反社チェックのやり方は?どこまでやるべきか、使えるツールなどを解説

企業が健全な経営を続けていくためには、反社会的勢力との関係遮断が不可欠です。特に中小企業では、取引先や業務委託先に対する「反社チェック(反社会的勢力との関係有無の確認)」が十分に行われていないケースも見受けられます。
この記事では、そもそも反社チェックとは何か、なぜ今注目されているのかを押さえたうえで、中小企業でも実行可能な具体的な方法を解説しますので、ぜひご覧ください。
また、反社チェックは中小企業のコンプライアンス違反を守るために、必要不可欠な施策といえます。以下の資料では中小企業が実施すべきコンプライアンス項目をチェックシート形式で紹介していますので、ぜひダウンロードしてください。
目次
反社チェックとは何か?
反社チェックとは、取引先や関係者が暴力団などの反社会的勢力と関係していないかを確認する作業のことです。
企業が反社会的勢力と関係を持つと、企業の信用失墜や取引停止、法的リスクに直結します。そのため、契約前や定期的に対象者の情報を調査し、リスクの芽を早期に摘むことが必要です。
最近では、反社チェックの実施を取引条件とする企業も増えており、特に下請け企業やフリーランスとの契約時にも必要とされています。
参考記事:コンプライアンス違反の事例6選!リスクを学んで企業の対策を
なぜ今、反社チェックが重要視されているのか
近年、企業の社会的責任(CSR)やコンプライアンス重視の流れが強まっているのが現状です。反社会的勢力との関係遮断は当然の責務となっています。
さらに、暴力団排除条例の全国施行以降、取引先管理への法的・社会的要請が高まり、反社チェックの実施は企業の信頼性を左右する重要項目となりました。
中小企業においても、知らずに関係を持ったことで行政処分や取引停止に発展する事例があるため、規模を問わず対策が求められています。
中小企業向け:反社チェックのやり方|無料ツール〜専門機関の使い方まで
反社チェックには複数のアプローチがあり、中小企業でもコストやリソースに応じた対応が可能です。まずは無料でできる公知情報の確認から始め、必要に応じて専門機関やツールを活用しましょう。
ここでは、実務的に使える4つの方法を紹介します。
Google検索・SNS検索などの公知情報の確認方法
もっとも手軽に始められるのが、Googleなどで会社名や個人名を検索し、過去の報道や評判を確認する方法です。
「会社名+逮捕」「代表者名+暴力団」などのキーワードを組み合わせて調べます。X(旧Twitter)やFacebook、掲示板も参考になりますが、情報の信憑性には注意が必要です。
定期的にチェックする習慣をつけると、リスクの早期発見につながります。
警視庁・全国暴力追放運動推進センターへの照会
警視庁や全国暴力追放運動推進センターに相談する方法もあります。企業が反社との関係に懸念を持つ場合、事前相談や情報提供が可能です。
ただし、警察が持つ情報は基本的に開示されないため、捜査機関としての対応に限られる点を理解しておきましょう。各地の暴追センターでは、講習や相談窓口も設けられており、教育・啓発目的にも活用できます。
反社チェックツールを使った方法(無料・有料)
反社チェック専用のツールも多く登場しており、手間を省きつつ一定の網羅性が得られます。新聞記事データベースや独自のリストを活用した有料サービスなど、幅広い選択肢があるのが魅力です。
ただし利用料がかかるため、中小企業としてはコストを計算しつつ導入する必要があります。
調査会社・興信所に依頼する方法
調査会社や興信所に依頼すれば、表に出にくい情報まで踏み込んだ調査が可能です。重要な取引の前には特に有効です。
ただし、費用は高額になりがちで、内容によっては数十万円単位になることもあります。中小企業にとっては、必要性とコストを慎重に判断することが重要です。
【誤解しやすい】警察への相談や照会は可能か?
反社チェックといえば「警察に聞けばわかるのでは」と考える方も多いですが、実際にはそう簡単ではありません。
警察が保有する情報は原則として捜査目的に限られます。民間企業が個別に反社会的勢力かどうかを照会しても、回答を得られるケースは非常に限定的です。
定期的な確認先として警察を当てにするのは現実的ではありません。他の方法と併用しましょう。
ただし、反社との関係が疑われる具体的な事情がある場合や、トラブルが発生している場合には、相談に乗ってもらえることがあります。
【どの情報までやるべき?】チェック項目と判断基準
反社チェックでは、どの情報をどこまで調べるかの基準設定が重要です。あいまいだと、リスクの見落としや過剰対応につながる可能性があります。
このセクションでは、法人・個人のどの範囲まで確認すべきか、また「要注意」とされる具体的なポイントを整理します。
チェックすべき法人・個人情報とは
反社チェックの対象は、取引先企業だけでなく、代表者・役員・出資者など関係する個人にも及びます。
過去に不祥事を起こした人物や、暴力団との関係が取り沙汰された人物が経営に関与していないかを調べることは潜在的なリスク回避の上で重要です。
「引っかかる」とされるケースと注意点
反社チェックにおいて「引っかかる」とされるのは、必ずしも暴力団そのものに属しているケースだけではありません。暴力団との関係性が疑われるような言動・経歴や、行政処分・風評なども判断材料となります。
しかし、確認された情報が事実なのか単なる噂や古い報道かを見極めることが重要です。以下に、よくある「引っかかる」ケースと、その注意点をまとめた表を示します。
ケースの種類 | 具体例 | 注意点 |
暴力団との関係性 | 経営者が反社会的勢力との関係を報道された | ソースが一時的な報道か、複数の信頼性ある情報かを確認 |
行政処分歴 | 金融庁や厚労省から処分を受けた法人・役員 | 処分内容が現在も影響を及ぼすかを精査する |
訴訟・トラブル歴 | 過去に複数の民事訴訟に関与 | 訴訟内容が反社会的行動に該当するかを確認 |
風評・噂レベルの情報 | SNSや掲示板で「反社」「関係がある」と言及されている | 一次情報(報道・登記・公文書)と照らし合わせて判断する |
名前の一致 | 反社リストと取引先名が同一 | 同姓同名の可能性もあるため、登記住所や関連会社の照合が必要 |
特に「SNSや匿名掲示板などに書き込まれた噂レベルの情報」まで鵜呑みにしてしまうと、通常の企業・個人を誤って「反社」と判断するリスクもあります。こうした誤認は、名誉毀損や信用毀損といった法的リスクに発展するおそれがあるため、注意しましょう。
したがって、複数の情報ソースでクロスチェックを行うことが、リスクヘッジの基本となります。
反社チェックの実務ポイント
反社チェックは「やって終わり」の対応ではいけません。タイミングと範囲を定めて定期的に実施することがリスク回避につながります。
特に中小企業の場合、リソースの制約があるため「どこまで、いつやるか」を明確にしておくことが重要です。
チェックすべきタイミング(取引開始時・定期更新など)
反社チェックを行うべき主なタイミングは以下の通りです。
タイミング | 具体的な例 | 備考 |
取引開始前 | 新規取引先との契約前、フリーランスとの初回契約 | 信用調査として実施するのが理想 |
定期的な更新 | 年1回・半期ごとなど社内基準に沿って再チェック | 取引先の状況は変化するため定期更新が望ましい |
イベント時 | 経営陣の交代、企業合併、資本関係の変化など | イレギュラー時は追加確認が必要 |
社内監査・外部監査時 | コンプライアンス監査やISMSなどの監査対応時 | チェック実施履歴の記録も重要 |
このように、初回だけでなく「継続的な確認」がガバナンス強化には不可欠です。
どのステークホルダーまで調査すべき?(一次請け・個人業者など)
反社チェックの対象範囲も、明確に線引きすることが必要です。中小企業においては、以下のような関係者のチェックが推奨されます。
ステークホルダーの種類 | チェックの要否 | 理由・補足 |
一次請けの外注先・業務委託先 | 必須 | 自社ブランドや製品の品質に直結するため |
営業代行・紹介会社 | 原則実施 | 顧客とのトラブルが発生した場合に連携責任が生じる可能性あり |
フリーランス・個人事業主 | 場合による | 金額や継続性によって判断(高額・継続なら実施) |
サプライヤーの下請け(二次・三次) | 優先度低め(要検討) | トラブル時の波及範囲を想定し、リスクが高ければ対応を検討 |
特に契約の締結前と金銭授受の前には、一次請け業者と主要なフリーランスに絞って実施するのが現実的です。
おすすめの反社チェックツール3選
反社チェックを効率よく行うためには、専用のツールを導入するのも一つの手だといえます。中小企業でも導入しやすいツールを3つ紹介しますので、参考にしてください。
RISK EYES【要見積もり~/法人向け】
RISK EYESはWebニュースや新聞、公知情報をAIで自動スクリーニングし、反社リスクや制裁リスト該当を簡潔にレポート化するツールです。
以下が主な特長になります。
- 全国の反社情報を独自データベースで網羅
- 過去の新聞記事や登記情報など多角的に調査可能
- AIによるスクリーニングで業務効率も向上
- 契約は法人単位で、月額・年額のカスタムプラン制
反社リスクを包括的に調査できる高度な法人向けツールで、金融・不動産などの業種での導入実績も豊富です。
RoboRoboコンプライアンスチェック【月額5,000円(税別)~/法人向け】
RoboRoboコンプライアンスチェックは「Google/新聞/掲示板」の情報をAIで分類・要約し、注目度ごとに結果を自動抽出してくれる機能があります。
そのほか、以下が主な特長です。
- 導入ハードルが低い月額サブスクリプション型
- 反社情報に加え、訴訟履歴・風評チェックも可能
- 検索数ベースのプランがあり、少数企業にも適応
小規模企業でも取り入れやすい価格設定で、反社チェックを日常業務に組み込みたい企業に最適だといえます。
Sansan【要見積もり/法人向け】
名刺管理ツールSansanに搭載されたリスクチェック機能です。名刺データ取り込みだけで自動スクリーニングしてくれます。
以下が主な特長です。
- 名刺管理の延長で、取引先のリスクスコアも確認可能
- 既存のSansanユーザーであれば導入がスムーズ
- 複数部門との連携で、企業全体のリスクマネジメントに貢献
営業支援ツールとして有名なSansanには、コンプライアンス支援機能も搭載されており、情報の一元管理に強みを持っています。
まとめ
反社チェックは、コンプライアンスの強化と取引先リスクの最小化に欠かせない重要なプロセスです。特に中小企業にとっては、「知らなかった」では済まされないリスクが存在します。
現在は低コストで導入できるツールも多く、最小限のリスクで最大限の安心を得ることが可能です。取引開始前のリスク検知は、企業の信頼を維持するための“守りの要”ですので、自社に適したチェック体制の構築を推進しましょう。
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