【人事の本音】返信率がグッと跳ね上がるスカウトメール術
中小企業・地方企業の採用戦略において、募集要項の最適化と並ぶ強力な武器が「スカウトメール(ダイレクトリクルーティング)」。
知名度や資本力では大手企業に劣るとしても、求める人材へ直接ピンポイントにアプローチして採用に繋げている企業は少なくありません。
エン・ジャパンが発表したユーザー意識調査によると、求職者の81%がスカウトメールの受信経験があり、良い点として53%が「想定していなかった企業・仕事と出会える」と前向きに回答しています。
しかし一方で、良くない点としては「一斉送信のようなメールが多い」(59%)、「自分の希望しない業界・職種の求人が多い」(52%)と答えています。「『職務経歴を拝見した』と冒頭にあるのに、明らかに希望していない職種でテンプレだと分かって落胆した」といったリアルな声も多く、求職者にネガティブな印象を与える場合もあることがデータからも読み取れます。
(『「エン転職』ユーザー3800人に聞いた「スカウトメール」意識調査」出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000819.000000725.html)
では、最適なスカウトメール作成の方法とは? 文面や送り方によって、採用の成果はどのように変わるのでしょうか。
マモリノジダイ編集部では、インターネット上のHow to記事や書籍、各種のスカウトメール成功事例を調査。さらに地方企業の人事担当者(人事歴16年)に匿名でヒアリングし、実務に役立つキャリア採用成功の考え方を整理しました。
「スカウトメールを送っても、開封すらされない……」
「本文は長く丁寧に書くべきか、短く簡潔にするべきか?」
「開封されても返信率が低い......何が原因なのか?」
そんな悩みを持つ、人事担当者の参考になる情報をまとめました。
一般論だけでなく、各社のリアルな考え方も踏まえながら、自社の採用戦略にお役立てください。
目次
取材に協力いただいた人事担当者
「業界内では中堅だが、社名で採用できるほど有名ではない地方企業グループ」の人事部リーダー。人事として2社経験、人事歴16年。
社名非公開。IT業界。本社・中部地方。グループ全体での従業員1,500~2,000名規模。
現在はグループ企業4社から採用相談を受け、従業員数10名~1,300名、オフィスは都心~地方まで多様な職種の採用に関わっている。
毎年、自社とグループ会社で新卒・中途合わせて60名程度を採用。
はじめに:スカウトメールの最適な作成体制は?
悩み:スカウトに割ける予算も工数も足りない……
少数精鋭の組織や専門性の高い職種では有効なスカウトメール。
しかし、いざ導入しようとすると「毎日の候補者選定や文面作成だけで人事のリソースが圧迫されてしまう」「『ひとり人事』の体制ではとても回しきれない」という工数の壁にぶつかります。限られた予算と工数の中で効果を上げるにはどうすればいいのでしょうか。
データと一般論:有料ツールの導入と配信自動化・外注のセオリー
メディアや書籍を調査すると、ダイレクトリクルーティングを成功させるためには「人事のスカウトメール専任体制を敷く」「人材エージェント専用の有料スカウトデータベースを契約する」といったセオリーが多く見つかります。
社内のリソースが不足している場合は、文面作成や配信作業を外部の「スカウト専門アウトソーサー(代行業者)」に委託し、母集団形成のスピードと質を担保する体制構築を推奨する記事も。
リアルなスカウトメール作成の現場ではどうでしょうか。コメント協力いただいた人事担当者の意見を聞いてみましょう。
人事担当者の本音!~予算・工数の現実について~
当社グループでもスカウトメールは毎日作成・送信しており、特に従業員数十名規模の少数精鋭の子会社や、専門性が高い職種のキャリア採用には有効な手段だと考えています。
スカウトメールを内製で行うか、外部の手を借りるかというところですが......たしかに難しいですよね。過去に大手の有料ツールを契約したり、人材エージェントから紹介された専門のアウトソーサーに入ってもらったことがあります。その結果は......実は非常に良好でした。メール執筆も上手で、優秀な人材の採用まで至りました。さすがはプロ! と驚きました。
でも、やはりコストがかかります。現場本位の話をすると、ダイレクトリクルーティングのアウトソーサーや有料のデータベース活用は、採用できてもできなくてもそれなりの先行投資が発生します。そのため予算の乏しい中小企業や、「ひとり人事」の部署にはハードルが高い。当社でも費用対効果を考え、アウトソーサーの契約は続けていません。
だからこそおすすめしたいのが、「人材エージェントの契約に紐づいている、お金のかからない無料のスカウト機能」を積極的に使うことです。
文章を作り込む必要がなく、データベースに対してポチポチとボタンを押すだけで、応募があった時だけ成果報酬を支払えばいいオプション機能がたくさんあります。
媒体の担当者とコミュニケーションを取り、活用の方法を工夫すれば、かなり使えます。
採用ターゲット:「売り」を増やすために事業部の力を借りる
悩み:知名度のない中小企業に、振り向いてもらえるのか?
次の悩みは、スカウトで打ち出す「自社の魅力(売り)」についてです。テレビCMを打っているような有名な大手企業なら、社名だけでスカウトメールを開封してもらえるでしょう。
しかし知名度のない地方・中小企業の場合は......? 自社のスペックに自信が持てず、何をフックにして口説けばよいのか悩んでいる人事担当者が圧倒的大多数。どのように「引き」を持たせるべきなのでしょうか。
データと一般論:ターゲットの属性や地域特性に合わせて訴求点を選ぶ
一般的な採用ノウハウでは「ターゲットの属性(若手・即戦力など)や地域特性に応じて、募集要項やスカウトで打ち出す『売り(訴求点)』を明確に分けるべき」とされています。
経験豊富な即戦力層向け:裁量の範囲、マネジメントへの挑戦機会、現在の事業や組織の課題
若手・ポテンシャル層向け:入社後の研修・OJT、先輩のフォロー、残業時間や在宅勤務などの働きやすさ
地方企業の採用向け:地元密着の貢献実感、転勤なし、UIJターン支援、生活の質の豊かさ
ターゲットが「現職で何に不満を持ち、転職で何を叶えたいのか」というインサイトを捉え、メッセージを最適化していくことが応募獲得のセオリーです。
では、実際の採用業務では、大手を狙う求職者とどう差別化しているのでしょうか?
人事担当者の本音!~大手との差別化とターゲット訴求について~
地方の中小企業が大手企業と同じような見せ方で打ち出しても絶対に勝てません。だからこそ、大手にはない「中小企業ならではの強み」を引き出しとして多く作っておく必要があります。
例えば大企業は、制度がしっかり整っている反面、ガチガチに固まっていて一社員の意見で仕組みを変えることはできませんし、組織も縦割りです。一方で、当社グループのような中小規模の会社であれば、「まだ制度が定まりきっていないからこそ、自分の意見が反映されやすいし、一緒に組織を作っていける、拡大フェーズなんだ!」といった切り口を出せます。言い方を工夫することで、大手にはない魅力として打ち出しています。
誰向けに書くかも重要ですね。指示待ちの傾向が強い保守的な若手に「拡大フェーズだ、みんなで頑張ろう」と打ち出してもうまく響きません。むしろ入社後のフォロー体制を書いたほうがいいかもしれない。中堅層には「上が詰まっている焦り」に対してやれる幅の広さが刺さるかも......などと考えて出し分けています。
さらに、地方企業なりの引き出しもあります。地方の求職者は東京のように「同職種でのキャリアアップ」を求めて頻繁に転職しません。次も同じ職種に就くとは限らない潜在層が多いのです。そのため、キャリアの魅力を語るよりも「転勤なし」「残業月5時間以下」「18時退社」といったライフスタイル軸を最前面に押し出すスイッチングが有効でした。
こうした「引き出し」をできるだけたくさん持っておきたいと思います。そのために私は、採用予定の事業部にヒアリングできるようにしています。日々の業務で忙しい事業部に採用に協力してもらうのは大変ですが、いざというとき、本当に助けてくれるのは実際に現場で働いている社員です。
スカウトメールの文面:募集要項の訴求軸からブレずに短く届ける
悩み:開封・返信されない......!
次の悩みは、最も多くの人事が頭を抱える「文面の書き方」についてです。「本文は長く丁寧に熱意を込めて書くべきか、それとも短く簡潔にするべきか?」「他社と同じような型通りの文章を並べるだけでは埋もれてしまうのではないか」と、書き方の正解が見えずに悩んでいる方は多いはず。一般論では、スカウトメールならではの「求職者その人」にあてた作成法が並んでいます。
データと一般論:「個人」に届けるためのカスタマイズと成功事例
一般的にスカウトメールは、表題(件名)、本文(導入、個別メッセージ、自社・ポジションの魅力、返信を促すメッセージ、各種リンク)で構成されます。なかでも重要とされるのが、メールの開封判断に直結する「表題」です。
開封したくなるタイトルにするために、各種メディアで一貫して強調されているのが「求職者個人に応じた書き分け(パーソナライズ)」です。エージェントの求職者ページで個別のスキル・経歴を理解したうえで、以下の3点を文面にカスタマイズすることが重要とされています。
・なぜ「あなた」にスカウトメールを送ったのか?
・経歴やスキルのどこに注目したか?
・自社のポジションでどう活かせるか?
また、いきなり選考するのではなく、まずは情報交換など低いハードル(カジュアル面談)でコミュニケーションを始めることが有効とされています。各種のスカウトメールの成功事例を調査すると、以下のようなオリジナリティあふれるアプローチが多数見つかります。
送信者を工夫する:「CTOから直接、具体的で熱量の高いメッセージが届いた」(エンジニア)
スピードを高める:「プロフィールを更新した直後、自分の志向性にマッチしたスカウトメールが届き、思わず返信した」(Webディレクター)
ライフスタイルに注目する:「条件面(18時退社など)をポジティブに解釈してくれる内容だった。今の自分の生活環境を尊重してくれていると感じ、心が動かされた」(育児中の求職者)
実際の採用現場では、スカウトメールの文面とどのように向き合っているのでしょうか。
人事担当者の本音!~スカウトメール運用のコツ~
私が文面作成で気を付けているのは「どれだけ短く簡潔に書くか」です。こだわって書こうとすればキリがありませんから、タイムパフォーマンス(タイパ)を意識しています。
募集要項と同じように、スカウトメールにも「表示文字数制限」や「読まれやすいキーワード」があり、エージェントのルールに合っていないとそもそも開封されません。このルールは必ずエージェントの担当者に確認するようにしています。
冒頭部分では「〇〇のご経験を拝見してご連絡しました」「私たちとこんな仕事をしませんか?」といった、求職者から拾った事実をもとにテンプレートを少しアレンジした特別なメッセージを書きますが、詳しい仕事内容や条件などは募集要項で見てもらおうと割り切っています。
選考前に「スカウトメールだけ」を読んで承諾する求職者はいませんよね。必ず募集要項を確認してくるわけですから、スカウトメールは募集要項へ遷移させる役割(導線)と考え、コストをかけすぎずにたくさん打っていくことが大切と考えています。
スカウトメールの送信:実はもっとも重要な「タイミング」
悩み:スカウトメールは「いつ」送ったらいい?
次の悩みは、「スカウトメールを送信する時間帯」についてです。条件に合致したターゲットへ「いつでも、手が空いた時に送ればいいのか」、それとも「効果的な曜日や時間帯があるのか」、送信タイミングの基準に悩んでいる担当者は多いのではないでしょうか。
データと一般論:配信自動化による網羅と予約配信の利便性
多くのスカウトシステムには、条件に合致したターゲットへ自動でスカウトメールを配信する機能や、予約配信機能が備わっています。一般論としては、人事が作業できる手の空いた時間(日中のコアタイムや、あるいは夜間のデスクワーク時)にまとめて文面を作成し、システムの設定に従って機械的に配信を回していく手法が効率的であるとされています。
実際の現場では、送信時間についてどのように考えているのでしょうか。
人事担当者の本音!~配信時間について~
誰でも今日から実行でき、コストをかけずに返信率を上げる最大のテクニックは、結局「送信タイミング」だと思います。
内容ももちろん大事ですが、求職者には毎日何十通もスカウトが届くわけですから、開封されなければ意味がありません。「スマホを使っているときに通知が来て、思わず開いてしまう」。この状態を目指したいです。
私が意識しているのは、「通勤時間の7:30~8:30」「退勤時間の18:30~19:30」「お昼休みに入る直前の11:30~12:00」。午前10時に送ったメールは、昼までにはすでに他社のメールの下に埋もれていると思っています。
また、いくら求職者の手が空いているからといって、休日や夜中の遅い時間には絶対に送りません。午前3時にスカウトが届いたら、一発でブラック企業のイメージがついてしまいますから。
営業時間内の、求職者が自然とスマホを触る絶妙な時間帯を攻めたいですね。
スカウトメールのPDCA:返信率「1%」でもOK。改善が大切
悩み:返信率が低すぎて、改善の基準が定まらない
最後は、スカウトメールの効果測定と改善(PDCA)についてです。送ったスカウトへの反応(開封率・返信率)を見ながら、タイトルやターゲット、文面を修正していく必要があります。しかし、返信が1通も来ない日々が続くと、「何が悪いのか」「どこまで改善すれば合格ラインなのか」の基準が見えなくなり、モチベーションが維持できなくなる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
データと一般論:データ分析によるKPI管理とABテスト
メディアや書籍を調査すると、スカウトメールの改善には、コンバージョン率(CVR)の視点を取り入れたファネル管理が有効であるとされています。
具体的には、以下の4つのプロセスごとに数値を可視化します。
①スカウト配信数
②開封率
③リンク(求人票)遷移率
④返信率
転職サービスのミイダスの調査では、スカウトメールの平均返信率は2〜10%程度とされています。
(ミイダス・人材アセスメントラボ 出典:https://corp.miidas.jp/assessment/19305/ )
しかし、これは大手企業なども含めた全体平均であり、知名度のない地方・中小企業にとっては非常にシビアな市場環境であるのが現実です。
開封率が低い場合は、まず「件名(タイトル)」のABテストを行い、開封率の向上を狙います。また、開封されているのに返信が来ない場合は、本文の個別メッセージの具体性や、ターゲット設定そのものにズレがないかを検証し、原因を細分化してアップデートしていくのが一般的なPDCAの手法です。
プロセスごとの数値を可視化し、件名のABテストによって開封率を上げ、本文を磨くことでコンバージョン率(CVR)は着実に高められると解説されるのが一般的です。
しかし一方で、CIRCUS株式会社が行った企業へのアンケート調査によると、主要4媒体(「BIZREACH」「doda ダイレクト」「リクルートダイレクトスカウト」「Wantedly」)全てで、もっとも多くの企業がスカウトメールの返信率は「1〜3%」と回答しています。教科書通りの高返信率を叩き出せる企業は一握りであるというシビアな実態があるようです。
実際の現場では、どの程度の数値を基準にPDCAを回しているのでしょうか。
人事担当者の本音!~スカウトメールの改善について~
他社の成功事例で「返信率10%超え!」といった華やかな数字を見かけることもありますが、IT業界の売り手市場や、当社グループのような認知が高くない中小企業の場合、スカウトメールの返信率は1%が目標。3%もあれば大喜び、というのがリアルな感覚です。大手のスカウト事情とは訳が違うという現実を、まずは人事が受け入れる必要があります。
How to記事にはさまざまな改善ノウハウが載っていますが、私の実感では、この箇所を変えたら効果が劇的に改善した......というような「必殺技」もありません。
だからターゲットに響くシンプルな文面で、配信時間を工夫しながらひたすら数を打っていく。たまたまメールを見ていない可能性もあるので、どうしても欲しい人には時間を変えてリマインドメールを送ることも。一喜一憂せずに繰り返していくことが大事なのかなと思います。
スカウトメール成功の鍵は社内や人材エージェント担当者との関係性
中小企業のキャリア採用におけるスカウトメールは、現場からターゲットが惹かれるリアルな引き出しを集め、人事が候補者に伝わる表現へ整え、エージェント担当者に媒体上の見え方や候補者の最新の反応を聞くなどの連携が重要です。
他社の成功事例にとらわれずに、自社だけの勝ちパターンに向けてトライし続けることこそが、理想の社員を引き寄せるために大切ではないでしょうか。
参照データ:
エン・ジャパン株式会社「『エン転職』ユーザー3800人に聞いた「スカウトメール」意識調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000819.000000725.html
ミイダス(人材アセスメントラボ)「ダイレクトリクルーティングの平均返信率は何%?スカウトメールのコツも例文付きで解説」
https://corp.miidas.jp/assessment/19305/
CIRCUS株式会社「スカウト採用についてのアンケート調査!返信率とカスタマイズの関係を分析」 https://note.com/circus_note/n/n4c654a4c9930

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