育児・介護休業法の改正履歴!2024年改正の理由と企業対応のポイント

「育児や介護と仕事の両立」は、現代社会で働く多くの人々にとって、ますます重要なテーマです。働きながら家族のケアを行う従業員を支えるため、育児・介護休業法はこれまでも社会の変化に応じて改正が重ねられてきました。そして、2024年にもこの法律に新たな動きがあります。

この記事では、法改正の歴史的背景から最新情報、企業が取り組むべき具体的な対策までをわかりやすく解説します。従業員が安心して働ける環境をつくるためにも、ぜひ参考にしてください。

育児・介護休業法の2024年までの改正履歴

育児・介護休業法は、仕事と育児や介護の両立を目指す従業員を支援するため、1992年に施行されました。

その後、社会情勢の変化や働き方の多様化に対応すべく、数多くの改正が重ねられてきました。ここでは、主な改正の歴史を振り返ってみましょう。

参考)厚生労働省「改正育児・介護休業法について」p.3

2009年改正

2009年の育児・介護休業法改正では、育児休業の対象者が拡大され、両立支援策が強化されました。

具体的には、父母ともに育児休業を取得できる「パパ・ママ育休プラス」の導入や、3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度の義務化などが盛り込まれ、仕事と育児の両立を支援するための環境整備が進められました。

参考)厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要」p.1

2016年改正

2016年の改正では、介護休業の取得回数が1回から3回に分割可能となり、より柔軟な働き方が支援されるようになりました。

また、介護休暇の取得単位が半日から時間単位へと変更され、介護と仕事の両立を図るための制度が拡充されました。

参考)厚生労働省「改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法の概要」p.1

2017年改正

2017年の改正では、男性の育児休業取得促進が図られ、職場環境の整備が強化されました。

具体的には、育児休業の取得可能期間の延長や、事業主による個別の周知・意向確認の努力義務化などが導入され、男性の育児参加を支援する体制が整えられました。

参考)厚生労働省「育児休業期間の延長

2019年改正

2019年の改正では、子の看護休暇および介護休暇の取得単位が半日から時間単位へと変更され、より柔軟な働き方が可能となりました。

これにより、短時間の看護や介護が必要な場合にも対応しやすくなり、仕事と家庭の両立支援が強化されました。

参考)厚生労働省「⼦の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります︕

2021年改正

2021年の改正では、個別周知義務や出生時育児休業(産後パパ育休)の創設が行われました。

これにより、事業主は対象労働者に対し育児休業制度の周知と取得意向の確認が義務付けられ、また、男性が子の出生直後に育児休業を取得しやすくなる制度が導入されました。

参考)厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要

参考)厚生労働省「令和3(2021)年法改正のポイント

過去の制度運用で見えてきた3つの課題

育児・介護休業法は、これまで何度も改正を重ね、仕事と家庭の両立支援に貢献してきました。しかし、制度を運用していく中で、いくつかの課題も明らかになってきたのです。

  • 育児・介護の現場ニーズと制度がかみ合っていない
  • 働き方改革やコロナ禍を経てニーズが変化した
  • 対象者への情報周知・意向確認の体制が整っていない

これらの課題を解決し、より実効性のある制度へと進化させる必要性が高まっていました。

参考)厚生労働省「育児・介護休業法等の改正の背景」p.9

育児・介護の現場ニーズと制度がかみ合っていない

現行の育児・介護休業制度は、現場の実態と必ずしも一致していません。たとえば、所定外労働の制限 (残業免除)の対象が3歳未満の子を養育する労働者に限定されている一方で、実際には小学校入学前までの子どもを育てる親にとっても、柔軟な働き方の支援が求められています。

また、介護においても、突発的な対応が必要な場面が多く、現行制度では十分に対応しきれていないケースが見受けられます。

働き方改革やコロナ禍を経てニーズが変化した

近年の働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方への需要が高まっています。

しかし、育児・介護休業制度は、これらの新たな働き方に十分対応できておらず、制度の見直しが求められています。

対象者への情報周知・意向確認の体制が整っていない

制度が存在していても、対象者への情報周知や意向確認の体制が不十分であるため、制度の利用が進んでいない現状があります。

とくに中小企業においては、制度の内容が従業員に正しく伝わっておらず、結果として制度の活用が進まない要因となっています。

2024年改正につながった理由

2024年の改正につながった理由は、以下のとおりです。

  • 社会状況が変化しているため
  • 制度を利用しやすい環境を整備する必要があるため
  • 企業内でのコミュニケーション不足が引き起こすトラブルを防ぐため

それぞれ見ていきましょう。

参考)厚生労働省「育児・介護休業法令和6年(2024年)改正内容の解説

社会状況が変化しているため

近年、少子高齢化が急速に進み、労働力人口の減少が深刻化しています。さらに、女性の就業率も上昇しており、家庭内での育児や介護の負担が増加している現状があります。

こうした状況に対応するため、育児や介護と仕事を両立できる職場環境の整備が求められており、2024年改正はその一環として実施されました。

制度を利用しやすい環境を整備する必要があるため

制度が存在していても、利用が進まない原因のひとつに、企業側の理解不足や協力体制の不備があります。

とくに、中小企業では人手不足や制度運用に対する負担感が大きく、結果として従業員が制度を利用しにくい状況が続いていました。

そのため、2024年改正では、企業が積極的に支援体制を整備し、従業員が利用しやすい環境をつくることが重視されています。

企業内でのコミュニケーション不足が引き起こすトラブルを防ぐため

育児や介護に関する制度があっても、その存在や利用方法が従業員に正しく伝わっていない場合があります。このような情報不足や意向確認の欠如は、制度利用を阻害し、労働者とのトラブルの原因になりかねません。

そこで、2024年改正では、個別周知や意向確認の義務化を通じて、従業員が制度を積極的に利用できる環境づくりが求められています

育児・介護休業法の2024年改正|押さえるべき変更ポイント

2024年に育児・介護休業法が改正され、2025年4月1日から段階的に施行されます。

改正の内容は、以下のとおりです。

  • 子の看護休暇の取得要件が拡大
  • 残業免除の対象範囲が拡大
  • 育児・介護のためのテレワーク導入が努力義務化
  • 育児休業取得状況の公表義務が拡大
  • 仕事と介護の両立支援

参考記事:【2025年】育児・介護休業法改正ポイント!企業の対応をわかりやすく解説

中小企業が今から始めるべき対応策とは

2025年の育児・介護休業法改正に従い、中小企業にも対応が求められています。

とくに、新たな制度に対応するための就業規則の見直しや従業員への周知、社内体制の強化が重要です。ここからは、中小企業が取り組むべき具体的な対応策を解説します。

就業規則の見直しと制度の明文化

2025年の法改正では、育児や介護に関する制度が大幅に変更されるため、これらを反映した就業規則の見直しが不可欠です。

具体的には、休暇対象者の拡大、テレワーク導入の努力義務、短時間勤務制度の見直しなどが含まれます。

また、法改正の内容に合わせた休業取得の条件や申請手続きも明文化する必要があります。就業規則の変更は労働者への周知が義務付けられているため、改訂後の社内共有も重要です。

従業員への周知と相談体制の整備

制度が整っていても、それが従業員に正しく理解されていなければ、その効果は十分に発揮されません。そのため、社内説明会や研修、パンフレットや社内掲示など、さまざまな方法で制度を周知する取り組みが求められます。

また、育児・介護に関する相談窓口の設置や定期的なアンケートなどを通じて、従業員が気軽に相談できる環境を整えることも重要です。これにより、制度の利用率向上だけでなく、従業員の満足度も高まります。

外部専門家の活用と社内研修の実施

育児・介護に関する法改正は複雑であり、適切な対応には専門的な知識が欠かせません。

そのため、社会保険労務士や弁護士などの専門家の力を借りて、就業規則の見直しや制度運用のアドバイスを受けることが推奨されます。

また、経営者や人事担当者向けの研修を実施し、法改正の意図や具体的な対応策について理解を深めることも大切です。これにより、企業全体での対応力が向上し、従業員の離職防止や職場定着にもつながります。

まとめ

2024年の育児・介護休業法改正は、仕事と家庭の両立を目指すすべての人々にとって重要な変更を含んでいます。休暇制度の対象者拡大や柔軟な働き方の選択肢が増えるなど、従業員がより安心して制度を利用できる環境整備が進められました。

企業にとっては、就業規則の見直しや従業員への丁寧な周知、相談しやすい体制づくりがこれまで以上に求められます。従業員のみなさまも、改正内容を正しく理解し、ご自身の状況に合わせてこれらの制度を積極的に活用していくことが大切です。

今回の法改正を機に、企業と従業員双方が協力し、より働きやすい職場環境を築いていきましょう。

関連記事

TOP