【2025年総括】マモリノジダイ編集部が選ぶ 今年のバックオフィスの重要10大トピック 法改正、採用難、サイバー攻撃……人事・労務・法務・情シスが直面したリスクと生存戦略

2025年も、残すところあとわずか。バックオフィス担当者の方々の師走の仕事といえば、年末調整、賞与計算。保管期限が過ぎた文書の廃棄や、データのバックアップは無事に済んだだろうか? 
さて、本記事では今年に起きた重要ニュースを10のトピックに整理し、各部門の担当者が2026年に向けて取り組むべき実務上の対策をニュースの背景とあわせてまとめていく。

すべての中小企業の「守備力」向上のヒントを考えつつ、今年を締めくくろう。

1. 労働基準法「40年ぶり」大改正が発表

毎日新聞 経済プレミア 雇用される立場で働いた経験がない政治家の考えでは?

本年最大のトピックは、約40年ぶりとなる労働基準法の改正案の発表である。1987年以来の大規模改正となり、「14日以上の連続勤務禁止」や「法定休日の特定義務化」など、長時間労働是正に向けた規制強化が打ち出された。

背景には、過労死やメンタルヘルス不調が依然として高止まりしている社会問題がある。

これまで36協定さえ結べば、ある程度柔軟に運用可能であった状況にメスが入り、企業の労務管理は根本的な見直しを迫られている。

これは単に法令遵守という次元の話ではない。従業員という企業にとって最重要の「資産」を使い潰さないための、国家レベルでの安全管理措置の強化と捉えたい。

これに伴い、企業経営者や管理部にとって急務となるのが勤怠管理機能のアップデートだ。「繁忙期だから連日残業も仕方ない」「人手が足りないからいまは休めない」という言い訳が通用しなくなる時代に向け、これまで以上に業務配分と要員計画の精緻化できた企業こそが、ブランド力・採用力・競争力を得るだろう。

その実現を助けるのが、業種・規模を問わず活用が進むHRツールだ。—— では、何を選び・どう使えば良いのか? マモリノジダイでは、2026年は記事やセミナーを通して多種多様なHRツールの解説と紹介に注力していく。ぜひご期待いただきたい。

2. バックオフィスの生成AI活用 “6割超” 2026年はどうなる?

日本の人事部 【労働経済白書】2024年版(令和6年版)のポイントを解説 ―人手不足への対応や「三位一体の労働市場改革」の進捗など

2025年は、まさに毎月のようにAI関連サービスの発表が立て続いた年だった。生成AIの導入・活用は企業の「攻め/守り」双方に欠かせない施策となっている。議事録、求人票、スカウト文面、社内規定のQ&Aボット……。バックオフィス分野ももちろん例外ではない。

HRメディアの「日本の人事部」は、6,139社、6,285名の「人事部門担当者」を対象に大規模調査を行い、66.5%が何らかの業務で生成AIを利用していると報じた(『人事白書調査レポート2025』 ※2025年6月発表)。

一方で、同メディアの別調査では「AI人材の育成を行っていない」企業は4割に及ぶ。(出典:https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/3904/ ※2025年10月発表)2026年は、すべての社員が、同じようにAIを使える職場づくりがテーマになるのではないだろうか。

そのためにバックオフィス担当者が果たす役割は大きい。部門全体で共有できるプロンプトリストや、ナレッジの平準化といったAIオペレーションそのものの管理業務に取り組む年になりそうだ。

3. 「リファラル」「アルムナイ」「ペルソナ」……採用手法は超・多様化時代へ

矢野経済研究所 プレスリリース リファラル採用・アルムナイ採用支援サービス市場に関する調査を実施(2025年)

経営における最重要課題のひとつとなって久しい「採用」

労働力を新卒/中途の正社員のみに頼る時代は終わり、業務委託、パートタイム、スポットワーク(スキマバイト)から海外人材活用まで、働き手のダイバーシティが進む。

採用手法においても、求人媒体や採用SNSばかりではない。友人・知人を自社にスカウトする「リファラル採用」、退職した元社員にアプローチし再雇用する「アルムナイ採用」。MBTI(性格診断)の要素を求人広告に取り入れスカウトメールをさらに細分化した「ペルソナ採用」など、多様化が止まらない。

なかでもマモリノジダイ編集部として注目しているのは「リファラル」「アルムナイ」の活性化。矢野経済研究所は、同採用手法の支援サービス市場規模(事業者売上高ベース)を2023年度【30億円】、2024年度【50億7,000万円】(※見込み)、2025年度【82億円】(※予測)と発表。年々160%ペースで成長する、リクルーティングの新トレンドである。

これはあらゆる社員が採用活動に参加するという点でも、興味深い動きだ。その場合、社員は何をモチベーションに採用に手を貸すだろうか? 採用成功時のインセンティブか。会社への愛着だろうか?

2026年は「採用は人事がやること」という時代が変革を迎え、人事の仕事像が問い直される年かもしれない。当メディアでもより深く動向を追いたいテーマである。

4. 「副業解禁」を推進する企業の狙いとリスク要因

DIAMOND online 「副業解禁」だけじゃ終わらない…ライオンやロート製薬の社員を“所有しない”成長戦略

2025年は副業を解禁する企業の動向も目立った。

狙いは様々発信されているが、マモリノジダイ編集部としては「定着施策」の側面を挙げたい。エンジニアをはじめとした専門人材ほど、スキルアップや収入増を目的として「副業可」の企業を選定基準にする傾向が強いからだ。

ただし副業は従業員の労務管理が行き届かないというリスクがある。副業を解禁したせいで働きすぎてしまい、健康被害が発生した場合、損害を被るのは企業側だ。自社だけでキャリアが完結しない時代において、労務の観点からはバランス感覚が求められるテーマでもある。

5. 従業員エンゲージメントサーベイ活況 ツール導入より先に取り組むべき課題とは?

矢野経済研究所 プレスリリース 従業員エンゲージメント市場に関する調査を実施(2025年)

人手不足による「売り手市場」が続く中、離職防止の一手として従業員の定着度(エンゲージメント)を測るサーベイツールを導入する企業が増加している。

矢野経済研究所の調査(2025年10月発表)によれば、2024年の従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模は約111億円。2023年と比較し122%の成長だという。

同じく矢野経済研究所の調査で、ERP(基幹業務全体)パッケージの2024年市場規模は1,684億(引用:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3913)。それと比較するとサーベイツールはまだ小さなマーケットだが、その高い成長率を後押しするように、HR各社は同カテゴリーのツールを続々とリリースしている。

例として、大手パソナグループでは人事・労務の各種データの連携も含めての導入支援『HRクラウド連携サービス』を開始した。こうした企業のHRテックデビューのコンサルティング需要は2026年さらに高まるだろう。

マモリノジダイでは、サーベイツールのひとつ「ラフール」の結木社長に取材させていただいた。そこで語られたのは、ツール導入の前に経営者がまず意識を変え、自力で企業理念を打ち立て、社員に示す重要性だ。正しいエンゲージメント向上の道筋とその成功事例を知るために、ぜひお読みいただきたいインタビューである。

6. D-UP(ディー・アップ)ハラスメント事案に判決

朝日新聞デジタル 化粧品会社でパワハラ、新入社員が死亡 社長辞任し1億円超支払いへ

本年は「ハラスメント」が従業員の心身の健康をおびやかし、企業経営までも揺るがす最大のリスク要因であることを、司法が明確に示した年でもあった。

化粧品メーカー「D-UP(ディー・アップ)」では、当時25歳の女性社員が社長から叱責・罵倒を繰り返され、命を絶ってしまった痛ましい事件を巡る裁判が25年9月に判決。企業側に1億5000万円の支払いを命じ、社長辞任に至った。

人事担当者としては、従業員が意図せずハラスメントの当事者になってしまうことを防ぐルール作りが必須だ。かつ管理職がハラスメントをしてしまうことを恐れるあまり必要な指導を躊躇する、という新たなリスクも生まれている。

具体的なケーススタディ教育を行い、萎縮させないマネジメント支援を行うことで、健全な組織運営が守られるだろう。

7. 2026年10月から「カスハラ対策」義務化

日本経済新聞 カスハラ対策、2026年10月に義務化 厚生労働省が方針表明

2026年10月には、カスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置の義務化が盛り込まれた改正労働施策総合推進法も施行される。

特にBtoCビジネスの企業は、顧客からの不当な要求から従業員を守る施策が必要だ。業務に即してのカスハラを定義し、録音の許可や対応打ち切りのライン設定などのマニュアル策定にとりかかろう。

ハラスメント対策は法務・人事・労務などが横断的に協力すべき「守り」の一大テーマだ。従業員が心理的安全を感じながらいきいきと働き、そして、自社が万が一にもハラスメントの加害側になってしまわないためにも。

8. 育児・介護休業法の大幅改正

厚生労働省 広報誌コラム 2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行! より柔軟で、自分らしい働き方を目指して

特に労務担当者にとっては、4月と10月の2段階で施行された改正育児・介護休業法への対応に追われた1年であった。特に10月施行の「柔軟な働き方を実現するための措置」では、企業側が「テレワーク」「短時間勤務」「フレックス」などから2つ以上の選択肢を用意し、従業員が選択できる環境整備が義務化された。実務においては、単に制度を作るだけでなく対象者への「個別の意向聴取」が義務化されている点に注意が必要だ。

中小企業においては、制度設計や就業規則の変更が追いつかない……! という悲鳴も聞こえてくる。しかし、この法改正の本質は「離職防止」という守りの要素にある。育児や介護を理由とした優秀な人材の離脱を防ぐことは、新規採用が困難な現場においては最強の生存戦略となるだろう。

マモリノジダイでは、社会保険労務士法人Knowledge Works 佐保田 藍 氏にインタビューを実施。専門家からの具体的な制度解説を発信した。

9. 企業のストレスチェック義務、50人未満の事業場へも拡大

朝日新聞デジタル ストレスチェック、全企業で義務化へ 従業員50人未満も対象に

この3月、企業が従業員に対して行う「ストレスチェック制度」が、50人未満の事業場にも拡大されることが決定した。(※正しくは、50人未満の事業場はこれまで「努力義務」であったが、正式に義務化した)労働安全衛生法改正に伴い、2028年までに徹底となる流れだ。

従業員という資産を守るためには歓迎すべき流れだが、小規模事業所においては課題が多い。コスト面だけでなく、匿名でチェックを実施したとしても10人〜20人の組織では実質的に「バレる」可能性が高く、本音の回答を阻害する要因となる。

2026年は「守りのプロ」である産業医や専門家と連携し、匿名性を担保しながらリスクの早期発見につなげる体制を構築しよう。当メディアでは企業のメンタルヘルス体制整備を支援するVeap Japanの協力を得て、対策の基礎知識を配信。ぜひ参考に。

10. アサヒグループ、アスクル……2025年の企業へのサイバー攻撃被害

東洋経済オンライン アサヒビール「形だけのセキュリティ対策」が招いた大混乱、"基本のキ"でつまずき大規模な障害に…サイバー攻撃から2カ月何が間違っていたのか

最後は、企業へのサイバー攻撃。現在進行形の大規模インシデントが起きている。

9月にはアサヒグループHDがランサムウェア攻撃を受け、主力商品「スーパードライ」をはじめとした出荷停止、さらに業績集計に支障をきたし12月の決算発表の延期を余儀なくされている。VPNの脆弱性を突いたシステムへの侵入だった。

10月にはアスクルが多要素認証(MFA)が適用されていなかった外部委託先を通じてランサムウェア被害に。事業所向け通販「ASKUL」個人向け通販「LOHACO」など自社サービスが出荷停止。同社物流システムを利用していた「無印良品」「LOFT」などのネットストアも巻き込む広域のサプライチェーン障害となった。

現在も両社の対策は継続中であり、情シス担当者は来年も注視が必要だ。特に今回のサイバー攻撃から中小企業が学べる「守備力」のヒントは、まずは多要素認証の導入徹底であろう。大手企業にとっての「セキュリティが弱い外部委託先」に自社がならないよう注意したい。

BCPの視点からは、来年はことさら取引先のセキュリティ体制を重視する年になるだろう。—— 「守備力」こそが、信頼のおける取引先の証になる。

振り返ると、2025年は企業のバックオフィスを担うマモリノジダイ読者の方々にとって激震とも言えるニュースが立て続いた1年であった。

それらは、どれも対応を誤れば企業の存続にも関わる重大なリスク要因ばかりだ。

裏を返せば、今や「守り」は企業の持続的成長の要である。決してコストセンターの業務などではない。

中小企業の経営者やバックオフィス担当者にとって、2026年はこの上なくやりがいのある年になるはずだ。

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本年もご愛読ありがとうございました。

マモリノジダイでは、2026年も企業の守備力を高めるためのノウハウ、独自調査、そしてリアルな企業インタビューをお届けしていきます。

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