マルウェア対策で重要なことは?中小企業が知るべき感染例・予防策・初動対応も解説

マルウェア対策で最も重要なのは、「感染を防ぐ仕組み」と「感染した後に迷わず動ける体制」をあらかじめ用意しておくことです。

「社内のパソコンが急に重くなった」

「取引先から『御社から不審なメールが届いている』と連絡があった」

もしこのような事態が起きた場合、適切な初動対応をとれる自信はあるでしょうか。

現在、マルウェアの手口はAIの悪用などにより高度化・複雑化しており、セキュリティソフトを入れているだけでは防ぎきれないケースが増えています。

ひとたび感染すれば、情報の漏洩や業務停止だけでなく、企業の社会的信用を一瞬で失うことにもなりかねません。

本記事では、マルウェアの基礎知識や感染経路といった基本から、被害を未然に防ぐ具体的な対策、そして万が一感染してしまった際の正しい対処手順までを徹底的に解説します。

「うちの会社は大丈夫」という油断を捨て、自社のセキュリティ体制を強固にするためにぜひ本記事を役立ててください。

マルウェアとは何か?

マルウェアとは、「Malicious(悪意のある)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語で、コンピュータやネットワークに損害を与えることを目的として作成されたプログラムの総称です。

一般的に「ウイルス」と呼ばれることもありますが、厳密にはウイルスはマルウェアの一種に過ぎません。

マルウェアに感染すると、デバイスの動作が重くなるだけでなく、保存されている機密情報が盗まれたり、遠隔操作によってサイバー攻撃の踏み台にされたりする危険性があります。

今ではAI技術を悪用した高度なマルウェアも登場しており、その手口は日々巧妙化しています。

企業や個人を問わず、デジタルデバイスを利用するすべてのユーザーにとって、マルウェアの脅威を正しく理解し、適切な対策を講じることは必須の課題といえるでしょう。

参考記事:マルウェアとは?ウイルスとの違いや種類、中小企業が取るべき感染対策を解説

マルウェアの種類

マルウェアには多様な種類が存在し、それぞれ攻撃の手法や目的が異なります。

主な種類と特徴を理解しておくことが、適切な防御策への第一歩となります。

マルウェアの主な種類は以下の通りです。

種類特徴
ウイルス他のプログラムに寄生して増殖するタイプ。ファイルの破壊や改ざんを行う。
ワーム単独で存在し、ネットワークを経由して自己増殖を繰り返すタイプ。爆発的な感染力でシステムをダウンさせる。
トロイの木馬有用なソフトやファイルを装って侵入するタイプ。情報を盗まれたり、他のコンピュータを攻撃するのに利用されたりする。
スパイウェアユーザーの気付かないところで個人情報や行動履歴を収集し、外部へ送信する。
キーロガーキーボードの入力履歴を記録し、パスワードやクレジットカードなどの重要な情報を盗み取る。

マルウェアに感染する経路

マルウェアがデバイスに侵入する経路は多岐にわたりますが、代表的なルートを知ることでリスクを大幅に減らすことが可能です。

最も一般的な経路は電子メールです。

業務連絡や請求書を装ったメールに添付されたファイルを開封したり、記載されたURLをクリックしたりすることで感染します。

また、古いブラウザやOSを利用している場合は、Webサイトを閲覧しただけで感染する「ドライブバイダウンロード」という攻撃手法も脅威です。

その他、USBメモリなどの外部記憶媒体を経由した感染や、インストールしたフリーソフトに悪意のあるプログラムが仕込まれているケースも頻繁に報告されています。

ランサムウェアとの違い

ニュースなどでよく耳にする「ランサムウェア」と、マルウェアの違いがよくわからないという方も多いでしょう。

一言で表すと、「ランサムウェアはマルウェアの一種」です。

マルウェアが「悪意のあるソフトウェア全般」を指す大きなカテゴリであるのに対し、ランサムウェアは、その中の具体的な攻撃手法の一つという位置づけです。

ランサムウェアの最大の特徴は、感染したPCやサーバー内のデータを勝手に暗号化し、利用不能にしてしまう点にあります。

そして、元の状態に戻すことと引き換えに、身代金を要求してきます。

近年では、データを暗号化するだけでなく、「身代金を払わなければ盗んだ情報を公開する」と二重に脅迫する手口が増加しているため、特に要注意です。

参考記事:ランサムウェア被害を防ぐにはどうする?中小企業のための最新対策ガイド

マルウェア感染に気付くことはできる?よくある兆候

マルウェアは、ユーザーから気づかれずに動作するよう設計されているものが多いですが、感染したデバイスには何らかの異変が現れるケースも多いです。

以下のような兆候が見られた場合、感染を疑うべきでしょう。

  • PCやスマートフォンの動作が急激に遅くなる、またはフリーズする
  • 身に覚えのないポップアップ広告が頻繁に表示される
  • ブラウザのホーム画面や検索エンジンが勝手に変更されている
  • インストールした覚えのないソフトウェアやツールバーが追加されている
  • セキュリティソフトが無効化されており、再有効化できない
  • PCのファンが常に高速回転している

ただし、スパイウェアのように、ユーザーに全く気付かれないよう静かに情報を盗み続けるタイプも存在します。

「PCの調子が悪くないから大丈夫」と過信せず、定期的なウイルススキャンを行うことを怠らないでください。

マルウェアに感染するとどうなる?マルウェア感染による企業が受ける被害の例

企業がマルウェアに感染した場合、その被害は単なるPCの故障にとどまりません。

社会的信用の失墜や巨額の損害賠償など、経営基盤を揺るがす事態に発展する可能性があります。

ここでは、企業が直面する主な被害例を3つ解説します。

顧客情報や機密情報の漏洩

最も深刻な被害といえるのが、企業が保有する重要データの外部流出です。

マルウェアによって社内ネットワークへ侵入されると、顧客の氏名やクレジットカード情報、取引先の技術情報、従業員のマイナンバーなどが攻撃者の手に渡る恐れがあります。

もしそのような事態に陥れば、個人情報保護法などの法令に基づき、漏洩の事実を関係機関や本人へ報告する義務が生じるほか、被害者への見舞金や対応コストが発生します。

何より、「情報を守れない企業」というレッテルを貼られることで、長年築き上げてきた顧客からの信頼を一瞬にして失ってしまうことでしょう。

一度流出した情報の悪用を完全に防ぐことは不可能であり、その代償は計り知れません。

参考記事:情報漏洩とは?企業の信頼を守るために知っておきたい基礎知識と対策

重要ファイルやサイト内容の改ざん

マルウェアは情報の窃取だけでなく、データの破壊や書き換えを行うこともあります。

企業の公式Webサイトが改ざんされ、意図しない政治的なメッセージや、詐欺サイトへのリンクが埋め込まれるケースが後を絶ちません。

自社のサイトを閲覧した顧客が、そこからさらにマルウェアに感染してしまう「加害者」になるリスクもあります。

また、社内の会計データや設計ファイルなどが改ざんされれば、業務遂行が困難になるだけでなく、誤ったデータに基づく意思決定により、経営判断を誤る原因にもなり得ます。

業務への悪影響による経済的損失

マルウェア感染が発覚すると、被害の拡大を防ぐために社内ネットワークやシステムを停止させる必要があります。

これにより、メールの送受信、受発注処理、工場の生産ラインなど、あらゆる業務がストップしてしまいます。

システム復旧までの期間が長引くほど、事業活動が停止することによる逸失利益は甚大です。

加えて、原因究明のための調査費用、セキュリティ専門家へのコンサルティング料、システムの再構築費用など、直接的な金銭的被害も発生します。

事前に被害を防ぐためのマルウェア対策

マルウェアの脅威から組織を守るためには、「技術的な対策」と「人的な対策」の両方を同時に進める必要があります。

感染してから対応するのではなく、未然に防ぐための予防策を徹底しましょう。

OSやソフトウェアを常に最新の状態にする

マルウェアの多くは、OSやアプリケーションの「脆弱性(セキュリティの穴)」を突いて侵入します。

開発ベンダーは、脆弱性が発見されるたびに修正プログラムを配布していますが、これを適用せずに放置していると、攻撃者にとって格好の標的となってしまいます。

Windows UpdateなどのOS更新はもちろん、ブラウザ、Adobe製品、Officeソフトなども常に最新バージョンに保つよう設定してください。

特に、サポートが終了した古いOSやソフトウェアを使い続けることは非常に危険ですので、速やかに新しい環境へ移行すべきです。

ウイルス対策ソフトを導入する

PCやサーバーにセキュリティ対策ソフトを導入することは、防御の基本です。

既知のウイルスの特徴と照合する、従来の「パターンマッチング方式」に加え、近年では「振る舞い検知」や「AI分析」を搭載した製品が主流となっています。

特に企業向けには、EDRと呼ばれる、侵入後の検知と対応に特化したソリューションの導入も進んでいます。

EDRならば、未知のマルウェアであっても、怪しい挙動を即座に検知してブロックすることで、被害を最小限に抑えることが可能です。

無料のセキュリティソフトもありますが、有料のものと比べると性能が劣ることも少なくないため、サポート体制や機能が充実した法人向けの有料製品を選ぶようにしましょう。

参考記事:パソコンにウイルス対策ソフトは必要?対策していない場合に起こりうる脅威とは

従業員に「マルウェアの脅威に関する教育」を実施する

どれほど強固なセキュリティシステムを導入しても、従業員が不用意に怪しいメールの添付ファイルを開いてしまえば、感染を防ぐことはできません。

最終的な防波堤となるのは「人」の意識です。

したがって、定期的に情報セキュリティ研修を実施し、最新の攻撃手口や、不審なメールの見分け方、怪しいWebサイトにアクセスしないといった基本ルールを周知徹底しましょう。

また、標的型攻撃メール訓練を行い、模擬のフィッシングメールを従業員に送信して、開封率や開封後の行動を確認する実践的な教育も効果的です。

従業員たちの「自分は大丈夫」という油断を排除し、組織全体のセキュリティリテラシーを向上させることが重要です。

感染しても慌てずに!感染後にやるべきマルウェア対策

万が一マルウェアへの感染が疑われる場合、初動対応のスピードが被害の大小を左右します。

パニックにならず、あらかじめ決められた手順に従って冷静に行動することが求められます。

以下の項目で、具体的な「取るべき行動」について解説していきます。

マルウェアに感染したPCをネットワークから切り離す

感染の疑いがある場合、最初に行うべきは「ネットワークからの遮断」です。

マルウェアは、ネットワークを通じて他のPCやサーバーへ感染を広げようとします。

被害の拡大を物理的に阻止するために、「LANケーブルを抜く」「Wi-Fi接続をオフにする」といった対応を迅速に行ってください。

この際、PCの電源を強制的に切ることは避けるべきケースがあります。

揮発性のメモリに残っている痕跡が消えてしまい、後の原因調査が困難になる場合があるからです。

ただし、ランサムウェアのように暗号化が進行している状況など、緊急度によっては電源の切断が推奨される場合もあるため、自社のマニュアルやセキュリティ担当者の指示に従うことが原則です。

セキュリティ担当者へ迅速に連絡する

ネットワークからの遮断が完了したら、速やかに社内のセキュリティ担当者やシステム管理者へ報告します。

「怒られるかもしれない」と隠蔽したり、自分で解決しようとしたりすることは絶対に避けてください。

報告が遅れれば遅れるほど、対応が後手に回り、被害が深刻化します。

いつ、どのような操作をした時に異変が起きたのか、画面にどのようなメッセージが表示されているかなど、可能な限り具体的な情報を担当者に伝えましょう。

担当者が不在の場合は、契約している保守ベンダーや外部のセキュリティ専門機関へ連絡するフローを確認してください。

感染経路を特定する

被害状況の把握と並行して、なぜ感染したのかという原因の特定も進める必要があります。

感染源となったメール、Webサイト、USBメモリなどを特定することで、再発防止策を講じることができます。

担当者は、ファイアウォールやプロキシサーバーのログ、該当PCの操作ログなどを解析し、侵入経路を割り出します。

原因が特定の脆弱性にある場合は、他のPCにも同様の脆弱性がないか確認し、早急にパッチを適用するなどの対応が必要です。

このフェーズでは専門的な知識が必要となるため、自社での対応が難しい場合は、外部のセキュリティ調査会社に依頼することも検討すべきでしょう。

マルウェア対策ソフトでウイルスを駆除、もしくはPCの初期化を行う

感染したマルウェアの種類や影響範囲が特定できたら、駆除作業に移ります。

セキュリティソフトのフルスキャンを実行し、検出された脅威を隔離・削除しましょう。

しかし、マルウェアによってはシステムの深部に入り込み、完全な駆除が難しい場合もあります。

また、バックドア(裏口)が仕掛けられている可能性も否定できません。

安全を最優先する場合は、PCを初期化し、OSを再インストールすることが最も確実な対処法となります。

初期化を行うと端末内のデータはすべて消去されるため、日頃からのバックアップを欠かさないようにすべきです。

中小企業がマルウェア対策でつまずきやすいポイント

大企業に比べて予算や人材が限られる中小企業では、十分なマルウェア対策が取れていないケースが散見されます。

ここでは、中小企業が陥りがちなマルウェア対策における課題と、その解決の方向性について解説していきます。

そもそもセキュリティ担当者がいない

多くの中小企業では、専任のセキュリティ担当者を置く余裕がなく、総務担当者やPCに詳しい従業員がセキュリティも兼任しているのが実情です。

「ひとり情シス」あるいは「ゼロ情シス」と呼ばれる状態では、最新の脅威情報の収集や、複雑なセキュリティ製品の運用管理は困難を極めます。

その場合、自社だけですべて対応しようとせず、セキュリティ運用を外部委託したり、導入・運用が容易なクラウド型セキュリティツールの導入を検討したりすべきです。

このような対応をすることで、担当者の負担を減らしつつ、専門家による監視体制を構築できます。

マルウェアに感染した際、誰に何を報告すればいいのかわからない

中小企業の場合、「マルウェアに感染した際の連絡体制が整っていない」というケースも多いです。

いざトラブルが起きた時に「社長に直接言うべきか?」「契約しているPC業者に電話するべきか?」と迷ってしまい、対応が遅れる原因となります。

こういった事態を避けるため、マルウェア感染などのトラブルが起こった際の緊急連絡網を作成し、「第一報は誰に入れるか」「夜間・休日の連絡先はどこか」を明確にして、全社員に周知しておきましょう。

マルウェアの被害に遭った時のマニュアルが整備されていない

「うちは狙われないだろう」という油断により、インシデント対応マニュアルが策定されていない中小企業も多いです。

マニュアルがないと、感染時に現場が混乱し、誤った対応をして被害を拡大させてしまう恐れがあります。

何も、分厚いマニュアルを作る必要はありません。

簡潔なもので構わないので、「感染疑い時の初動アクション」「連絡フロー」「復旧手順」などをまとめた手順書を作成しましょう。

そして、その手順書に基づいた避難訓練のような対応訓練を定期的に実施することで、実際に何か起こった時でもスムーズに動けるようになります。

マルウェア対策に関するよくある質問

最後に、マルウェア対策に関してよくある疑問について回答します。

Windows Defenderだけではマルウェア対策として不十分?

Windows 10/11に標準搭載されている「Microsoft Defender(旧Windows Defender)」は、年々性能が向上しており、一般的なウイルス対策としては十分な能力を持っています。

個人の利用範囲であれば、これだけで対応できるケースも多いでしょう。

しかし、企業利用においては「一元管理ができない」「サポート窓口がない」「高度な標的型攻撃への防御力が専用製品に比べて劣る場合がある」といった課題があります。

多数のPCを管理し、未知の脅威にも備える必要がある企業の場合は、有償の法人向けエンドポイントセキュリティ製品の導入も検討すべきです。

参考記事:エンドポイントセキュリティとは?意味・必要性・対策製品の選び方をわかりやすく解説

スマホ(Android/iPhone)にもマルウェア対策は必要?

スマートフォンも立派なコンピュータであり、マルウェアの標的となります。

特に、Androidはアプリの配布元が多岐にわたるため、不正アプリによる感染リスクが比較的高いといわれています。

iPhoneは、アプリの審査が厳格であったり、隔離環境でアプリが動作するためウイルスが干渉しにくかったりするため、比較的安全とされていますが、「OSの脆弱性を突いた攻撃」や「フィッシング詐欺サイトへの誘導」は防げません。

業務でスマートフォンを利用し、社内データにアクセスしたり、顧客と連絡を取ったりする場合は、PCと同様にモバイル向けのセキュリティ対策ソフトを導入すべきでしょう。

マルウェア対策は無料でもできる?

個人向けの無料マルウェア対策ソフトは多数存在しますが、これらを企業の業務PCで使用することは避けるべきです。

なぜならば、無料のマルウェア対策ソフトは、以下のような制約があることがほとんどだからです。

  • サポートがない
  • 機能が制限されている
  • 商用利用が禁止されている
  • 広告が表示される

ビジネスで利用する以上、セキュリティはコストではなく「投資」と捉えるべきです。

万が一の事故が起きた際のリスクと損害額を考えれば、有料の信頼できる対策ソフトを導入することが、結果として最もコストパフォーマンスの高い選択となるでしょう。

まとめ

マルウェアは、もはや一部の大企業やIT企業だけが警戒すべき脅威ではありません。

AIの悪用によって攻撃手法は高度化しており、中小企業であっても「いつ被害に遭ってもおかしくない」時代に入っています。

マルウェア対策で重要なのは、「最新のセキュリティ製品を導入しているか」だけではありません。

本記事で解説してきた通り、特に中小企業にとって重要なのは次の3点です。

  • 感染を未然に防ぐための基本対策(OS更新・対策ソフト・教育)が回っているか
  • 万が一感染した際に、誰が・何を・どの順で対応するかが決まっているか
  • 従業員が「迷わず報告できる体制」と「隠さなくてよい文化」があるか

どれか一つでも欠けていると、被害は一気に拡大します。

マルウェアを完全に防ぐことは難しくても、被害を最小限に抑え、事業を守ることはできます。

本記事をきっかけに、自社のマルウェア対策を改めて見直し、「感染しにくく、感染しても立て直せる体制づくり」を進めていきましょう。

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