【人事の本音】中途採用がうまくいく募集要項の書き方

中小企業・地方企業の採用戦略は、「新卒」よりも「中途採用」。そのために人材エージェントを利用している企業は少なくありません。
一部調査によると、20代の若手が転職時にエージェントを利用する割合は、2023年から3年連続で50%を超えています。
(ハタラクティブ「若者しごと白書2025」 出典:https://hataractive.jp/partner/whitepaper/youthwork2025/

エージェントの活用は、企業が採用市場にアクセスするための現実的な選択肢と言えます。

では、エージェントに掲載する募集要項(仕事内容や給与、勤務地などの条件)によって、採用の成果は変わるのでしょうか?
マモリノジダイ編集部では、インターネット上のHow to記事や書籍、エージェントに対する口コミを調査。さらに地方企業の人事担当者(人事歴16年)に匿名でヒアリングし、実務に役立つキャリア採用成功の考え方を整理しました。

「採用目標の人数がクリアできない......募集要項の内容はこれでいいのか?」
「募集要項を書き直したいが、どの点に気を付ければ?」

そんな悩みを持つ、人事担当者の参考になる情報をまとめました。
一般論を知るだけでなく、個別の会社の考え方も理解し、自社の採用戦略にお役立てください。

取材に協力いただいた人事担当者

「業界内では中堅だが、社名で採用できるほど有名ではない地方企業グループ」の人事部リーダー。人事として2社経験、人事歴16年。
社名非公開。IT業界。本社・中部地方。グループ全体での従業員1,500~2,000名規模。
現在はグループ企業4社から採用相談を受け、従業員数10名~1,300名、オフィスは都心~地方まで多様な職種の採用に関わっている。毎年、自社とグループ会社で新卒・中途合わせて60名程度を採用。

はじめに:募集要項の作成は人事だけの仕事なのか?

悩み:募集要項の内容が「薄い」......

人事担当者の方から多く聞かれる悩みは、「自社の募集要項は、どこか魅力に欠ける」「内容が薄くなってしまう」ということです。

募集要項には、仕事内容、応募資格、給与、勤務地、勤務時間、休日などを記載します。人材エージェントごとに入力項目やフォーマットがあるため、自社サイトや採用資料の情報を要約すれば、ひとまず形にすることはできますが......その内容で本当に求職者に採用ターゲットに魅力が伝わるのか? 仕事内容が抽象的になっていないか? 現場のリアルな働き方が抜け落ちていないか? と不安になる方も多いのではないでしょうか。

データと一般論:「最初の採用接点」として現場を知る努力を

多くのメディアや書籍からまとめた「一般論」でも、募集要項は、単に労働条件を並べるだけの項目ではないと言えます。

中小企業白書では、直近3年間で中途採用を行った企業が感じている課題として、「応募が少ない」と回答した企業の割合が6割超で最も高いとされています。
つまり、求人を出せば自然に応募が集まるわけではありません。募集要項の内容で、自社の仕事や魅力をどれだけ分かりやすく伝えられるかが重要になります。
(中小企業庁「2024年版中小企業白書 」出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_1.html

正確な情報提供は大前提としつつ、募集要項の役割は求職者に「この求人を詳しく見るか」「応募するか」を判断する最初の接点です。

そのため、募集要項の情報設計では、次の2点を意識する必要があります。

① 労働条件や仕事内容を正確に伝えること
② 採用ターゲットにとって働く姿をイメージさせること

たとえば、仕事内容を「営業全般」とだけ書いても、求職者は具体的な働き方を想像できません。「既存顧客への提案が中心」「新規開拓は紹介経由が多い」「入社後は先輩同行から始める」といった情報があれば、仕事のイメージが湧きやすくなります。
また、前述の中小企業白書では、製品・サービスを差別化している企業ほど応募を獲得できている傾向があるとも示されています。これは募集要項にも通じる考え方です。単に条件を並べるだけではなく、「自社で働く意味」「他社との違い」「その仕事で得られる経験」を伝えることが、応募獲得につながります。

さらに、取材に協力した人事担当者はこう話します。

人事担当者のコメント~採用体制について~

募集要項の項目と入力内容は、人材エージェントごとに概要が決まっており、自社が公開している情報を要約して完成させることも可能です。
しかし......多くの場合、人事の立場では「詳細な現場の実務はわからない」んですよね。
特に当社のようなエンジニア採用や、専門職の採用を狙う中小企業の場合、人事だけで執筆しようとすると、仕事内容が抽象的になったり、現場の魅力が十分に伝わらなかったりするわけです。

つまり、魅力的な募集要項を書こうとしても、できないんです。

そこで、私が採用活動の最初に行っているのは「人事」と「事業部」の連携体制を作ることです。
これができていないと、採用成果が出ませんし、後々の採用活動でものすごく苦労することが多かったのです。
募集要項を書きはじめる前に、まずは社内から情報を集めること。そのうえで、現場の実態を人事が整理し、求職者に伝わる形に落とし込むことが重要です。

採用ターゲット:ターゲットと情報発信のミスマッチを防ぐセオリー

悩み:現場が欲しがる人材は、実際「狙える」のか?

次の悩みは、採用活動のコアである「採用ターゲットの設定」についてです。
事業部にヒアリングすると「経験者がほしい」「即戦力がほしい」「このスキルが必要」「こんな経験もあるといい」......といった要望が挙がります。しかし、それらを募集要項に載せれば「ターゲット設定」が成功したとは言えないはずです。
当然、人事担当者としては、すべてを満たす人材を採用したい。しかし条件を厳しくすれば応募のハードルが上がりすぎて応募が集まらないかもしれません。逆に間口を広げすぎると、応募の質が合わなくなる懸念もあります。
このバランスの難しさに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

データと一般論:「欲しい人材が採れない」割合は過去最高レベルに

人事担当者の悩みは、データでも裏付けられています。
前述の中小企業白書によれば、中途採用のメリットの1位は「即戦力となる」(75.6%)であり、「育成コストを抑えられる」(32.6%)と合わせて、企業が自社の事業にマッチしたスキルと経験を持つキャリア人材を求めていることがわかります。
(中小企業庁「2024年版中小企業白書」出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_1.html

一方で、採用市場は企業側の理想通りには動いていません。
リクルートワークス研究所の調査では、2024年度下期の中途採用実施率は83.3%と過去最高でありながら、求めている人材を「確保できなかった」(54.7%)と答えた企業の割合も過去最高値を更新しました。
(リクルートワークス研究所 「「中途採用実態調査」 出典:https://www.works-i.com/surveys/report/250617_midcareer.html

即戦力人材を求めて中途採用を行い、結果として半数以上が獲得に失敗している......この現状に対して、採用ターゲットごとの情報発信のセオリーは以下のように整理できます。

【条件を次の4つに分けて考える】
① 業務を行うために必須の条件
② 歓迎するスキルや経験
③ 現場で育成できるスキルや経験
④ 入社後に伸びるポテンシャルを判断できる条件

たとえば「実務経験3年以上」という条件を「必須条件」にするのか「歓迎条件」にするのかは、アプローチしたいターゲット人材によって変わります。
完全な「即戦力」を求める場合は、必須条件として記載するべきかもしれません。一方で、「若手」や「ポテンシャル層」まで対象にするなら、歓迎条件にとどめたほうが応募のハードルは下がります。
近年は、さらに細かくライフスタイル・キャリアプラン・趣味嗜好などを設定し、特定の個人像まで想定する「ペルソナ採用」が紹介されることもあります。

実際の採用業務では、どのように考えられているのでしょうか?

人事担当者の本音!~採用ターゲットについて~

言わずもがなですが、はじめにターゲットを決めておくことは最も重要です。
現場との話し合いを何度か挟んで要望を聞きながら、同時に人事としては「その条件をどこまで緩和できるか」を調整することも大切です。
現実問題として、理想とする人材は、たいていの場合大手企業も狙っているからです。
「経験が少し浅くてもポテンシャルを感じる人であれば選考対象にできないか」、「必須条件ではなく歓迎条件にできないか」という調整をしながらできあがったものが、現実的な「ターゲット」になります。
「ペルソナ採用」は、当社の採用戦略では使っていません。先ほど話したように、該当する人材がそもそも市場にいないからです。
大事なのは、人事と現場の目線を合わせていくことですし、ここがかなり奥が深いと思っています。私が担当している複数の子会社でも、個社ごとに全然違うターゲットが出来上がってきます。
採用ノウハウでは「求職者と企業のミスマッチ」がよく話題になりますが、同様に「人事と現場の間にあるミスマッチ」を解消することも重要と言えそうです。
このようにして現場とコミュニケーションをとり、自社に合った現実的な募集要項の材料を決めていきます。

次は、いよいよ実際の「募集要項の書き方」です。

募集要項の書き方:頼りになるのは「人材エージェント」担当者

悩み:何を採用の「売り」にすれば?

現場の要望と採用市場をすり合わせ、採用ターゲットを設定した後の課題は「募集要項で打ち出す内容を決める」ということです。
多くの中小企業は、給与・仕事内容・福利厚生の面で競合他社と大きな差がなく、「売り」となる情報が充実しにくいもの。そのなかで、自社の魅力を十分に伝えるにはどうすれば良いのでしょうか。

データと一般論:ターゲットごとに訴求点を分ける

「募集要項の書き方」の一般的なポイントは「ターゲットによって『売り』となる情報(訴求)を変える」ということです。

【ターゲットと訴求点の例】

例:経験豊富な求職者向け
・裁量の範囲
・マネジメントへの挑戦機会
・評価制度の詳細
・事業や組織の課題
・自分の経験が活かせるケース
・現職では得にくい成長機会 など

例:若手層向け
・入社後の研修、OJT
・先輩社員のフォロー
・未経験・経験浅めでも仕事を任せる環境
・チームで育成する文化
・残業時間や在宅勤務などの働き方
・キャリアステップ など

例:地方企業の採用向け
・地元密着ならではの貢献実感
・UIJターン支援
・移住のしやすさ
・子育てに適した環境
・自然に囲まれた生活の豊かさ など

これらは多くの業種で共通する特徴であり、人事が基礎知識として押さえておくべきものです。
さらに、コメント協力した人事担当者からはこんな意見が。

人事担当者の本音!~募集要項に何を書くべきか~

実際の募集要項をどう書くのかという点では、人材エージェント(媒体)との関係性がかなり重要です。簡単に言えば、自社が求人掲載している人材エージェントの担当者さんは、かなり頼りになるということです。
例えば、募集要項のタイトル文の「文字数」。フォーマットには「入力可能な文字数」の制限があり、さらに「求職者に表示される文字数」はもっと少ないです。これは、多くの人事の方にとっては常識だと思います。
利用する媒体によって表示文字数が全部違いますし、スマホやPCなどの表示環境でも違います。そのルールを知らないと、頑張って書いても検索画面には表示されていない可能性があります。だから「募集要項の最初の数行に魅力的な情報がなければ、求職者にクリックされない」わけです。
実は、そうした媒体のルールには、「表に出ていないルール」がすごくたくさんあるんですよね。

例えば、
・自社の採用ターゲットが検索しているワード
・同じ業界の競合の使っているワード
・よく読まれている箇所
など。

マニュアルには掲載されていませんが、エージェントに聞くと教えてくれる場合もあります。私は定期的なミーティングや電話などで話せる関係になって、自社の採用に役立つ情報をもらうようにしています。

採用には「現場」だけでなく「人材エージェント」の担当者も巻き込んでいきましょう。

募集要項のPDCA:人事×事業部×人材エージェントの連携を

悩み:改善の基準が定まらない

最後は、募集要項の精査と更新(PDCA)についてです。募集要項は、一度作って公開したら終わりではありません。応募状況や選考状況を見ながら、必要に応じて改善していく必要があります。
しかし、何をどう変えれば良いのでしょうか。応募が少ない場合、募集要項のタイトルが本題? それとも仕事内容の書き方? 課題を見つけるための数値設定は......? こうしたアップデートに苦労している人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

データと一般論:5つのプロセスで原因分解を

メディアや書籍を調査すると、募集要項の改善事例が多数見つかります。

例:法人向け営業(経験者採用)

参照記事よりマモリノジダイ編集部作成(パーソルキャリア doda人事ジャーナル  出典:https://www.dodadsj.com/content/240130_job-posting/

このような細かな改善を行うためには、まず現状の募集要項の効果を把握することが大切です。応募から内定まで複数の採用プロセスに切り分けましょう。

一般的には、プロセスは以下の5つです。

①採用候補者の母集団形成
②応募件数
③書類選考通過率
④面接数
⑤内定数

これらのKPIを設定し、採用プロセスのどこに課題があるかを切り分けると整理しやすくなります。

応募が少ない:タイトル、冒頭文、求人の魅力、掲載媒体、検索キーワード
応募の質が合わない:必須条件、歓迎条件、仕事内容、ターゲット設定
書類通過率が低い:応募条件の緩和・明確化、求める経験の書き方
面接辞退が多い:募集要項と実態のズレ、選考案内、候補者への魅力付け
内定承諾率が低い:条件面、評価制度、キャリア提示、面接中の情報提供

特に、中小企業の場合はただ応募数を増やせばよいわけではありません。質の低い50人の応募より、質の高い10人を集めた方が、書類通過率や面接通過率、内定承諾率が上がる場合も多いからです。
募集要項の改善活動には、本記事で紹介してきた知識がフルに活かされます。実際の現場ではどのようにPDCAを回しているのでしょうか。

人事担当者の本音!~募集要項の更新について~

当社では、定期的な募集要項のアップデートは2ヶ月から3ヶ月に一度行っています。
目標通り採用できていれば変える必要はありませんが、去年うまくいった方法が今年も通用するとは限らないのが採用の面白いところです。少しずつ新しい打ち出しも試しながら、PDCAを回していくしかないんだろうな、と思っています。
私の経験上、この項目を変えたら採用率が劇的に改善した! というような「必殺技」はないと思います。だからこそ、募集要項のアップデートは人事ひとりで行わないほうが良いですね。
改善検討は、できれば現場のキーマンとエージェント担当者に同席してもらい、打ち合わせを行います。現場は要望を出し、人事がターゲット向けにまとめ、エージェントがメディアのルールにのっとってより良い内容にする、というサイクルができあがれば、数字を追いかけながらクオリティを上げられるんですよ。

人事が関係者をつなぎ、「自社だけの」募集要項に

中小企業のキャリア採用では、募集要項の作り方が採用成果に大きく影響します。
しかし、どのような募集要項であれば成果が出るのかは個社それぞれであり、一般論は踏まえつつも、鉄則や成功法則はありません。
記事に協力いただいた人事担当者からは、「周囲を巻き込むこと」の重要性が何度も語られました。
現場から具体的な仕事内容や案件事例、仕事への想いを集め、人事が候補者に伝わる表現へ整え、エージェントから媒体上の見え方や候補者の反応を聞く。——それぞれの強みを活かした連携体制の中心になるのが「人事」のもっとも大きな役割ではないでしょうか? 

本記事が、募集要項の質を高め、将来の社員と出会えるためのエージェント活用の参考になれば幸いです。

参照データ:
ハタラクティブ「若者しごと白書2025」
https://hataractive.jp/partner/whitepaper/youthwork2025/
中小企業庁「2024年版中小企業白書」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_1.html
リクルートワークス研究所「中途採用実態調査」
https://www.works-i.com/surveys/report/250617_midcareer.html
パーソルキャリア doda人事ジャーナル「【添削例あり】応募獲得に差が出る「良い求人票の書き方」~営業職編~」
https://www.dodadsj.com/content/240130_job-posting/

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