【2025年最新】コンプライアンス違反の事例6選!リスクを学んで企業の対策を

企業経営において、コンプライアンス(法令遵守)は「守り」の要ともいえる重要なテーマです。特に中小企業にとっては、ひとたびコンプライアンス違反が発生すれば、信用の失墜や取引停止、罰則による経営への打撃など、回復困難な事態に発展しかねません。

この記事では、中小企業の経営者やバックオフィス担当者の方に向けて、コンプライアンス違反の事例を中心に、違反の種類、中小企業として取るべき対策をわかりやすく紹介します。

「知らなかった」では済まされないリスクを避けるためにも、ぜひ最後までお読みください。

【まずは基本】コンプライアンスとは?

コンプライアンスとは、一般的に「法令遵守」と訳されます。

しかし単に法律を守ることだけにとどまりません。企業としての倫理観や社会的責任、公平性、社内ルールの遵守なども含めた広い概念です。

現代のビジネス環境では、従業員や取引先、消費者、地域社会といった多くのステークホルダーに対して誠実であることが求められます。

コンプライアンスは「経営の守り」において中核ともいえる存在であり、企業の長期的な存続と発展のために欠かせない要素です。

中小企業にもコンプライアンス意識は必要!

「コンプライアンスは大企業だけの話」と思われがちですが、それは大きな誤解です。

むしろ中小企業こそ、コンプライアンス違反によるダメージからの回復が難しいといえます。一度のミスが企業存続の危機に直結することもあるのです。

たとえば「従業員による不適切なSNS投稿」「助成金の不正受給」「情報漏洩」といった問題は、規模を問わず発生しています。「知らなかった」「うっかりしていた」では通用しません。

コンプライアンスを「コスト」ではなく「企業を守るための投資」と位置づける視点が、これからの中小企業経営には不可欠です。

コンプライアンス違反にはどんな種類がある?

コンプライアンス違反と一言でいっても、その内容は多岐にわたります。中小企業でも起こり得る違反を6つのカテゴリに分類し、まとめました。

  1. 労働・ハラスメント関連の違反
  2. 財務・経理の違反(粉飾決算・不正会計・不正請求)
  3. 個人情報・データ管理の違反
  4. 消費者保護・公正取引の不正
  5. 知的財産・情報管理の違反
  6. 企業倫理の違反(不正行為・隠蔽・社内不正)

1. 労働・ハラスメント関連の違反

働き方改革が進む中でも、長時間労働やパワハラ・セクハラといった問題は依然として多く発生する問題です。特に中小企業では、労務管理の仕組みが整っていないことが原因で、違反が見過ごされることがあります。

主に以下のような問題が起きがちです。

項目詳細
長時間労働・サービス残業法定労働時間を超えた勤務や、賃金が支払われないサービス残業
セクハラ・パワハラ上司・同僚からの言動による精神的・肉体的苦痛の強要
未払い賃金・労働環境の不備 給与の遅配・未払い、休憩や休日の未確保、安全配慮義務の怠り

これらの違反は、従業員の不満や離職だけでなく、労働基準監督署からの是正勧告や罰則にもつながるため、注意しましょう。

2. 財務・経理の違反(粉飾決算・不正会計・不正請求)

財務に関する不正は企業の信用を大きく損なう行為です。場合によっては法的責任や刑事罰に発展することもあります。

以下のような問題に気を付けましょう。

項目詳細
売上や利益の水増し実際には存在しない取引を計上し、業績をよく見せかける行為
経費の不正使用私的な支出を経費として処理する、目的外使用など
補助金・助成金の不正受給 虚偽申告による補助金申請や、本来の用途外への流用

一度でも発覚すると、取引先や金融機関からの信用を失い、経営が困難になる恐れがあります。

3. 個人情報・データ管理の違反

「情報管理」は年々重要になっているテーマです。中小企業においても顧客や従業員のデータを扱う以上、取り扱いのミスや流出は大きなリスクとなります。

以下のような問題に注意しましょう。

項目詳細
個人情報漏洩 顧客や従業員の氏名・住所・連絡先などが第三者に流出
不正なデータ持ち出し・管理ミスUSB等によるデータの無断持ち出し、管理台帳の未整備
SNS投稿による機密情報流出 従業員の投稿が原因で社外秘情報が公に出てしまうケース

適切なルール整備や社員教育を怠ると、思わぬところでトラブルが発生します。

4. 消費者保護・公正取引の不正

中小企業でも消費者向けサービスや商品を扱っている場合、広告や価格表示、契約内容についての適正さが問われます。

不当表示や優越的地位の濫用などは、行政処分の対象となることもあるため対策が必須です。

以下のような法令違反に気を付ける必要があります。

項目詳細
景品表示法違反 実際よりも著しく有利に見せかけた広告・虚偽表示
独占禁止法違反 同業他社との談合・価格調整、取引排除など
契約違反・下請法違反 一方的な契約変更や支払い遅延、下請けへの過剰な要求

たとえ小規模でも、誠実な取引姿勢が求められる時代です。きちんとルールを理解し、整備しましょう。

5. 知的財産・情報管理の違反

「これくらいなら問題ないだろう」という甘い認識が、思わぬ訴訟リスクを生むのが知的財産の分野です。特にデザインや文書、ソフトウェア等を扱う企業は、以下のような問題への注意が必要です。

項目詳細
著作権・商標権・特許権の侵害他社の権利を無断使用、商標の類似使用など
無断使用・違法コピー書籍やソフトウェアの無断コピー・共有
ノウハウの盗用元社員などが競合他社に社内情報を持ち出す行為

意図的でなくても、「知らなかった」では済まされない問題です。権利関係についても、基礎知識を押さえておきましょう。

6. 企業倫理の違反(不正行為・隠蔽・社内不正)

企業の価値観や姿勢が問われる「企業倫理」領域の違反は、近年特に社会的関心が高まっています。不正や隠蔽、やらせ口コミなどの行為は、瞬く間に企業の信用を失わせるトラブルです。

以下のような企業倫理違反に気を付けましょう。

項目詳細
ステルスマーケティング 宣伝であることを隠し、口コミを装って商品を紹介する手法
役員や社員の不正行為 横領・賄賂・利益供与など、組織内部の不正
隠蔽体質・意識の低さ 問題が起きても報告・改善せず、もみ消しを図る社風

内部統制の未整備や、社内風土の問題として根深く残るケースが多いため、早期の是正が必要です。

【種類別】コンプライアンス違反事例集

それでは、実際に企業が起こしたコンプライアンス違反の事例を、種類別に紹介します。リスクを知ったうえで、事例から得られる学びを参考にしてください。

労働関連の違反事例

ある保険会社で、上司が部下に対し「やる気がないなら会社を辞めるべきだ」といった内容のメールを、本人と同僚十数名に送信した事案です。

メールは叱咤の目的だったものの、退職勧告と受け取れる過激な表現や、同僚への同報送信が問題視され、名誉毀損による損害賠償(5万円)が認められました。

この事例は、上司の言動がたとえ善意や指導目的であっても、表現次第で不法行為と判断されることを示しています。

参考)あかるい職場応援団「【第56回】 「上司が送ったメールの内容が侮辱的言辞として、損害賠償請求が認められた事案」 ―A保険会社上司(損害賠償)事件

不正会計・粉飾決算の事例

ある上場企業A社(機械製造業)は、上場前から業績をよく見せるために売上の前倒し計上を行っていました。

上場後には架空の売上を計上し、出荷済み製品の原価を棚卸資産に振り替えるなどの粉飾を実施していた事件です。

最終的には、存在しない売掛金の処理をごまかすために売上取消や得意先の変更を繰り返し、粉飾を重ねる悪循環に陥りました。

短期的な業績維持を目的とした不正が、企業全体の信頼を揺るがす深刻な問題へと発展した典型例です。

参考)金融庁「最近の粉飾の手口例」p.3

個人情報漏洩の事例

コールセンターサービスを提供する企業が、システムの保守運用を関連会社に委託しました。すると、その関連会社の従業員が顧客や住民の個人情報を不正に持ち出していた事案です。

影響を受けた個人データは928万人分にのぼりました。当初は漏洩の事実が社内調査で発見されなかったことも、大きな問題です。

委託先管理や情報管理体制の甘さが、大規模な個人情報漏洩と信頼の失墜につながった典型例といえます。

参考)個人情報保護委員会「個人情報保護法の違反行為に係る事例等(個人データの違法な第三者提供等、その他)」p.2

補助金・助成金の不正受給の事例

従業員の休業日数を水増しし、雇用していない人物を雇用しているように装う虚偽書類を提出した事例です。これにより雇用調整助成金など約6,000万円を不正受給していたことが判明しました。

こうした不正は、行政からの返還命令だけでなく、企業の信用失墜や刑事責任に発展します。制度のゆるみを突くのではなく、誠実にビジネスを推進することが重要です。

著作権・知的財産の侵害事例

ある中国企業A社は、日本の人気ゲームに登場するキャラクターの画像・名称を無断で使用したモバイルゲームアプリを開発・運営していました。

日本のゲーム会社は2021年、中国・深圳市の中級人民法院に対して、著作権および不正競争防止法に基づく損害賠償請求訴訟を提起しています。結果、中国企業A社は約1.07億元(日本円で約23.4億円)の損害賠償を背負いました。

創作物を無断で利用し、不正に収益を得る行為は重大な問題です。短期的な収益を追い求めた結果、企業の信頼を大きく損なう結末となった典型例といえます。

企業倫理の違反事例

大手宅配ピザチェーンでは、実際には販売していない商品をWebサイト上に掲載し、注文可能であるかのように見せる手法で調査を実施していました。

顧客が対象商品を選択すると、購入手続きが完了する前に「実際には購入できない」旨の表示が現れ、代わりにクーポンが提供されるというものです。

紛らわしい形で表示される仕様であり、ユーザーに強い誤認を与える結果となりました。その結果、SNS上で炎上してしまい、評判を落としてしまった事例です。

本来、顧客視点に立った商品開発・調査は重要です。調査量を増やしたい気持ちは大切ですが、それ以上に消費者との信頼関係の構築であることがわかります。

コンプライアンス違反に対する中小企業の対策は?

中小企業においても、コンプライアンス違反は大きなリスクを伴う問題です。大企業のようなリソースがない中小企業でも実行可能な対策をまとめました。

対策内容
基本方針の明文化 社内ルールや倫理規定を明文化し、コンプライアンスの基本方針を明確にします。
従業員への教育・研修 年1回の研修や定期的な社内通知などを通じて、従業員にコンプライアンス意識を浸透させる施策です。
内部通報制度の導入 社内外に通報窓口を設置し、不正行為やハラスメントなどの早期発見を促進します。
リスクの見える化とチェック体制 業務でリスクが生じやすいポイントを洗い出し、簡易なチェックリストで管理体制を構築します。
経営陣のコミットメント トップが率先してコンプライアンスの重要性を発信し、行動で示すことで社内に浸透します。

まとめ

コンプライアンス違反は、決して他人事ではありません。中小企業にとっては、一度の違反が事業継続の危機につながる重大なリスクとなります。

必要なのは「大掛かりな体制」ではなく、「自社に合った仕組みづくり」です。行動指針の整備や研修の実施、通報制度の導入といった基本的な取り組みを継続して実行してください。

コンプライアンス意識の醸成は「守りの経営」の要です。企業の信頼と未来を守るために、今できることから一歩ずつ始めましょう。

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