パタニティハラスメント防止で職場改革!中小企業が守るべき法律や職場での事例

パタニティハラスメントとは「育児に関する権利行使を理由に、男性従業員が職場で受ける嫌がらせや不当な扱い」のことです。働く男性が積極的に育児に参加する動きが広がる中で、社会的な関心を集めています。

中小企業を守るために、ハラスメントリスクの防止策は必須です。

この記事では、パタニティハラスメントの定義、法律上の位置づけ、職場での具体例、リスク、防止策や企業としての対応策などを網羅的に解説します。

パタニティハラスメントとは

パタニティハラスメントとは、男性従業員の育児休業に関して「職場内で嫌がらせを受ける」「不利益な扱いを受ける」などの行為を指します。

代表的なものは「上司や同僚からの精神的な圧力を受ける」「昇進や評価の面で不利な扱いを受ける」などです。

厚生労働省の文書でも「パタニティハラスメント対策は事業主の義務である」と明記されています。中小企業は、大きな問題に発展する前に備えておくべきです。

出典)厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!

パタニティハラスメントは3種類

パタニティハラスメントには、主に次のような種類があります。

  • 不利益な扱い
  • 制度利用への嫌がらせ
  • 制度の利用却下

「不利益な取り扱い」は、男性従業員が育児休業や時短勤務などの制度を利用した結果、仕事上の立場や評価において不利益を被るケースです。

また「育児休業制度を使うことを却下される」「利用の意思を示すと、嫌がらせを受ける」といったパターンもあります。

「不利益な扱い」「制度利用への嫌がらせ」は、放置されることが問題です。職場環境の悪化や法的責任につながる可能性があります。これを防ぐため、ハラスメントの種類ごとに具体的な対策を講じましょう。

パタニティハラスメントに関する法律を理解してリスク回避しよう

パタニティハラスメントは「育児・介護休業法」「労働施策総合推進法」などで定められています。
法律を順守することで、パタニティハラスメントへのリスクは大きく軽減できます。どのようなことがパタニティハラスメントにあたるのか、明確にしておきましょう。

育児・介護休業法における規定

育児・介護休業法第25条の2第2項、第3項では、事業主に対して、育児休業等に関する労働者の就業環境を守るよう、義務が定められています。

2事業主は、育児休業等関係言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
3事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、育児休業等関係言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。

出典)e-GOV「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第25条2第2項 第3項

また第25条の2第4項では、労働者に関して以下の文言が記載されています。

労働者は、育児休業等関係言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。

出典)e-GOV「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第25条2第 4項

この通り、事業主は上司・同僚からのパタニティハラスメント行為を防止するための具体的な対策を講じなければいけません。

労働施策総合推進法における規定

パタニティハラスメントは、パワーハラスメントと捉えられることもあります。労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の第30条の2項、3項では、職場におけるパワーハラスメントの防止措置を明記しています。

出典)e-GOV「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条2項 3項

パタニティハラスメントは「育児・介護休業法」が基本ですが、「労働施策総合推進法」も重要です。就業環境の阻害防止のため、事業主は必要な措置を講じなければなりません。

パタニティハラスメントが起こる原因

パタニティハラスメントは、職場内のさまざまな要因が複雑に絡み合って発生する問題です。たとえば以下のような原因が考えられます。

  1. 無意識の性別役割意識(ジェンダーバイアス)
  2. 職場風土や企業文化の未整備
  3. 育児休業に対する知識不足
  4. 法律の認識不足と対策の遅れ
  5. 業務量の偏りや人員不足

大きく分けると「企業の文化」「ハラスメント知識の欠如」「労働環境の劣悪さ」が根底にあるといえるでしょう。

特に古い企業であれば、いまだに「男性が育児休業をするなんて」と否定的な意見が出ることもあります。こうした文化の形成が進むと、ハラスメントへの意識が欠如しがちです。

また「攻め」を意識しすぎて、従業員が忙しくなりすぎることも問題です。休みを取る同僚に対してネガティブなイメージを持つようになり、パタニティハラスメントに発展します。

企業としては、柔軟な考えを浸透させ、守備力を高めるための組織づくりを考えましょう。

パタニティハラスメントが起きた際のリスク

パタニティハラスメントが発生すると、個人の被害だけでなく、企業全体に深刻な悪影響を及ぼします。以下は、企業が被る代表的なリスクです。

  1. 職場のジェンダーバイアスの固定化
  2. 企業のイメージダウンと信頼の失墜
  3. 労働訴訟のリスク増加
  4. 優秀な人材の流出による競争力の低下
  5. 職場の士気低下と生産性の低下

どれも、中小企業にとっては死活問題です。「企業のイメージダウン」が「人材の流出」につながり「職場の士気が低下する」など、問題がつながっていく可能性があります。

そのため「パタニティハラスメントから企業を守ること」が非常に重要です。後述する具体的な対策を実施しましょう。

パタニティハラスメントから企業を守る方法

パタニティハラスメントから企業を守るため、具体的な対策を立てることは非常に重要です。
以下を参考にしながら、自社の体制を振り返ってみてください。

  1. 社内規定の整備と周知の徹底
  2. ハラスメント研修と啓蒙活動の実施
  3. 育休取得を支援する制度の導入
  4. 相談窓口の設置と対応体制の整備
  5. 労働組合や外部団体との連携(例: 連合)

これらの取り組みは、企業をハラスメントから守るための有効な手段です。またハラスメント防止だけでなく「従業員が安心して働ける環境」の構築にも役立ちます。

また、これらの取り組みを実現するには、経営者自身が率先して参加することが重要です。トップが主導することで、全社的な意識改革が進み、従業員の安心感や信頼感が高まります。

経営層が積極的に取り組む姿勢を見せることで、企業全体が一丸となり、健全で持続可能な職場環境を築くことができます。

【必見】パタニティハラスメントの事例

種類ごとに、実際に起きたパタニティハラスメントの事例を紹介します。

不利益な取り扱いの事例

ある企業では、以下のようなことが起こりました。

  • 育児休業から復帰後、育児休業取得に対する報復的な意味合いで、関連会社への出向を命じられる
  • 休業から復帰後に給与や手当が減額される
  • 育児休業から復帰した後に、同僚や上司からの嫌がらせを受け、孤立してしまう

このうち、特に「配転」がパタニティハラスメントに該当するかどうかは「変更前後の賃金、労働条件、通勤事情、将来への影響」などを踏まえたうえで、総合的に判断されます。

企業は、パタニティハラスメントととらえられる取り扱いをしないよう、部署単位まで教育・研修を行いましょう。

制度利用への嫌がらせ・利用却下の事例

制度利用への嫌がらせや不当な却下が起きた事例は、以下の通りです。

  • 育児休業や時短勤務を申請しようとすると、「休むなら辞めてもらう」と脅される
  • 「育休を取得するには、妻が育児をできないことを証明すべき」と説明を受け、休業制度の利用を却下される
  • 「男性は育児休業を取るべきではない」といった偏見から育児休業の申請を受理しない

こちらは「企業の文化」「ジェンダーバイアス」などを理由に制度利用前にハラスメントを受けるケースです。

なかには「育児休業の制度は整備されていたものの、企業側の判断によって圧力を受け、却下される」という問題もあります。制度だけではなく、社員への教育も重要です。

パタニティハラスメントが起きた際のリスク

パタニティハラスメントが発生すると、個人の被害だけでなく、企業全体に深刻な悪影響を及ぼします。以下は、企業が被る代表的なリスクです。

  1. 職場のジェンダーバイアスの固定化
  2. 企業のイメージダウンと信頼の失墜
  3. 労働訴訟のリスク増加
  4. 優秀な人材の流出による競争力の低下
  5. 職場の士気低下と生産性の低下

どれも、中小企業にとっては死活問題です。「企業のイメージダウン」が「人材の流出」につながり「職場の士気が低下する」など、問題がつながっていく可能性があります。

そのため「パタニティハラスメントから企業を守ること」が非常に重要です。後述する具体的な対策を実施しましょう。

パタニティハラスメントから企業を守る方法

どのようにしてパタニティハラスメントから企業を守ればいいのでしょうか。具体的な対策は以下です。

  1. 社内規定の整備と周知の徹底
  2. ハラスメント研修と啓蒙活動の実施
  3. 育休取得を支援する制度の導入
  4. 相談窓口の設置と対応体制の整備
  5. 労働組合や外部団体との連携(例: 連合)

これらの取り組みは、企業をハラスメントから守るための有効な手段です。またハラスメント防止だけでなく「従業員が安心して働ける環境」の構築にも役立ちます。

また、これらの取り組みを実現するには、経営者自身が率先して参加することが重要です。トップが主導することで、全社的な意識改革が進み、従業員の安心感や信頼感が高まります。

経営層が積極的に取り組む姿勢を見せることで、企業全体が一丸となり、健全で持続可能な職場環境を築くことができます。

「攻め」がすぎるとパタニティハラスメントのリスクが上がる

職場におけるパタニティハラスメントは、ときに「攻めの姿勢」が原因で発生します。「業績を上げる」「成果を重視する」といった姿勢は、業績を高めるうえで重要ですが、ハラスメントには十分な注意が必要です。

たとえば長時間労働が「美徳」とされる企業の場合、育児参加のための短時間勤務や柔軟な働き方が受け入れられにくくなります。育児休暇を希望した男性社員を「意識が低い」「成長意欲が足りない」と見なされるケースもあるしょう。

「攻め」の姿勢は大切ですが、社員の働き方を尊重する「守り」の視点を忘れてはいけません。こうした環境を構築することで、結果的に持続可能な成長が実現します。

まとめ

パタニティハラスメントの防止は、企業が従業員の権利を守り、持続的な成長を目指す上で重要な取り組みです。男性従業員が育児に積極的に参加できる環境を整備することで、職場の生産性の保持、企業イメージの向上など、多くのメリットを享受できます。

「男女問わず、従業員一人ひとりが安心して働ける環境を構築すること」が成功への鍵です。問題が発生する前に予防策を講じ、すべての従業員が平等に育児と仕事を両立できる企業文化を目指しましょう。

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