの脆弱性を突かれ、480万件以上の個人情報とログイン情報が漏えいした事例
これらの事例からわかるように、サイバー攻撃は企業の規模を問わず、深刻な被害をもたらします。そのため、セキュリティ対策が必須であることは明らかです。
クラウド特有のセキュリティリスクを知っておこう
クラウドサービスは、自社でサーバなどを管理する従来のオンプレミス環境とは異なるセキュリティリスクが存在します。
| 項目 | クラウドセキュリティ | 従来のセキュリティ(オンプレミス) |
| 管理主体 | クラウド事業者と自社で責任を分担 | 自社ですべてのIT資産を管理 |
| データ保管場所 | 社外のデータセンター | 自社の管理下にあるサーバ |
| 脅威の侵入経路 | インターネット経由の不正アクセス、設定ミスなど | 主に社内ネットワークへの外部からの攻撃 |
| 必要な対策 | ・データの暗号化 ・アクセス管理 ・事業者の信頼性確認など | ・物理的なセキュリティ ・ファイアウォールなど |
クラウドサービスでは、自社で直接コンピューターを管理しないことによる制約や、データを社外に預けることへの不安がともないます。
そのため、クラウド事業者が提供するセキュリティ対策を理解し、自社でも適切な設定や管理をおこなうことが重要です。
クラウドセキュリティ対策の前に知るべき大原則「責任共有モデル」と公的基準
クラウドサービスを安全に利用するには、まず「責任共有モデル」を理解し、誰がどの範囲のセキュリティに責任を持つのかを明確にする必要があります。
クラウド事業者と自社の責任範囲を明確にする
クラウドのセキュリティは、クラウド事業者と利用者(自社)がそれぞれ責任を負う「責任共有モデル」に基づいています。
例えば、クラウド事業者はサービスの基盤を保護しますが、データの管理やアクセス設定は利用者側の責任です。この境界線を理解しないと、設定不備による情報漏えいなどにつながる恐れがあります。
| 責任の対象 | クラウド事業者 | 利用者(自社) |
| 物理的セキュリティ | ○ | |
| ネットワーク | ○ | |
| OS・ミドルウェア | ○ | |
| アプリケーション | ○ | |
| データ | ○ | |
| アクセス管理 | ○ |
国が示すクラウドセキュリティガイドライン
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、中小企業が情報セキュリティ対策を進める上での考え方や方策を示した手引書です。
参考)IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版」
このガイドラインは、経営者向けと実践者向けの2部構成になっており、企業の状況にあわせて段階的に対策を進められるようになっています。
- 経営者編:経営者が知るべき情報セキュリティの重要性や、対策を怠った場合の経営リスク、法的な責任について解説
- 実践編:「情報セキュリティ5か条」といったすぐに始められる対策から、本格的なリスク分析や規程の整備まで、具体的なステップ
- 付録:「クラウドサービス安全利用の手引き」や各種規程のサンプルなど、すぐに活用できる資料
信頼できるサービスの証!クラウドセキュリティ認証とは?
ISMAP(イスマップ)は、政府が求めるセキュリティ要求を満たすクラウドサービスが評価・登録される制度です。
参考)NISC・デジタル庁・総務省・経済産業省「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の概要」
国が定めた基準に基づき、専門家がサービスの管理体制やセキュリティ対策を厳しく審査します。
- 目的:政府機関が安全なクラウドサービスをスムーズに導入できるようにすること
- 評価基準:ガバナンス基準、マネジメント基準、管理策基準など、多岐にわたる項目で評価
- ISMAPリスト
- 審査をクリアしたサービスは「ISMAPクラウドサービスリスト」に登録・公開され、誰でも閲覧可能
- リストに登録されているサービスは、国のお墨付きを得た高いセキュリティレベルであると判断できるため、中小企業がクラウドサービスを選定する際の重要な指標となる
専門エンジニアがいなくてもできる!具体的なクラウドセキュリティ対策
専門的な知識や高額なツールがなくても、クラウドのセキュリティは強化できます。まずは基本的な設定の見直しや定期的なチェックから始めましょう。
参考)経済産業省「クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドブック」
基本設定の見直しで防御力を高める
クラウドサービス導入後は、まず初期設定を見直すことが重要です。デフォルト設定から変更しておらず、セキュリティが不十分かもしれません。
- 多要素認証(MFA)の有効化:IDとパスワードに加え、スマートフォンアプリなどによる追加認証を設定し、不正ログインを防止
- 権限の最小化:各従業員アカウントには、業務に必要な最低限のアクセス権限のみを付与
- パスワードポリシーの強化:「12文字以上、英数字記号を組み合わせる」といった複雑なパスワードのルールを定め、徹底
定期的なクラウドセキュリティスキャンで脆弱性を発見
自社で利用しているクラウドサービスの設定に不備がないか、定期的にチェックする仕組みが不可欠です。近年では、中小企業でも利用しやすいクラウド型の脆弱性診断サービスが登場しています。
- 設定不備の可視化:サービスが自動でクラウド環境をスキャンし、意図しない外部公開や権限設定のミスといったリスクを検出
- 継続的な監視:クラウドサービスに新たな脆弱性が発見された場合や、設定が変更された場合に通知を受け取る
- 専門家による診断:必要に応じて、クラウドサービスと専門家の手動診断を組み合わせることで、より高度なリスクを発見することが可能
従業員のクラウドセキュリティ意識を向上させる
どれだけシステムを強化しても、使う人の意識が低ければ、クラウドセキュリティのリスクは残ります。従業員一人ひとりがクラウドセキュリティの重要性を理解し、正しく行動するための継続的な取り組みが求められます。
- 情報セキュリティ研修の実施:不審なメールの見分け方や、パスワードの適切な管理方法など、具体的な事例を交えた定期的研修
- 社内ルールの策定と周知:私物端末の利用(BYOD)やデータの共有に関する明確なルールを定め、全従業員に周知徹底
- 標的型攻撃メール訓練:模擬的な攻撃メールを送信し、開封してしまった際の報告・対応手順の確認訓練を繰り返し実施
参考記事:情報セキュリティの3要素とは?中小企業が気を付けるべきことも解説
クラウドセキュリティサービス・製品の選び方と比較
自社に最適なクラウドセキュリティサービスを選ぶには、機能やコストだけでなく、事業者の信頼性やサポート体制も重要です。
導入後に後悔しないため、契約前に自社の目的を明確にし、複数のクラウドセキュリティサービスを客観的な指標で比較検討することが不可欠です。
参考)IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」
クラウドセキュリティ導入前に見落としがちな注意点
クラウドセキュリティサービスの導入を急ぐあまり、基本的な確認を怠ると効果が半減してしまいます。特に以下の点は、契約前に必ずチェックしましょう。
- 責任範囲の確認:自社が持つべき責任の範囲を明確に理解しておく
- 既存システムとの相性:導入したいクラウドセキュリティサービスが、現在社内で利用しているほかのシステムやツールとスムーズに連携できるか、事前に確認
- 隠れたコストの存在:初期費用や月額料金だけでなく、データ転送量やサポート利用料など、追加で発生しうる費用がないか料金体系を細かく確認
クラウドセキュリティサービスを選ぶ5つの比較ポイント
数あるクラウドセキュリティサービスの中から自社に合ったものを選ぶためには、以下の5つのポイントで比較検討することをおすすめします。
- 信頼性と実績の確認
- ISMAPやISO27001といった第三者認証を取得しているか
- 国内外での導入実績は豊富か、特に同業種での実績はあるか
- サービスの稼働率や障害時の対応履歴が公開されているか
- 必要な機能の網羅性
- 自社が保護したい対象に必要な機能が揃っているか
- 多要素認証やデータの暗号化、アクセスログの管理といった基本的な機能が標準で提供されているか
- サポート体制の充実度
- 問題が発生した際に、日本語で迅速に対応してくれるサポート窓口があるか
- 導入時の設定支援や、運用開始後のコンサルティングといったサービスは提供されているか
- 料金体系の妥当性
- 自社の従業員数やデータ量に対して、料金プランは適切か
- 将来の事業拡大にあわせて、柔軟にプランを変更できるか
- 管理画面の使いやすさ
- IT専門家でなくても、設定の確認や変更、ログの閲覧が直感的におこなえるか
- 無料トライアル期間などを活用し、実際の使用感を試すことが重要です
まとめ
クラウドセキュリティは、サービス事業者に任せきりにするのではなく、責任共有モデルを理解し、自社で持つべき責任範囲を正しく対策することが重要です。
多要素認証や権限管理といった基本的な設定を見直すだけでも、セキュリティレベルは大きく向上します。
本記事で解説したサービスの比較ポイントを参考に、まずは一つでもできることから実践することが、会社をリスクから守る第一歩です。
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