現場が採用・評価に動き出す
タスクフォース×HRツールで変わる組織運営
中小企業の人事や経営企画にとって、現場をよく知り、フィードバックを集める協力体制は組織を活性化させる必須条件と言えるものです。しかしながら、日々の業務に全力を尽くしている事業部メンバーをバックオフィスの取り組みに巻き込むのは簡単ではありません。
そこで、今回の「理想のHRテックを探そう」では「現場の巻き込み」の観点から、各種ツールの利点と活用法を考えます。
取材に協力したのは、戦略実現ファームとしてクライアントの組織変革を支援しながら、自社でも現場主導の体制づくりを実践する株式会社ベルテクス・パートナーズ。従業員数は50名程度のコンサルティング企業です。
同社が2025年10月に立ち上げた「経営企画室」では、人事・採用・育成などのテーマを推進しており、全社員のうち約15名が通常業務と並行し、タスクフォースとして各テーマの推進に参画しています。一部の社員は複数のテーマを横断的に担っています。例えば採用では一次面接官を自発的に務めるなど「自分ごと」として関わる動きが広がっています。
現場が主体的に組織づくりに関わる仕組みと、その運営を支えるHRツールの選定と役割とは? 「何事も、やれるところから始める」。シンプルで力強い“組織DX”のヒントを聞きました。
■プロフィール
株式会社ベルテクス・パートナーズ
コンサルティング事業部 パートナー 兼 経営企画室 室長 和田 大輔
2015年設立。戦略策定から実行・成果創出まで一気通貫で伴走するコンサルティングサービスを主軸に、新規事業創出支援、DX推進、AIを活用したソリューション開発など、多角的なアプローチでクライアントを支援する。
「自社組織のコンサル」経営企画室スタートの経緯

—— ベルテクス・パートナーズの事業内容について教えてください。
ベルテクス・パートナーズ コンサルティング事業部 パートナー 兼 経営企画室 室長 和田 大輔さん:
ベルテクス・パートナーズは、戦略策定から実行・成果創出まで一気通貫でクライアントに伴走するコンサルティングファームです。
そのなかで、私はコンサルティング事業部のプレイヤーであると同時に、2025年10月に新設された「経営企画室」を管掌しています。
—— 経営企画は企業ごとに多様なミッションを持つ部署ですね。ベルテクス・パートナーズの場合は?
和田さん 当社の経営企画室は、一言でいえば組織運営と人事に経営観点からアプローチしていく組織です。労務や給与計算、経理といった基盤的な事務と連携しつつ、より戦略的な企画領域を中心に動いています。支援しているクライアントの事業成長のために人材を採り、フロント・ミドル・バックのメンバーが能力を発揮できる仕組みの実行がミッションです。その大きなテーマが「現場が主体的に組織づくりに関わる」サイクルを作ることなのです。
—— 具体的には、どのような施策をとっていますか。
和田さん 大きくは「タスクフォース」の制度化です。現在は採用・評価・育成など組織を活性化させるためのタスクフォースが6企画動いており、社員が所属部署を横断して集まり、タスクに取り組んでいます。ベルテクス・パートナーズの従業員数は現在およそ50名、そのうち約15名が、何らかのタスクフォースに参加している状況です。また、一部の社員は複数のテーマに携わっています。
—— 通常業務と並行してタスクフォースにも参加するのは大変では?
和田さん おっしゃる通り、コンサルタントは原則としてクライアントとともにプロジェクトを進める仕事であり、組織づくりに関与する機会はまずありません。しかし裏を返せば、コンサルタントは自分の会社もコンサルできるはず。顧客に貢献するさまざまな手法を、まず自社で試してみたらどうか? テクノロジーを活用したり、コミュニケーションを仕組み化したりしながら新しい組織像を模索できれば面白いのではないか。そんな素朴な発想から経営企画室が立ち上がり、通常業務と地続きの感覚でスタートしました。まだ1年も経たない部署ですが、いろいろと効果が見えはじめています。
HRツール「採用」と「人事評価」の使い分け

—— 経営企画室で利用しているHRツールを教えてください。
和田さん 一例として「採用」のタスクフォースであれば、どんな人材を採ればもっと魅力的な組織になるかを現場視点で考え、実際の選考にも深く関わります。
そこで利用しているツールは、採用管理システム(ATS)の「HRMOS」(株式会社ビズリーチ)と「Microsoft Teams」の連携です。
具体的な運用方法ですが、書類スクリーニングを経た応募者情報をTeamsの「リクルートチャネル」に共有し、採用予定の事業部から面接官の立候補を募ります。「面白そうなキャリアですね!一次面接します」「誰か一緒に面接しましょう。相方募集中です!」といったやり取りがTeams上で日常的に行われ、面接官が決まります。
この際、HRMOSの「社内メモ」タブにTeamsのスレッドリンクを貼り、Teams側にもHRMOSの候補者ページへのリンクを配置します。


和田さん これにより、エージェント(転職エージェント)とのオフィシャルなやり取りや評価ログをHRMOSに蓄積しつつ、社内のカジュアルな意見交換はTeamsで行うというシームレスな運用をしています。
—— 一般的な、人事主導の採用プロセスとはかなり異なりますね。
和田さん 一緒に働く仲間を自分たちで選ぶことが自然ですし、ワクワク感もあると思いませんか? 面接後は必ず複数名でのフィードバック機会を設け、その内容をHRMOSに残して部署メンバーも閲覧できるようにすることで、評価のブレを防いでいます。入社後も、自分たちで選んだ新入社員だからこそ、親身になって教育し、現場に定着するよう支え合うことができるわけです。
こうした運用のためには、社外の人材エージェントへの一括情報共有機能が充実し、かつ社内コミュニケーションのチャネルとも円滑に繋げられるHRMOSは最適な採用ツールでした。
—— 入社後の社員に対するHRテック活用についてはどうでしょうか。
和田さん 人事評価の領域では、「TeamUp」(チームアップ株式会社)というHRツールを使っています。主に1on1ミーティングのスケジュールと内容を管理するシンプルなツールです。用途は月1回あるいは2ヶ月に1回の定期1on1の管理・記録、そして半期に1回の人事評価シートの管理です。
—— 機能だけ聞けば、先ほどお話いただいたTeamsとExcelの併用などで代替できるのでは?
和田さん コンサルティングというビジネスモデルでは、プロジェクトごとに上長が決められ、したがって面談の評価者も頻繁に代わります。1on1の記録や評価をExcelで管理していると関係者間で共有しにくいため、データがバラバラになってしまうのです。TeamUpは、上長が変わってもシステム側でスムーズに対応でき、経営企画室としても実施漏れを簡単にチェックできます。

和田さん 当社の1on1は、現在取り組んでいる案件の話ではなく「入社時になりたかったコンサルタントに近づけているか」「次にどんなプロジェクトに挑戦したいか」といった中長期のキャリアをカジュアルに話す場にしています。メンバーは事前に記入した振り返りメモをもとに上長とディスカッションし、上長もその場でコメントを書き込みます。
つまり、働くなかで個人の心がどう動いたかという情報を長い目で見ていくことになります。本人の成長の歴史を一筋の文脈として蓄積するには、TeamUpはとても便利なツールなんですよ。
DXでコミュニケーションの質を高められるか?
—— HRMOS、TeamUpともに「現場を組織に参加させる」ハードルを下げる効果を生んでいますね。
和田さん 「組織を全員で改善していく」という経営企画室のコンセプトに沿ってライトに使えるツールを選びました。HRMOSもTeamUpも数年前から導入していましたが、経営企画室が立ち上がって以降、現在のような新しい使い方を見つけていったところがあります。
現在は、TeamUp上にそのまま半期の人事評価シートも一体化した運用を試しています。細かすぎる人事評価シートの入力欄を埋めることが目的になってしまうくらいなら、TeamUp上にざっくりと記録し「キャリアについて真剣に対話する時間」を増やしたほうがいいと考えています。

—— ベルテクス・パートナーズでは、もともと「現場の巻き込み」がワークしやすい文化があったのでしょうか。
和田さん そうとは言えません。当社も以前は、部署ごとに壁がありました。パンデミック以降にリモートワーク中心になってからは、月に1回も顔を合わせないメンバーも出てきました。こうしたコミュニケーション不足の課題は、広く中小企業の現場で起きていることだと思います。
それに対して、例えば会社側から「飲み会をしましょう!」と声をかけて集まるのもいいと思います。しかしプロフェッショナル組織ならば、「仕事として一緒に動く」ためのコミュニケーションが活性化されているべきだと考えました。それが本当の意味で風通しが良い会社だろうと。
—— コミュニケーションの量だけでなく、質的な課題もあると。
和田さん そうですね。縦の風通しだけでなく、部門間の淀みを取り払い、主体性を持てる会社にするには?という問題意識から経営企画室が立ち上がり、「やれること、やりやすいことから手を付けよう」とトライしているうちに事業部が参加してくれるようになってきたのです。もちろん、スタート時は「ツールが使いにくい」「費用対効果が合わないのでは?」など懸念や不満も出ました。しかし現場の声を吸い上げられれば、既存の運用も見直せますし、別のツールも試せるわけです。
現在のタスクフォース制にしても、特にお手本になる他社の事例があったわけではないんですよ。いろいろ試すうちにHRツールの活用法も見つかり、結果的に組織づくりが進んでいったのです。
部署発足から8ヶ月。浮かんできた課題は?
—— 発足まもない部署による、バックオフィス施策とHRテックの事例として貴重なお話でした。今後の組織運営についての考えは。
和田さん タスクフォース制とそれを支えるHRツール活用によって、確かに以前よりも風通しは良くなりました。事業部自ら選考に関わって迎え入れた新メンバーを、現場が責任感を持って受け入れるというサイクルも回りはじめています。特に手ごたえを感じるのは、面接官を務める若手コンサルタント自身の視座が上がったことですね。現場の育成施策としても取り組んできて良かったと思います。
その一方で、次のテーマも見えてきています。いま考えているのはタスクフォースの管理体制です。タスクフォース制がワークすればするほど、構成メンバーの責任は重くなってきます。最初は挙手制で参加したのに徐々に抜けにくくなり、業務がオペレーション化してしまう懸念がある。そうなれば当然、モチベーションも下がります。

—— まさに、2年目に向けての課題です。どのように対処しますか。
和田さん 例えばタスクフォースの立ち上げに声を上げた社員と、それを動かす社員を適切に分ける仕組みはどうでしょうか。あるタスクフォースに半年所属したメンバーを、一度フェーズアウトして別のタスクフォースに移す施策も効果があるかもしれません。役割を終えたタスクフォースを閉じる意志決定プロセスも必要になります。
また、タスクフォースのメンバーが本業のコンサルティング業務に集中したいときにはきれいに離任でき、後ろ指を刺されることがない仕組みも重要です。全社員が自分の意志で、永続的に新しい挑戦や経営参画ができるエコシステムを作ることが、これからのチャレンジですね。
そして、自社の組織運営から得たノウハウや学びをクライアントに還元すること。経営企画室の知見を、コンサルティングファームとしてプロジェクトの成功のために役立てていきたいと思います。
HRテックを導入する中小企業担当者へ

—— 最後に、これからHRテックに踏み出す中小企業へアドバイスをお願いします。
和田さん HRテックは業務効率化だけでなく、会社をひとつにする重要な取り組みだと思います。
この数年でシステムやツールのあり方は、大きく変わりました。これまでは高額な費用をかけて自社の業務に合わせたシステムを開発するか、欧米型のように導入したシステムに業務を合わせるかの二者択一がメインだったと思います。しかし今は単機能で優れたSaaSがたくさんあり、AIを使ってピンポイントで自社に合うツールを作ることも容易な時代です。
それによって、バックオフィス領域でも制度をアジャイル(機動的)につくりあげることが可能になりました。
HRツール導入においても、PoC(概念実証)的に小さく試し、現場に触らせてフィードバックをもらい、あるべきツールの機能を考える。そこから生まれる社内の対話が、現場とバックオフィスをつなげ、組織全体を強くしていくと思います。
私たちベルテクス・パートナーズの経営企画室も、スタートから1年足らずの駆け出しの部署です。ですから、他の企業の方々にも、まずは動き出してみることをおすすめしたいですね。
| ■取材協力 株式会社ベルテクス・パートナーズ https://www.vertex-p.com |
| ■本記事で紹介したHRツール HRMOS(株式会社ビズリーチ) 採用から育成・評価、組織改善までをワンストップで支援するクラウドサービス。※本記事では主に「HRMOS採用」を導入。 主な機能:社外エージェントへの一括情報共有、応募者情報や選考ログの一元管理、社内コミュニケーションツール(Teams等)との円滑な連携など。 公式サイト:https://hrmos.co/ TeamUp(チームアップ株式会社) 1on1ミーティングの定着・形骸化防止に特化した対話型HRツール。 主な機能:定期1on1のスケジュールおよび振り返りメモ・記録の管理、異動や上長変更に伴う面談データのスムーズな引き継ぎ、人事評価シートとの一体化運用など。 公式サイト:https://www.teamup.jp/ |
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