金融商品取引法をわかりやすく解説!成立した背景や禁止行為を理解してリスクに備えよう

金融商品に関わる事業を行っている企業ならば、必ず意識しなければならない法律が「金融商品取引法」です。
しかし、「自社の規模ならば気にすることはないだろう」と軽く考え、金融商品取引法についての認識が甘い中小企業も多い状況です。
そこでこの記事では、どのような企業が金融商品取引法の規制対象になるのか、違反した際にはどのような罰則があるのか、などについて詳しく解説していきます。
目次
金融商品取引法とは
金融商品取引法とは、日本における金融商品の取引を規制する法律のことです。
この法律の目的については、金融商品取引法の第1条にて以下のように定義されています。
(目的) 第一条 この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。 |
出典)金融商品取引法
要するに、有価証券やデリバティブ取引などの金融商品に関するルールを定めることで、投資家の保護や経済の円滑化を図る、ということです。
ルールが守られることで金融市場の健全性が保たれ、投資家と企業が安全かつ公平に取引できる環境が整います。
金融商品取引法が成立した背景
金融商品取引法が成立する前は、投資に関する法律が複数存在しました。
たとえば、以下のような法律です。
- 証券取引法
- 金融先物取引法
- 外国証券業者に関する法律
- 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
- 抵当証券業の規制等に関する法律
しかし、これらの法律は規制内容や対象が分散しており、一貫性や包括性に欠けることが課題となっていました。
こういった問題が背景にあったことから、複数の法律を統合して統一的な規制を実現するため、2006年に金融商品取引法が制定されたのです。(施行は2007年)
参考)金融庁「金融商品取引法について」
金融商品取引法の規制対象
金融商品取引法の規制対象となる金融商品は、大別すると「有価証券」と「デリバティブ取引」の2種類になります。
有価証券
有価証券とは、財産的価値を持つ権利を証券の形で表したものです。
具体的には、以下のようなものがあります。
- 株式
- 債権(国債・社債・地方債など)
- 投資信託の受益証券
これらの有価証券は、投資や資金調達の手段として金融市場で広く取引されています。
また、「みなし有価証券」というものも存在します。
みなし有価証券とは、形式上は有価証券に該当しないものの、実質的には有価証券として機能する金融商品のことです。
金融商品取引法では、みなし有価証券も規制対象となります。
みなし有価証券の具体例としては、「集団投資スキームの持分」や「ファンド型投資」などが該当します。
このような金融商品も規制の対象となったことから、従来の法律では対象外だった新しい投資形態も、適切な規制を受けるようになりました。
参考)金融庁「新しい金融商品取引法制について」
デリバティブ取引
デリバティブ取引とは、株式・通貨・金利・債権といった「基礎となる原資産」から派生した金融商品の取引を行うことです。
デリバティブは、「金融派生商品」とも呼ばれます。
デリバティブ取引は、リスクヘッジや投機目的で利用されることが多く、その多様性と複雑性から厳格な規制の対象となっています。
なお、主なデリバティブ取引としては以下のようなものがあります。
- 商品先物取引(原油や金など)
- オプション取引(株価オプションや通貨オプションなど)
- スワップ取引(金利スワップや通貨スワップ)
こういったデリバティブ取引も、金融商品取引法の対象です。
参考)金融庁「新しい金融商品取引法制について」
【中小企業必見】金融商品取引法の規制対象に該当する事業者
中小企業の場合、金融商品取引法をあまり深く理解しておらず、「自社が規制対象に該当するのかわからない」というケースもあるでしょう。
知らずに金融商品取引法違反を犯すようなことないよう、規制対象となる事業について把握しておくようにしてください。
なお、規制の対象となるのは主に以下のような事業を営んでいる企業です。
- 第一種金融商品取引業
- 第二種金融商品取引業
- 投資運用業
- 投資助言・代理業
それぞれ、詳しく解説していきます。
第一種金融商品取引業
金融商品取引法における「第一種金融商品取引業」とは、有価証券やデリバティブ取引などの金融商品を取引の対象として行う業務のうち、高いリスクを伴うものを指します。
たとえば、以下のような取引業です。
- 流動性の高い有価証券の売買・勧誘
- 引受け
- 店頭デリバティブ取引
- 資産管理
第一種金融商品取引業は、顧客のリスクが高い取引が中心となるため、金融庁の登録を受け、資本金要件や内部統制など、厳格な基準を満たす必要があります。
こういった事業を営んでいる中小企業は、特に金融商品取引法についての理解を深めなければなりません。
参考)財務省「金融商品取引法制について」
第二種金融商品取引業
金融商品取引法における「第二種金融商品取引業」とは、第一種金融商品取引業よりもリスクが低い金融商品を取り扱う業務を指します。
たとえば、以下のような取引業です。
- 流動性の低い有価証券の売買
- 勧誘 ・自己募集
- 市場デリバティブ取引
リスクレベルが比較的低いため、第一種に比べて規制がやや緩やかであるものの、適切な情報開示や投資家保護の規定は同様に求められます。
参考)財務省「金融商品取引法制について」
投資運用業
金融商品取引法における「投資運用業」とは、他人から預かった資産を運用し、その運用成果を投資家に分配する業務を指します。
たとえば、「投資顧問契約」や「投資一任契約の締結の代理や媒介」などです。
投資についての顧問やコンサルタントを担っている場合、中小企業も投資運用業に該当します。
参考)財務省「金融商品取引法制について」
投資助言・代理業
金融商品取引法における「投資助言・代理業」とは、投資家に対して金融商品の価値や取引に関する助言をしたり、投資家の代理として取引を行ったりする業務のことを指します。
この業務は、投資家が適切な投資判断を行う手助けをするために重要な役割を担っています。
企業として「投資に対するアドバイス」や「投資の代理業務」を担っている場合、投資運用業と同様に企業規模を問わず該当するため、注意が必要です。
参考)財務省「金融商品取引法制について」
金融商品取引法における禁止行為や規制内容
金融商品取引法では、以下のような内容に対して規制しています。
- インサイダー取引
- 販売や勧誘に関する規制
- 上場会社に対する開示義務
それぞれ、詳しく解説していきます。
インサイダー取引
インサイダー取引とは、企業の内部者や関係者が、まだ公表されていない重要な情報をもとに、株式やその他の有価証券を取引する行為を指します。
金融商品取引法では、公正な市場を守り投資家を保護するため、インサイダー取引に対して厳しく規制しています。
中小企業の場合、「自社は上場していないから関係ない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、上場企業との取引がある場合には「関係者」に当たります。
上場企業との取引で知り得た情報を活用して金融取引を行った場合、インサイダー取引に該当する可能性があるので注意すべきです。
参考)金融庁「新しい金融商品取引法制について」
販売や勧誘に関する規制
金融商品取引法では、事業者が金融商品を販売・勧誘する際のルールについて細かく定められています。
まず、金融商品を契約する際には、その商品の仕組みやコスト、リスクについて詳しく説明した書類を渡さなければなりません。
そして、損失が出た場合でも、その補償をすることは禁止されています。
また、「適合性の原則」についても強く意識する必要があります。
この原則は、金融商品取引業者が投資家の知識や経験、財産の状況をきちんと考慮し、その人に合った商品を提案する義務があるというルールです。
こうした規制によって、投資家が安心して取引できる環境が整えられています。
参考)金融庁「新しい金融商品取引法制について」
上場企業に対する開示義務
金融商品取引法では、投資家が適切な判断を下せるように、上場企業に対して必要書類の開示義務を課しています。
適切に書類が開示されることにより、投資家は投資対象企業の財務状況や経営に関する情報を収集することができるのです。
上場企業が公開すべき書類には、以下のようなものがあります。
- 有価証券報告書
- 四半期報告書
- 臨時報告書
中小企業にとっては、「上場企業が開示すべき書類」について無縁だと感じるかもしれませんが、将来上場する予定があるような場合は意識しておくべきです。
参考)金融庁「新しい金融商品取引法制について」
金融商品取引法違反となった際の罰則
金融商品取引法に違反した場合、「刑事罰」「業務改善命令等」「課徴金納付命令」といった罰則が科される可能性があります。
刑事罰の例 | 粉飾決算に対しては、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金。無登録で金融商品取引業を行っていた場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはどちらも科される。 |
業務改善命令等の例 | 業務の進め方に問題がある場合は、金融庁が業務の改善について必要な措置を取るように命令できる。違反の内容が悪質な場合は、業務停止や登録取り消しとなることもある。 |
課徴金納付命令の例 | インサイダー取引や開示すべき書類を提出しなかった場合、違反者に対して課徴金の納付が命じられることがある。課徴金は行政罰のため前科はつかないものの、違反内容によっては数百億円という金額が科される可能性もある。 |
いずれの罰則であろうと、企業としての信頼を失ってしまう可能性が高いので、金融商品取引法の遵守を徹底するようにしてください。
参考)金融商品取引法
まとめ
中小企業の経営層の中には、「金融商品取引法など自社には無縁なものだ」と思い込んでいるケースもあるでしょう。
しかし、ここまで解説してきた通り、場合によっては金融商品取引法の規制対象に該当することも珍しくありません。
自社が金融商品取引法の規制対象に該当するのかどうかについて、今一度正確に把握し、該当するようならば適切な対処をするようにしてください。
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しかし、一方で運用を誤ると労働基準法違反や従業員とのトラブルにつながるリスクも存在します。
たとえば、固定残業代の時間数や金額を明確に説明しなかったり、法令で定められた時間外労働の上限を超える形で設定した場合には、違法行為と判断されることもあります。
そのため、固定残業制度を導入する際には、法律を十分に理解した上で、就業規則や契約書、求人情報への適切な記載が必要です。
この記事では、固定残業制度とはなにかや導入する際に注意すべきポイントについて、具体例を交えながらわかりやすく解説します。