中小企業が知っておくべきハラスメントの種類一覧!人材と企業をリスクから守ろう

近年、企業におけるハラスメント問題が大きな注目を集めています。特にリソースの少ない中小企業では、多くの経営者が頭を悩ませている問題です。

この記事では、中小企業の経営者やマネージャーの皆様に向けて、職場で起きがちなハラスメントの種類を紹介します。具体例を交えながら解説しますので、参考にしてください。

ハラスメントとは?

職場におけるハラスメントは、働く人の尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる深刻な問題です。現在ではあらゆるハラスメントがありますが、法令によって定義されていないハラスメントも多く存在します。

ただし、全てのハラスメントは、民法の「不法行為」になり得ると覚えておきましょう。不法行為とは、「故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為」を指す言葉です。

具体的には主に以下が該当します。

  • 暴言や暴力といった身体的・精神的な攻撃
  • 人間関係からの切り離し
  • 過大な要求

重要なのは、ハラスメントは行為者の意図とは関係なく、受け手が不快に感じれば成立するという点です。
「指導のつもり」「冗談のつもり」であっても、相手の尊厳を傷つける言動はハラスメントとなり得ます。

特に中小企業では、経営者と従業員の距離が近いがゆえに、些細な言動が思わぬハラスメントにつながるケースが少なくありません。従業員と企業を守るためにも、対策が必須です。

ハラスメントが中小企業にもたらす影響

ハラスメントは職場環境を悪化させるだけでなく、企業経営にも深刻な影響を及ぼします。中小企業にとって、限られた人材を活かし、安定した経営を維持することが重要です。

しかし、ハラスメントを放置すると、以下の表のような問題が発生し、企業の成長を妨げる要因となります。

項目詳細
従業員の士気や生産性の低下職場の雰囲気が悪化し、ストレスを抱えた従業員のパフォーマンスが低下する。
離職率の上昇ハラスメントが原因で優秀な人材が流出し、採用コストや教育コストが増大する。
法的リスクや損害賠償の発生訴訟や行政指導の対象となり、企業の財務負担が増加する可能性がある。
企業イメージの低下悪評が広がることで採用活動や取引先との関係にも悪影響を及ぼす。

ハラスメントが発生すると、従業員の定着率が下がり、組織の安定性が損なわれます。ハラスメント対策を徹底し、企業の守りを強化することが必要です。

中小企業が注意したいハラスメント一覧

現代は企業の規模に関わらず、すべての会社がハラスメント防止に取り組まなければいけません。

中小企業が特に注意すべきものを中心として、主なハラスメントの種類と内容について紹介します。

ハラスメントの種類内容
パワーハラスメント職場での優越的な立場を利用した、精神的・身体的な苦痛を与える行為
セクシュアルハラスメント相手の意に反する性的な言動により、就業環境を害する行為
マタニティハラスメント妊娠・出産・育児休業等を理由とした不利益な取り扱いや嫌がらせ
パタニティハラスメント男性の育児参加に関する嫌がらせや妨害
モラルハラスメント言葉や態度による精神的な攻撃で人格を傷つける行為
時短ハラスメント業務量を考慮せず労働時間の短縮を強要する行為
アルコールハラスメント飲酒の強要や、飲めない人への嫌がらせ
ロジカルハラスメント過度な論理的思考で相手を追い詰める
スメルハラスメント体臭や香水の匂いで他人に不快感を与える
スモークハラスメント 喫煙習慣が非喫煙者に迷惑をかける行為
ケアハラスメント 不要な介護や育児のアドバイスを強要
レイシャルハラスメント 人種や民族に対する差別的な言動
テクノロジーハラスメント IT知識を悪用し相手を困らせる行為
カスタマーハラスメント 顧客が従業員に理不尽な要求をする
ハラスメント・ハラスメント 過度なハラスメント指摘が問題化する
就活終われハラスメント 内定者に就活終了を強要する行為
リモートハラスメント オンライン環境での嫌がらせや監視
エイジハラスメント 年齢を理由に差別や嫌がらせをする
リストラハラスメント 退職強要や不当な圧力をかける行為
溜息ハラスメント 溜息で相手にプレッシャーを与える
セカンドハラスメント ハラスメント被害者への二次被害
ジェンダーハラスメント 性別に基づく差別や偏見を押し付ける
カラオケハラスメント カラオケを強要、または制限する行為
ブラッドハラスメント 血液型で性格を決めつける差別
家庭内ハラスメント 家庭内での精神的・肉体的な嫌がらせ
スポーツハラスメント スポーツ指導での暴力や精神的圧力
ソーシャルハラスメント SNS上での嫌がらせや圧力をかける行為
アカデミックハラスメント 教育・研究の場での権力を利用した嫌がらせ

ハラスメントは、中小企業特有の「家族的な雰囲気」や「慣習」として見過ごされがちです。しかし、むしろ密接な人間関係ゆえに問題が深刻化しやすい面があります。

また、これらのハラスメントは単独で発生するだけでなく、複合的に発生することも少なくありません。
そのため、個々のハラスメント対策だけでなく、職場全体のコミュニケーションの改善や、相互理解を深める取り組みが重要です。

経営者や管理職が率先して、ハラスメントを許さない職場風土の醸成に取り組むことが求められています。

【必見】職場での代表的なハラスメントの種類を知ろう

職場でのハラスメントは、働く人の心身の健康や職場環境に重大な影響を及ぼす深刻な問題です。

ここからは職場で起こりがちな代表的なハラスメントの種類と、その予防・対策について解説します。

パワーハラスメント

パワーハラスメントは、職場における優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為です。

暴力や暴言による身体的・精神的な攻撃、仲間外しや無視、過大な要求や仕事を与えないなどの行為が該当します。
2022年4月からは中小企業でもパワハラ防止措置が法的義務となりました。

出典)厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!

以下がパワハラの具体例です。

  • 達成不可能なノルマを押し付け、達成できないと叱責する。
  • 会議の場で特定の社員を繰り返し侮辱し、評価を貶める。
  • 正当な理由なく業務を取り上げ、孤立させる。

パワハラを防止するためには、上司と部下のコミュニケーションを活発にし、互いを理解し合える職場環境を作ることが重要です。
また、業務指示は具体的に行い、なぜその業務が必要なのかも説明するよう心がけましょう。

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメントは、職場において相手の意思に反する性的な言動を行い、不快感を与える行為です。

具体的には、性的な冗談や発言、身体への不必要な接触、性的関係を強要する言動などが該当します。

以下がセクハラの具体例です。

  • 飲み会で執拗に異性のプライベートについて質問する。
  • 容姿や服装について性的な発言を繰り返す。
  • 拒否しているのにデートや食事にしつこく誘う。

セクハラを防止するためには、社内研修を実施し、ハラスメントの基準を明確にすることが重要です。
また、相談窓口を設置し、被害者が安心して相談できる環境を整えましょう。

マタニティハラスメント

マタニティハラスメントは、妊娠・出産を理由に職場で不利益な扱いを受けたり、嫌がらせをされる行為です。

妊娠を理由に昇進や評価を下げる、育休取得を妨害する、職場での陰口や嫌がらせをするなどの行為が該当します。

以下がマタハラの具体例です。

  • 「妊娠したなら退職すべき」と圧力をかける。
  • 育休取得を申し出た社員に「迷惑だ」と発言する。
  • 妊娠した社員に意図的に過重労働を課す。

マタハラを防止するためには、育児支援制度を明確にし、職場の意識改革を進めることが必要です。
また、上司が制度や法律を正しく理解し、妊娠・出産に関する配慮を適切に行うことが求められます。

パタニティハラスメント

パタニティハラスメントは、男性が育児休業や子育てに関わることを理由に職場で不利益な扱いを受ける行為です。

育休取得を希望した男性社員に対する嫌がらせ、キャリアに不利な評価を下す、子育てに関する発言を揶揄するなどが該当します。

以下がパタハラの具体例です。

  • 「男性が育休を取るのはおかしい」と否定する。
  • 育休取得後に異動や降格を強要する。
  • 「子どものために早く帰るのは甘え」と批判する。

パタハラを防止するためには、男性の育児参加を支援する職場文化を醸成することが重要です。制度を整備し、管理職が率先して男性の育児休業を推奨することで、職場全体の理解を深めましょう。

モラルハラスメント

モラルハラスメントは、言葉や態度によって相手を精神的に追い詰める行為です。暴言や皮肉、無視、陰口など、直接的な攻撃だけでなく、巧妙な嫌がらせも含まれます。

同僚や部下を長期間にわたり精神的に追い詰める言動や、否定的な態度を取り続ける行為が該当します。

以下がモラハラの具体例です。

  • 部下の意見を全否定し、発言させない。
  • 仕事のミスを何度も責め続け、萎縮させる。
  • チーム内で特定の社員を意図的に無視する。

モラハラを防止するためには、職場の風通しを良くし、相談しやすい環境を整えることが大切です。
また、コミュニケーション研修を実施し、適切な言動の基準を明確にすることも有効です。

時短ハラスメント

時短ハラスメントは、育児や介護などの理由で短時間勤務を選択した従業員に対し、不当な扱いをする行為です。

時短勤務者に対する不公平な評価、昇進の機会を奪う、陰口や嫌がらせを行うなどが該当します。

以下が時短ハラスメントの具体例です。

  • 「時短勤務は甘えだ」と発言し、圧力をかける。
  • 重要な仕事を一切任せず、やりがいを奪う。
  • 時短勤務者だけに不当な評価を与える。

時短ハラスメントを防止するためには、短時間勤務者でも能力を発揮できる職場環境を整えることが重要です。
評価基準を明確にし、業務の分担を適切に行うことで、公平な職場環境を維持できます。

アルコールハラスメント

アルコールハラスメントは、職場や社交の場で飲酒を強要したり、飲めない人に対して差別的な扱いをする行為です。

無理に酒を飲ませる、飲酒を断ると人間関係に悪影響を与える、飲まない人をからかうなどが該当します。

以下がアルハラの具体例です。

  • 「酒が飲めないと出世できない」と圧力をかける。
  • 忘年会で部下に一気飲みを強要する。
  • 飲酒を断った人を「ノリが悪い」と非難する。

アルコールハラスメントを防ぐためには、飲酒を強制しない文化を醸成し、参加者の意思を尊重することが重要です。
社内で「飲酒の強要は禁止」という方針を明確にし、意識改革を進めましょう。

ロジカルハラスメント

ロジカルハラスメントは、過度に論理的な思考を押し付け、相手を精神的に追い詰める行為です。

細かすぎる理屈で相手を責める、感情を否定する、相手の意見を意図的に論破し続けるなどの行為が該当します。

以下がロジハラの具体例です。

  • 部下の意見を「論理的でない」と否定し続ける。
  • 感情を無視し、冷徹な論理だけで指示を出す。
  • 「言っていることが理解できない」などの強い言葉で相手を攻撃する

ロジカルハラスメントを防ぐためには、単なる論理の押し付けではなく、相手の感情や背景を理解する姿勢を持つことが重要です。
上司と部下のコミュニケーション研修を実施し、適切な対話のスキルを養いましょう。

スメルハラスメント

スメルハラスメントは、強い体臭や香水、たばこの匂いなどで他人に不快感を与える行為です。

過度な香水や柔軟剤の使用、喫煙後の衣服の臭い、体臭の放置などが該当します。

以下がスメハラの具体例です。

  • 強すぎる香水や整髪料の匂いで周囲を困らせる。
  • 喫煙後の衣服や息の匂いで同僚が不快になる。
  • 汗の臭いを放置し、対策をしない。

スメルハラスメントを防ぐためには、職場のルールを明確にし、個人の配慮を促すことが大切です。職場の衛生指導を行い、清潔な環境を維持するための啓発活動を実施しましょう。

スモークハラスメント

スモークハラスメントは、喫煙者が非喫煙者に対して迷惑をかける行為です。

職場内での受動喫煙の強要、非喫煙者への差別などが該当します。

以下がスモハラの具体例です。

  • たばこの煙を吹きかける。
  • 非喫煙者に「たまには吸ってみろ」と勧める。
  • 喫煙室から戻ってきた衣服の臭いで周囲が不快になる。

スモークハラスメントを防ぐためには、分煙ルールを徹底し、非喫煙者への配慮を促すことが重要です。
職場における禁煙エリアを明確にし、喫煙と非喫煙者のバランスを取る工夫を行いましょう。

ケアハラスメント

ケアハラスメントは、介護や育児に関する不適切な発言や差別的な扱いをする行為です。

介護や育児を理由に昇進を妨害する、育児中の社員を「甘えている」と批判するなどが該当します。

以下がケアハラの具体例です。

  • 「介護があるなら仕事を減らすべき」と決めつける。
  • 育児休暇を取得した社員に嫌味を言う。
  • 介護や育児の大変さを軽視する発言をする。

ケアハラスメントを防ぐためには、育児や介護と仕事の両立を支援する制度を整備することが必要です。
フレックスタイム制度や在宅勤務を導入し、従業員が柔軟に働ける環境を整えましょう。

レイシャルハラスメント

レイシャルハラスメントは、人種や民族を理由に差別的な言動や扱いをする行為です。

外国人労働者に対する偏見、肌の色や国籍を揶揄する発言、不適切な待遇の強要などが該当します。

以下がレイシャルハラスメントの具体例です。

  • 外国人社員の名前を勝手に日本風に呼び変える。
  • 「外国人だから仕事ができない」と決めつける。
  • 特定の国籍の人を採用しない方針をとる。

レイシャルハラスメントを防ぐためには、多様性を尊重する企業文化を醸成することが重要です。ハラスメント禁止のルールを明文化し、社内研修を通じて意識改革を進めましょう。

テクノロジーハラスメント

テクノロジーハラスメントは、ITスキルの差を利用して相手を困らせる行為です。

PCやソフトウェアの知識を押し付ける、デジタルツールを使えない人を馬鹿にするなどが該当します。

以下がテクノロジーハラスメントの具体例です。

  • 「こんなことも知らないの?」とIT知識を強要する。
  • オンライン会議で機器操作ができない人を責める。
  • 新人や高齢社員にデジタルツールを無理に押し付ける。

テクノロジーハラスメントを防ぐためには、ITスキルの習得を支援し、サポート体制を整えることが大切です。誰もが安心して技術を学べる環境を作り、個人のペースを尊重しましょう。

カスタマーハラスメント

カスタマーハラスメントは、顧客が従業員に対して過度な要求や嫌がらせを行う行為です。

クレーム対応時の暴言や威圧、無理な要求を繰り返す行為などが該当します。

以下がカスタマーハラスメントの具体例です。

  • 店員に対し、土下座を強要する。
  • 「お客様は神様だ」と言って不当なサービスを要求する。
  • 長時間の電話でクレームを繰り返し、業務を妨害する。

カスタマーハラスメントを防ぐためには、従業員を守るためのマニュアルを整備し、企業として毅然とした対応を取ることが重要です。
顧客対応のガイドラインを明確にし、ハラスメントが発生した場合の対応策を講じましょう。

ハラスメント・ハラスメント

ハラスメント・ハラスメントは、過剰なハラスメント対策によって従業員が委縮し、職場のコミュニケーションが損なわれる現象です。

指導や助言がハラスメントと誤解される、適切なコミュニケーションが取りづらくなるなどが該当します。

以下がハラスメント・ハラスメントの具体例です。

  • 上司が部下に注意できなくなる。
  • 冗談や雑談がすべてハラスメントと捉えられる。
  • 社員同士の距離が生まれ、会話が減る。

ハラスメント・ハラスメントを防ぐためには、適切な指導とハラスメントの違いを明確にすることが必要です。研修を通じて正しい知識を共有し、健全な職場環境を維持しましょう。

就活終われハラスメント

就活終われハラスメントは、内定を得た学生に対し、就職活動を早く終えるよう圧力をかける行為です。

内定辞退を防ぐために学生の選択を制限する、他社の選考を受けさせないなどの行為が該当します。

以下が就活終われハラスメントの具体例です。

  • 「もう就活をやめないと内定を取り消す」と脅す。
  • 他社の選考を受けることを禁止する。
  • 「これ以上就活を続けるのは失礼だ」と圧力をかける。

就活終われハラスメントを防ぐためには、学生の意思を尊重し、適切な採用活動を行うことが重要です。学生が自由に進路を決定できる環境を提供し、過度な干渉を避けましょう。

リモートハラスメント

リモートハラスメントは、オンライン環境での嫌がらせや過度な監視を行う行為です。

オンライン会議でのプライベート干渉、常時カメラをオンにする強制、在宅勤務者への過度な連絡などが該当します。

以下がリモートハラスメントの具体例です。

  • オンライン会議で「背景を見せろ」とプライバシー侵害をする。
  • 「リモートだからサボっている」と決めつける発言をする。
  • 勤務時間外でもチャットやメールを送り続ける。

リモートハラスメントを防ぐためには、テレワークのルールを明確にし、従業員のプライバシーを尊重することが重要です。過度な監視を避け、成果ベースの評価を導入しましょう。

エイジハラスメント

エイジハラスメントは、年齢を理由に不当な扱いや差別を行う行為です。

若年層や高齢層に対する過度な期待や排除、年齢に基づいた固定観念の押し付けなどが該当します。

以下がエイジハラスメントの具体例です。

  • 「若いんだから残業くらいできるでしょ」と強要する。
  • 「もう年だから新しいことは無理」と決めつける。
  • 昇進や採用の際に年齢のみで判断する。

エイジハラスメントを防ぐためには、年齢に関係なく能力を評価する仕組みを整えることが重要です。社内研修を実施し、年齢による偏見をなくす意識改革を行いましょう。

溜息ハラスメント

溜息ハラスメントは、溜息を繰り返しつくことで、相手にプレッシャーを与えたり、不快感を与える行為です。

部下の発言や行動に対して頻繁に溜息をつき、精神的な圧力をかける行為が該当します。

以下が溜息ハラスメントの具体例です。

  • 会議中に部下が発言するたびに溜息をつく。
  • 仕事の相談をした際に、大げさに溜息をつく。
  • 特定の人に対して意図的に溜息をつき続ける。

溜息ハラスメントを防ぐためには、職場のコミュニケーションを円滑にし、無意識のうちに行われる行動にも注意を払うことが重要です。
心理的安全性を高めるために、意識改革を進めましょう。

セカンドハラスメント

セカンドハラスメントは、ハラスメントの被害者が相談や告発をした際に、さらに二次的な嫌がらせを受ける行為です。

被害を訴えたことに対する非難、職場での孤立、報復的な措置などが該当します。

以下がセカンドハラスメントの具体例です。

  • 「大げさに騒ぎすぎ」と被害者を責める。
  • ハラスメントの相談後、部署を異動させられる。
  • 被害者に対し、職場の人間関係を悪化させるような発言をする。

セカンドハラスメントを防ぐためには、相談窓口を設け、被害者が安心して報告できる環境を作ることが重要です。
社内でのハラスメント防止教育を徹底し、被害者を守る意識を醸成しましょう。

職場外での代表的なハラスメントの種類と事例も知ろう

職場外で発生するハラスメントも、企業にとって看過できない重要な問題です。職場外でのハラスメントは、SNSの普及や働き方の多様化により、近年増加傾向にあります。

たとえば、業務終了後の飲み会や社員旅行といったプライベートな場面でのハラスメントは、職場での人間関係に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、取引先や顧客とのやり取りの中で発生するハラスメントも、企業イメージを損なう深刻な問題となりかねません。

ジェンダーハラスメント

ジェンダーハラスメントは、性別に基づいた偏見や差別を押し付ける行為です。

性別による役割の固定化、特定の性別に対する不適切な発言や待遇などが該当します。

以下がジェンダーハラスメントの具体例です。

  • 「女性はサポート業務が向いている」と決めつける。
  • 「男ならこれくらいできて当然」と無理な要求をする。
  • 特定の性別のみに特定の仕事を割り当てる。

ジェンダーハラスメントを防ぐためには、多様性を尊重する職場文化を醸成し、性別に関係なく公平な評価を行うことが重要です。
社内研修を実施し、固定観念を払拭する取り組みを行いましょう。

カラオケハラスメント

カラオケハラスメントは、職場の飲み会やイベントでカラオケを強要したり、断ることを許さない行為です。

カラオケの歌唱を強制する、歌わないと人間関係に悪影響があるように扱うなどが該当します。

以下がカラオケハラスメントの具体例です。

  • 「1曲も歌わないと場が盛り上がらない」と強要する。
  • 歌が苦手な社員をバカにする発言をする。
  • カラオケに参加しない社員を評価で不利にする。

カラオケハラスメントを防ぐためには、個人の自由を尊重し、強制的な参加を避けることが重要です。職場のイベントは参加を自由にし、誰もが楽しめる環境を整えましょう。

ブラッドハラスメント

ブラッドハラスメントは、血液型による性格診断を押し付けたり、それを理由に差別をする行為です。

「A型は几帳面」「B型は自己中心的」などの固定観念を押し付けることが該当します。

以下がブラッドハラスメントの具体例です。

  • 「B型だから自己中心的」と決めつける。
  • 血液型を理由に人事評価を下げる。
  • 血液型に基づいて仕事の役割を決める。

ブラッドハラスメントを防ぐためには、科学的根拠のない偏見をなくす意識改革を進めることが重要です。社内研修を実施し、公平な評価基準を設けましょう。

家庭内ハラスメント

家庭内ハラスメントは、家庭内での精神的・身体的な嫌がらせや不当な支配を行う行為です。

配偶者や子供に対する言葉の暴力、経済的な支配、過度な干渉などが該当します。

以下が家庭内ハラスメントの具体例です。

  • 配偶者に対し、暴言や威圧的な態度をとる。
  • 家庭内の経済的な決定権を一方的に握る。
  • 子供の進路や行動を過度に制限する。

家庭内ハラスメントを防ぐためには、社会全体での意識改革が必要です。相談窓口を活用し、家庭外でも支援を受けられる環境を整えましょう。

スポーツハラスメント

スポーツハラスメントは、スポーツの指導や競技の場で不適切な指導や強要が行われる行為です。

厳しすぎる指導、暴力的な指導、特定の選手への差別や嫌がらせが該当します。

以下がスポーツハラスメントの具体例です。

  • 勝つために無理な練習を強要し、ケガを軽視する。
  • 「根性が足りない」と精神論で追い込む。
  • 特定の選手だけを冷遇し、試合に出さない。

スポーツハラスメントを防ぐためには、指導者の教育を徹底し、適切な指導の基準を設けることが重要です。選手が自由に意見を言える環境を作り、過度なプレッシャーを排除しましょう。

ソーシャルハラスメント

ソーシャルハラスメントは、SNSやネット上で他人に不適切な発言や圧力をかける行為です。

職場の上司が部下のSNSを監視する、SNSでの意見を理由に職場で不利益を与えるなどが該当します。

以下がソーシャルハラスメントの具体例です。

  • 上司が部下のSNS投稿に「いいね」を強要する。
  • 社員のプライベートな投稿を監視し、職場で指摘する。
  • 特定の意見を持つ人をSNS上で批判・排除する。

ソーシャルハラスメントを防ぐためには、企業のSNSガイドラインを整備し、プライベートと仕事の線引きを明確にすることが重要です。社員が安心してネットを利用できる環境を作りましょう。

アカデミックハラスメント

アカデミックハラスメントは、教育・研究の場で権力を利用し、不適切な指導や嫌がらせを行う行為です。

研究成果を横取りする、学業に関係のない業務を強要する、特定の学生に対する差別的扱いなどが該当します。

以下がアカデミックハラスメントの具体例です。

  • 指導教授が学生の研究成果を自分のものにする。
  • この研究室では徹夜が当たり前」と強制する。
  • 特定の学生だけを研究発表から排除する。

アカデミックハラスメントを防ぐためには、大学や研究機関でのコンプライアンス意識を高め、相談窓口を設置することが重要です。公正な評価と指導体制を確立し、権力の乱用を防ぎましょう。

なぜハラスメントの種類は増えたのか

近年、職場におけるハラスメントの種類は著しく増加しています。現在では数十種類のハラスメントが認識されるようになりました。

この背景には、以下を主とした職場環境や社会的価値観の大きな変化があります。

  • 職場環境や社会的価値観が変わったから
  • オンライン化や多様な働き方の浸透のため
  • SNSなどで社会的な認識が広がったから

働き方改革やダイバーシティの推進により、従来の画一的な職場文化が見直されるようになりました。
性別や年齢、働き方の違いを認め合う意識が高まる中で、これまで当たり前とされてきた言動や慣習が、新たにハラスメントとして認識されるようになったのです。

また、テレワークやフレックスタイム制の普及により、多様な働き方が一般化したことも要因の一つです。
オンラインでのコミュニケーションが増えたことで、「リモートハラスメント」のような新しい形のハラスメントも生まれています。

さらに、SNSの普及により、職場での問題がより可視化されやすくなったことも影響しています。以前なら表面化しにくかった些細な言動も、SNSを通じて社会的な議論の対象となりました。

従来は個人の問題とされていた事柄も、職場環境の問題として捉えられています。たとえば「スメルハラスメント」や「時短ハラスメント」などです。

このようなハラスメントの種類の増加は、企業にとってより慎重な対応を必要とする状況を生み出しています。特に中小企業では、これまで以上にハラスメント対策の体制整備が必要です。

「相談窓口の設置」「研修の実施」「就業規則の見直し」など、具体的な施策を講じることで、企業の守りを強化しましょう。

こんな状態に注意!ハラスメントが発生しやすい職場とは

すべての中小企業において、ハラスメント対策は必須です。ただし、なかでも職場環境によってハラスメントが発生しやすい企業があります。

以下の表に該当する企業は、特に本気でハラスメント対策を講じましょう。

項目ハラスメントが起きやすくなる理由
ハラスメントに対する意識が低い職場何がハラスメントに該当するのか理解されておらず、問題のある言動が日常的に放置されやすい。
コミュニケーションが不足している職場上司と部下、同僚間の意思疎通が不足し、誤解や軋轢が生まれやすい環境となっている。
長時間労働や過度なストレスが蔓延している職場心身の疲労により感情的になりやすく、些細なことでトラブルに発展しやすい。
明確な役割分担がない職場責任の所在が不明確で、過度な要求や責任転嫁が起こりやすい。
上司や同僚が権威を振りかざす風土がある職場立場や権限を利用した不適切な言動が容認されやすい環境となっている。
意見を出しにくい閉鎖的な職場問題があっても声を上げにくく、ハラスメントが潜在化・深刻化しやすい。

このような職場環境では、ハラスメントが発生するリスクが特に高まります。そのため、より一層の「守り」の体制強化が必要です。

特に中小企業では、人間関係が密接であるがゆえに、問題が表面化しにくい傾向があります。そのため、外部の専門家による客観的な視点を取り入れることも有効な対策です。

中小企業だからこそハラスメントから職場を守ろう

中小企業におけるハラスメント対策は、大企業に比べて遅れているのが現状です。

しかし、中小企業だからこそ、ハラスメント対策は重要な経営課題として取り組むべきだといえます。その理由は以下の通りです。

  • 限られた人材資源を守るべきだから
  • 職場の生産性を維持・向上しないと倒産するから
  • 企業の信頼性とブランドイメージを向上しないと顧客が増えないから
  • 中小規模のうちにハラスメントの早期発見と防止策を実施すべきだから

中小企業は限られた人材資源で事業を運営しています。そのためハラスメントによって優秀な人材を失うことは、企業の存続に関わる深刻な問題となりかねません。

また、職場の生産性維持・向上は中小企業の生命線です。ハラスメントが蔓延すると、職場の雰囲気が悪化し、従業員のモチベーションが低下します。

これは直接的な業績低下につながり、経営を圧迫する要因です。大企業と比べて経営基盤が脆弱なため、生産性の低下は致命的な問題となる可能性があります。

さらに、ハラスメントによる企業のイメージダウンは顧客数にも影響することに注目してください。ハラスメント対策として企業の守りを固めることで、攻めである「売上拡大」にも貢献します。

中小企業だからこそ、ハラスメント対策を積極的に講じましょう。

中小企業はどうやってハラスメント対策すればいい?

具体的なハラスメント防止策の例は、以下の5つです。

対策内容
ハラスメント防止方針の明確化会社としてハラスメントを許さない方針を明文化し、社内に周知徹底する。就業規則への記載や社内掲示などを通じて、全従業員に方針を浸透させる。
定期的な研修の実施管理職を中心に、ハラスメントに関する正しい知識と防止策を学ぶ機会を設ける。外部講師を招いての集合研修やeラーニングの活用など、自社に合った形で実施する。
相談窓口の設置と周知従業員が安心して相談できる窓口を設置し、その存在を周知する。内部窓口だけでなく、外部の専門機関と提携する。
問題発生時の迅速な対応体制の構築ハラスメントの申し出があった場合の調査手順や、加害者・被害者への対応方針を事前に定めておく。
職場環境の定期的なチェックと改善アンケートや面談を通じて職場の実態を把握し、問題の芽を早期に発見して改善につなげる。

中小企業の場合、これらの対策を経営層が主導しながら、スピード感を持って進めることが重要です。経営者が率先して「ハラスメントは絶対に許さない」という強い意志を示すことで、全社的に浸透しやすくなります。

経営者は「守り」の施策として、これらの対策にしっかりと取り組んでいきましょう。

まとめ

中小企業におけるハラスメント対策は、単なる法令順守以上の重要な経営課題です。限られたリソースの中でも、まずは基本的な防止体制の整備から着実に進めましょう。

売上向上などの「攻め」の施策に注力しがちな中小企業ですが、ハラスメント対策などの「守り」の部分をおろそかにすると、企業の存続自体が危うくなります。
経営者は、ハラスメントを経営リスクとして認識し、計画的に取り組むべきです。

健全な職場環境の整備は、従業員の働きがいや生産性の向上にもつながり、結果として企業の持続的な成長を支える重要な土台となります。
中小企業だからこそ、経営の根幹を支える「守り」の施策として、ハラスメント対策に取り組んでいきましょう。

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