【企業も知るべき】退職後に離職票はいつ届く?届かない原因もあわせて解説

従業員の退職時、企業が発行する書類の中でもとくに重要なのが離職票です。離職票の到着は次のステップ、とくに失業保険の受給手続きを進める上で必要となります。

そのため、退職者は離職票が手元にいつ届くのかを重視する傾向にあるのです。

中小企業にとって離職票の発行は、法的な義務を果たすだけでなく、退職者との円滑な関係を維持し、企業の信頼性を高める上でも非常に大切です。

この記事では、退職後に離職票がいつ届くのかという一般的なスケジュールから、届かない原因、企業として取るべき具体的な対応策までを詳しく解説します。正確な知識を身につけ、従業員の退職時に安心して対応できるよう備えることが可能です。

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離職票とは?到着時期を理解する前に基本を押さえる

中小企業にとって、従業員の退職は避けられない出来事です。その際、必要となるのが「離職票」です。

離職票は単なる事務手続きで終わる書類ではありません。そのため、退職者は「離職票がいつ届くのか」を気にしているのです。

退職者の次の生活、とくに失業保険の受給に直結する重要な書類であり、企業側も本質を理解しておくことが、円滑な退職手続きとトラブル防止につながります。

離職票の発行条件および企業の法的義務

企業にとって、離職票の発行は法的な義務であり、条件を正確に理解しておくことが重要です。適切な手続きを怠ると、企業が罰則の対象となる可能性もあります。

参考)
e-Gov 法令検索「雇用保険法
e-Gov 法令検索「雇用保険法施行規則

離職票の発行条件

離職票は、基本的に退職者が雇用保険に加入していた場合に発行される書類です。アルバイトやパート従業員であっても、以下の雇用保険の加入条件を満たしていれば発行対象となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日以上継続して雇用される見込みがある

これらの条件を満たしていれば、退職者は離職票の発行を受けられます。

離職票に対する企業の法的義務

企業には、以下のいずれかに該当する場合、離職票を必ず発行する法的義務があります。

  • 退職者が59歳以上である場合
  • 退職者が発行を希望している場合

もし企業が離職票の発行手続きを行わない、または発行を拒否した場合、それは法律違反となります。違反には、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金を科せられる可能性があるため、十分に注意が必要です。

離職票と失業保険の関係性

離職票は、「雇用保険被保険者離職票」が正式名称で、ハローワークが発行する公的な書類です。退職者が失業保険(正確には「雇用保険の基本手当」)を受給するために必要な証明書のため、退職者にとっては非常に重要な書類となります。

失業保険は、雇用保険に加入していた方が離職し、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない場合に、生活の安定を図るために支給される手当です。

失業保険を受給するためには、以下の情報が記載された離職票をハローワークに提出し、受給資格の確認を受ける必要があります。

記載情報内容目的や注意点
離職理由自己都合退職か会社都合退職かなど、離職の理由失業保険の給付制限期間に影響するため、非常に重要
賃金情報月ごとの離職前賃金失業保険の基本手当額を決定する基礎となる
雇用保険の加入期間原則として離職日以前2年間に被保険者期間が12か月以上など失業保険の受給資格を満たしているかを確認

つまり、離職票がなければ、退職者は失業保険の申請手続きを進められず、生活の不安が大きくなってしまいます。「離職票がいつ届くのか」という退職者の問いは、まさに生活の糧を得るための切実な質問なのです。

企業は、離職票が退職者のセーフティーネットとなることを理解し、迅速かつ正確な発行に努める義務があることを認識しておかなければなりません。

離職票は退職後いつ届く?目安は2週間

ここでは、離職票が退職者の手元に届くまでの一般的なスケジュールと、年末退職のような特殊なケースにおける発行時期について解説します。

離職票の一般的な発行スケジュール

離職票は、会社が発行してすぐに退職者の手元に届くものではなく、以下の流れを経て発行されます。

1.会社が「離職証明書」を準備
退職者の雇用保険被保険者資格喪失届などとあわせて作成します。

2.会社からハローワークへ「離職証明書」を送付
会社は原則として、退職日の翌日から10日以内に、退職者の情報が記載された「離職証明書」などの必要書類をハローワークに提出しなければなりません。

3.ハローワークでの審査・発行
ハローワークで提出された書類の審査が行われ、問題がなければ離職票が発行されます。ハローワークでの処理には、通常数日から1週間程度の時間を要します。

4.会社から「離職票」を退職者に郵送する
ハローワークから会社に離職票が交付された後、会社は速やかに離職票を退職者の自宅に郵送します。

これらの手続きを総合すると、一般的に「退職日から10日~2週間後」が、退職者に離職票の届く目安とされています。

年末退職など特殊ケースの場合、離職票はいつ届く?

年末退職のように特定の時期に退職した場合や、その他の特殊なケースでは、離職票の到着が通常よりも遅れる可能性があります。

  • 年末退職の場合
    年末年始は企業の休業日があるほか、ハローワークも休業するため、手続きが通常よりも遅れる傾向があります。そのため、年末退職の場合は、一般的な2週間という期間よりもさらに長く、1か月以上かかることも珍しくありません。

  • 年度末(3月~4月)など退職者が集中する時期
    年度末は転勤や転職に伴う退職者が多く、ハローワークの窓口が混み合うため、処理に時間がかかります。この時期も、通常よりも到着が遅れる可能性を考慮しておく必要があります。

離職票が届かない原因は?中小企業が把握しておくべきポイント

ここでは、離職票が届かない主な原因と、企業が確認すべきポイントを解説します。

会社側の手続きの遅れや不備

離職票が届かない原因としてもっとも多いのが、会社側の手続きに問題があるケースです。

主な原因内容や注意点
ハローワークへの提出遅延担当者の不在、多忙、または手続きへの理解不足など
必要書類の記載不備提出した離職証明書や資格喪失届に記載漏れや誤りがあった場合
離職票の発行対象外雇用保険の受給資格がなくてもハローワークで失業の認定を受ける際に提示を求められる場合があるため、原則として発行すべき

ハローワーク側の処理の遅れ

会社が迅速に手続きを進めたとしても、ハローワーク側の事情で発行が遅れることもあります。

主な原因内容や注意点
ハローワークの繁忙期年度末や年末年始、新卒の入社・退社が集中する時期など
ハローワーク側の確認事項の発生問い合わせへの回答遅れや複数回のやり取り

その他の原因

比較的稀なケースではありますが、以下のような原因も考えられます。

主な原因内容や注意点
郵送事故による紛失 1か月待っても離職票が届かない場合は、この可能性も考慮に入れる必要
転居による住所不明退職者が会社に新しい住所を伝えていない、転居後に郵便局への転居届を出していないなど

「離職票はいつ届きますか?」と言われたときの対応フロー

退職した元従業員から「まだ離職票が届きません。いつ届きますか?」といった問い合わせがあった際の具体的な対応フローを解説します。

状況を正確に把握する

問い合わせがあったら、感情的にならず、まずは現在の状況を正確に把握することから始めます。

  • 連絡者の特定と情報確認
    連絡してきたのが退職者本人か、あるいは代理人(退職代行業者など)かを確認します。退職者の氏名、退職日、連絡先などを再確認し、スムーズな情報連携ができるように準備します。

  • 退職日から何日経過しているかを確認
    退職日から現在までで、どれくらいの期間が経過しているかを確認します。これにより、通常の離職票発行スケジュール(約2週間)と比べて、遅延しているのかどうかを判断する目安になります。

会社側の手続き状況を確認する

自社で離職票発行に関する手続きがどこまで進んでいるかを確認します。

  • ハローワークへの提出状況
    担当部署や担当者に、離職票の元となる「離職証明書」がハローワークへいつ提出されたかを確認します。提出がまだであれば、理由と今後の予定を確認し、速やかに提出できるよう手配します。

  • 提出書類の控えの確認
    ハローワークへ提出した書類の控えを確認し、記載内容に不備がないか、送付先住所が正確であるかなどをチェックします。

  • ハローワークからの連絡有無
    ハローワークから書類の不備などに関する問い合わせがあったかどうかも確認します。もし問い合わせがあり、それに対する返答が滞っている場合は、すぐに担当者が対応しなければなりません。

ハローワークへ状況を問い合わせる

会社側の手続きが完了しているにもかかわらず離職票が届いていない場合は、ハローワークへ直接問い合わせて状況を確認します。

  • 提出済みであることを伝える
    ハローワークに、いつ、どの事業所の誰の離職証明書を提出したかを具体的に伝えます。

  • 発行状況の確認
    ハローワーク側で離職票が発行されているか、あるいは審査中なのか、いつ頃発行される見込みかなどを確認します。

  • 配送状況の確認
    もし発行済みであれば、いつ、どの住所へ郵送されたのかを確認します。郵送事故の可能性も考慮します。

退職者へ状況を報告し、今後の対応を伝える

確認した情報を基に、退職者へ速やかに状況を報告し、今後の対応について明確に伝えます。

  • 現在の状況と見込みを説明
    「現在、ハローワークで審査中(または郵送済み)のため、あと〇日程度で離職票が届く見込みです」といった具体的な情報を伝えます。

  • 遅延の理由を説明(該当する場合)
    もし会社側の手続きに遅延があった場合は、理由を簡潔に説明し、謝意を伝えるとともに、今後の対応を伝えます。

  • 再発行の可能性を伝える(必要であれば)
    もし郵送事故などで紛失している可能性が高い場合は、離職票の再発行手続きが必要になる旨を伝え、そのための今後のステップを案内します。再発行の申請は会社がハローワークに行います。

参考記事:離職とは?中小企業が押さえるべき基礎知識・手続き・防止策を徹底解説

まとめ

この記事では、離職票がいつ届くのかという退職者の疑問に対し、一般的な発行スケジュール、さらには年末退職のような特殊なケースにおける到着時期について解説しました。

中小企業は、離職票の発行条件と企業の法的義務を正しく理解し、従業員から「離職票はいつ届きますか?」と連絡があった際の具体的な対応フローを把握しておくことが重要です。

迅速かつ丁寧な対応は、元従業員の不安を解消し、企業のイメージ向上にもつながります。適切な手続きと情報提供を通じて、円滑な退職手続きを実現できるよう努める必要があるのです。

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