中小企業のセキュリティ強化完全ガイド|今すぐ見直すべき対策とは
「うちは中小企業だから狙われない」そう思っていませんか?しかし、サイバー攻撃は企業の規模を問いません。むしろ、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業こそ、今や格好のターゲットです。
一度でも情報漏えいやシステム停止が起これば、顧客の信頼失墜、取引停止、多額の損害賠償など、経営の根幹を揺るがす事態になりかねません。
この記事では、中小企業向けに、自社の「セキュリティ強化」のために今すぐ見直すべき対策を徹底解説します。
「専門用語が多くてわからない」「どこから手をつければいいか不明」といったお悩みにも応え、具体的なステップや低コストで実現できるツール活用術まで、わかりやすくご紹介します。
セキュリティ対策の第一歩は、実際に起きた事故の「リアル」を知ることです。実際の個人情報漏えい事故の事例と、そこから学ぶべき具体的な予防策をまとめた資料をご用意しました。ぜひダウンロードして、貴社の体制見直しにお役立てください。
目次
そもそもなぜ今セキュリティ強化が必要なのか
今、サイバー攻撃は巧妙化し、大企業だけでなく中小企業も標的です。DX推進やテレワークの普及で、守るべき範囲も拡大する中、万が一、情報漏洩やランサムウェア被害に遭えば、事業停止や信用の失墜など、経営に深刻な打撃を与えます。
だからこそ「今」、自社のセキュリティ強化が急務なのです。
セキュリティ強化とは?言いかえるなら?
セキュリティ強化とは、簡単に言えば「会社の情報資産を守る力を高めること」です。デジタル時代の「総合的な防犯対策」と言いかえてもよいでしょう。
顧客情報や技術ノウハウといった大切な資産を、サイバー攻撃や内部不正による漏洩、盗難、改ざんといったさまざまな脅威から守るための取り組み全体を指します。
具体的な対策
- 技術的対策:ウイルス対策ソフトやファイアウォール
- 人的対策:社員のセキュリティ意識を高める教育やルール策定
- 物理的対策:オフィスの入退室管理などの物理的対策
これら複数の対策をバランス良く組み合わせ、弱点をなくしていくことが重要です。単なるIT担当者の仕事ではなく、会社全体で取り組むべき経営課題と言えます。
大企業と中小企業ではセキュリティ強化のポイントは違う
セキュリティ強化の必要性は同じでも、かけられるリソース(ヒト・モノ・カネ)が異なります。大企業のように専任の部署を置き、高額なシステムを何重にも導入するのは、多くの中小企業にとって現実的ではありません。
中小企業は、限られた予算と人員の中で、効果的な対策を選ぶ賢い選択が求められます。自社にとって本当に守るべきものは何かを見極め、優先順位をつけて取り組むことが成功の鍵です。
| 比較ポイント | 大企業 | 中小企業 |
| 担当体制 | セキュリティ専任部署・担当者がいる | ほかの業務と兼任 |
| 予算 | 比較的潤沢で多層的な防御が可能 | 限られているため、コストパフォーマンス重視 |
| 導入ツール | 高機能・高額な統合システム | 低コストなツール、クラウドサービスの活用 |
| 重視する点 | ・完璧な防御 ・法令遵守の徹底 | ・事業継続 ・現実的なリスク対策 ・運用のしやすさ |
被害の入り口はここだ!メールとスマホのセキュリティ強化策
サイバー攻撃の多くは、私たちが日常的に使うツールを入り口にします。とくに「メール」と「スマートフォン」は、外部からの脅威が忍び込む最大の窓口です。
ここでは、この2つの身近なツールのセキュリティ強化策について、今すぐ確認すべきポイントを解説します。
メールのセキュリティ強化
業務に欠かせないメールは、ウイルス感染やフィッシング詐欺の主な侵入経路です。まず、従業員全員で怪しいメールを開かないようにします。
絶対に開かないようにすべきメール
- 見知らぬ送信元
- 不自然な日本語
- 緊急性を煽る件名
これらのメールにある添付ファイルやURLは、絶対にクリックしてはいけません。
また、メールを送る側の対策も重要です。お客様への一斉送信時に宛先(To/CC)を間違えれば、それだけで個人情報が漏れます。複数人への送信は「BCC」を徹底します。
迷惑メールフィルターの強化やウイルス対策ソフトの導入も検討し、二重三重の防御をすると安心です。
スマホのセキュリティ強化
今や仕事に欠かせないスマートフォンも、セキュリティ強化の重要な対象です。注意すべきは紛失・盗難です。
必ずパスコード、指紋認証などの画面ロックを設定し、万が一なくした際も遠隔でデータを探索または消去できる機能をオンにしておきましょう。
次に注意すべきは、不正なアプリです。アプリは必ず公式ストアから入手し、インストール時に連絡先や位置情報など、不必要な情報へのアクセスを求めてこないか確認します。
また、外出先で鍵マークのついていない無料Wi-Fiに安易に接続すると、通信内容を盗み見られる危険があるため、重要な情報のやり取りは避けるか、安全な接続手段を使うようにします。
低コストで実現!中小企業を助けるセキュリティ強化アプリとツール活用術
低コストで、あるいは今あるツールを見直すだけでも、セキュリティは大幅に強化できます。ここでは、中小企業の強い味方となる管理ツールや、見落としがちな設定のポイントをご紹介します。
スマホ・PC管理に必須のMDM、EDRとは?
- MDM(Mobile Device Management)
会社が従業員に貸しているスマホやPCを、まとめて管理・監視するためのツールです。万が一スマホを紛失した際に遠隔でロックしたり、危険なアプリのインストールを禁止したりでき、管理の手間を大幅に減らせます。 - EDR(Endpoint Detection and Response)
従来のウイルスが入るのを防ぐ対策ソフトとは異なり、万が一ウイルスが入ってしまった後に、それをいち早く見つけて対処するためのツールです。
どちらも、専門家がいなくてもセキュリティ強化を実現できる、中小企業にとって心強い味方です。
参考記事:EDRとは?中小企業のセキュリティを強化する次世代対策をわかりやすく解説
見落としがちな既存アプリのセキュリティ設定
新しいツールを導入しなくても、今使っているツールの設定を見直すだけで、セキュリティは格段に向上します。
例えば、データをネット上に保存するクラウドストレージの共有設定が、「リンクを知っている全員」になっていると、関係者以外にも情報が漏れる危険があります。必ず「特定のメンバーのみ」に限定しなければなりません。
Web会議ツールでも、会議室にパスワードを設定したり、待機室の機能を使ったりすることで、部外者の侵入を防げます。
また、PCやスマホ、アプリのアップデート(更新)通知は、セキュリティの弱点を修正するために配布されています。必ず最新の状態を保つ必要があるのです。
パスワード管理アプリの導入で使い回しを撲滅
パスワードの使い回しは、セキュリティ上もっとも危険な行為の一つです。一つのサービスでパスワードが漏れた場合、ほかのすべてのサービスに不正アクセスされてしまう芋づる式の被害に遭う可能性があります。
そこでおすすめしたいのが、すべてのパスワードを暗号化して「安全な金庫」に保管してくれるアプリです。その金庫を開けるためのマスターパスワード一つだけ覚えればよいのです。
アプリがサービスごとに強力なパスワードを自動で作成・保存してくれるため、使い回しを完全になくせます。低コストで導入できるものも多く、セキュリティ強化の効果は絶大です。
中小企業セキュリティ強化のステップ
ここでは、中小企業が限られたリソースの中で、着実にセキュリティ強化を進めるための「5つのステップ」を、具体的な行動レベルで解説します。
自社の弱点と守るべき情報を洗い出す
対策の第一歩は現状把握です。まずは、自社にどのような守るべき情報があり、それがどこに、誰が管理して保存されているかを洗い出しましょう。これが明確でないと、的外れな対策にお金と時間を使ってしまいます。
同時に、自社の弱点はどこにあるかを考えます。難しく考える必要はありません。従業員目線で危ないかもと思うことをリストアップしてみるのです。
【守るべき情報の例】
- 顧客リスト、仕入先リスト
- 売上データ、経理情報
- 従業員のマイナンバーなど個人情報
- 技術ノウハウ、新商品の企画書
【弱点の例】
- 退職者のアカウントが残ったままになっている
- 個人のスマホで会社のメールを見ている
- 重要なデータが入ったUSBメモリを誰でも持ち出せる
限られたリソースで何から手をつけるか決める
洗い出したすべての弱点に一度に対応するのは不可能です。限られた予算と人員の中で大きな効果を出すために、優先順位をつけます。
- 優先順位の基準例1
- もし被害が起きた時の影響の大きさ
- その被害の起こりやすさ
- 優先順位の基準例2
- コストや時間がかからないすぐにできる対策
- 時間や予算が必要な中長期的な対策
【対策の優先順位付けの例】
- 最優先(すぐ):パスワードの使い回し禁止、退職者アカウントの即時削除
- 優先度高(計画的):ウイルス対策ソフトの導入、重要データのバックアップ
- 優先度中(将来的):社員向けセキュリティ教育の実施、管理ツールの導入
簡単なルール策定とツールの導入
優先順位が決まったら、具体的な対策としてルール作りとツールの導入を進めます。
ルール作りで大切なのは、厳しすぎたり複雑すぎたりしないことです。守れなければ意味がありません。最低限守ろうというシンプルなルールから始め、そのルールは必ず全従業員に周知徹底します。
ツールは、そのルールを守るための仕組みとして導入します。例えば「パスワード管理ツール」を導入し、ルールを守らざるを得ない仕組みを作るのです。
【シンプルなルールの例】
- PCやスマホから離れる時は必ず画面ロックする
- 会社支給以外のPC・スマホを業務で使わない
- 怪しいメールの添付ファイルは開かず、迷ったら担当者に相談する
- フリーWi-Fiで重要な通信はしない
全従業員のセキュリティ意識を高める
どれだけ高価なツールを導入しても、それを使う人の意識が低ければ、セキュリティ強化は失敗します。ちょっとした不注意や自分だけなら大丈夫という油断が、大きな事故につながるからです。
とくに中小企業では、経営者自身がセキュリティを重要な経営課題ととらえ、全社に発信し続けることが重要です。
ルールを作って終わりではなく、なぜそのルールが必要なのかを粘り強く伝え続ける必要があります。
【意識向上のための施策例】
- 入社時および年1回のセキュリティ研修の実施
- 実際に届いた不審メールの事例を全社で共有
- セキュリティに関する簡単な小テストをおこなう
- 相談窓口や担当者を明確にし、気軽に質問できる雰囲気を作る
定期的なチェックとアップデート
セキュリティ対策は一度やったらおしまいではありません。攻撃の手口は日々新しくなっており、作ったルールも時間とともに忘れ去られてしまいます。
大切なのは、定期的に見直し(チェック)と更新(アップデート)をおこなうことです。決めたルールがきちんと守られているか、導入したツールは最新の状態になっているか、などを定期的に確認する場を設けます。
この見直しのサイクルを社内に定着させることが、継続的なセキュリティ強化につながるのです。
【定期チェックリストの例】
- 全PC・スマホのOSやソフトは最新版になっているか?
- ウイルス対策ソフトの期限は切れていないか?
- バックアップは正常に取れているか?
- 退職者のアカウントは削除されているか?
参考記事:中小企業のためのゼロトラストセキュリティとは?意味やモデルをわかりやすく解説
いざという時の「インシデント対応フロー」も決めておく
どれだけ対策をしていても、100%事故を防ぐことはできません。中小企業でも「万が一、情報漏えいなどのインシデントが起きた場合の流れ」を、あらかじめ簡単に決めておくことが重要です。
【インシデント発生時の基本フロー例】
- 検知・発見:不審なアクセス、紛失、誤送信などに気づいた社員が、すぐに上長・担当者へ報告する
- 被害拡大の防止:問題のある端末をネットワークから切り離す、関連するパスワードを変更する など
- 社内報告・体制立ち上げ:経営者・情報管理担当者が状況を把握し、対応方針を決定する
- 社外対応の検討:必要に応じて、取引先・顧客・関係当局への連絡や公表方法を検討する
- 原因分析と再発防止策の検討:ルールや設定の見直し、教育内容の改善などにつなげる
事前に「誰が責任者になるのか」「どこまでの案件を経営層にエスカレーションするのか」を簡単に決めておくだけでも、いざという時の混乱を大きく減らせます。
中小企業向け情報セキュリティ対策はIPAを参考に
「自社だけで対策を考えるのは不安だ」という経営者・担当者の方も多いでしょう。そのような時は、信頼できる公的な情報を参考にするのが一番です。
とくにおすすめなのが、IPA(情報処理推進機構)という国の機関が公開している「中小企業向け情報セキュリティ対策」のページです。
ここには、中小企業が最低限取り組むべき対策を示したガイドラインや、自社のセキュリティレベルを簡単にチェックできる「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」など、すぐに役立つ資料が無料で公開されています。
専門用語が少なくわかりやすいため、まず何から手をつけるべきかを知るための最初の羅針盤となるはずです。
まとめ
中小企業のセキュリティ強化は、難しいシステムを導入することではありません。会社の情報と信用を守るための、身近なルール作りと仕組み作りです。
「うちは大丈夫」という油断は危険です。メールやスマホといった日常のツールから脅威は忍び寄ります。
完璧な対策を目指す必要はありません。まずは自社の弱点を洗い出し、今すぐできることから始めてみましょう。
セキュリティ強化は、IT担当者任せではなく、経営者が主導となって全社で取り組むべき重要な経営課題なのです。
関連記事
-
ウォーターフォール開発とは?メリット・デメリットやアジャイル開発との違い
ウォーターフォール開発にはいくつものメリットがある一方で、デメリットも存在し、時に「時代遅れの手法である」と言われることもあります。そこでこの記事では、ウォーターフォール開発がどのような手法であるかについてや、ウォーターフォールを採用するメリット・デメリット、時代遅れと言われてしまう理由などについて詳しく解説します。
-
ISMS認証とは?中小企業が取り組むべきセキュリティ対策をわかりやすく解説
サイバー攻撃や情報漏えいのニュースが後を絶たない現在、企業のセキュリティ対策はもはや“あって当たり前”の時代です。特に中小企業においては、限られたリソースのなかでも信頼性を示す手段として「ISMS認証(情報セキュリティマネジメントシステム)」が注目されています。
とはいえ、「ISMSってそもそも何?」「PマークやISO27001との違いは?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。また、認証を取得するメリットや、導入に必要なステップがわからず、対策が後回しになっている企業も少なくありません。
この記事では、ISMSの基本から認証取得の流れ、中小企業にとっての導入メリット、さらにその先の最新セキュリティ対策までをやさしく解説します。
-
ワンタイムパスワード(OTP)とは?基本や仕組み、導入トラブルを解説
業務システムやクラウドサービスの利用が一般化し、社外からのアクセスなどが当たり前となった今、企業には高度なセキュリティ対策が求められています。特に、ログイン時の本人確認を強化する手段として注目されているのが「ワンタイムパスワード(OTP)」です。
この記事では、ワンタイムパスワードの基本や仕組み、企業での導入メリット、そして現場で起こりがちなトラブルとその回避策までをわかりやすく解説します。
またワンタイムパスワードの設定は「個人情報漏えいの防止」にもつながる施策です。以下の無料の資料では中小企業の経営層、情報システム担当の方向けに漏えい事故の対策マニュアルを紹介していますので、参考にしてみてください。
-
【566社の企業が回答】情報漏洩リスクに対する懸念点やルール整備の実態は?
ISOおよびプライバシーマーク認証支援の専門企業である株式会社スリーエーコンサルティング(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役:竹嶋 寛人)では「情報漏洩対策として実施している取り組み」「社内の情報漏洩リスクに関するルール整備状況」などを把握するべく、566社に対して従業員の退職に関する様々なアンケートを実施しました。
回答者の多くは総務・労務・法務を担当する 中小企業の管理部門の方々です。
本記事では、その調査の “概要” をまとめています。
調査の詳細な分析・課題・改善策は 下部よりダウンロードできるレポートに掲載していますので、ぜひご活用ください。
-
【無料の方法も】業務用スマホのウイルスチェック完全ガイド!症状、対処法も紹介
業務でスマートフォンを活用する中小企業が増える一方で、そのセキュリティ対策は後回しになりがちです。「パソコンのほうが危ないでしょ?」と油断していると、ある日突然深刻な被害につながる恐れがあります。
特に中小企業では、個人用スマホと業務用スマホの境界が曖昧になりがちで、ウイルス感染が社内全体に広がるリスクも否定できません。
この記事では、業務用スマホのウイルス感染がもたらすリスクや、感染の兆候、無料チェック方法、感染時の対処フローまでを網羅的に解説します。
また以下の記事ではスマホのウイルスとも関係が深い、情報漏洩に対するマニュアルを紹介していますので、経営層や情報システムの担当者はぜひ無料でダウンロードしてください。

マモリノジダイとは
会員登録







