システム障害はなぜ起きる?原因・影響・対策まで中小企業向けにわかりやすく解説

「システム障害」という言葉を聞くと、ニュースになるような大企業や金融機関だけの問題だと感じるかもしれません。

しかし、パソコンやスマートフォン、クラウドサービスを使って業務を行う現代において、システム障害は規模を問わずどの企業でも起こり得る身近なトラブルです。一度トラブルが発生すれば、業務が止まるだけでなく、顧客からの信頼を失ったり、大きな損失を招いたりするリスクを抱えています。

この記事では、中小企業の担当者が知っておくべきシステム障害の原因や種類、実際に起きた際の手順について詳しく解説します。

また以下の資料では、中小企業の経営者、情シス担当者に向けて、個人情報漏洩の事例と予防策を網羅的に紹介していますので、こちらも参考にしてください。

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システム障害とは?定義と基本的な分類

システム障害とは、コンピューターやネットワークが正しく動かなくなるトラブルのことです。普段当たり前に使っている会計ソフトや、社内の共有フォルダが使えなくなる状態をイメージしてください。

多くの業務がデジタル化された現代において、システムは電気や水道と同じように欠かせない基盤となっています。そのため、一度停止してしまうと仕事そのものが完全にストップしてしまうことがリスクです。

どのような状態をシステム障害と呼ぶのか、まずは言葉の定義から確認しましょう。

インシデント・トラブル・障害の違い

システムの運用や管理の現場では、インシデントやトラブルという言葉が頻繁に使われます。これらは一見すると同じような意味に思えますが、実務上は対応の緊急度によって区別して考えることが重要です。

インシデントとは、放っておくと大きな事故になりかねない「予兆」や「小さな異変」を指して使われる言葉になります。一方で障害とは、すでに業務に支障が出てしまい、早急な解決が必要な状態という意味です。

それぞれの違いを整理すると、以下のようになります。

用語意味具体的な例
インシデント障害が起こるかもしれない予兆パソコンの動作が急に重くなった
障害サービスが停止し実害が出ている状態インターネットに全く繋がらない
トラブル困りごと全般を指す広い言葉操作方法が分からず作業が進まない

中小企業の現場では、まず発生している事象がインシデントなのか、あるいはすでに障害となっているのかを切り分けましょう。予兆であるインシデントの段階で異変に気づき、対策を講じることができれば、事業への大きなダメージを未然に防げる可能性が高まります。

社員同士でこれらの言葉の定義を共有しておくと、報告を受けた際も状況を正しく把握しやすくなるでしょう。

システム障害の主な種類

システム障害と一口に言っても、その原因は多岐にわたり対処法もそれぞれ異なります。 中小企業において発生しやすいトラブルを整理して捉えることが、迅速な復旧への近道となるでしょう。

ここでは、現場で起こりやすい5つの主要な原因について詳しく解説していきます。 自社の環境に当てはめて、どのようなリスクが潜んでいるかを確認してみてください。

参考記事:クラウドバックアップとは?中小企業のBCP対策に必須!サービスについて徹底解説

ソフトウェア障害(バグ/不具合)

プログラムの記述ミスや、設計時に想定していなかった操作によって発生するトラブルを指します。 ソフトウェアの自動更新がきっかけとなり、他のツールとの連携が動かなくなるケースも珍しくありません。

目に見えない部分の不具合であるため、原因の特定には専門的な知識や開発元への問い合わせが求められます。 エラー画面のスクリーンショットを保存しておくなど、正確な状況把握に努めることが解決を早めるポイントです。

ハードウェア障害(機器の物理故障)

サーバーやルーター、パソコンといった形のある機器そのものが壊れてしまう状態です。 精密機器には必ず寿命があり、長期間の使用による部品の劣化を避けることは困難だといえます。

特にハードディスクが故障すると、大切な業務データがすべて失われる恐れがあるため注意が必要です。 定期的に機器の状態を確認し、古くなったものは早めに買い替える計画的な運用を意識しましょう。

ヒューマンエラー(設定・運用ミス)

システムの操作ミスや設定の間違いなど、人間による行動が原因で起こる障害も後を絶ちません。 誤って重要なデータを削除したり、セキュリティの設定を無効にしてしまったりする事例が代表的です。

これらを個人の不注意として片付けてしまうと、同じようなトラブルが何度も繰り返されてしまいます。 二重チェックの仕組みや作業マニュアルを整え、誰が担当してもミスが起きにくい環境を整えましょう。

サイバー攻撃・不正アクセス

悪意を持った第三者が外部から侵入し、システムを意図的に停止させるケースが近年急増しています。 中小企業は対策が手薄だと思われやすく、ランサムウェアなどの攻撃対象になりやすいのが実情です。

ウイルス対策ソフトの導入はもちろんですが、不審なメールを開かないといった社員教育も重要になります。 ひとたび侵入を許せば多大な被害が出るため、何層もの防御策を講じることが自社を守る鍵です。

外部要因(災害・太陽フレア・停電など)

地震や雷といった自然災害、あるいは大規模な停電など、自社で制御できない原因による障害です。 こうした事態はいつ起こるか予測が難しく、一瞬で広範囲のシステムに影響を及ぼす可能性があります。

また、太陽フレアによる磁気嵐が通信機器に悪影響を与えるといった、特殊なリスクも考慮しなければなりません。 災害時でも業務を継続できるよう、遠隔地にバックアップを取るなどの備えを進めておくことが大切です。

システム障害が企業に与えるリスクと影響

システム障害が発生すると、単に業務が止まるだけでなく経営そのものに大きな打撃を与えます。 中小企業にとっては一度のトラブルが命取りになることもあるため、リスクを正しく理解しておくことが必要です。

具体的にどのような影響が出るのかを把握し、対策の優先順位を考える材料にしてください。 ここでは、企業が直面する代表的な4つのリスクについて詳しく解説します。

事業停止・売上損失・顧客離反

店舗や通販サイトを運営している場合、システムが止まることは営業停止と同じ状態です。 注文を受けられなくなることで、その瞬間に本来得られるはずだった売上が消えてしまうでしょう。

また、不便を感じた顧客はすぐに他のサービスへ移ってしまうリスクも抱えています。 一度離れた顧客を呼び戻すには、新規獲得以上の手間と時間がかかることを覚悟しなければなりません。

社会的信用の低下・取引や経営への悪影響

トラブルが長引いたり何度も繰り返されたりすると、既存の取引先からの信頼を失い、最悪の場合は取引停止に追い込まれるリスクがあります。「この会社に仕事を任せても大丈夫だろうか」という不安を持たれることは、売上に直結する大きな痛手です。

さらに、こうしたネガティブな評判は採用活動にも波及し、優秀な人材の獲得が困難になるという負の連鎖も懸念されます。

特にSNSが普及した現代では、悪い評判はあっという間に広がってしまう傾向にあります。一度傷ついた会社のイメージを回復させるには膨大な地道な努力が必要になるため、トラブルを未然に防ぐ姿勢が強く求められるのです。

情報漏えいや法的リスクにつながるケースも

システム障害の原因が外部からの攻撃だった場合、顧客の個人情報が流出してしまう恐れがあります。 ひとたび情報漏えいが起きれば、損害賠償の支払いや行政指導といった法的な責任を問われるかもしれません。

プライバシーマークの取り消しなど、事業を継続する上で必要な資格を失う可能性があることも理解しておきましょう。 セキュリティ対策は、単なるITの問題ではなく経営者が取り組むべきコンプライアンスの一環といえます。

社内工数の増大・人的負担

トラブルが起きると、復旧のために現場のスタッフが本来の業務を中断して対応に追われます。 残業代の発生や他のプロジェクトの遅延など、目に見えにくいコストが積み重なっていくでしょう。

また、終わりが見えない復旧作業は従業員に精神的なストレスを与え、離職の原因にもなりかねません。 組織全体の活力を削がないためにも、スムーズな対応フローを整えておくことが欠かせないポイントです。

システム障害の実際の事例から学ぶ教訓

過去に発生した大規模なシステム障害の事例を紐解くと、そこには共通した課題や教訓が数多く隠されています。 ニュースになるのは大企業の事例が多いですが、そこで起きている問題の本質は中小企業にとっても他人事ではありません。

ここでは、業種ごとにどのようなトラブルが起き、どのような教訓が得られたのかを具体的に整理していきます。

金融機関:取引不能による信用問題

ある銀行では、法人向けのインターネットバンキングシステムで大規模な障害が発生しました。 ログインができなくなったことで、ネット経由の振り込みや残高照会が一切行えない状態に陥っています。

このトラブルの影響を受けた企業は40万社を超えており、多くの支払業務に遅れが生じる結果となりました。 中小企業においては、メインバンクのシステム停止が自社の支払い遅延を招き、取引先からの信用を損なうリスクを想定しておくべきです。

EC・物流:受注停止や配送遅延

某コーヒーショップの事例では、第三者による不正アクセスが原因でECサイトを一時停止することになりました。 会員の個人情報が流出した可能性もあったため、調査のためにサイトの全面的な閉鎖を余儀なくされています。

また、電子書籍配信サービスでWebサイトの一部にアクセスできず、コンテンツが閲覧できなくなった事例も報告されました。 オンラインで商品を販売する企業にとって、サイトの停止は売上の消失だけでなく、顧客対応の負担を激増させる要因となります。

製造業・飲料メーカー:出荷停止・在庫混乱

ある食品メーカーでは、出荷や会計を一元管理するシステムの不具合により、商品の出荷延期を発表しました。 自社商品だけでなく、配送を委託されている他社商品の出荷まで止まってしまうほどの影響が出ています。

システム上の在庫数と実際の在庫が一致しなくなり、冷凍品などを手作業で確認しながら出荷する事態となりました。 一つのシステムに頼りすぎていると、その機能が止まった瞬間にすべての物流がストップしてしまうという教訓をこの事例は示しています。

SaaS・クラウド障害(AWS/Google Cloudなど)

有名企業が提供する主要なITサービスが、サイバー攻撃の影響で一時的に利用できなくなった事例がありました。 原因は外部からの攻撃であると発表されましたが、幸いにも情報の漏えいなどは確認されていません。

自社サーバーを持たないクラウド型のサービスであっても、提供元が攻撃を受ければ自社の業務は止まってしまいます。 「大手のサービスだから絶対に安心だ」と過信せず、予備の連絡手段やデータ保存の方法を考えておくことが「守り」の施策として不可欠です。

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システム障害の原因と構造的な背景

システム障害が起きる背景には、単なる偶発的なミスだけではない構造的な問題が潜んでいることが少なくありません。 特にリソースが限られている中小企業では、仕組みが不十分なために同じミスを繰り返してしまう傾向があります。

こうした根本的な原因を理解しておくことで、場当たり的な対応ではなく再発を防ぐための体制づくりが可能になるでしょう。 ここでは、多くの現場で共通して見られる3つの構造的な課題について掘り下げていきます。

参考記事:DDoS攻撃とは?中小企業でもできる被害防止策・事例・緊急時対応を徹底解説

ソフトウェア更新時の検証不足

システムを最新の状態に保つためのアップデート作業は、セキュリティ対策として非常に重要な役割を果たします。 しかし十分なテストを行わずに更新を適用してしまうと、既存の機能とぶつかり合って不具合を引き起こすことがあるのです。

本来は本番と同じ環境で事前に動作を確認するべきですが、手間を惜しんで省略してしまうケースが後を絶ちません。 これを防ぐためには、まずは一部の端末だけで更新を試すといった段階的な導入ルールを定めることが実務的な対策となります。

外部ベンダー・クラウド任せの管理不備

多くのシステムを外部の業者やクラウドサービスに依存している企業では、管理そのものを任せきりにしてしまう不備が見られます。

「プロに任せているから安心だ」と思い込んでしまい、自社でトラブルの兆候に気づけない状態は非常に危険です。

以下の表に、外部委託における責任の考え方をまとめました。自社の立ち位置を確認するために活用してください。

項目ベンダーの役割自社の役割
システム運用正常な稼働の維持異常がないかの日常点検
データ保護保存環境の提供データのバックアップ操作
トラブル時修正と復旧作業現場の状況報告と判断

ベンダーとの契約内容を定期的に見直し、自社が守るべき範囲と相手に求める範囲を明確に線引きしておく必要があります。

契約書を読み直し、どこまでが相手の責任でどこからが自社の責任かを確認することから始めてみましょう。

社内にノウハウが属人化している問題

特定の担当者だけがシステムの仕組みや操作方法を知っている「属人化」の状態は、組織にとって大きなリスクとなります。 その社員が不在の時にトラブルが起きると、周囲は何をすればよいか分からず対応が大幅に遅れてしまうからです。

誰でも最低限の一次対応ができるように、図解入りのマニュアルを整備して社内で共有することが大切になります。 特定の個人に頼りすぎない体制を作ることは、担当者の負担を減らすだけでなく会社全体の守りを固めることにつながるため重要です。

システム障害の初動対応と社内対応フロー

システム障害が発生した際、現場が最も混乱するのは「誰が何をすべきか」が明確になっていないときだといえます。 迅速かつ冷静に対応を進めるためには、あらかじめ決められた手順に沿って行動することが欠かせません。

中小企業であっても、最低限のルールを共有しておくことで被害の拡大を防ぐことが可能になります。 ここでは、トラブル発生から解決までの標準的な流れを5つのステップに分けて解説していきましょう。

発生直後の把握・一次報告と関係部門連携

異常に気づいた社員は、自分一人で解決しようとせず、まずは直属の上司やIT担当者に報告してください。 「ログインできない」「画面が真っ白」といった目の前の事実を、ありのまま伝えることが大切です。

報告を受けた責任者は、全社的な影響を確認し、関連する部署へ速やかに一報を入れましょう。 早い段階で情報を共有しておけば、各部署で代替の作業に切り替えるなどの準備を整えることができます。

原因の切り分けと影響範囲の把握

次に、トラブルがどこで起きているのかを特定するために情報の切り分けを行います。 社内全体で起きているのか、それとも特定の拠点や部署だけなのかを冷静に見極めていきましょう。

インターネットがつながらない原因が、自社の機器にあるのかプロバイダ側にあるのかを確認する作業も重要です。 影響範囲がどこまで及んでいるかを正確に把握することで、その後の対応の優先順位が決まってきます。

復旧作業・暫定対応と外部調整

原因が判明したら、システムを元通りに動かすための復旧作業に取りかかります。 完全に直すまでに時間がかかる場合は、一部の機能だけでも動かす暫定的な対応を検討してください。

自社で対応しきれない状況であれば、速やかに外部の保守ベンダーやクラウド事業者に連絡を取りましょう。 外部の専門家と連携する際は、これまでに把握した事象を時系列で伝えるとスムーズな調整が可能になります。

社内外への報告・謝罪文の発信

顧客や取引先に影響が出る場合は、隠さずに誠実な報告を行うことが信頼を守るための鉄則です。 いつ、何が起き、現在はどのような状況なのかを分かりやすくまとめて伝えましょう。

謝罪文を送る際は、専門用語を使いすぎず、誰が読んでも理解できる平易な言葉で説明することを心がけてください。 まずは第一報を迅速に出し、その後に詳細を報告するという二段構えの対応が、相手の不安を和らげる鍵となります。

事後分析と再発防止までの流れ

システムが復旧して安心するのではなく、なぜ障害が起きたのかを詳しく分析するまでが対応フローです。 今回の原因を特定し、同じようなトラブルが二度と起きないための具体的な対策を立てましょう。

作成した再発防止策は、マニュアルに反映させたり社内研修で共有したりして組織の知識として定着させます。 こうした地道な振り返りの積み重ねが、将来的にシステム障害に強い組織を作っていくための土台となるのです。

システム障害に備えるために中小企業がすべきこと

システム障害を完全に防ぐことは、最新の設備を整えた大企業であっても容易ではありません。 大切なのはトラブルが起きることを前提にして、いかに被害を小さくし素早く復旧させるかという備えの視点です。

中小企業の限られた予算や人員の中でも、工夫次第で効果的な対策を講じることは十分に可能といえます。 ここでは、明日から取り組める具体的な5つの備えについて、その目的と実行のポイントを解説していきましょう。

参考記事:中小企業のクラウドセキュリティ対策まとめ!|認証からサービス比較まで徹底解説

監視・検知ツールの導入

異変にいち早く気づくためには、システムを24時間体制で見守る監視ツールの導入が効果を発揮します。 人の目に頼ったチェックには限界がありますが、ツールを使えば異常を検知した瞬間にメールなどで通知を受け取ることが可能です。

最近では中小企業でも導入しやすい、安価で操作が簡単なクラウド型の監視サービスも増えています。 まずは重要なサーバーやネットワーク機器から監視を始め、早期発見の仕組みを作ることが守りの第一歩です。

バックアップと冗長構成の準備

データが消えてしまうリスクに備えて、定期的にバックアップを取ることは実務において必須の作業といえます。万が一メインのシステムが壊れても、直近のデータが残っていれば業務の立て直しは格段に早くなるでしょう。

また、機器を二重に用意して故障時に切り替える冗長構成も、余裕があれば検討したい対策の一つです。以下の表で、それぞれの特徴と中小企業における活用の考え方を整理しました。

対策目的中小企業での実行ポイント
バックアップデータの復元物理的な場所を分けて保存する
冗長構成業務の継続止めてはいけない重要な機器に絞る

全ての機器を二重にするのはコストがかさむため、まずはバックアップの自動化から優先して取り組むのが現実的です。外部のハードディスクやクラウドストレージを組み合わせ、多層的にデータを保護する習慣を身につけましょう。

社内連絡体制・マニュアルの整備

トラブル時に現場が迷わないよう、緊急時の連絡ルートをまとめた連絡網を作成しておいてください。 誰が判断を下すのかという意思決定の責任者を決めておくことで、迅速な初動対応が可能になります。

また、システムが動かなくなった場合に備えて、紙のマニュアルを配布しておくことも忘れてはいけないポイントです。 パソコンで見られない事態を想定し、誰でも手に取れる場所に最新の連絡先を掲示しておくと安心といえます。

ベンダー・クラウドとの契約・責任分担の明確化

システムを外部に委託している場合は、どこまでが相手の責任範囲なのかを契約書で明確にしておく必要があります。 障害時のサポート受付時間や、復旧までにかかる時間の目安を事前に合意しておくことが重要です。

責任分担が曖昧なままだと、いざという時にどちらが対応するかで揉めて復旧が遅れる原因になりかねません。 自社が求めているサービスレベルと実際の契約内容にズレがないか、この機会に再確認することをおすすめします。

定期的な訓練・ロールプレイ実施

立派なマニュアルを作成しても、いざという時に使いこなせなければ意味がありません。 半年に一度などはシステム障害を想定した避難訓練のような、ロールプレイを実施する機会を設けましょう。

実際に連絡がつくか確認したり、バックアップからデータを戻す手順を試したりすることで課題が見えてきます。 訓練で得られた気づきをマニュアルに反映させるサイクルを作ることで、組織全体の対応力は確実に向上していくはずです。

システム障害対策としてのインシデント管理の考え方

システムを安定して動かすためには、起きてしまった故障を直すだけでなく、その手前の段階で異変を察知する姿勢が求められます。 このような考え方はインシデント管理と呼ばれ、トラブルの影響を最小限に抑えるための重要な守りの技術です。

大きな問題に発展する前に小さな芽を摘み取ることができれば、業務への支障をほとんど出さずに済むようになります。 具体的にどのような考え方で取り組めばよいのか、実務に役立つポイントを整理してみましょう。

インシデント対応と障害対応の違い

インシデントと障害という言葉は似ていますが、IT管理の世界では明確に使い分けられています。

インシデントとは本来あるべき姿から外れている状態を指し、サービスの品質が落ちているものの、まだ完全に止まってはいないケースを含みます。一方で障害とは、すでに業務が停止してしまい、利用者にとって実害が出ている状態を指すのが一般的です。

この違いを表にまとめましたので、自社での判断基準を作る際の参考にしてください。

項目インシデント障害
状況いつもと違うが動いている止まっていて使えない
緊急度注意が必要なレベルすぐに直すべきレベル
影響作業が少し遅れる程度仕事が完全に中断する

中小企業の現場では、障害が起きる前のインシデントの段階でいかに早く手を打てるかが勝負となります。この二つを分けて管理することで、深刻な事態になる前に適切な人員を配置できるようになるはずです。

予兆検知・エスカレーションの設計

トラブルを未然に防ぐには、システムが出しているいつもと違うというサインを見逃さない仕組み作りが必要です。 エラーログの監視や、動作が重くなっていないかの定期的なチェックが、予兆を掴むための第一歩となります。

異変を見つけた際に、誰がどのタイミングで上席に報告するかを決めておくことをエスカレーション設計と呼びます。 様子を見るという曖昧な判断を排除し、条件が揃ったら機械的に報告する仕組みを整えることで、対応の遅れを劇的に減らせるでしょう。

ナレッジ共有と属人化の解消

対応した内容をその場限りにせず、社内の共有財産として蓄積していくことが組織の成長につながります。 特定の誰かしか直せない状態を放置していると、その人が不在の時に会社全体が立ち往生してしまいかねません。

トラブルの履歴や解決までの手順を、簡単なメモ形式でも良いのでクラウド上のツールなどに残しておきましょう。 過去の事例がすぐに検索できる環境があれば、専門知識が少ない担当者でも迅速に一次対応ができるようになります。

まとめ

システム障害はどのような企業にとっても避けて通れないリスクですが、事前の準備によってその被害は最小限に抑えられます。まずは自社のシステムにどのような弱点があるのかを把握し、現実的な対策から一歩ずつ進めていくことが大切です。

トラブルが発生した際の初動対応や連絡体制を整えておくだけでも、現場の混乱は大幅に軽減されるでしょう。万が一の事態を想定したマニュアル作りや、定期的な訓練を組織の文化として定着させてください。

中小企業が自社を守るためには、最新の技術を導入すること以上に、社内の意識を高めて仕組み化することが重要となります。この記事で紹介した内容を参考に、経営者と現場が一体となって強固な守りの体制を築いていきましょう。

事例から学ぶ個人情報漏えい事故~現場のリアルと予防策~

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