【中小企業向け】すぐできるセキュリティチェックとは?対策ステップ、成功のコツなど

「うちは中小企業だから、サイバー攻撃なんて関係ない」と思っていませんか?
実は、そうした油断こそが狙われる最大の理由です。
中小企業を狙ったサイバー攻撃や情報漏えい事件は年々増加しています。取引先企業からの「セキュリティチェックシート提出依頼」や「情報セキュリティ対策の説明要求」も当たり前になりつつある状況です。
本記事では、中小企業がいますぐ取り組めるセキュリティチェックの基本と対策の進め方を解説します。
またセキュリティを維持するうえで企業の「ガバナンス」は重要な要素です。以下の資料ではガバナンスを武器にして企業の成長につなげるための方法を解説していますので、中小企業の経営層、バックオフィス担当者の方はぜひご覧ください。
目次
中小企業にセキュリティチェックが必要な理由
中小企業だからといって、サイバー攻撃の標的にならないわけではありません。むしろ大企業に比べてセキュリティ対策が不十分なことが多く、「攻撃の入り口」として狙われやすい存在です。
例えば、ある取引先を直接攻撃できなくても、その下請け企業やパートナー企業を経由して内部に侵入する「サプライチェーン攻撃」は、実際に多くの被害を出しています。
さらに最近で注意したいのが、情報漏えいやウイルス感染が発生した際に、取引停止や損害賠償を求められるケースです。セキュリティ事故が経営リスクに直結する以上、企業規模に関係なく「最低限のセキュリティチェック体制」は必須といえます。
加えて、官公庁・自治体・大手企業との取引では、「情報セキュリティチェックシートの提出」や「自己点検報告」の提出を求められる機会が増えている状況です。形式的な提出書類で終わらせず、実際に自社の状態を把握・改善できるかが問われています。
参考記事:情報セキュリティの3要素とは?中小企業が気を付けるべきことも解説
「うちは大丈夫」じゃ危ない!こんな"隙"を狙われがち!
中小企業の「うちは関係ないと思っていた」という油断は危険です。特に、注意したい “小さな隙” を紹介しましょう。
ノートPCの持ち出し管理がずさん
営業担当や在宅勤務者がノートPCを持ち出す機会が増える中で、端末の盗難・紛失による情報漏えいリスクは大きな問題です。
管理台帳が整備されていない、暗号化されていない、ログインパスワードが弱い、などの状態では、外部に端末が渡った瞬間に情報が抜き取られる可能性があります。
また「退職者がPCを持ち帰ったまま連絡がつかない」「社外での使用ルールが曖昧」というケースも少なくありません。物理的なセキュリティ管理は、IT対策と同じくらい重要といえます。
ウイルス対策・暗号化・通信制御を見直せていない
「セキュリティソフトは昔入れたから大丈夫」と思っていても、定義ファイルが古いままだったり、有料ライセンスが切れていたりすることは危険です。
また、クラウドサービスやテレワーク環境では、通信の暗号化(VPN)やアクセス制御も不可欠ですが、導入していない企業も多く見られます。侵入されてからでは遅いため、これらの設定は「常に最新の状態に保つこと」を意識しましょう。
教育が行き届いておらず、ヒューマンエラーが発生する
どれだけシステムを強化しても、ヒューマンエラーによる情報漏えいが起こる点には注意が必要です。メールの誤送信、添付ファイルの誤公開、フィッシングメールへの対応ミスなどのヒューマンエラーは、中小企業の事故原因で最も多いといわれています。
特に新入社員やアルバイト、派遣社員などに対して、セキュリティ教育が形式的だったり、そもそも実施されていなかったりすることが多いのが実情です。技術だけでなく、人の意識と習慣の見直しをしましょう。
セキュリティチェックでは何を確認すべきか?
セキュリティ対策を講じるには、まず自社のどこにリスクが潜んでいるかを把握する必要があります。特に中小企業では、限られた人員や予算の中で、どこまで対策できているかを体系的に確認することが重要です。
次に、それぞれの観点から具体的にどのような点を確認すべきかを解説します。チェックシートを活用する際の視点としても役立ちますので、社内の現状と照らし合わせながらご覧ください。
社内体制(責任者・ルール・教育)の整備状況
セキュリティ対策の第一歩は、経営層の関与と明確な責任体制の確立です。情報セキュリティの責任者を明示し、従業員の役割や行動基準を示したセキュリティポリシーを整備することが求められます。
さらに、定期的な研修や教育を通じて、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持ち、自ら対策を実践できる状態を維持することが重要です。
参考記事:情報漏洩とは?企業の信頼を守るために知っておきたい基礎知識と対策
システム管理(アクセス制御・パスワード・端末)
日常的に利用するパソコンやネットワーク環境の設定・管理も、セキュリティチェックの要といえます。ID・パスワードの管理状況、不要なアクセス権限の有無、端末に対するウイルス対策ソフトの導入状況などを確認しましょう。
また、USBメモリなどの外部記憶媒体の使用制限、ソフトウェアのアップデート管理も見落とされがちなチェック項目です。
クラウド・SaaSの利用とリスク把握
近年では、ファイル共有サービスや業務管理ツールなど、クラウドサービスを活用する企業も増えています。これらのサービスの利用状況と、契約・設定内容の確認が必要です。
例えば「退職者のアカウントがそのままになっていないか」「アクセス制限が適切か」など、クラウド特有のリスクに備えた運用ができているかを点検しましょう。
外部委託(業務委託・ベンダー)のセキュリティ確認
システム開発や運用、業務代行などを外部に委託している場合は、委託先のセキュリティ対策も自社の責任範囲に含まれます。
「契約書で秘密保持や情報漏洩防止の取り決めがなされているか」「委託先の管理体制を把握しているか」「必要に応じて監査を実施しているか」などを確認しましょう。「任せきり」にしない姿勢が重要です。
参考記事:企業の個人情報保護の重要性を理解しよう! リスク、対策などを紹介
セキュリティは「チェックシート」を活用すべし!
中小企業にとって、セキュリティ対策は「何から着手すればよいか分からない」「専門家がいない」といった理由で後回しにされがちだといえます。
こうした状況を打開するツールとして有効なのが、IPA(情報処理推進機構)が提供する「サイバーセキュリティ対策チェックシート」です。
以下に概要を整理しました。
カテゴリ | 内容の要点 | 代表的なチェック項目 |
基本的対策 | 機器やソフトウェアの更新、ウイルス対策、パスワード管理など、まず押さえておきたい基本の対策 | ・OSやソフトウェアは最新か ・ウイルス対策ソフトは導入・更新されているか ・パスワードは強固か |
従業員としての対策 | 情報の取り扱い、端末の管理、物理的セキュリティなど、従業員の行動に関する項目 | ・メール添付ファイルの扱い ・無線LANの暗号化 ・外部記録メディアの対策 ・離席時のロック |
組織としての対策 | 契約、教育、外部サービス利用、セキュリティポリシーなど、組織全体の運用体制に関する項目 | ・従業員教育の実施 ・契約時の機密保持条項 ・クラウドサービスの利用確認 ・インシデント対応体制の整備 |
チェックは「実施している(4点)」「一部実施している(2点)」「未実施(0点)」「わからない(−1点)」で評価され、スコアによってリスクの把握と優先度設定ができます。
このシートを使うことで、自社のセキュリティ対策の「抜け・漏れ」に気づけるだけでなく、「何から対策すべきか」の判断材料を発見できることが特徴です。まずはこのような診断ツールを活用し、全体像を把握するところから始めましょう。
まずは現状把握から!セキュリティチェックの始め方
自社のセキュリティ対策に「どこか抜けや甘さがあるのでは?」と感じていても、具体的に何から手をつければいいかわからないことも多いはずです。
そんなときは、段階を追ってチェックしていくのが効果的です。以下のようなステップで進めると、社内全体の状況が明確になり、改善の方向性も見えてきます。
以下に具体的なステップを整理しました。
ステップ1|無料のチェックリストを入手する
まずは、IPA(情報処理推進機構)などの公的機関が提供している「情報セキュリティチェックシート」など、信頼性のある無料ツールを入手しましょう。中小企業向けに設計されており、専門知識がなくても自己診断が可能です。
ステップ2|社内のIT管理状況を洗い出す
次に、自社で使っているIT機器やクラウドサービス、外部委託している業務、社員教育の実施状況などを整理します。誰が何を管理しているのか、どこまでルールが整備されているのかを棚卸しすることが重要です。
ステップ3|チェックシートに沿って自己診断する
洗い出した内容をもとに、チェックシートの各項目に回答していきましょう。セキュリティ体制を「実施している」「一部実施」「未実施」「わからない」の4段階で評価するだけなので、気軽に始められます。
ステップ4|対策の優先順位をつける
チェック結果から、自社にとって優先的に対応すべき項目を整理しましょう。
例えば「パスワードが弱い」「ウイルス対策ソフトが未導入」など、今すぐ対応できる基本対策から取りかかるのが理想です。人的リスクや情報漏洩の懸念が高い箇所は、特に優先度を上げて対応しましょう。
ステップ5|提出先・取引先に対応状況を伝える
近年では、取引先からセキュリティ対策の確認を求められるケースも増えています。
チェックシートの結果や、今後の対策方針を資料化しておくことで、信頼獲得にもつながるのが特徴です。場合によっては、改善の取り組み自体が取引継続の条件になることもあるため、見える化は非常に重要だといえます。
セキュリティ対策の優先順位と進め方のヒント
セキュリティ対策は「すべて一気に」やろうとするとコストも労力もかかり、かえって停滞しがちです。重要なのは、緊急性と実行のしやすさを軸にして、優先順位をつけて取り組むことといえます。
以下では優先順位のつけ方をはじめ、進め方のヒントを整理しました。
すぐにできる“初級”対策を先に潰す
まずは、コストをかけずに実行できる基本的な対策から着手しましょう。
例えば、複数人で同じアカウントを使い回す「共有アカウント」を廃止し、ユーザーごとのID・パスワードを設定するだけでも、情報漏えいのリスクは大きく下がります。また、パスワードの定期変更や画面ロックの徹底なども、すぐにルール化・実施できるポイントです。
こうした“初級対策”は、ITの専門知識がなくても対応可能であり、セキュリティの「最低ライン」を引き上げる効果があります。業務に支障の出にくい範囲から始めることで、社内の理解と協力も得やすいことが魅力です。
中長期では“仕組み化”と“再点検”がカギ
情報セキュリティは「一度やれば終わり」ではありません。中長期的には、仕組みとして定着させることが求められます。
例えば、セキュリティ教育を年1回の定例研修に組み込む、アクセス権限の棚卸しを半期に1回行う、などの運用ルールを整備しましょう。
また、導入した対策が形骸化していないかを定期的に見直す「再点検」も不可欠です。チェックシートによる自己診断を年1回実施することで、気づかぬうちに発生した“隙”を早期に発見できます。
社内報告やマニュアル更新のタイミングに合わせて再確認する仕組みをつくると、持続的に効果を発揮するセキュリティ体制が整っていきます。
セキュリティチェックを「1回きり」で終わらせないためのコツ
セキュリティ対策は、一度実施したら終わりというものではありません。外部環境の変化や新たな脅威の出現に対応するためには、継続的な見直しと改善が必要です。
そのためには、定期的にチェックを繰り返し、仕組みとして組み込んでいくことが重要です。
更新頻度の決定と、年1回以上の再チェック
情報セキュリティのチェック項目やリスクは、時間の経過とともに変化します。そのため、チェックシートは定期的に見直し、少なくとも年1回は再チェックを実施しましょう。
例えば、事業計画の見直し時期や決算後など、会社の区切りに合わせて再実施することで、継続的な運用がしやすくなります。
社内報告・マニュアル更新・社員教育に連動させる
チェック結果は経営層や管理職だけでなく、全社員が関心を持つべき情報です。
そのため、結果を社内報告に活用し、必要に応じて業務マニュアルの更新や、社員向けセキュリティ教育と連動させるのが効果的だといえます。こうした情報共有を通じて、社内全体のセキュリティ意識を高めることが可能です。
「継続的な仕組み」として運用していく視点
一過性のイベントではなく、「業務プロセスの一部」としてセキュリティチェックを定着させることが、企業の持続的な成長とリスク軽減につながります。
例えば、新しいシステムの導入時や、委託先の選定時にチェックシートを活用するなど、具体的な業務フローに組み込んでいくことで、無理なく継続可能な仕組みに育てることが可能です。
このような体制を築くことで、セキュリティ対策が形骸化せず、実効性のある運用ができます。
まとめ
中小企業にとっても、セキュリティ対策は「備えあれば憂いなし」の最重要課題です。「自社は狙われることはないだろう」と油断していると、ノートPCの持ち出し管理の甘さや社員教育の不足といった小さな“隙”を突かれて、重大な情報漏洩につながることがあります。
まずは「社内体制」「システム管理」「クラウド・SaaSの利用」「外部委託先」の4つの観点で現状のセキュリティをチェックし、弱点を洗い出すことが第一歩です。
セキュリティ対策は難しいものではありません。まずは「現状を知る」ことから始めれば、少しずつでも確実に強化していけます。
自社と取引先、社員と顧客の安心を守るために、今日からセキュリティチェックの取り組みをスタートさせましょう。
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