その一言、大丈夫?職場のマイクロアグレッション|意味と原因、具体例、対策

「良かれと思って言ったのに、相手を傷つけてしまった」「職場の雰囲気がなんとなく悪いが、原因がわからない」という原因は、悪意のない「小さな攻撃=マイクロアグレッション」かもしれません。

個人の尊厳を傷つけ、職場のエンゲージメントや生産性を低下させるマイクロアグレッションは、今や見過ごすことができません。

この記事では、マイクロアグレッションの意味、具体的な事例、発生原因、そして組織と個人で取り組むべき対策を解説します。

職場のハラスメントや人間関係の課題解決のヒントをお探しではありませんか?ハラスメントの実態調査から、具体的な対策事例、研修のポイントまでを網羅した資料を無料でダウンロードいただけます。

多様な人材が安心して働ける職場づくりに向け、ぜひご活用ください。

ハラスメント理解・実態と対策に関する調査

マイクロアグレッションとは?その意味を簡単に解説

無意識や悪意なく発せられる、特定の属性やマイノリティに対する差別的・否定的な言動が「マイクロアグレッション」です。その「小さな攻撃」が、受け手の心身に大きなストレスと影響を与え、組織の活力を奪う原因となります。

※マイクロアグレッションは、日本の労働法で定義された法的用語ではありません。本記事では、職場のコミュニケーション課題を考えるための概念として紹介しています。

参考)日本科学未来館「無意識のうちに相手を傷つけているかも...マイクロアグレッションを知っていますか?」

日常に潜む「小さな攻撃」– マイクロアグレッションの定義

マイクロアグレッション(Microaggression)とは、発言者に差別や攻撃の意図がない場合でも、結果として特定の属性を持つ人に否定的・排他的なメッセージとして受け取られてしまう言動を指す概念です。

人種、ジェンダー、国籍、障害、働き方などに関する、日常の何気ない一言や態度が該当することもあり、本人が自覚しにくい点が特徴とされています。

マイクロアグレッションは、すべての発言が直ちにハラスメントや違法行為になるものではありません。しかし、同様の言動が繰り返されることで、受け手に心理的な負担や疎外感を与え、職場の信頼関係や心理的安全性を損なう要因になると指摘されています。

そのため近年では、「悪意があったかどうか」だけでなく、「その言動がどのように受け取られ、どのような影響を与えるか」という視点から、職場環境を見直す必要性が注目されています。

マイクロアグレッションは無意識の偏見?アンコンシャスバイアスとの違いと関係性

アンコンシャスバイアスとマイクロアグレッションは、混同されやすい概念ですが、両者は次のような関係にあります。

項目アンコンシャスバイアスマイクロアグレッション
位置づけ無意識の思考・先入観言動として表れる場合があるもの
状態本人の内面に存在周囲から認識されやすい
定義自分自身が持つものの見方や先入観偏見が具体的な言動として表れたもの
特徴自覚しにくい意図せず他者に影響を与えることがある

アンコンシャスバイアスは、誰もが持ち得る無意識の思考のクセであり、それ自体が問題となるわけではありません。ただし、その思考が言動として表に出た場合、相手にとってはマイクロアグレッションとして受け取られる可能性があります。

重要なのは、「偏見を持ってはいけない」と自分を責めることではなく、自身の無意識の前提が、どのような形で他者に影響を与える可能性があるのかを理解することです。この視点を持つことが、職場での不要な摩擦や誤解を防ぐ第一歩となります。

あなたの周りにも?マイクロアグレッションの具体例

ここでは、さまざまな場面で発生し得るマイクロアグレッションの具体例をご紹介します。受け手の心にどのようなメッセージとして伝わってしまうのかを理解することが重要です。

ジェンダー・女性に対するマイクロアグレッションの例

マイクロアグレッションでは、性別役割分担の意識や、ステレオタイプに基づいた言動が中心となります。これらは女性の専門性やリーダーシップを無意識に否定するメッセージを含んでいるのです。

  • 能力と性別の結びつけ
    「女性なのに、なんでそんなに仕事ができるの?」という言葉は、前提として性別と能力を結びつけていると受け取られることがあります。

  • ライフイベントによる意欲の決めつけ
    「産休明けだから、責任ある仕事は無理だよね」「どうせすぐ辞めるんでしょ」といった配慮のふりをした決めつけは、本人のキャリア形成の機会を奪うことにつながりかねません。

  • 権威の固定化
    「男性の管理職なら安心感がある」という発言は、リーダーシップを男性特有の属性と見なし、女性の指導力を低く見積もっているとみなされかねません。

【隠されたメッセージ】 「女性は標準(男性)から外れた存在であり、能力を発揮するには特別な努力や例外的な資質が必要である」という否定的な圧力を与えます。

外国人・国籍に関するマイクロアグレッションの例

相手を自分たちとは違う部外者として扱うマイクロアグレッションの「他者化(Othering)」が根底にあります。

  • 永遠に外国人扱い
    「日本語が上手ですね。いつ日本に来たのですか?」という問いかけは、たとえ相手が日本育ちや日本国籍であっても、「見た目が違う=外国人である」という先入観を押し付けることになります。

  • 文化的ステレオタイプの押し付け
    「〇〇人はみんな大雑把だよね」「情熱的だよね」といった属性による一括りは、個人のパーソナリティを無視し、レッテルを貼る行為です。

  • 暗黙の排除
    「日本では、これが当たり前(マナー)なんですよ」 良かれと思っての助言だとしても、相手を「ルールを知らない部外者」と決めつけ、自分たちの輪の外側に置く行為です。暗に「馴染めないなら居場所はない」というニュアンスを含み、相手に強い疎外感を与えます。

障害者に対するマイクロアグレッションの例

哀れみや過度な賞賛は、相手を対等な主体として見ていないマイクロアグレッションの証拠です。

  • 感動対象への転換
    「障害があるのに頑張っていて偉い」という言葉は、当事者を「健常者を勇気づけるための存在」として消費する視点(いわゆる「感動ポルノ」=当事者の努力や困難を、第三者が感動消費してしまう視点)を含んでいます。

  • 能力の過小評価
    「特別なサポートが必要なのは仕方ないから、簡単な仕事だけでいいよ」といった態度は、本人のスキルや自律性を無視し、成長の機会を奪うことにつながります。

  • 非対等なコミュニケーション
    本人を目の前にしながら、付き添いの人に話しかけるといった振る舞いは、障害者の意思決定能力を否定する失礼な行為です。

【隠されたメッセージ】 「障害者は弱く、保護されるべき存在であり、健常者と同じ土俵で競う対等なパートナーではない」という上下関係を強調します。

働き方や個人の価値観に関するマイクロアグレッションの例

「会社への忠誠心=長時間労働」といった古い成功モデルの押し付けが、マイクロアグレッションの原因です。

  • 時短・効率化への冷遇
    育児や介護で時短勤務をする社員に対し、「もっと会社に貢献できないの?」「周りに迷惑をかけている自覚はある?」と、目に見える労働時間だけで価値を測る言動です。

  • 野心の画一化
    プライベートやワークライフバランスを重視する社員に対し、「最近の若者は出世意欲がない」「やる気がない」とレッテルを貼る行為は、多様なキャリア観を否定します。

  • 同調圧力の行使
    「定時退社は悪」「飲み会も仕事のうち」といった職場の暗黙のルールを強要すると、個人の生活環境や信条を尊重しないことになります。

【隠されたメッセージ】 「組織の旧態依然としたルールに従えない者は、プロフェッショナ ルとして認めない」という多様性への拒絶を示しています。

参考記事:モラルハラスメントとは?企業が知っておくべき定義・事例・防止策を弁護士が解説

ハラスメント理解・実態と対策に関する調査

なぜ起こるのか?マイクロアグレッションの主な原因と問題点

マイクロアグレッションは、発言者の無意識の偏見や、社会・集団の持つ固定観念が背景にあります。この「小さな攻撃」は、受け手と組織に深刻な悪影響をもたらします。

参考)J-STAGE「マイクロアグレッションにおける前反省的な敵意について」

マイクロアグレッションが生まれる原因

マイクロアグレッションは、個人の悪意からではなく、社会に浸透しているアンコンシャスバイアスから生まれます。私たちは育った環境やメディアの影響を受け、特定の属性に対して知らず知らずのうちにステレオタイプを内面化しています。

原因の分類具体的な心理メカニズム
アンコンシャスバイアス過去の経験や知識に基づき、反射的に「〇〇はこうだ」と決めつける心理
ステレオタイプの投影社会的なイメージを個人に当てはめ、その人自身の個性を見ようとしない態度
マジョリティ・バイアス自分の常識を絶対的な正解と思い込み、異質な価値観を排除しようとする心理

マイクロアグレッションがもたらす問題

一つひとつは小さな言動であっても、それが日常的に繰り返されることで、受け手には甚大な被害が生じます。マイクロアグレッションは、個人の健康だけでなく、組織の健全性をも蝕むのです。

影響内容
心理的安全性の崩壊「何を言っても否定される」「ありのままの自分でいられない」と感じる環境では、自由な発言が抑制される
メンタルヘルスへの影響慢性的なストレスは、自己肯定感の低下や、うつ症状などの健康被害を引き起こす要因となる
組織の硬直化多様な視点が失われることで、新しいアイデアやイノベーションが生まれにくい、停滞した組織文化になってしまう

批判や「めんどくさい」にも向き合うべき理由

マイクロアグレッションについて話題にすると、「気にしすぎではないか」「悪意はなかったのだから問題ないのでは」「正直、めんどくさい」と感じる人がいるのも自然な反応です。

職場では、言葉一つひとつに過度に神経を使いすぎると、かえってコミュニケーションが萎縮してしまうという懸念もあります。そのため、マイクロアグレッションへの対応は、誰かを責めたり、発言を封じたりすることが目的ではありません。

一方で、「悪意はなかった」「冗談のつもりだった」という理由だけで受け手の違和感を無視してしまうと、不満や不信感が表に出ないまま蓄積されていく可能性があります。こうした状態は、結果的に職場の心理的安全性を低下させてしまいます。

大切なのは、正解・不正解を即座に決めることではなく、「なぜその言葉がそう受け取られたのか」を一度立ち止まって考える姿勢です。この対話の積み重ねこそが、無用な衝突を減らし、働きやすい職場づくりにつながります。

中小企業が取り組むべきマイクロアグレッション対策と対処法

マイクロアグレッションを防ぎ、多様な人材が活躍できる職場を作るためには、組織的な取り組みと個人の意識改革の両方が必要です。

参考)厚生労働省「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業事例~性的マイノリティに関する取組事例~」

政府広報オンライン「アンコンシャス・バイアスを減らす3つのポイント!誰もが活躍できる社会に」

組織としてマイクロアグレッションを防ぐ方法

組織文化の醸成には、ルールづくりと意識改革の両輪が必要です。特にトップや管理職が、些細な言動がマイクロアグレッションのリスクになるという共通認識を持つことがカギとなります。

取り組み具体的な内容
規定の整備ハラスメント防止規定にマイクロアグレッションを明確に盛り込む
研修の実施アンコンシャスバイアス研修を全社員向けに実施(管理職層は必須)
相談窓口の強化小さな言動による不快感も対象として周知し、匿名性を担保
心理的安全性の確保社員が安心して声を上げられる環境づくり
事例集の共有具体的なケースを社内で共有し、理解を深める

もし自分が受けたら?個人でできる対処法

マイクロアグレッションを受けた際は、まず自分自身を責めないことが大切です。

対処のステップ

  1. その場で穏やかに問い返す:「どういう意味ですか?」と聞き、発言者に客観視させる
  2. 直接伝えるのが難しい場合:信頼できる同僚や相談窓口に記録と状況を共有する
  3. 精神的サポートを求める:無理に我慢せず、周囲の助けを借りる

マイクロアグレッションを受けた場合、自分の心身の健康を最優先に考えて行動することが重要です。

マイクロアグレッションの加害者にならないために日常で意識すべきこと

自分がマイクロアグレッションの加害者にならないためには、アンコンシャスバイアスは誰にでもあるという前提を持つことが第一歩です。

日常で実践すべき3つの習慣

  • 常識を疑う:「自分の常識は他人の常識ではない」と意識する
  • 一呼吸おく:発言前に「この言葉は特定の属性の人を傷つけないか?」と考える
  • 共感性を高める:多様な立場の人の話に耳を傾け、理解する努力を継続する

相手に共感する努力が、マイクロアグレッションの予防につながります。

参考記事:事例から学ぶ!中小企業におけるコンプライアンス違反の落とし穴と対策

まとめ

マイクロアグレッションは、悪意がなくとも、受け手の心身と組織の健全性に深刻なダメージを与える「小さな攻撃」です。その原因の多くは、私たち誰もが持っているアンコンシャスバイアスにあります。

組織としては、ハラスメント規定への明確な記載、管理職を含む全従業員へのマイクロアグレッション研修の実施、そして、誰もが安心して相談できる心理的安全性の高い窓口の整備が急務です。

個人としては、「もし自分が相手の立場だったら」と想像する共感力の向上と、発言前に立ち止まって考える習慣化が求められます。

その一言によるマイクロアグレッションが、組織の活力を奪うことのないよう、私たち一人ひとりが無意識の偏見に向き合い、多様な違いを尊重し合う職場づくりを目指しましょう。

ハラスメント理解・実態と対策に関する調査

TOP