風評被害の意味とは?原因と企業が取るべき対策をわかりやすく解説

企業の信頼や売上を一瞬で揺るがすのが風評被害です。とくに中小企業にとっては、ひとたび悪い噂が広がるだけで、経営に大きな影響を及ぼしかねません。

この記事では、「風評被害」の正しい意味から原因、実際の事例、そして中小企業が取るべき対策までをわかりやすく解説します。事前の備えが、万が一のときに企業を守る力になるため、風評被害への理解を深めておきましょう。

風評被害の意味とは?

風評被害とは、根拠のない噂や誤った情報が広まることによって、企業や個人の信用やイメージが損なわれ、経済的・社会的な損失を被ることを指します。

近年は、誰もが簡単に情報発信できるインターネット環境の影響で、風評被害が発生するスピードと拡散力が格段に増しています。しかも、誤情報が一度広まると、それを完全に取り消すのは困難であり、企業にとっては長期的な信用失墜につながりかねません。

重要なのは、風評被害は「事実でない情報」によって引き起こされる点です。デマ情報によって企業全体への漠然とした不信感やイメージ悪化を招くケースも少なくありません。

企業が健全な経営を維持するためには、風評被害の意味を正しく理解し、そのリスクに備える姿勢が欠かせません。

風評被害が発生する原因

風評被害が発生する主な原因は以下のとおりです。

・消費者の不安や不満
・従業員や取引先からの情報漏洩
・事故や災害による誤った解釈

それぞれ具体的に見ていきましょう。

参考記事:会社が受ける風評被害を理解しよう!原因と対策、知っておくべき事例など

消費者の不安や不満

風評被害の原因として多いのが、消費者の不満や不安の表出です。サービスや製品に対して感じた小さな不満が、SNSやレビューサイトでの投稿を通じて拡散され、あたかも「事実」であるかのように扱われてしまうケースがあります。

とくに感情的な投稿は拡散力が高く、事実確認がなされないまま他の消費者に広がるリスクがあるのです。

従業員や取引先からの情報漏洩

内部関係者による情報漏洩も、風評被害の大きな原因のひとつです。業務に関する未確認の情報や社内の不満がSNSなどで外部に発信されると、企業の信頼性が損なわれてしまいます。

また、取引先とのやり取りの一部が漏洩し、文脈を無視した解釈がされることで、悪意のない投稿であっても誤解を招く可能性があります。

事故や災害による誤った解釈

自然災害や事故が発生した際に、企業の対応や関与について誤った情報が広まるケースもあります。とくに災害時には情報が錯綜しやすく、推測に基づく発言が拡散された結果、企業に対する非難が集まる事態が起こりがちです。

たとえば、工場の火災や停電によって一時的に供給が止まっただけでも、「経営破綻ではないか」などの憶測が飛び交い、企業の信用に大きな打撃を与えることがあります。

【中小企業も注意】実際にあった風評被害の事例

風評被害は大企業だけの問題ではありません。実際に、多くの中小企業が誤情報や誤解、悪質なデマによって大きな損害を受けています。近年は、SNSなどでの情報拡散スピードが速く、小規模な企業であってもあっという間に風評の対象となってしまうケースが増加しているのです。

ここでは、過去に発生した風評被害の事例を紹介します。いずれのケースも「事実とは異なる情報」が引き金となっており、どの企業にも起こり得るリスクであることがわかります。

東日本大震災の事例

2011年の東日本大震災では、放射能汚染への不安が全国に広がり、福島県周辺のみならず、影響のなかった地域の企業にまで風評被害が及びました。たとえば、安全が確認されていた農産物や水産物に対しても「放射能が心配」といった消費者の声が広がり、出荷停止や価格下落を招いたのです。

実際に、福島県外の中小規模の農業法人や食品加工業者が、何の根拠もない拒否反応によって取引を打ち切られるなどの被害を受けました。科学的な根拠よりも感情的な不安が勝ってしまった結果といえるでしょう。

参考)文部科学省「いわゆる風評被害の事例

新型コロナウイルスの事例

新型コロナウイルスの感染拡大時にも、多くの企業が風評被害に苦しみました。たとえば、従業員に感染者が出た飲食店や製造業の企業に対して、「あの会社は危ない」「感染管理が甘い」などといった書き込みがSNSで拡散されました。

感染自体は法令に基づいて適切に対応していたにもかかわらず、過剰な反応が被害を拡大させた一例です。

参考)内閣官房「偏見・差別の実態と取組等に関する調査結果

悪質なデマによる事例

地方銀行が倒産するという根拠のないデマが広がり、多くの預金引き出しや銀行口座解約が発生した事例があります。

銀行としては、そのような事実はないことや、経営内容、健全性、資金繰りはいずれも問題ないということを発表し、事態は収束しました。

しかしながら、風評被害への対応や口座の解約など、多くの労力・損失が発生したと考えられます。

参考)金融庁「竹中内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)記者会見要旨

企業名の間違えによる事例

原薬メーカーで、安価な成分を無届けで混入して出荷するという事件がありました。

同社は、業務停止命令と業務改善命令を受けましたが、報道後、同名の別会社に苦情や批判の電話・問い合わせが大量に寄せられるという風評被害が発生したのです。

このように類似した企業名による風評被害が発生することも起こり得ます。

風評被害が中小企業に与える影響

風評被害は、企業の信用や社会的評価を一瞬で損なう深刻なリスクです。とくに中小企業にとっては、限られた経営資源の中で評判を築き上げてきた背景があるため、ひとたび悪い噂が広がると、その影響は甚大です。

大企業のように広報体制やブランド戦略が整っていないケースも多く、対応の遅れがさらなる被害拡大を招くこともあります。ここでは、実際に中小企業が被る恐れがある影響について解説します。

顧客離れと業績悪化

風評被害によって顧客の信頼を失うと、顧客離れと業績の悪化を招きます。たとえば、SNSや口コミサイトで「サービスが悪い」「衛生面が不安」といった投稿が拡散された場合、それが事実無根であっても消費者の足が遠のく原因となります。

とくに地域密着型の中小企業では、地元の評判が売上に直結するため、一時的な信用失墜でも大きな痛手となります。こうした影響は短期間で解消されるものではなく、長期的な業績悪化につながりかねません。

ブランドイメージの低下

根拠のない悪評でも、一度広まってしまえばブランドイメージに深刻な傷を残します。とくに中小企業では「信頼感」や「誠実さ」がブランドの核となっている場合が多く、それが疑われるようになると、再構築には長い時間とコストが必要になります。

さらに、企業イメージが損なわれると、新規顧客の獲得にも支障が生じ、成長戦略の足かせとなってしまうのです。企業としての姿勢や価値観までも疑問視される事態は、早期に回避しなければなりません。

取引先やパートナーとの関係悪化

風評被害は顧客だけでなく、取引先や業務提携先との関係にも悪影響を及ぼします。事実確認が不十分なまま「問題のある企業」と判断されてしまえば、新規契約の見送りや既存取引の打ち切りが発生することもあります。

とくに信用を重視するBtoBのビジネスでは、企業間の信頼関係が土台となっており、わずかなイメージの揺らぎが契約解除へと直結する場合があります。結果として、売上減だけでなくサプライチェーン全体に混乱を招く可能性もあるのです。

株価や信用力への影響

株式を公開している中小企業にとっては、風評被害が株価にも影響を与えるリスクがあります。悪い噂が報道やSNSで広がることで、投資家の不安が高まり、株の売却が進むと一気に株価が下落する恐れがあります。

また、企業の信用力が損なわれると、銀行や取引先からの資金調達が困難になる可能性も否定できません。とくに資金繰りに余裕のない中小企業では、風評による一時的な信用不安が経営の継続を脅かす要因となります。

【中小企業担当者必見】風評被害を受けた場合の対処法

風評被害が発生した際に重要なのは、迅速かつ冷静に対応することです。感情的な反応や対応の遅れは、被害の拡大を招くだけでなく、企業の信頼性をさらに損なう可能性があります。

中小企業は広報や危機管理体制が整っていないことが多く、あらかじめ基本的な対応フローを把握しておくことが不可欠です。

ここでは、風評被害に直面したときに取るべき代表的な対処法について順を追ってご紹介します。

事実関係の確認と記録

最初に行うべきなのは、事実関係の正確な把握です。どのような情報が、どこで、いつ発信されたのかを確認し、内容に誤りがないかを客観的に検証しましょう。その際、ウェブページのスクリーンショットやSNSの投稿内容などを保存し、証拠として記録に残すことが重要です。

これらの記録は、後の削除依頼や法的対応を行う際の根拠資料として活用できます。

声明文の発信

風評が広まった場合、企業としての立場や事実を明確にする公式声明を発信することが効果的です。沈黙を貫くよりも、適切なタイミングで誠実な説明を行うことで、誤解を和らげたり、拡散の抑制につなげたりできます。

声明文は、自社サイトや公式SNSを活用して発信するのが一般的です。感情的な反論ではなく、事実に基づき冷静に伝えることで、信頼回復につながります。

投稿や記事の削除依頼

誤情報や悪質な書き込みが確認された場合は、できるだけ早くその削除を依頼しましょう。掲載されているプラットフォームやサイトの運営者に対して、具体的なURLと削除を求める理由を明記して依頼をかけます。

SNSや掲示板のように匿名性が高い媒体でも、運営ポリシーに反していると判断されれば、削除対応が行われる場合があります。早期のアクションが拡散を最小限に抑える鍵となります。

発信者情報開示請求

悪質な風評が繰り返される場合、その発信者を特定するために「発信者情報開示請求」を行えます。この手続きは、投稿が違法または名誉毀損に該当すると判断された場合に、プロバイダなどを通じて発信者の情報を開示してもらう制度です。

ただし、これは専門的な知識や法的根拠が求められるため、弁護士など専門家に相談しながら進めることが望ましいです。

法的措置

すべての対応を講じても被害が拡大する場合、最終的には民事訴訟や刑事告訴といった法的措置を検討する必要があります。名誉毀損や業務妨害に該当する場合、損害賠償請求や刑事責任の追及が可能です。

法的措置に踏み切るかどうかは、被害の程度や今後の影響を踏まえて判断すべきですが、泣き寝入りせず、企業として毅然と対応する姿勢を示すことが再発防止にもつながります。

【今すぐできる】中小企業がやるべき風評被害対策4選

風評被害は突然発生し、企業の信用や売上に大きなダメージを与えるリスクがあります。とくに中小企業は、対応リソースが限られていることが多く、事前の備えがあるかどうかで被害の大きさが変わってきます。

ここでは、風評被害を未然に防ぎ、万が一の際にも早期収束につなげるために、中小企業が実践すべき対策を4つ紹介します。

ネットリテラシーの向上と従業員教育

風評被害は、社員のSNS利用や発言から発生するケースが少なくありません。そのため、社内全体で「情報の正しさ」や「発信の影響力」に対する意識を育てることが重要です。

具体的には、定期的に研修やミーティングを行い、ネットでの注意点や企業としての情報管理ルールを周知徹底させましょう。従業員のリテラシーが高まることで、風評リスクの大部分を未然に防げます。

定期的なインターネットモニタリング

自社に関する情報がネット上でどのように語られているかを常に把握しておくことも、風評被害対策として効果的です。検索エンジンやSNS、口コミサイトなどを定期的にチェックし、ネガティブな投稿や誤情報が発信されていないかを確認しましょう。

モニタリングは手動でも行えますが、可能であれば専門のツールや外部サービスを活用することで、より効率的に監視体制を構築できます。早期発見が早期対応につながり、被害の拡大を防げます。

危機管理ガイドラインの整備

風評被害が発生した際に、社内で誰がどのように動くのかを明確にしておくことが大切です。そのために「危機管理ガイドライン」を事前に整備し、情報発信の手順や対外対応のルールを文書化しておきましょう。

たとえば、どのタイミングで公式声明を出すのか、法的対応を検討する基準は何かといった判断軸をあらかじめ決めておくことで、実際のトラブル時にも冷静に対応できます。

顧問弁護士との連携と法的対応準備

万が一の際に迅速かつ適切な対応を取るためには、法律の専門家である弁護士との連携が不可欠です。あらかじめ顧問契約を結んでおくことで、問題発生時にも慌てずに相談でき、適切な法的手続きを踏むことが可能です。

発信者情報開示請求や名誉毀損による損害賠償などの対応は、弁護士のサポートがなければ難しいケースが多いため、信頼できる専門家と連携しておくことが大きな安心材料となります。

まとめ

風評被害は、根拠のない噂や誤解から中小企業の信用や経営を脅かす深刻なリスクです。被害を防ぐには、事前の備えと正しい知識が不可欠です。

原因や事例を理解し、対処法と予防策を押さえておくことで、いざという時にも冷静に対応できます。日頃からの情報管理と社内教育を徹底し、風評被害を抑える企業体制を築きましょう。

関連記事

TOP