リクルーター制度で応募が増える?役割や人事との違い、導入手順・運用ポイントを解説

「求人を出しても応募が来ない」
「優秀な学生ほど早期に他社へ決まってしまう」

少子高齢化による人手不足が深刻化する今、従来の「待ち」の採用手法だけでは、人材獲得競争を勝ち抜くことが難しくなっています。

そこで多くの企業が導入を進めているのが、現場社員が採用活動の最前線に立つ「リクルーター制度」です。

しかし、実際に導入を検討するにあたり、「人事担当者とどのような役割分担をすべきか」「現場の負担はどう解消すべきか」といった運用面での課題を感じるケースは少なくありません。

そこで本記事では、リクルーターの基本的な役割や人事との違い、導入によって得られるメリット・デメリット、制度設計のポイントまでわかりやすく解説します。

リクルーターとは

リクルーターとは、人事部に所属している採用担当者ではなく、現場の第一線で活躍しながら採用活動を支援する社員のことを指します。

一般的には、応募者である学生と同じ大学やサークルの先輩社員、あるいは年齢の近い若手社員が選任されるケースが多く見られます。

リクルーターの主なミッションは、自身の出身大学の後輩や、就職サイトなどを通じて接触した学生に対して、自社の魅力を伝え、自社への志望度を高めることです。

従来の採用活動では、学生が企業に応募するのを待つ姿勢が一般的でしたが、少子化による人手不足が深刻化していることから、企業側から積極的にアプローチするリクルーター制度の重要性が高まっています。

人事担当者が企業の「顔」として制度や全体像を説明するのに対し、リクルーターは学生にとっての「良き相談相手」や「ロールモデル」としての役割を担います。

公式な場では聞きにくい質問に答えたり、リアルな働き方を伝えたりすることで、学生と企業との心の距離を縮めることがリクルーターの存在意義といえるでしょう。

リクルーター面談とは

リクルーター面談とは、リクルーターと学生が1対1、もしくは少人数で行う対話の場のことで、カフェやファミリーレストラン、あるいはオンライン会議ツールなど、比較的リラックスした雰囲気で行われることが特徴です。

ただ、形式上はカジュアル面談として行われることが多い一方、実質的に選考の一部として位置づけられるケースもあります。

この面談の目的は、大きく分けて2つあります。

一つは、学生に対して自社の魅力をアピールし、志望度を高める「動機付け」です。
現場のリアルな声や、やりがいを直接伝えることで、学生に入社後のイメージを具体的に持ってもらいます。

もう一つは、学生の資質や本音を見極める「スクリーニング(選考)」の側面です。

学生側は「OB・OG訪問の一環」や「カジュアルな相談会」と捉えている場合が多いですが、企業側は事実上の一次選考として機能させているケースも少なくありません。

リクルーターは、学生のコミュニケーション能力や人柄、熱意などを観察し、次の選考ステップへ進めるべき人材かどうかを判断し、人事部へ報告を行います。

なお、リクルーター面談では、「個人情報の取り扱い」「選考における公平性」「ハラスメント防止」の観点から、会社としてルールと教育を整備することが不可欠です。

リクルーターと人事の違い

リクルーターと人事担当者は、どちらも「優秀な人材を獲得する」という目的は同じですが、その立場や役割には明確な違いがあります。

両者の違いを理解することで、より効果的な採用体制を構築できるようになるでしょう。

それぞれの違いをわかりやすくするため、表形式でまとめました。

人事担当者リクルーター
所属人事部・採用チーム営業、開発、企画などの現場部署
主な業務・役割採用計画の策定、選考運営、合否判定本来の業務+学生との接触
学生への接し方企業の代表として評価・選考を行う先輩として相談に乗る・自社の魅力を伝える
アピール内容制度、待遇、ビジョン、全体像現場の業務内容、雰囲気、経験談
関わる期間エントリーから入社まで全般主に母集団形成〜選考初期段階

人事担当者は採用活動のプロフェッショナルとして、採用戦略全体を統括し、公平な視点で合否を決定します。
一方、リクルーターはあくまで「現場の社員」です。

学生にとっては、人事担当者は「評価される相手」として緊張感を伴う存在ですが、リクルーターは「親近感を持てる相手」として映ります。

この立場の違いを活かし、人事では引き出せない学生の本音を聞き出したり、現場ならではの熱量を伝えたりできる点が、リクルーターの最大の特徴といえるでしょう。

リクルーターの主な役割

リクルーターの役割は、単に学生と話をすることだけではありません。
採用活動の各フェーズにおいて、戦略的な動きが求められます。

ここでは、リクルーターが果たすべき3つの主要な役割について解説します。

質の高い母集団を形成する

リクルーターの最初の役割は、自社にマッチしそうな学生を見つけ出し、選考の土俵に乗せることです。

「就職サイトなどを介した応募」を待っているだけでは出会えない層にアプローチすることが期待されます。

具体的には、自身の出身大学の研究室やゼミ、サークルなどのネットワークを活用して後輩に声をかけたり、ダイレクトリクルーティングサービスを通じてスカウトメールを送ったりします。

特に、理系人材や特定の専門スキルを持つ学生など、採用難易度の高いターゲットに対しては、共通のバックグラウンドを持つリクルーターからのアプローチが非常に有効です。

企業の認知度が低い段階でも、先輩からの紹介であれば興味を持つ学生は多いため、質の高い母集団形成に貢献できるでしょう。

自社に対する理解を促進する

学生が抱く企業のイメージと、実際の業務内容とのギャップを埋めることも、リクルーターの重要な仕事です。

会社説明会やホームページの情報だけでは伝わりきらない、現場の「空気感」や「苦労話」、「実際の1日のスケジュール」などを具体的に語ります。

リクルーター自身の成功体験や失敗談を交えて話すことで、学生は「自分がこの会社に入ったらどう成長できるか」を具体的にイメージできるようになります。

良い面ばかりでなく、仕事の厳しさも含めて誠実に伝えることで、学生からの信頼を獲得し、ミスマッチによる早期離職を防ぐ効果も期待できるはずです。

入社前の不安を解消して内定辞退を防ぐ

内定を出した後も、リクルーターの役割は終わりません。

近年は、一人の学生が複数の企業から内定を得ることが一般的であり、内定後の辞退防止が重要な課題となっています。

リクルーターは、内定期間中も定期的に連絡を取り合い、学生の不安や迷いに寄り添います。

「本当にこの会社でやっていけるだろうか」
「他社と迷っている」

こういった悩みに対し、先輩社員としての視点からアドバイスを行います。

選考中から信頼関係を築いているリクルーターであれば、人事には言いにくい本音も相談しやすいため、学生の心変わりをいち早く察知し、適切なフォローを行うことが可能です。

企業がリクルーター制度を導入するメリット

リクルーター制度の導入には、工数がかかる一方で、従来の採用手法では得られない大きな利点があります。

リクルーター制度によって企業側が得られる、主なメリットを3つ紹介します。

優秀な学生を早めに確保できる

就職活動の早期化が進む中、リクルーター制度により、他社に先駆けて優秀な学生と早めに接触できる点は大きなメリットです。

一般的な採用スケジュールが本格化する前に、リクルーターを通じて水面下で接触を開始することで、学生の就職意識が高まる初期段階から、自社を印象付けることができます。

特に、知名度だけで就職先を選びがちな層に対し、早い段階で「業界の面白さ」や「自社の強み」を伝えることができれば、志望企業の候補に入れてもらえる可能性が高まります。

早期に学生との良好な関係を構築することで、採用競争が激化するピーク時を避けて、優秀な層を確保しやすくなるでしょう。

自社が欲しい人材にアプローチできる

不特定多数に向けた広告とは異なり、リクルーター制度ではターゲットを絞った採用活動が可能です。

「〇〇大学の学生」
「特定の研究分野を専攻する学生」
「体育会系の学生」

このように、自社が求める人物像に合わせて、最適なリクルーターを配置できます。

たとえば、理系のエンジニアを採用したい場合、同じ技術背景を持つ現場エンジニアをリクルーターにすれば、技術的な会話を通じて学生のスキルレベルを正確に見極めることができます。

採用要件に合致した学生に直接アプローチできるため、採用活動の停滞を防ぎ、結果として採用コストの適正化にもつながります。

学生の入社意欲を高められる

リクルーターとの対話は、学生の志望度を飛躍的に高める効果があります。

学生にとって、実際に働いている社員の姿は、数年後の自分自身の姿です。
「こんな先輩と一緒に働きたい」「この人のようになりたい」という感情は、給与や福利厚生といった条件以上に強力な入社動機となります。

また、親身になって相談に乗ってくれたリクルーターへの恩義から、「先輩の顔を立てたい」「期待に応えたい」という心理が働き、他社への流出を防ぐ効果も期待できるでしょう。

人間関係に基づく採用は、条件面だけでは測れない魅力として働くことがあります。

リクルーター制度導入前に確認すべきポイント

リクルーター制度は、単に社員をアサインすれば機能するものではありません。
導入前に、社内体制やルールを十分に検討しておく必要があります。

リクルーター制度の失敗を防ぐために、確認しておくべき重要な5つのポイントを解説します。

リクルーター制度の導入ステップ

リクルーター制度をスムーズに立ち上げ、成果につなげるためには、いきなり社員に声をかけるのではなく、以下の5つのステップで計画的に進めることが重要です。

【Step1】採用ターゲットの定義
まずは「どんな学生に会いたいか」を明確にします。
求めるスキルや人物像(ペルソナ)を言語化し、ターゲットとなる大学や学部、サークルなどを特定しましょう。
ここがブレていると、リクルーターが誰に声をかけるべきか迷走してしまいます。

【Step2】リクルーター選定
ターゲット層に合わせて、出身大学のOB・OGや、職種がマッチする若手社員を選定します。
この際、接触したい学生数と、社員1人が対応できる件数をシミュレーションし、無理のない人数を確保するようにしてください。

【Step3】研修の実施
選定された社員に対し、必ず研修を行います。
ハラスメント防止のための「NG質問」や、学生からの質問に答えるための「FAQ」、自社の魅力を伝えるための「面談シナリオ」を共有し、リクルーターごとの質のばらつきを防ぎましょう。

【Step4】面談運用
実際に学生と接触します。
面談後は、記憶が鮮明なうちに「面談記録」を残し、学生の「評価」を行います。
また、有望な学生に対しては、「次は課長に合わせる」「特別選考へ案内する」といった次のアクションを明確にし、人事と連携することも重要です。

【Step5】効果測定
活動終了後は、リクルーター接触後の選考参加率(歩留まり)や、内定辞退率などの数字を分析します。
成果が出た点・反省点を洗い出し、次年度の運用改善に役立てます。

以上のようなステップを踏まえて、重要なポイントについて紹介していきます。

制度を運用できる人員体制があるか

まず検討すべきは、リクルーターとして活動できる社員が十分な人数確保できるかという点です。

リクルーター活動は、通常業務の合間に行うことになるため、特定の社員に負担が集中しないよう配慮しなければなりません。

若手社員が不足している企業や、全社的に業務過多の状態である場合は、制度導入によって現場が疲弊し、本業に支障をきたすリスクがあります。

対象となる学生数から必要な接触数を割り出し、それに対応できるだけのリクルーター数を確保できるか、シミュレーションを行うことが不可欠です。

採用したい人物像が明確になっているか

「どのような学生を採用したいか」というターゲット像(ペルソナ)が曖昧なままでは、リクルーターは誰に声をかければよいか判断できません。

「元気な学生」「優秀な学生」といった抽象的な言葉ではなく、具体的なスキル、志向性、行動特性などを言語化し、共有する必要があります。

ターゲットが明確になっていないと、リクルーター個人の主観や好みに頼った勧誘が行われ、入社後のミスマッチや早期離職につながる恐れがあります。

採用基準を統一するためにも、事前に詳細なペルソナを策定しておくようにしてください。

リクルーターへの評価・報酬制度が整備されているか

リクルーター活動は、社員にとって通常業務以外の負荷となります。
「ボランティア」として位置づけてしまうと、モチベーションの維持が難しくなり、活動がおろそかになりがちです。

そのため、リクルーター活動を人事評価の一部として組み込む、あるいは活動手当やインセンティブを支給するなど、会社としてその貢献を正当に評価する仕組みが必要です。

活動が評価される体制があれば、社員も意欲的に取り組み、採用活動の質が向上するでしょう。

現場の業務負荷を適切に調整できるか

リクルーターに選ばれた社員の上司や、部署の理解を得ることも、重要なポイントです。

リクルーター活動をする社員が、通常業務に割ける時間が減ることを前提に、業務量の調整や目標設定の見直しを行う必要があります。

現場の理解がないまま進めると、リクルーターは採用活動に力を入れづらくなってしまう可能性があります。

リクルーター制度を導入する場合は、「全社的なプロジェクト」として経営層から現場管理職へ徹底的な周知を行い、リクルーターが活動しやすい環境を整えることが重要です。

リクルーターと人事の連携ルールをつくれるか

リクルーターが得た学生の情報や感触を、どのように人事へフィードバックするかという報告ルートやルールを明確にしましょう。

たとえば、面談後の評価シートのフォーマット、報告の頻度、次の誘導方法などです。

リクルーターと人事の連携がうまくいかないと、「リクルーターが高評価を出したのに、人事が不採用にしてしまった」といった食い違いが発生し、学生の不信感を招くことになります。

また、リクルーターとなった社員のモチベーションも下がってしまう可能性があります。

こうした事態を招かないよう、リクルーターと人事、双方の連携がしっかりと取れる体制を作らなければなりません。

企業がリクルーター制度を導入するデメリット

リクルーター制度には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットやリスクも存在します。

デメリットについても事前に把握しておき、対策を講じておきましょう。

リクルーターに選ばれた人の負担が増える

リクルーターに選出されるのは、現場でも活躍している優秀な若手社員であるケースが大半です。

こうした社員は、ただでさえ多忙であることが多く、そこに採用業務が加わることで、長時間労働や過重労働を引き起こす可能性があります。

特に繁忙期と採用シーズンが重なると、負担は限界に達してしまいます。
最悪の場合、リクルーター自身の離職につながるリスクさえあります。

リクルーターに負荷がかかりすぎないようにするため、「業務の一部を免除する」「アシスタントをつける」などの取り組みが必要です。

アプローチできる人材の幅が狭まる

リクルーター活動は、出身大学のゼミやサークルなど、既存の人間関係やつながりに依存する傾向があります。

そのため、特定の大学や属性の学生ばかりが集まり、採用する人材の多様性が損なわれるリスクがあります。

いわゆる「学閥」のような偏りが生じると、組織の思考が均質化し、イノベーションが生まれにくくなるかもしれません。

したがって、リクルーターの出身校以外の学生にもアプローチできる仕組みを併用したり、多様なバックグラウンドを持つ社員をリクルーターに起用したりするといった工夫を取り入れましょう。

リクルーターの質によっては成果が出にくい

学生にとってリクルーターは「会社の代表」そのものですが、彼らは採用のプロではありません。

リクルーターの態度が悪かったり、学生の質問に適切に答えられなかったりした場合、企業全体のイメージダウンに直結します。

また、リクルーター自身の会社に対するエンゲージメントが低い場合、無意識に会社の不満を漏らしてしまうことも考えられます。

リクルーター個人の資質やモチベーションによって成果が大きく左右される点は、制度運用における不安定要素といえるでしょう。

リクルーターの選定基準

リクルーター制度の成功は、「誰を選ぶか」にかかっています。

「出身大学」や「業務における過去の実績」といった単一の要素で選ぶのではなく、以下のような要素も兼ね備えている人材を選ぶべきです。

  • コミュニケーション能力が高い:学生の話を引き出し、共感しつつ、自社の魅力をわかりやすく伝える対話力が必須
  • 自社へのエンゲージメントが高い:仕事に誇りを持ち、ポジティブな姿勢で働いている社員でなければ、学生を惹きつけることはできない
  • 学生と年齢が近い:年齢が離れすぎていると、学生は親近感を抱きにくく、相談もしづらくなる
  • 業務調整が可能:採用シーズン中に、ある程度時間を確保できる状況にある社員かどうかも重要

これらの基準を満たした上で、可能であれば立候補制を取り入れるなど、本人の意思を尊重することで、より熱意のあるリクルーター活動が期待できます。

リクルーター制度を成功させるためのコツ

リクルーター制度を、単なる「学生との懇親会」で終わらせず、採用成果につなげるためには、運用面での工夫が必要です。

最後に、リクルーター制度を成功に導くための3つのコツを紹介します。

リクルーターにふさわしい人材を選定する

前述の選定基準に基づき、妥協せずに人選を行うことが第一歩です。

現場の上長からの推薦だけでなく、過去の人事評価やエンゲージメント調査の結果などを参照し、客観的なデータに基づいて候補者をリストアップします。

また、選定された社員に対し、「なぜあなたを選んだのか」という理由や期待をしっかりと伝えることも重要です。

会社から信頼されているという意識を持たせることで、リクルーターとしての責任感とモチベーションを高めることができます。

自社についての理解度を高めるためにリクルーターを教育する

リクルーターを選任したら、必ず研修を実施しましょう。

研修では、面談でのマナーやコンプライアンス、個人情報の取り扱いといった基礎知識に加え、自社のビジョンや中期経営計画、求める人物像について深く理解させます。

また、学生からよく聞かれる質問への回答集(いわゆるFAQ)を共有しておくと安心です。
その際、「ここだけの話」として話して良い範囲と、話してはいけない機密情報の境界線を明確にしておくことも忘れないようにしてください。

採用したい人材を明確にしてリクルーターと共有する

リクルーターが迷わずに行動できるよう、「自社がどのような人材を採用したいと考えているか」というビジョンを、リクルーターと共有するようにしましょう。

たとえば、「主体性がある学生」という抽象的な言葉ではなく、「●●の経験がある」「■■という考え方を持っている」など、具体的なイメージを伝えるべきです。

ターゲットを明確にすることで、リクルーターごとの判断のバラつきを減らし、精度の高いスクリーニングが可能になります。

まとめ

リクルーター制度は、待ちの採用から攻めの採用へと転換し、優秀な人材を早期に確保するために非常に有効な手法です。

学生にとっては「リアルな企業情報を得る貴重な機会」となり、企業にとっては「入社意欲の向上やミスマッチ防止につながる」など、双方にメリットをもたらします。

しかし、導入にあたっては現場社員の負担軽減や、適切な人選、教育体制の整備が欠かせません。

制度の目的を明確にし、人事と現場が一体となって取り組むことで、リクルーター制度は企業の採用力を大きく向上させる武器となるでしょう。

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