休職手当とは?条件・金額・申請方法まで中小企業向けに解説
従業員が病気やケガ、メンタル不調などで長期間働けなくなった場合に支えとなる制度の一つが、健康保険から支給される「休職手当」となります。なお、本記事では便宜上「休職手当」と表現しますが、法的には「傷病手当金」が正式名称です。
中小企業の現場では「休職手当の仕組みがよくわからない」「うちの会社の休職規定と何が違うのか」など、基礎理解の段階でつまずきやすいケースが多く見られます。
本記事では、休職手当の基本知識から、支給条件・金額・手続き・注意点までを、中小企業向けにわかりやすく整理しましたので参考にしてください。
また、以下の資料では中小企業566社対象の「離職」に関するアンケート調査を掲載しています。無料でダウンロードできますので、中小企業の経営者、人事担当者の方はぜひご覧ください。
目次
休職手当とは?中小企業が理解すべき基本知識
休職手当とは、従業員が病気やケガなどで長期間働けない状態になった際に、一定の収入を補うための仕組みを指します。
ただし、一般的に「休職手当」と呼ばれるものには2種類があり、企業側が任意で支給する手当と、公的制度として支給される「傷病手当金」が混同されやすい点に注意が必要です。
休職手当と傷病手当金の違いとは?
「休職手当」は企業で独自に定める手当の総称であり、法的に必須ではありません。一方、「傷病手当金」は健康保険から支給される公的制度であり、一定要件を満たせば従業員が受け取ることができます。
両者は名称が似ていますが、支給主体も条件も全く異なるため、従業員への説明時に誤解が生じやすい領域です。
| 比較項目 | 休職手当(企業独自) | 傷病手当金(公的制度) |
| 支給主体 | 企業 | 健康保険(協会けんぽ/健保組合) |
| 支給の義務 | 義務なし(任意) | 法律に基づき支給される |
| 対象者 | 就業規則で定めた従業員 | 健康保険に加入する被保険者 |
| 給付内容 | 企業が任意に決める(例:給与の一部補填) | 給与の約3分の2を支給 |
| 支給期間 | 企業が任意に設定 | 最長1年6か月 |
| 目的 | 自社独自の補償・福利厚生 | 長期療養に伴う生活保障 |
表のとおり、会社の制度と公的制度は役割が異なります。中小企業では、まず企業独自の手当があるかを就業規則で確認し、そのうえで従業員に傷病手当金の活用を案内するという流れが一般的です。
参考記事:傷病手当金をスムーズに受け取るには? 条件・計算・申請方法を完全ガイド
休職手当と休業手当の違いとは
「休職手当」は企業が独自に定める手当の一種であり、法的に支給が義務づけられているわけではありません。一方、「休業手当」は労働基準法に基づき、会社都合で働けない場合に企業が支払う義務のある手当です。
両者は似た言葉ですが、制度の根拠も支給の場面もまったく異なるため、就業規則を確認しながら正しく使い分ける必要があります。
| 項目 | 休職手当(企業独自) | 休業手当(法定制度) |
| 根拠制度 | 就業規則(企業任意) | 労働基準法第26条 |
| 支給主体 | 企業 | 企業 |
| 支給の義務 | 任意(義務ではない) | 法律上の支給義務あり |
| 主な支給理由 | 私傷病による長期欠勤など | 会社都合の一時帰休・休業など |
| 支給額の目安 | 任意設定(例:給与の◯割) | 平均賃金の60%以上 |
| 対象者 | 社内規定に準ずる従業員 | 労働契約のあるすべての従業員 |
| 支給期間 | 任意設定 | 休業期間中 |
例えば、従業員が私的な病気やメンタル不調で長期休職する場合は「休職手当(あるいは傷病手当金)」の対象です。一方で業績悪化により会社が従業員を一時的に休ませる場合は「休業手当」の支給義務が発生します。
企業独自の休職手当と公的制度(健康保険)との関係
企業独自の休職手当が存在する場合でも、その支給が「傷病手当金に影響するかどうか」は制度理解の重要なポイントになります。
休職期間中に企業が給与を支払った場合、傷病手当金との調整が行われることが原則です。例えば、企業が給与の一部を支給している場合、健康保険側が支給額を差し引いて調整する仕組みになっています。
この関係性をまとめると、以下の通りです。
| 状況 | 傷病手当金への影響 |
| 企業が給与を全額支給 | 傷病手当金は支給されない |
| 企業が給与を一部支給 | 支給された額を差し引いて支給(調整される) |
| 企業が無給扱い | 傷病手当金が満額支給される |
| 企業が独自手当を支給 | 手当の性質により調整対象になる場合がある |
中小企業では「給与扱いになるのか」「調整対象なのか」が曖昧なまま運用されているケースも多いことが特徴になります。社労士や健保組合への確認を行い、従業員に誤解を与えない体制を整えておきましょう。
どんなときに休職手当(傷病手当金)はもらえるのか
傷病手当金は、従業員が仕事を休まざるを得ない状態になったときの生活を支える重要な公的制度です。しかし、すべての休職が対象となるわけではなく、健康保険法で定められた一定の要件を満たす必要があります。
中小企業の現場では「メンタル不調でも対象になるのか」「パートでも受け取れるのか」など、誤解が起こりやすいため、正しく整理しておくことが大切です。
適用対象となるケース(うつ・適応障害など)
傷病手当金は「業務外の病気・ケガ」が原因で働けなくなった場合に適用されます。以下が代表的な支給ケースです。
| 対象となるケース | 内容 |
| うつ病・適応障害 | メンタル不調による就業不能状態 |
| 私傷病(業務外の病気) | 腰痛・胃腸炎・慢性疾患など業務に起因しないもの |
| 私傷病(業務外のケガ) | 通勤以外の転倒・事故など |
| 長期治療が必要な疾病 | がん、難病など長期療養を要する病気 |
ポイントは「業務外」であることになります。業務中のケガは労災扱いになるため、休職手当ではなく労災補償の対象です。
なお、特にメンタル不調の場合は、「どの程度の状態から“就業不能”とみなすか」や「軽減勤務での復職が可能か」などの判断が難しい領域です。主治医・産業医の意見を踏まえつつ、就業規則上の休職・復職基準をあらかじめ社内で明確にしておくことが重要です。
参考記事:労災リスクから会社を守るメンタルヘルス対策は企業の義務
対象となる雇用形態(正社員/アルバイト・パート)
雇用形態は支給の可否に直接影響しません。正社員・契約社員・パート・アルバイトであっても、健康保険に加入していることが前提条件です。
| 雇用形態 | 健康保険加入時の扱い |
| 正社員 | 原則加入しているため対象になりやすい |
| 契約社員 | 加入していれば対象 |
| パート・アルバイト | 週の労働時間・勤務日数の要件を満たし加入している場合は対象 |
| 日雇い・短時間すぎる場合 | 健康保険に加入しないケースが多く、対象外になりやすい |
中小企業では勤務時間が短いパート従業員を多く抱える企業も多いため、この健康保険加入要件を正しく把握しておく必要があります。
支給の主な条件(健康保険加入・給与の支払い有無 など)
傷病手当金が支給されるには、健康保険法で定められた4つの要件すべてを満たすことが必要です。その概要を表に整理します。
| 支給要件 | 内容 |
| ① 病気やケガで働けない状態 | 医師の診断で労務不能と判断されていること |
| ② 連続する3日間の待期期間がある | 3日間連続で仕事を休んだ後、4日目から支給対象になる |
| ③ 給与の支払いがない(または一部のみ) | 会社から給与が出ている場合は支給額が調整される |
| ④ 健康保険に加入している | 協会けんぽまたは健保組合の被保険者であること |
特に「待期期間(連続3日休みが必要)」と「給与支給との調整」は誤解が起こりやすい条件です。
企業側が間違った案内をしてしまうと、従業員の不利益や手続き遅延につながるため、人事担当者は必ず押さえておくべきポイントになります。
休職手当の支給額・支給期間・計算方法
傷病手当金の金額や支給期間は健康保険法で明確に定められており、中小企業の人事・労務担当者が従業員に説明する際にも必須の知識です。
企業独自の支給とは異なり、「いつまで」「いくら」もらえるのかが制度として統一されているため、休職者の不安を軽減することにもつながります。
手当金の金額は「給与の何割」?
傷病手当金の金額は「平均報酬日額の3分の2(67%程度)」です。ただし「給与の3分の2」ではなく「平均報酬日額」を基準に計算される点が重要なポイントになります。
| 計算項目 | 内容 |
| 平均報酬日額 | 直近12か月の標準報酬月額から算出される日額 |
| 支給額 | 平均報酬日額 × 2/3 |
| 支給される日数 | 労務不能となった4日目から(日額ベースで支給) |
給与の満額補填ではなく、あくまで「収入の一部を補う制度」という点を、社内説明の際にも正しく伝えましょう。
支給される期間は最長いつまで?
傷病手当金が受け取れる期間は、原則として「支給開始日から通算して最長1年6か月」です。この期間は、休職が長引いた場合でも自動的に延長されるものではなく、法律で決められた上限となっています。
また、一度職場へ復帰した場合でも、同じ病気やケガで再び働けなくなったときは、残り期間の範囲内で支給を受けることが可能です。つまり、連続して休んでいる場合だけでなく、断続的な休職であっても「同一傷病」であれば1年6か月の枠が共有される仕組みになります。
企業側は、従業員へ案内する際に「延長制度は基本的にない」「同一傷病であれば再休職でも残り期間を利用できる」という2点を正確に伝えましょう。
実際の計算式(平均報酬日額 × 2/3)
傷病手当金の計算は、すべて「平均報酬日額」を基準に行われます。平均報酬日額とは、過去12か月の標準報酬月額をもとに健康保険が算出する日額で、その金額に2/3を掛けたものが1日あたりの支給額です。
たとえば平均報酬日額が1万円であれば、1日あたりの支給額は約6,666円となり、労務不能と認定された日数分だけこの金額が支給されます。
給与が一部支給されている場合は、調整により支給額が減る可能性がありますが、いずれの場合も「平均報酬日額 × 2/3」という算式は変わりません。
休職手当の申請手続きと必要書類
傷病手当金の申請は、従業員本人だけでなく、企業側(事業主)も関与する手続きになります。
必要書類の不備や手続き漏れがあると支給が遅れたり、不支給となる可能性もあり、中小企業にとっては正確な流れの理解が不可欠です。ここでは、準備すべき書類・双方の役割・提出方法を整理します。
申請に必要な診断書や書類の準備
傷病手当金の申請では、医師の意見書を含む複数の書類を準備する必要があります。特に診断書の記載内容が不十分だと差し戻しが生じるため、企業側も記載ポイントを把握しておくとスムーズです。
| 必要書類 | 説明 |
| 医師の意見書(労務不能の証明) | 「働けない状態である」ことを医師が証明する最重要書類 |
| 傷病手当金支給申請書(本人記入欄) | 労働者本人が休職期間や状況を記入 |
| 傷病手当金支給申請書(事業主記入欄) | 出勤簿・給与支給状況・休職期間などを企業が記入 |
| 健康保険証(写し) | 健康保険の加入確認のため |
| 賃金台帳・出勤簿 | 給与支給状況を確認するため提出を求められることがある |
診断書と申請書の整合性が取れているかどうかが非常に重要で、休職日や労務不能期間に矛盾があると申請が進まないケースがあります。
事業主側・労働者側の役割と手続きの流れ
傷病手当金の申請は、本人と企業双方が関わるものです。手続きを役割ごとに整理すると理解しやすくなります。
| 手続きの流れ | 労働者側の役割 | 企業(事業主)側の役割 |
| ① 受診・診断 | 医師から診断書を取得 | 特になし |
| ② 申請書の記入 | 支給申請書の本人欄を記入 | 出勤簿・給与情報を準備 |
| ③ 事業主記入欄の作成 | 企業へ書類を提出 | 事業主欄に出勤状況・給与支払いの有無を記載 |
| ④ 健保への提出 | 自身で提出するケースも | 企業がとりまとめて提出することも多い |
| ⑤ 審査・支給 | 健保からの連絡・振込確認 | 必要に応じ追加書類に対応 |
企業側は「給与の支払いがあるか」「出勤実績はどうか」といった部分を正確に記入する必要があるため注意しましょう。
申請先と提出方法(協会けんぽ・健康保険組合など)
傷病手当金は健康保険から支給されるため、申請先は従業員が加入している保険によって異なります。
提出方法は保険者によって異なる点に注意です。健保組合ではオンライン申請に対応しているところもあります。
企業側は、どの保険に加入しているかを把握し、従業員に適切な提出先と方法を案内しましょう。
休職手当利用における注意点・よくある誤解
傷病手当金を正しく活用するためには、制度の限界や「よくある誤解」を押さえておくことが重要です。特に中小企業では、担当者の知識不足によって申請遅延や不支給が起きるケースも多く、制度理解が欠かせません。
副業・収入がある場合でも受け取れる?
傷病手当金は「労務不能であるかどうか」に基づく制度です。そのため、副業やわずかな収入があるからといって、直ちに受給できないわけではありません。
以下の表のとおり、支給の可否は 「本業(=休職している会社の業務)ができないかどうか」 が基準になります。
| ケース | 傷病手当金の扱い |
| 本業は働けないが、軽作業の副業収入がある | 原則として受給可能(※ただし、労務不能の証明が必要) |
| 副業で本業と同等レベルの業務を行っている | 「働ける状態」と判断され不支給の可能性が高い |
| 投資・家賃収入・一時的な収入 | 収入があっても受給には影響しない |
重要なのは、副業の有無ではなく、「医師が労務不能と判断しているかどうか」です。本業との働き方との差が支給判断に影響します。
申請期限・手続き漏れによる不支給リスク
傷病手当金には「支給申請の時効」が設けられており、2年を過ぎると申請できません。
休職期間が長期に及ぶケースでは、申請の先延ばしが不支給につながることもあります。早めに書類を準備し、月ごとに申請を進めましょう。
診断書の記載内容が不足している場合や、企業側の出勤情報・給与情報の誤記によって審査が滞るケースもある点に注意です。従業員と企業が連携して正確な書類を整えることが求められます。
適切な時期に申請できるよう、本人と企業の双方が申請期限と必要書類を共有しておきましょう。
アルバイトや個人事業主は対象外?
傷病手当金の対象かどうかを判断する基準は「雇用形態」ではなく「健康保険の加入状況」です。正社員だけでなく、一定の条件を満たして社会保険に加入しているアルバイト・パートも対象となります。
一方で、国民健康保険には傷病手当金の制度が存在しないため、個人事業主や非加入者は対象外です。
| 雇用区分 | 傷病手当金の対象 | 補足 |
| 正社員 | 対象 | 健康保険に加入しているため利用可能 |
| アルバイト・パート | 加入していれば対象 | 週20時間以上など加入要件を満たす必要がある |
| 派遣社員 | 対象 | 派遣元の健康保険が適用される |
| 個人事業主 | 対象外 | 国民健康保険は傷病手当金制度なし |
企業は、従業員がどの保険に加入しているかを確認し、対象であるかどうかを前提として適切に案内することが求められます。
【こちらもチェック】休職中に活用できるその他の手当・給付制度
休職中に利用できる制度は「傷病手当金」だけではありません。企業独自の支援や公的制度、そして民間保険を組み合わせることで、従業員の生活不安を軽減し、復職後の円滑な職場復帰につなげることができます。
ここでは、企業が従業員へ案内できる主要な制度を整理しましょう。
企業独自の休職手当・見舞金制度
企業によっては、法定制度とは別に「独自の休職手当」や「見舞金制度」を設けている場合があります。
これらは法律上の義務ではありません。しかし、従業員の安心感や企業への信頼を高める効果が期待できます。
| 制度の種類 | 内容 |
| 企業独自の休職手当 | 休職期間のうち一定期間について、会社が独自に給与の一部を補填する制度 |
| 見舞金制度 | 長期療養・入院などに対して会社が一時金を支給する制度 |
| 福利厚生としての特別支援 | カウンセリング補助・提携クリニックの紹介などのサポート |
企業独自の制度は内容が大きく異なるため、就業規則や社内規程を従業員に明確に提示しておくことが重要です。
出産手当金・育児休業給付金・介護休業給付金
休職理由が「傷病」ではなく、「出産・育児・介護」の場合は、別の公的制度が利用できます。これらは傷病手当金とは支給対象や条件が異なるため、目的に応じて使い分けましょう。
| 制度名 | 主な対象者 | 支給内容 |
| 出産手当金 | 産前産後で働けない女性従業員 | 勤務できない期間の給与相当の一部を健康保険から支給 |
| 育児休業給付金 | 育児休業を取得する従業員 | 休業開始時の賃金の一定割合を雇用保険から支給 |
| 介護休業給付金 | 家族の介護のために休業する従業員 | 介護休業中の賃金の一部を雇用保険から支給 |
いずれも生活を支える重要な制度です。休職理由に応じて企業側が正しく案内できるかどうかが、従業員の安心につながります。
参考記事:出生時育児休業(産後パパ育休)と育児休業の違いは?併用するメリットも紹介
就業不能保険など民間の休職保険
民間の保険会社が提供する「就業不能保険」は、公的制度でカバーしきれない部分を補う保険です。傷病手当金が支給されない従業員や、長期療養に備えたい人が加入するケースが増えています。
| 保険の種類 | 内容 |
| 就業不能保険 | 病気やケガで働けない期間の収入を補償する民間保険 |
| 休職補償保険 | 傷病手当金と組み合わせて生活費を補う目的の保険 |
| 所得補償保険 | 就業不能に限らず、収入減少リスク全般をカバーする保険 |
企業が保険加入を促す義務はありません。しかし従業員向けの情報提供として紹介する企業も増えています。
中小企業が休職手当制度整備のために押さえておきたいこと
休職手当(傷病手当金)は健康保険の制度であり、企業が独自に支給する休職手当とは異なる仕組みです。しかし、休職者の発生時に企業側の対応が適切でないと、従業員とのトラブルや不支給リスク、復職プロセスの混乱につながります。
中小企業が制度整備を行う際には「規程の明確化」「フローの整備」「外部専門家との連携」の三つを柱として準備を進めましょう。
就業規則における「休職規定」と「手当支給」の明記
休職に関するトラブルの多くは、就業規則の不備が原因です。休職制度の内容が曖昧なまま運用すると、期間の設定・復職可否の判断・給与や手当の扱いで従業員との認識がずれやすくなります。
そのため、就業規則では以下の内容を必ず明確にしておくことが必要です。
| 項目 | 就業規則で明記すべき内容の例 |
| 休職の対象 | 私傷病・メンタル不調・災害・出向など該当範囲 |
| 休職期間 | 最大期間、延長の可否、通算ルール |
| 復職判断 | 医師の意見、会社の判断基準 |
| 手当の扱い | 傷病手当金の案内方法、会社独自の手当の有無 |
特に「会社独自の休職手当」を支給する場合は、支給基準・金額・期間・条件を明記する必要があります。
休職前〜復職後の人事対応フローの整備
休職者対応が後手になると、申請漏れや復職のトラブルになることもあるため、注意しましょう。中小企業でも整理しやすいよう、休職前から復職後までの流れを明確にしておくことが重要です。
| フェーズ | 企業側が行うべき対応 |
| 休職前 | 病状の確認、診断書の提出案内、休職制度の説明 |
| 休職開始時 | 傷病手当金の申請書類の案内、申請手続きの支援 |
| 休職中 | 従業員との定期的な連絡体制の確保、産業医との連携 |
| 復職前 | 主治医・産業医の意見書確認、職場復帰プランの作成 |
| 復職後 | 配置調整、勤務負荷の段階的調整、フォロー面談の実施 |
フローが明確になっていると、担当者が変わっても一貫した対応が可能になります。
社労士・健保組合との連携体制の構築
休職手当(傷病手当金)は健康保険制度に基づく仕組みです。企業が単独で判断するには限界がある場面が多くあります。
特に、休職期間中の労務管理や休職規定の整備、傷病手当金の不支給リスクへの対応など、専門的な判断が求められるケースでは、社労士や健康保険組合との連携が重要です。
社労士は、就業規則の改定や休職制度の設計、復職基準の整理などの内部ルール作成をサポートできます。一方で健康保険組合や協会けんぽは、申請書類の内容、審査に必要な追加情報、制度の細かな運用方法について企業に対して直接助言を行う組織です。
まとめ
休職手当(傷病手当金)は、従業員の生活と健康を支える非常に重要な制度であり、同時に企業側の正確な運用が求められる分野でもあります。支給条件・金額・期間などの仕組みは複雑に見えますが、基本となるのは「労務不能であり、健康保険に加入しているかどうか」という点です。
中小企業にとっては、就業規則で休職制度と手当の扱いを明確にし、休職開始時から復職後までの対応フローを整えておくことが、トラブル防止と従業員の安心につながります。
休職制度の理解と適切な運用は中小企業として重要です。従業員の働きやすさだけでなく、企業の信頼性向上にも直結します。
経営者、人事労務担当者の方は、この記事を参考に、休職手当の制度整備や案内体制の見直しを進めていきましょう。
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