男女雇用機会均等法はいつできた?改正内容・罰則・企業が注意すべき点も紹介

求人情報の出稿や採用活動、人事などの際に、性別を加味している企業もあるかもしれません。

しかし、求人・採用・人事などにおいて性別を理由に差をつけることは、男女雇用機会均等法によって禁止されています。

場合によっては、罰則を科されることもあるのです。

本記事を読むことで、そのようなリスクを回避することができます。ぜひ最後までご一読いただき、男女雇用機会均等法についての理解を深めてください。

男女雇用機会均等法とは何か?

男女雇用機会均等法について、厚生労働省では以下のように説明しています。

男女雇用機会均等法は、職場における男女の均等取扱い等を規定した法律です。

出典)厚生労働省「雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために

男女雇用機会均等法は、1985年に制定され、1986年から施行されています。

制定された背景

戦前や戦後間もない頃の日本では、労働者の多くが男性でした。

しかし、高度経済成長とともに働く女性が増え、1984年の時点での女性労働者数は1,519万人に達しています。

これは、1960年当時と比較すると2倍もの数字です。

ところが、労働者としての女性の地位は決して高いとは言えず、与えられる仕事は単純作業や補助的な作業に限られるなど、明確に男性との扱いが異なっていました。

女性がこのような差別的な扱いを受けていた理由としては、「労働基準法による制限」が挙げられます。

当時の労働基準法では、女性労働者に対して2時間を超える残業を認めていなかったり、1年で150時間までしか働けなかったり、といった制限があったのです。

また、時代背景として、「男は仕事、女は家庭」といった役割意識が根強く残っていたことも理由の一つです。

しかし、国際的には「男女の機会均等」に向けた動きが活発になっていたことから、日本においても職場での男女平等を求める声が強まっていました。

このような背景から、1985年、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」、つまり「男女雇用機会均等法」が成立したのです。

参考)厚生労働省「Ⅲ 男女雇用機会均等法成立 30 年を迎えて

男女雇用機会均等法の目的と施行年

男女雇用機会均等法は、雇用における男女の平等を確保し、性別を理由とした不当な差別を防ぐことを目的に制定されました。

制定は1985年ですが、施行年は翌年となる1986年です。

この法律により、採用、昇進、配置、給与などの労働条件において、性別を理由とした不公平な扱いは禁止されました。

企業は、女性も男性も公平に働ける職場環境を整備しなければならなくなったのです。

また、妊娠・出産を理由とした不利益な扱いの禁止や、育児・介護との両立支援も法律の目的に含まれています。

したがって、企業側としては、労働者のライフステージの変化に応じて柔軟に対応できるように配慮する必要があります。

「マタハラ」「セクハラ」など、男女雇用機会均等法に基づいたハラスメント防止措置の徹底も忘れてはいけません。

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

違反した場合の罰則

男女雇用機会均等法に違反すると、第33条により以下のような罰則が科される可能性があります。

第三十三条 第二十九条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

出典)e-Gov 法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

違反時にすぐさま罰則が科されるわけではなく、まずは厚生労働大臣または都道府県労働局長から報告を求められたり、勧告を受けたり、助言・指導があったりします。

勧告に従わない場合は企業名が公表され、「報告をしない」「虚偽報告をした」といった場合は過料が科せられるので注意しましょう。

過料は行政処分の一種であり、刑罰ではないため前科はつかないものの、企業としてマイナスイメージがついてしまうことは避けられません。

男女雇用機会均等法の主な内容

男女雇用機会均等法を遵守するには、具体的にどういったことが禁止されているのかを把握する必要があります。

以下の項目で、実際に禁止されていることについて詳しく解説していきます。

求人募集・採用における性別による差別の禁止

求人募集や採用の際は、性別によって差をつけてはいけません。

事業主として、男女に均等な機会を与えることは義務となっています。

たとえば、以下のようなことは男女雇用機会均等法によって禁止されています。

  • 募集や採用に際して男女のどちらかを排除、もしくは優先する
  • 性別によって採用する条件が異なる
  • 能力や資質を判断する基準や方法が、性別によって異なる

ただし、「必ず男性と女性の双方を採用しなければならない」ということではありません。

性別を考慮せず、個々の能力をもとに判断した結果であれば、「採用されたのが男性のみ、もしくは女性のみ」となっても問題はないです。

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

配置や昇進・降格等における性別による差別の禁止

男女雇用機会均等法では、労働者の配置・昇進・降格等の人事判断において、性別を理由とした差別を禁止しています。

職場における男女の公平な扱いを確保し、実力や成果に基づいた評価を受ける権利を保障するためです。

たとえば、以下のようなケースは男女雇用機会均等法違反となります。

  • 男女のいずれかを一定の職務に配置しない、もしくは優先する
  • 昇進に関して、男女のどちらかを排除する
  • 昇進・降格・退職勧奨などに際し、能力や資質を判断する基準や方法が性別によって異なる

なお、業務を遂行するうえで「男性でなければならない」「女性でなければならない」と認められる職務については、性別を限定することが可能です。

例としては、守衛や警備員といった業務です。

防犯上の性質から、男性を配置することに妥当性があるため、こういったケースで男性のみを募集することは認められます。

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

間接差別の禁止

間接差別とは、性別以外の要件を設け、結果的に特定の性別に不利益を与える差別のことです。

男女雇用機会均等法では、合理的な理由がない限り、間接差別も禁止されています。

間接差別の代表的な例は、「身長に関する要件」です。

仮に、採用条件として「身長170cm以上」という基準がある場合、直接的に性別は関係していないものの、男性よりも平均身長が低い女性は間接的に不利になってしまいます。

また、転勤に関する基準も間接差別に該当します。

「総合職として採用するのは全国転勤が可能な人のみ」といった基準を設けると、育児などの事情で転勤が難しい女性が不利になる可能性があるため、合理的な理由がない限りは認められません。

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

女性労働者に対する特例措置

男女雇用機会均等法では、「職場において男女を平等に扱うこと」が大前提となっています。

しかし、過去の慣例などによって生じている男女間の格差をなくすために、女性労働者を優遇する特例措置については認められています。

特定の雇用管理区分において、男性労働者よりも女性労働者の方が一定以上少ない

場合、以下のような形で女性を優遇しても問題ありません。

  • 求人において、女性に有利な取り扱いをする
  • 管理職への昇進に関して女性を優先する
  • 女性のみを対象とした研修を実施する

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

結婚や出産等を理由とした不利益な扱いの禁止

女性労働者に対して、結婚・妊娠・出産等を理由に不利益な扱いをすることも禁止されています。

もし「妊娠中、または産後1年以内の女性労働者」を解雇した場合、企業側が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明できなければ、解雇は無効となります。

その他、妊娠や出産を理由に以下のような取り扱いをすることも禁止です。

  • 契約を更新しない
  • 減給や降格といった処分をする
  • 女性労働者側に不利益となる自宅待機を命ずる

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし

男女雇用機会均等法の改正の歴史

男女雇用機会均等法は、1986年に施行されてから、時勢に沿うような形で何度も改正されています。

改正された年主な改正内容
1997年(施行は1999年)■性別による差別禁止が、「努力義務」から「義務」に変更
■セクシュアルハラスメント防止措置の義務化
■指導に従わない企業の名前を公表
2006年(施行は2007年)■男女双方に対する差別の禁止(男性への差別も禁止)
■間接差別の禁止(身体的要件、転勤要件など)
■妊娠・出産を理由とした不利益な扱いの禁止
2017年(施行も2017年)■マタニティハラスメント(マタハラ)防止措置の義務化
■育児・介護休業制度の拡充
2020年(施行も2020年)■セクハラ対策やパワハラ対策の義務化

このような改正の歴史を知ることで、より深く男女雇用機会均等法について知ることができるでしょう。

参考)厚生労働省「Ⅲ 男女雇用機会均等法成立30年を迎えて

男女雇用機会均等法が抱える問題点

職場における男女の立場を平等にすることを目的とした男女雇用機会均等法ですが、問題点も存在します。

最も問題となっているのが、「男女雇用機会均等法の内容が企業内に浸透していない」という点です。

法律として認知はしていても、具体的に「どういった対応が差別に該当するのか」ということを理解していない労務担当者が多い状況であり、一般の従業員となるとさらに理解度は下がります。

施行されてから40年ほど経つ法律ではありますが、本質について詳しく理解している人はそれほど多くないのが現状です。

男女雇用機会均等法に関して中小企業が注意すべきこと

コンプライアンスが厳しくなってきた現代において、大企業では男女雇用機会均等法に対する意識が高いケースも多いです。

しかし、中小企業の中には「男女雇用機会均等法を遵守するためにどうすればよいのか」がわかっていないこともあるでしょう。

男女雇用機会均等法に違反しないためには、最低限、以下の2点については対策するようにしてください。

あらゆるハラスメントを防止する対策を実施する

男女雇用機会均等法を遵守するには、職場におけるあらゆるハラスメントに対する防止策を講じることが第一歩となります。

特に、女性が被害を受けがちであるセクハラやマタハラへの対策については、十分な対処が必要です。

ハラスメントは、従業員の退職に繋がる深刻な問題です。

人手不足に悩むことの多い中小企業にとって、人材の流出は大きなダメージとなってしまうでしょう。

従業員向けのハラスメント研修を定期的に実施したり、相談窓口を設置したり、といった対策を実施し、企業全体で防止策を強化することで、働きやすい環境を作ることができます。

参考)厚生労働省「男女雇用機会均等法におけるセクシュアルハラスメント対策について

妊娠や出産に関する環境を整備する

男女平等な職場にするためには、妊娠や出産を理由とした不利益な扱いを防ぎ、女性が働きやすい環境を整えることも欠かせません。

具体的には、産休・育休制度の適切な運用や職場復帰の支援を行い、妊娠中・育児中の従業員が安心して働ける環境を作る必要があります。

また、育児休業を取得しやすい雰囲気を作ることも重要です。

時短勤務やフレックスタイム制などの柔軟な働き方を導入すれば、妊娠中・出産後の女性も働きやすくなります。

従業員のライフステージに配慮した職場づくりをすることで、中小企業の持続的な成長に繋がるはずです。

まとめ

男女雇用機会均等法により、企業として「性別を問わずに活躍できる職場」を用意することは義務となっています。

「男性だから」「女性だから」という理由によって、配置に影響が出たり、昇進や降格の材料になったりすることは違法ですので、そのようなことがないよう注意するようにしてください。

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