まだ後回し?中小企業の成長を支えるITインフラの教科書|課題解決の具体例も紹介

「ITインフラ」と聞いて、中小企業経営者の皆様は「大企業がやること」と考えていませんか?しかし、インターネットやクラウドサービスが当たり前になった今、ITインフラは企業の規模に関わらず、ビジネスの根幹を支える重要な要素です。

安定したITインフラは、業務の効率化や生産性向上、多様な働き方の実現に不可欠であり、企業の成長に直結するのです。

この記事では、中小企業が抱えがちなITインフラの課題を明らかにし、その解決策を具体的にご紹介します。

また、ITインフラの脆弱性は、情報漏洩という重大なリスクにもつながります。その原因と対策をさらに詳しく知りたい方は、ぜひ以下の資料をダウンロードしてご活用ください。

情報漏洩はなぜ起こる?原因から学ぶ対策マニュアル

ITインフラとは?

ITインフラとは、ITサービスやシステムを動かすために必要な「ITの基盤」で、事業活動に欠かせないIT関連の設備や環境を総称します。安定したITインフラは、業務効率化や生産性向上に不可欠です。

ITインフラの具体例は?

ITインフラは、大まかにハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの3つに分けられます。それぞれ以下のようなものが含まれます。

カテゴリ具体例説明
ハードウェアサーバデータやWebサイトを保管・提供するコンピュータ
PC、スマホ業務で利用する端末
ネットワーク機器ルーター、ハブ、ファイアウォールなど
ソフトウェアOSWindows、macOSなどの基本ソフトウェア
仮想化ソフトウェアサーバなどを仮想的に利用可能にするもの
業務システム会計ソフト、顧客管理システム(CRM)など
ネットワーク社内ネットワークLAN(Local Area Network)など
インターネット回線外部と接続するための通信回線

ビジネスの土台となるITインフラストラクチャ

ビジネスにおけるITインフラは、企業の成長を支える土台のようなものです。たとえば、新しいWebサービスを立ち上げるには、まずサーバやネットワークといったITインフラを整備する必要があります。

顧客管理システムを導入して業務効率を上げたい場合も、システムが動くためのOSや通信環境が不可欠です。

また、ITインフラが不安定だと、システム障害や情報漏えいといったリスクに直面し、事業活動が停止する恐れもあります。

中小企業が安定した事業運営と生産性の向上を目指すには、この土台をしっかりと築くことが重要です。適切なIT投資は、一時的なコストではなく、将来的な競争力や企業価値を高めるための先行投資と言えます。

今さら聞けない「通信インフラ」と「ITインフラ」の違い

通信インフラはITインフラの一部です。ITインフラはより広範な概念を指します。

通信インフラITインフラ
概要通信を可能にする設備や環境ITサービスを動かすためのすべての基盤
含まれるもの・インターネット回線
・ルーター、ハブなどの通信機器
・通信インフラ
・サーバ、PCなどのハードウェア
・OS、アプリケーションなどのソフトウェア
役割データや情報のやり取りを可能にするITサービス全体を支え、運用を可能にする

なぜ今、中小企業にこそITインフラの強化が重要なのか?

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速と情報量の爆発的な増加にともない、事業継続性や競争力強化のためには、強靭で信頼性の高いITインフラを構築することが不可欠です。

参考)総務省「データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について」

メリット1:業務効率化と生産性の向上

AIやメタバースといったデジタル技術の普及により、インターネットのトラフィックは爆発的に増加すると試算されています。

このようなデジタル社会の進展に対応するためには、強固なITインフラが必要です。ITインフラを整備することで、データの円滑なやり取りが可能になり、業務の自動化や効率化が進むため、生産性の向上に直結するのです。

メリット2:セキュリティリスクの軽減と事業継続性の確保

データは「21世紀の石油」と言われ、拠点を国内に置くことは国の競争力に直結します。また、政府や自治体が保有する機密情報や個人情報の適切な管理は、経済安全保障の観点からも不可欠とされています。

強靭なITインフラを構築することは、サイバー攻撃や自然災害時の事業継続性を確保する上で非常に重要です。

メリット3:多様な働き方(テレワークなど)への対応

「デジタル田園都市国家構想」の実現には、光ファイバや5G、データセンターといったデジタル基盤の整備が不可欠とされています。

これらの基盤を整備することで、場所に縛られない多様な働き方(テレワークなど)に対応できる環境が整い、地方のデジタル実装も加速します。

これにより、従業員の働き方の選択肢が広がり、生産性の向上にもつながるのです。

放置は危険!ITインフラが脆弱な場合に起こりうること

ITインフラが都市部に集中しているため、大規模災害時には全国のインターネット接続に以下のようなリスクが生じます。

  • 事業停止のリスク
    都市部での災害発生時に、トラフィックが集中してインターネット接続に支障をきたし、業務が停止する可能性

  • データ損失・情報漏えい
    サーバやネットワーク機器の不備により、重要なデータが失われたり、情報が外部に流出したりする危険性

  • 復旧の遅れ
    災害時にバックアップが遠隔地にない場合、サービスの復旧に時間がかかり、事業活動が長期にわたり停止する恐れ

強靭なITインフラは、予期せぬ事態から事業を守るための生命線となります。

あなたの会社は大丈夫?中小企業が抱えがちなITインフラの課題

多くの中小企業がITインフラの課題に直面しています。これらを放置すると、業務効率の低下やセキュリティリスクの増大につながります。自社のITインフラを点検し、適切な対策を講じることが重要です。

参考)総務省「データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について」

専任の担当者がいない・情報システム部門がない

多くの中小企業では、ITインフラの管理をおこなう特定の担当者や部署がない現状があります。

ITの専門知識を持たない従業員が兼任で対応しているケースも多く、トラブル発生時の迅速な対応が難しくなります。また、IT戦略の立案や計画的な投資が行われず、場当たり的な対応になりがちです。

機器の老朽化と複雑化

導入から数年が経過した古いサーバやパソコンは、処理速度の低下や故障のリスクが高まります。

さらに、業務の拡大にあわせてシステムを追加導入した結果、インフラ全体が複雑化し、管理が困難になることがあります。これにより、トラブルの原因特定に時間がかかり、復旧が遅れるといった問題が発生するのです。

セキュリティ対策が不十分

サイバー攻撃は企業規模に関わらず脅威となっていますが、中小企業ではセキュリティ対策が後回しにされがちです。

ウイルス対策ソフトの未導入や、従業員のリテラシー不足による情報漏えいなど、多くのリスクを抱えています。これらの脆弱性は、事業の信頼性を大きく損なう可能性があります。

コスト不足などによる外部委託の難しさ

ITインフラの専門知識や人員が社内に不足している場合、外部の専門家やサービスに委託することが有効な手段です。

しかし、専門業者への委託はコストがかさむため、予算が限られている中小企業にとっては導入ハードルが高い現状があります。結果として、課題を抱えたまま、ITインフラ強化が進まない中小企業が少なくありません。

参考記事:情報セキュリティの3要素とは?中小企業が気を付けるべきことも解説

ITインフラの整備・運用はどう進める?

ITインフラの整備は、まず現状の課題分析と将来の事業計画に基づいた目標設定から始めます。次に、目標達成に最適なシステムを設計・構築し、導入後は安定稼働のための監視や保守といった運用を行います。

専門知識が必要なため、ITインフラエンジニアのような専門家への相談や、外部サービスの活用が成功への近道です。

参考)総務省「「質の高い ICT インフラ」投資の指針」

ITインフラエンジニアとはどんな専門家?

ITインフラエンジニアは、企業活動の根幹を支えるIT基盤(インフラ)の設計、構築、運用、保守を専門とする技術者です。

具体的には、以下の幅広い領域を担当します。

  • パソコンやサーバといったハードウェアの選定・設定
  • インターネットや社内ネットワークの構築
  • データ保管に必要なストレージの管理

近年のビジネスに不可欠な安定したIT環境を維持し、セキュリティの脅威から情報を守る縁の下の力持ちとも言える存在です。

社内に専門家を置くのが難しい中小企業では、こうした専門知識を持つ外部のパートナー企業に委託するケースも増えています。

中小企業におけるITインフラの選択肢

中小企業がITインフラを導入・刷新する際の主な選択肢には、自社でサーバなどを保有する「オンプレミス」と、インターネット経由でサービスを利用する「クラウド」があります。

それぞれにメリット・デメリットがあり、自社の状況にあわせた選択が重要です。近年は、両方を組み合わせた「ハイブリッドクラウド」という形態も増えています。

特徴オンプレミスクラウドハイブリッドクラウド
コスト【初期費用】 高い
【運用費用】 自社負担(人件費、電気代など)
【初期費用】 低い
【運用費用】 利用量に応じた従量課金制
【初期費用】 両方の費用がかかる
【運用費用】 最適化すれば抑制可能
カスタマイズ性高い
自社の業務にあわせて自由に設計・構築できる
限定的
提供事業者のサービス範囲内での利用となる
高い
オンプレミスで独自性を保ちつつ、クラウドのサービスも活用できる
セキュリティ自社でコントロール
閉じたネットワーク内で運用でき、ポリシーを自由に設定可能
事業者に依存
事業者が高度なセキュリティを提供するが、インターネット経由のリスクは残る
柔軟な設計が可能
機密情報はオンプレミス、公開情報はクラウドなど、使い分けでセキュリティを強化できる
運用・管理自社ですべて対応
専門知識を持つ人材が必要
事業者が対応
サーバの保守やアップデートは事業者が行い、自社の負担は少ない
複雑になりやすい
オンプレミスとクラウド、両方の管理が必要になり、運用が複雑化しがち

中小企業がITインフラ整備に使える補助金

ITインフラの整備には、サーバやパソコンの購入、ネットワークの構築、クラウドサービスの利用など、まとまったコストがかかります。そこで、中小企業の力強い味方となるのが、国や自治体が提供する補助金制度です。

これらの制度は毎年内容や要件が変わりますが、賢く活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減し、企業の成長を加速させることが可能になります。

各補助金は年度ごとに募集期間や要件が設定されるため、最新の情報を公式サイトで確認することが重要です。

まとめ

この記事では、中小企業におけるITインフラの重要性から、直面しがちな課題、そして具体的な整備・運用方法までを解説しました。

ITインフラは、単なる「便利な道具」ではなく、業務効率化、セキュリティ強化、そして多様な働き方を支える「ビジネスの土台」です。

この土台が脆弱なままだと、事業の成長が阻害されるだけでなく、情報漏洩や事業停止といった深刻なリスクにさらされてしまいます。

ITインフラの整備は、決して難しいことではありません。ITインフラへの適切な投資は、未来の企業価値を高めるための確実な一歩となるのです。

情報漏洩はなぜ起こる?原因から学ぶ対策マニュアル


関連記事

TOP