EDRとは?中小企業のセキュリティを強化する次世代対策をわかりやすく解説

国内の中小企業の約7割がサイバー攻撃を経験(IPA調査)しています。その対策として注目されているのがEDRです。近年、サイバー攻撃の手口はますます巧妙化し、従来のウイルス対策ソフトだけでは対処が難しくなっています。
セキュリティ予算や専門知識が限られる中小企業にとって、未知の脅威への対策は喫緊の課題です。
こうした状況下で、EDR(Endpoint Detection and Response)は、中小企業のセキュリティを守る新たな砦として注目されています。
EDRは、侵入を完全に防ぐのではなく、万が一侵入された後でも被害を最小限に抑えることを目的とした、次世代のセキュリティソリューションなのです。
EDR導入とあわせて、情報漏洩対策を包括的に見直しませんか?以下の資料では、情報漏洩の主な原因と、いますぐ取り組める具体的な対策を詳しく解説しています。貴社のセキュリティ強化にお役立てください。
EDRとは?中小企業のセキュリティを守る新しい砦
EDRは、サイバー攻撃を検知・対処する次世代のセキュリティ対策です。従来の対策では防ぎきれない未知の脅威に対応し、万が一の事態にも迅速な対応を可能にします。
専門知識がなくても導入できるサービスが増えており、セキュリティに不安を抱える中小企業に最適な選択肢です。
参考)経済産業省「テレワークセキュリティ ガイドライン」p.77
そもそもEDR(Endpoint Detection and Response)とは?
EDRは、PCやサーバー、スマートフォンといったエンドポイント(ネットワークの末端にある端末)を監視し、サイバー攻撃の痕跡をリアルタイムで検知・対処するセキュリティシステムです。
従来の対策が「侵入を防ぐ」ことに重点を置いていたのに対し、EDRは「侵入された後の被害を最小限に抑える」ことに特化しています。万が一マルウェアに感染しても、その動きを特定し、封じ込めることで被害の拡大を防ぎます。
EDRセキュリティの核となる主な機能 - 話題の「振る舞い検知」とは?
EDRの主要な機能の一つが、「振る舞い検知」です。これは、プログラムやファイルの挙動を詳細に分析し、不審な行動パターンを特定する技術です。
検知例:
- 通常では行わないような通信を試みる
- システムファイルを勝手に書き換えようとする
これにより、従来のマルウェアを特定する手法では見つけられない、未知の脅威やゼロデイ攻撃にも対応でき、より高度なセキュリティを実現します。
EPPだけではダメ?EDRとの決定的な違い
EDRとEPPは、役割が異なります。EPPが「侵入防御」に特化しているのに対し、EDRは「侵入後の対応」に特化しているのです。これらを併用することで、より強固なセキュリティ体制を構築できます。
EPP(Endpoint Protection Platform) | EDR(Endpoint Detection and Response) | |
役割 | 侵入を未然に防ぐ | 侵入後の被害を最小限に抑える |
主な機能 | ・ウイルス対策 ・ファイアウォール ・スパム対策 | ・リアルタイム監視 ・脅威の検知や封じ込め ・原因調査 |
検知方法 | 主にパターンマッチング | 主に振る舞い検知やログ分析 |
導入効果 | 脅威の侵入阻止 | ・侵入後の迅速な対応 ・被害拡大防止 |
例 | アンチウイルスソフト | ・監視ツール ・分析ツール |
参考)IPA「ゼロトラスト導入指南書」p.18
中小企業がEDRを導入する3つの大きなメリット
EDRを導入することで、中小企業はサイバーセキュリティを大幅に強化できます。未知の攻撃にも対応し、被害を最小限に抑えられるだけでなく、セキュリティ担当者の負担を軽減し、より効率的な運用が可能になるのです。
未知の脅威や巧妙なサイバー攻撃にも対抗できる
従来のセキュリティ対策であるウイルス対策ソフト(EPP)は、既知のウイルスやマルウェアのパターン情報を基に脅威を検知・防御します。
しかし、近年急増しているOSやソフトウェアの脆弱性を悪用するゼロデイ攻撃や、ファイルを使わずにメモリ上で動作するファイルレスマルウェアのような巧妙な攻撃は、既存のパターン情報にないため検知が困難です。
EDRは、ファイルの挙動やネットワーク通信をリアルタイムで監視する「振る舞い検知」により、不審な動きをいち早く察知します。
これにより、従来の対策では見逃されがちだった未知の脅威や、手口が巧妙化している最新のサイバー攻撃にも、有効に対抗できます。
万が一のインシデント発生時も被害を最小限に抑えられる
サイバー攻撃を100%防ぐことは非常に困難です。どれだけ強固な対策を講じても、何らかの形で侵入を許してしまうリスクは常に存在します。EDRは、まさにこの「侵入された後」に真価を発揮するのです。
不審な挙動を検知したEDRは、そのプログラムの通信を遮断したり、端末をネットワークから隔離したりすることで、脅威の拡散を迅速に防ぎます。
さらに、攻撃の経路や感染した端末を特定し、詳細なログを記録することで、被害の範囲を限定し、早期の復旧を可能にします。
これにより、情報漏洩や業務停止といった深刻な被害を未然に防ぎ、事業への影響を最小限に抑えられるのです。
セキュリティ担当者の負担を軽減できる可能性がある
多くのEDR製品には、検知した脅威に対して自動的に初動対応をおこなう「自動修復機能」が搭載されています。
これにより、セキュリティ担当者が常に監視し、手動で対応する必要がなくなるのです。また、攻撃の兆候や不審な挙動がリアルタイムでアラートとして通知されるため、異常をいち早く把握できます。
さらに、攻撃の詳細な分析レポートや、推奨される対応策が提示されるため、専門知識が少ない担当者でも、効果的なインシデント対応が可能になります。
これらの機能により、日々の運用管理にかかる時間と労力を大幅に削減し、セキュリティ担当者の負担を軽減できるのです。そのため、より重要なセキュリティ戦略の策定や、従業員への啓発活動に時間を割くことが可能になります。
参考記事:情報セキュリティの3要素とは?中小企業が気を付けるべきことも解説
中小企業向けEDR導入を成功させるためのステップと注意点
EDR導入を成功させるためには、自社の現状を正しく把握し、計画的に進めることが不可欠です。ここでは、中小企業がEDRを導入する際の3つのステップと、見落としがちな注意点について解説します。
ステップ1:自社のセキュリティ課題と守るべき情報資産を洗い出す
自社のセキュリティレベルがどの程度か、そして守るべき重要な情報資産が何かを明確にしましょう。
- 課題の洗い出し
- 現在利用しているセキュリティ対策の範囲
- 過去に発生したセキュリティインシデント
- 情報資産の特定
- 顧客情報
- 機密性の高い技術情報
- 財務データなど
- 影響範囲の予測
- 情報が漏洩したり、利用できなくなったりした場合、事業にどのような影響が出るかを想定
これらの分析により、EDR導入の目的が明確になり、自社に最適な製品選びの参考になります。
ステップ2:必要な機能と運用体制を検討する
EDRに求める機能と、導入後の運用体制を具体的に検討します。
- 機能の選定
- 振る舞い検知
- 自動修復
- インシデント調査など
- 運用体制の確認
- 専任のセキュリティ担当者がいない場合、EDRの運用を誰が担当するのか、インシデント発生時の対応フローはどうするのかを事前に決めておく
- 管理画面の使いやすさ
- 専門知識がなくても直感的に操作できる管理画面のEDRを選ぶ
運用体制まで含めて検討することで、導入後の「使いこなせない」という事態を防げます。
ステップ3:複数の製品・サービスを比較検討し、相談してみる
自社の要件が固まったら、複数のEDR製品やサービスを比較検討します。
- 比較検討
- 料金
- サポート体制
- 機能
- 導入実績など
- ベンダーへの相談
- 気になる製品が見つかったら、ベンダーに直接相談する
- 適切なアドバイスをくれるだけでなく、無料でトライアルを提供してくれることもある
専門家の意見を聞くことで、見落としていたリスクや最適なソリューションが見つかることもあります。
注意点:EDRは「導入して終わり」ではない
EDRは、導入しただけでセキュリティが万全になるわけではありません。導入後の運用と継続的な改善が重要です。
- 継続的な監視
- リアルタイムで不審な挙動を検知した際、速やかに対応できるよう、アラートの監視体制を確立する
- セキュリティ意識の向上
- 従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めるための教育
- 不審なメールの報告
- 安全なパスワード設定など
- ログの分析
- EDRが収集するログを定期的に分析することで、潜在的な脅威の兆候を発見し、より強固な対策が講じられる
EDRはあくまでもツールであり、効果を最大限に引き出すには、人による適切な運用が欠かせません。
まとめ
EDRは、もはや大企業だけの特別な対策ではありません。従来のセキュリティ対策では防ぎきれない未知のサイバー攻撃や巧妙な手口にも対抗できるEDRは、情報資産を守りたいと考えるすべての中小企業にとって、導入を検討すべき重要なソリューションです。
EDRを導入することで、万が一のインシデント発生時も被害を最小限に抑え、事業継続性を確保できます。ただし、EDRは単なるツールであり、その効果を最大限に引き出すためには、導入後の継続的な運用や従業員のセキュリティ意識向上も欠かせません。
自社のセキュリティ課題を明確にし、EDR導入という一歩を踏み出すことで、将来にわたる企業の安全を守れるのです。
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