個人情報保護法のガイドラインを知っていますか?企業の守りに必要な情報を解説!

個人情報の取り扱いは、企業の信頼性を左右する重要なテーマです。特に、中小企業においては、専門部署や豊富なリソースがない分、「守りの姿勢」をしっかり固めることが求められます。
その指針となるのが「個人情報保護法ガイドライン」です。
本記事では、個人情報保護法のガイドラインの基本を解説するとともに、中小企業が必ず押さえておくべきルールや、違反した場合のリスクについて詳しく掘り下げます。
一度のミスが経営に影響する中小企業だからこそ、リスク管理のための「守り」を強化することが重要です。
目次
【基本】個人情報保護法にはガイドラインがある
個人情報保護法では、企業が個人情報を適切に管理するためのルールを定めています。
参考)e-GOV「個人情報の保護に関する法律」
しかし、法律の条文だけでは具体的な実務対応がわかりにくいのは事実です。そのため、企業が遵守すべき詳細な基準を示す「個人情報保護法ガイドライン」があります。
ガイドラインは、例えば以下のような「個人情報の取り扱いについて企業が守るべき基本的なルール」のことです。
項目 | 内容 |
個人情報の定義 | どのような情報が「個人情報」に該当するのか。 |
利用制限 | 収集した個人情報はどのような目的で使用できるのか。 |
安全管理措置 | データの漏えい防止のために企業が講じるべき対策。 |
第三者提供の制限 | 個人情報を外部に提供する際のルールや必要な手続き。 |
参考)個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
またガイドラインを補足するためにQ&A編があります。以下のような詳細な疑問について解説している資料です。
- 「特定の個人を識別ができる」とは、どのような意味か
- 住所や電話番号だけで個人情報に該当するか
- 個人情報に該当しない事例としては、どのようなものがあるか
参考)個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」
ガイドラインの目的は、企業が個人情報を安全に管理し、トラブルを未然に防ぐことです。特に、法改正があるたびにガイドラインも更新されるため、最新の基準に沿った対応が求められます。
業種別にガイドラインが整備されている
個人情報保護法のガイドラインには、特定の業界ごとに対応したものがあります。業種ごとに個人情報の種類や管理の仕方が異なり、より実務に即したルールを設ける必要があるからです。
例えば、医療機関とIT企業では扱う個人情報の性質やリスクが大きく異なります。医療機関であれば患者の診療記録、IT企業であればクラウド上のユーザーデータの管理が重要です。そのため、業種ごとに適した具体的な指針が求められます。
参考)総務省「クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)」
参考)個人情報保護委員会「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」
参考)厚生労働省「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等」
これらの業種別ガイドラインは、中小企業にとっても無視できない存在です。個人情報管理の「守り」を強化することが、信用維持や契約継続のカギとなります。
適切なガイドラインに基づいた運用を行うことで法令違反によるリスクを回避し、取引先からの信頼を確保しましょう。
中小企業が知っておくべき個人情報保護のルール
個人情報保護法のガイドラインの対象者は、中小企業であっても例外ではありません。特に、従業員の情報や顧客データを適切に管理することが必要です。
例えば以下のように遵守すべきルールがあります。
ルール | 概要 |
① 利用目的の明確化 | 取得した個人情報は、目的を明示し、その範囲内で利用する |
② 不適正な取得の禁止 | 本人の同意なしに個人情報を収集しない |
③ 適切な管理措置の実施 | 個人情報の漏えい・滅失・改ざんを防ぐための管理を行う |
④ 第三者提供の制限 | 本人の同意なしに第三者へ個人情報を提供しない |
⑤ 開示・訂正・利用停止への対応 | 本人から求めがあった場合、適切に対応する |
中小企業の経営者、バックオフィス担当者の方は、事前にルールを理解し適切な管理体制を整えましょう。
個人情報保護法ガイドラインに違反するとどんなリスクがある?
個人情報保護法ガイドラインに違反すると、中小企業にとって経営上の大きなリスクがあります。
違反によるリスクを、大きく分けて以下の3つに分類しました。
種類 | 内容 | 具体例 |
法的リスク | 行政指導・罰則の適用を受ける可能性がある | 個人情報漏えいが発覚し、個人情報保護委員会からの勧告・命令を受ける |
経営リスク | 取引先や顧客からの信用を失う | 個人情報の管理がずさんだと判断され、取引先から契約を打ち切られる |
金銭的リスク | 損害賠償や罰則金の発生 | 漏えいした個人情報を悪用された顧客から訴訟を起こされ、賠償請求される |
こうしたリスクは看過できない問題です。企業の信頼性が問われ、ステークホルダーとの関係悪化につながる可能性もあります。
事前にリスクを把握し、個人情報保護ガイドラインに沿った対策を講じましょう。
中小企業はどんな個人情報保護対策を実施すべき?
個人情報保護ガイドラインに沿った対策を実施することで、企業のコンプライアンスを強化し、取引先や顧客の信頼を維持することができます。
適切な個人情報保護対策について、以下の5つのポイントでまとめました。
ポイント | 対策 |
企業としての個人情報の取り扱い基準を定める | 個人情報保護方針の策定、社内規程の整備 |
情報漏えいリスクを最小限に抑えるための教育 | 定期的な研修、ケーススタディを活用した学習 |
不正アクセスや情報の持ち出しを防ぐ | ID・パスワードの適正管理、アクセス制限の設定 |
個人情報の流出を防ぐための管理策を実施 | 暗号化、ウイルス対策、ファイアウォールの導入 |
万が一の事態に迅速に対応できる体制を構築 | インシデント対応マニュアルの作成、緊急連絡体制の整備 |
中小企業は、コストやリソースの制約があるのは事実です。しかし、基本的なルール策定や従業員教育、アクセス管理など、コストを抑えつつ実施できる施策も多くあります。
個人情報の適切な取り扱いは、企業の信頼を守る「守りの要」です。優先度を決めて、一つずつ確実に進めていきましょう。
【間違いがちなポイント】個人情報ガイドライン違反のヒヤリハット事例
実際に起こりやすい個人情報保護法ガイドライン違反のヒヤリハット事例と、企業がとるべき具体的な対策について解説します。
元従業員の情報を他社に伝えそうになった
退職した元従業員が再就職活動を行っている同業他社の人事担当者から連絡が あり、元従業員の在籍確認、勤怠状況、退職理由、健康状態等を聞かれたため、伝 えそうになった。 |
出典)個人情報保護委員会「個人情報保護法 ヒヤリハット事例集」p.3
元従業員の情報は個人情報です。外部から問い合わせを受けた場合は、「個人情報保護の観点からお答えできません」と明確に回答することを徹底しましょう。
また、個人情報に関する対応ルールを社内規程として明文化し、すべての従業員に周知することが重要です。
得た顧客情報の電話番号にかけそうになった
小売店を営んでおり、人手不足のためアルバイトを募集していたが、なかなか人が集まらなかった。そのため、店のポイントプログラムに登録している顧客をアルバイトに勧誘しようと思い、事前にその顧客の同意を得ることなく、登録された電話番号に電話をかけそうになった。 |
出典)個人情報保護委員会「個人情報保護法 ヒヤリハット事例集」p.3
顧客の個人情報を取得する際は、利用目的を明確にし、必要な範囲内でのみ使用することをルール化しましょう。また、顧客に対し、利用目的と用途を事前に説明することが必要です。
顧客リストがあるUSBをデスクに置いたまま帰りそうになった
顧客リストをシステムで管理しているが、資料作りのためUSBメモリに保存さ れた顧客データをコピーし、作業を行っていた。当日の作業を終えたので、USBメモリを所定の保管場所に戻そうとしたが、保管場所の鍵を保管している担当者が席を外しており、翌日も続けて作業を行うこととしていたため、自分の机の上に置いて帰宅しそうになった。 |
出典)個人情報保護委員会「個人情報保護法 ヒヤリハット事例集」p.4
この事例の根本的な問題は「意識の低さ」です。まずは従業員に顧客リストの重要性を教育・啓蒙しましょう。
また可能な限りUSBメモリの使用を制限し、社内のクラウドストレージを活用することで紛失リスクを低減できます。
BCCで送るべきメールをCCで送りそうになった
複数の顧客にイベントの案内を電子メールで知らせる際に、BCCに顧客のメールアドレスを入力すべきところ、CCに入力し送信しそうになった。 |
出典)個人情報保護委員会「個人情報保護法 ヒヤリハット事例集」p.5
「送信前にダブルチェックを行う」というルールを構築しましょう。特に新人や経験の浅い従業員に対して定期的な研修を実施することも重要です。
さらに、誤送信防止ツールの導入、メーラーの設定変更なども有効です。テクノロジーを導入することで、人為的ミスを防げます。
まとめ
本記事では、ガイドラインの基本ルールや違反時のリスク、具体的な対策、実際に起こりやすいヒヤリハット事例について解説しました。
個人情報保護法ガイドラインは、企業が適切に個人情報を管理し、リスクを回避するために設けられた重要な指針です。必ず読み込んだうえでリスクに備えて対策しましょう。
中小企業にとって「守りの強化」は、企業の存続と信頼を維持するために欠かせません。だからこそ、個人情報の取り扱いを軽視せず、確実な管理体制を構築することが重要です。
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