ビジネスモデルとは?種類や具体的な作り方、フレームワークを簡単に解説!
ビジネスモデルは、事業の価値提供の仕組みと収益化の方法を示す設計図です。本記事では、ビジネスモデルの基本的な構成要素から、実際の作り方、成功事例まで詳しく解説します。
新規事業の立ち上げや、既存事業の見直しをする際に、実践的な知識とヒントが得られる内容となっているため、ぜひ参考にしてください。
目次
ビジネスモデルとは
環境報告ガイドライン2018年版によると、ビジネスモデルの定義は以下のとおりです。
事業者が、どのような事業により、どのように競争力を得て、長期間にわたり利益を稼得・保持しているかを表現するもの |
出典)環境省 「環境報告ガイドライン2018年版 ビジネスモデル」
企業が事業を通じて価値を創造し、収益を上げる仕組みを示すための設計図と考えましょう。優れたビジネスモデルは、企業の持続的な成長と競争優位性の源泉となります。
次にビジネスモデルはどのような要素で構成されているのかを見ていきましょう。
ビジネスモデルの構成要素
ビジネスモデルは、以下4つの要素で構成されています。
- Who(顧客は誰か)
- What(顧客に提供する価値は何か)
- How(どのように価値を提供するか)
- Why(なぜ利益に結びつくのか)
それぞれの要素を、具体的に見ていきましょう。
Who(顧客は誰か)
ビジネスモデルを構築する上で、最も重要なのは顧客の定義です。年齢、性別、職業、収入、ライフスタイルなど、様々な観点から顧客層を具体的に特定していく必要があります。
また、BtoBビジネスであれば、業界や企業規模、事業内容などの要素も考慮しましょう。ターゲットとする顧客が明確になれば、その後の戦略立案がスムーズに進められます。
What(顧客に提供する価値は何か)
顧客に提供する価値とは、製品やサービスを通じて解決する課題や実現する便益を指します。たとえば、時間の短縮、コストの削減、快適性の向上などが挙げられるでしょう。
重要なのは、顧客視点で価値を考えることです。企業が考える価値と、顧客が求める価値は異なる場合があります。
How(どのように価値を提供するか)
価値を届けるための具体的な方法やプロセスを明確にしていきます。製品開発、生産、販売、アフターサービスなど、一連の流れの中で独自の強みを持つことも大切です。
また、自社のリソースだけでなく、パートナー企業との連携や、テクノロジーの活用なども検討していきましょう。
Why(なぜ利益に結びつくのか)
提供する価値に対して、顧客が対価を支払う理由を明確にする必要があります。
競合との差別化要因や、顧客にとっての費用対効果が重要です。また、継続的な収益を確保するために、顧客との長期的な関係構築や、収益構造の多角化なども考慮しましょう。
ビジネスモデルを作るメリット
なぜビジネスモデルを作る必要があるのか、疑問に感じている方も多いでしょう。ビジネスモデルの作成には以下のようなメリットがあります。
- 事業への理解が深まる
- 戦略を共有しやすくなる
- 問題点や課題を発見しやすくなる
- 事業の方向性を再確認できる
それぞれ、見ていきましょう。
事業への理解が深まる
ビジネスモデルを作成すると、自社の事業構造を体系的に整理できます。顧客への価値提供から収益化までの流れが可視化できるため、各要素の役割や関連性が明確になるのです。
また、市場における自社の位置づけや、競合との差別化要因も把握しやすくなるでしょう。これにより、経営者だけでなく従業員一人一人が事業の本質を理解できます。
戦略を共有しやすくなる
ビジネスモデルは、複雑な事業の仕組みを分かりやすく図式化したものです。これにより、社内での戦略の共有がスムーズになります。
特に新規メンバーへの説明や、部門間での認識統一に役立ちます。また、投資家や取引先への説明資料としても活用でき、事業の価値を効果的に伝えることも可能です。
問題点や課題を発見しやすくなる
ビジネスモデルを作成する過程で、事業の弱点や改善すべき点が浮き彫りになります。たとえば、収益構造の脆弱性や、顧客ニーズとのミスマッチ、業務プロセスの非効率な部分などの可視化はその代表例です。
これらの課題を早期に発見できると、迅速な対策を講じられます。さらに、新たな事業機会の発見にもつながります。
事業の方向性を再確認できる
定期的にビジネスモデルを見直すと、事業の方向性が合っているかを確認できます。市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、提供価値や収益構造の修正が必要かもしれません。
また、中長期的な成長戦略を検討する際の指針にもなります。環境変化に柔軟に対応しながら、持続的な成長を実現するための重要なツールです。
ビジネスモデルの種類と具体例
ビジネスモデルには様々な種類があり、業界や提供する価値によって最適なモデルが異なります。代表的なモデルは以下の通りです。
- 販売モデル(物販モデル)
- 小売モデル
- 広告モデル
- サブスクリプションモデル
- フリーミアムモデル
- 従量課金型モデル
- マッチングモデル
それぞれ、見ていきましょう。
販売モデル(物販モデル)
仕入れた商品を販売して利益を得る最も基本的なビジネスモデルです。メーカーや卸売業者から商品を仕入れ、適切な利益を上乗せして消費者に販売します。
アパレルブランドやメーカー直営店などが代表例です。
成功のポイントは、商品の品質管理や在庫管理、効率的な物流体制の構築にあります。また、独自商品の開発やブランド力の向上も重要な要素となります。
小売モデル
消費者に直接商品を販売する小売業のビジネスモデルです。スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアなどが該当します。
立地選びや品揃え、接客サービス、店舗オペレーションの効率化が重要です。近年では、実店舗とEコマースを組み合わせたオムニチャネル戦略も注目を集めています。きめ細かな顧客サービスが差別化のポイントです。
広告モデル
ウェブサイトやアプリなどのメディアに広告枠を設け、広告主から収益を得るモデルです。GoogleやFacebookなどのプラットフォーム企業が代表例として挙げられます。
多くのユーザーを集めることで広告価値を高め、効果的な広告配信によって収益を上げていきます。ユーザー数の増加と広告効果の向上が、収益拡大の鍵となるのです。
サブスクリプションモデル
定額料金を支払うことで、継続的にサービスを利用できるモデルです。動画・音楽配信サービス、ソフトウェアのライセンス契約などが該当します。
安定的な収益が見込める一方で、継続的な価値提供と顧客満足度の維持が重要です。解約率を抑えるために、常に新しいコンテンツや機能の追加が求められます。
フリーミアムモデル
基本機能は無料で提供し、より高度な機能やサービスを有料で提供するモデルです。会計ソフトやクラウドサービスが代表例です。
無料ユーザーを多く集めて認知度を高め、その中から有料会員への転換を図ります。無料版と有料版の機能差を適切に設定し、アップグレードの価値を明確にすることが重要です。
従量課金型モデル
利用量や成果に応じて料金を課金するモデルです。電気・ガス・水道などの公共料金や、クラウドサービスの一部が該当します。
使用量に応じた公平な課金が可能で、顧客にとっても必要な分だけ支払えるメリットがあります。ただし、需要の変動に対応できる供給体制の整備や、正確な計測システムの構築が不可欠です。
マッチングモデル
サービスの提供者と利用者をマッチングさせるプラットフォームを提供するモデルです。シェアリングエコノミーサービスが代表例として挙げられます。
プラットフォームの利用料や手数料が主な収益源となります。両者にとって価値のある出会いを創出し、安全性と信頼性を担保する仕組みづくりが成功の鍵となるでしょう。
ビジネスモデルの作り方
実効性の高いビジネスモデルを構築するためには、段階的なアプローチが重要です。
- 業界分析をする
- アイデアを出す
- アイデアを絞り込む
- 実現的なアイデアを選ぶ
それぞれの手順を詳しく解説します。
業界分析をする
まずは、参入を検討している業界の現状を徹底的に分析します。市場規模や成長率、主要プレイヤーの動向、規制環境などの基本情報を収集しましょう。
競合企業のビジネスモデルを研究し、成功要因や課題を把握することも重要です。また、顧客ニーズの変化や技術革新といった市場トレンドにも注目する必要があります。これらの分析により、業界の構造や機会、脅威への理解を深めることが可能です。
アイデアを出す
業界分析で得た洞察をもとに、新しいビジネスアイデアを創出していきます。ブレインストーミングやマインドマップなどの発想法を活用し、できるだけ多くのアイデアを出すことが重要です。
既存のビジネスモデルの改良や、他業界の成功事例を応用するのも効果的なので、ぜひ確認してみてください。
また、顧客の未解決の課題や不満点に着目すると、革新的なアイデアが生まれることもあります。この段階では実現可能性は考えず、自由な発想を心がけましょう。
アイデアを絞り込む
生み出したアイデアを評価し、有望なものを選別していきます。一般的な評価基準は以下のとおりです。
- 市場性(需要の大きさ)
- 収益性(利益を生み出せるか)
- 差別化要因(競合との違い)
また、自社の強みやリソースとの相性も重要な判断材料です。定量的な分析と定性的な判断を組み合わせながら、優先順位をつけていきましょう。
実現的なアイデアを選ぶ
最後に、絞り込んだアイデアの実現可能性を詳細に検討します。必要な経営資源(人材、資金、設備など)の見積もりや、想定されるリスクの洗い出しを行いましょう。
また、収支計画を立て、投資回収の見通しも確認する必要があります。実現までのタイムラインを描き、各段階での課題と対策も明確にしましょう。この検討を通じて、最も実現性の高いアイデアを選定し、具体的な事業計画の策定へと進んでいきます。
優れたビジネスモデルの特徴
成功するビジネスモデルには、以下のような共通の特徴があります。
- 継続性
- 模倣困難性
- 提供価値の最大化
これらの要素を組み込むことで、持続可能な競争優位性を構築できるでしょう。それぞれ解説します。
継続性
優れたビジネスモデルの特徴は、長期的な継続性を持つことです。一時的なトレンドや短期的な利益だけを追求するのではなく、安定した収益基盤を確立することが求められます。
そのためには、顧客との強固な関係性を構築し、リピート購入や継続的な利用を促す仕組みが必要です。また、市場環境の変化に柔軟に対応できる適応力も向上させなくてはいけません。
サブスクリプションモデルやロイヤリティプログラムの導入など、顧客との長期的な関係性を築く施策を検討してみましょう。
模倣困難性
競合他社に簡単に模倣されないビジネスモデルを構築すると、持続的な競争優位性につながります。模倣困難性を高める要素は、独自の技術やノウハウ、ブランド力、特許や知的財産権などです。
また、複数の強みを組み合わせることで、より模倣が困難になります。たとえば、Amazonは膨大な商品データベース、効率的な物流システム、強力な顧客基盤を組み合わせることで、他社が簡単には真似できない優位性を確立しているのです。
提供価値の最大化
顧客に提供する価値の最大化は、ビジネスモデルの成功に不可欠な要素です。そのためには、顧客のニーズを深く理解し、それに応える製品やサービスを提供する必要があります。
また、単一の価値提供だけでなく、複数の価値を組み合わせることで、総合的な満足度を高めることも可能です。さらに、デジタル技術の活用やサービスの個別化など、新しい手法を取り入れると、提供価値を継続的に向上できます。
ビジネスモデルの作成に使えるフレームワーク
様々な分析フレームワークを活用すると、より体系的にビジネスモデルの構築を進められます。具体的には以下のとおりです。
- SWOT分析
- 9セルフレームワーク
- ビジネスモデルキャンバス
各フレームワークの特徴を見ていきましょう。
SWOT分析
SWOT分析は、企業や事業の状況を4つの視点から整理するフレームワークです。
内部環境として「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」、外部環境として「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」を分析します。
強みは自社の優位性や独自の資源、弱みは改善が必要な課題や不足している要素です。また、機会は市場の成長性や新しいニーズ、脅威は競合の参入や市場環境の変化などを表します。
これらを組み合わせて戦略を立てる「クロスSWOT分析」も有効です。
9セルフレームワーク
9セルフレームワークは、ビジネスモデルを9つのマスで整理します。
縦軸には「顧客」「価値」「プロセス」を、横軸には「Who(誰が)」「What(何を)」「How(どのように)」を配置します。
Who(誰が) | What(何を) | How(どのように) | |
顧客 | 顧客は誰か | 何を提要するか | どう実現するか |
価値 | 誰から儲けるか | 何で儲けるか | どう儲けるか |
プロセス | 誰と組むか | 役割分担は | どう取り組むか |
このフレームワークを使うと、顧客ターゲットの明確化、提供価値の具体化、実現方法の検討を体系的に進められます。各要素の関連性も把握しやすく、ビジネスモデル全体の整合性を確認するのにも役立ちます。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、事業の全体像を9つの要素で可視化するツールです。具体的には以下の要素で構成されています。
- 顧客セグメント
- 価値提案
- チャネル
- 顧客との関係
- 収益の流れ
- リソース
- 主要活動
- パートナー
- コスト構造
1枚のキャンバスに情報を整理すると、ビジネスの仕組みが明確になり、関係者との共有も容易です。特に新規事業の検討時には、抜け漏れのない計画を立てるための効果的なツールとなります。
成功したビジネスモデルの事例紹介
ここからは、特徴的なビジネスモデルを確立し、継続的な成長を実現している企業の事例を見ていきましょう。
- 広告モデルの成功事例
- サブスクリプションモデルの成功事例
- フリーミアムモデルの成功事例
それぞれ解説します。
広告モデルの成功事例(Google、Meta)
検索エンジンのGoogleとSNSのMeta(Facebook・Instagram)は、無料のサービスを提供しながら、広告収入で収益を上げる広告モデルの代表例です。
Googleは検索結果に関連した広告を表示し、ユーザーの意図に沿った効果的な広告配信を実現しています。一方、Metaは詳細なユーザー情報を活用し、興味関心に基づいたターゲティング広告を展開しています。
両社とも、ユーザーの行動データを分析し、広告効果を最大化する仕組みを構築しているのが特徴です。これにより、広告主にとって高い費用対効果を実現し、持続的な収益モデルを確立しました。
サブスクリプションモデルの成功事例(Netflix、Spotify)
動画配信のNetflixと音楽配信のSpotifyは、定額制で豊富なコンテンツを提供するサブスクリプションモデルで成功しました。
Netflixはオリジナルコンテンツの制作に積極投資し、独自の視聴データを活用した作品開発で他社との差別化を図っています。Spotifyは、AIを活用した個別のプレイリスト提案や、アーティストとリスナーをつなぐ機能で、ユーザー体験を向上させてきました。
両社とも、継続的な機能改善とコンテンツの充実により、市場での優位性を確立しています。
フリーミアムモデルの成功事例(YouTube、Dropbox)
YouTubeとDropboxは、基本機能を無料で提供しながら、プレミアム機能で収益を上げるフリーミアムモデルを展開してきました。
YouTubeは無料で動画視聴できる一方、広告なし視聴や独自コンテンツを提供するYouTube Premiumで追加収益を実現しています。Dropboxは無料のストレージ容量を提供しつつ、より大容量や高度なセキュリティ機能を求めるユーザーに有料プランを展開します。
両社とも、無料サービスで多くのユーザーを獲得し、段階的に有料会員へと転換させる戦略で事業を拡大しました。
まとめ
ビジネスモデルは、企業が価値を創造し、収益を生み出すための基本設計図です。成功するビジネスモデルを構築するためには、顧客のニーズを的確に把握し、独自の価値提供の仕組みを確立する必要があります。
また、継続性や模倣困難性を持たせることで、持続可能な競争優位性を築けます。SWOT分析やビジネスモデルキャンバスといったフレームワークを活用すれば、より体系的な検討可能です。
Google、Netflix、YouTubeなどの成功事例が示すように、優れたビジネスモデルは時代のニーズを捉え、テクノロジーを効果的に活用しながら進化していきます。自社の強みを活かし、市場環境の変化に柔軟に対応できるビジネスモデルを構築することが、これからの企業成長の鍵です。
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