クレーム対応の例文を紹介!メール・手紙、電話など手段ごとに解説

クレーム対応は、内容そのものだけでなく「どのように伝えるか」によって印象や信頼の行方が大きく変わります。
特に中小企業では、限られた人員で対応を行うことが多く、担当者ごとに表現がぶれてしまうケースも少なくありません。
本記事では、クレーム対応における基本的なマインドや5つの対応手順を整理したうえで、実際に使えるメール・手紙・電話の例文をシーン別に紹介します。属人化を防ぎ、組織としての対応力を高める第一歩として、ぜひ参考にしてください。
正しくクレーム対応することで、顧客による炎上防止にもつながり、企業のコンプライアンス対応に磨きがかかります。以下の資料では、企業がコンプライアンス対応のために取り組むべき基本を紹介していますので、ぜひダウンロードしてみてください。
>>ゼロから始めるコンプライアンス対応 企業がまず取り組むべき3つのことのダウンロードはこちら
目次
クレーム対応の基本的なマインドを知っておこう
クレーム対応において重要なのは、技術やマニュアルの前に「どんな姿勢で臨むか」というマインドです。ここでは、クレーム対応の質を左右する3つの基本マインドについて整理します。
感情ではなく事実で向き合う
クレーム対応で最も避けたいのは「感情対感情」のぶつかり合いです。たとえ相手の言い方が攻撃的でも、こちらが感情的になってしまうと火に油を注いでしまいます。
対応の上手な人は、相手の怒りに巻き込まれず、「何が事実として起きたのか」「どのような影響が出たのか」を冷静に整理する視点を持っていることが特徴です。感情は受け止めつつ、軸足はあくまで“事実”に置きましょう。
初動で印象が決まる
クレームの第一報を受けたときの対応は重要です。最初の対応が誠実で迅速であれば、顧客は安心し、怒りの感情も和らぎやすくなります。
逆に、反応が遅かったり、たらい回しにされたりすると、不満がさらに膨らむため注しましょう。中小企業では人手不足もありますが、最低限「受け止めている」ことを即座に示す初動体制を整えておくことが重要です。
非がなくても謝罪の姿勢は必要
自社に過失がない場合でも、「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」といった共感を示す姿勢が、クレーム対応には欠かせません。
誠意を伝えることは、責任を全面的に認めることとは異なります。対応が悪いと「責任逃れ」と受け取られることもあるため、まずは“気持ち”に寄り添いましょう。
参考記事:コンプライアンス遵守のための取り組みとは?意味・重要性・具体例までわかりやすく解説
クレーム対応の5つの基本手順
感情に左右されず、再現性のあるクレーム対応を行うには、一定の手順に沿って行動することが効果的です。ここでは紹介するあらゆるクレーム対応に応用できる「5ステップ」を紹介します。
1. お詫びを伝える
最初に行うべきは、何よりも「お詫びの言葉」です。仮に自社に明確な落ち度がない場合でも、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」といった共感を示しましょう。
対応の出だしで誠意を見せることにより、相手の感情が緩和され、その後のやりとりもスムーズになります。逆に、謝罪がないまま事実説明を始めると「言い訳」と受け取られ、火に油を注ぐだけです。
2. 内容を丁寧に確認する
次に、相手の話を最後まで聞き、何が起こったのかを丁寧に確認します。
話の途中で遮ることはやめましょう。必要に応じて復唱しながら要点を整理することで、誤解や聞き漏らしを防ぎます。
曖昧なまま対応を進めると、誤った解釈で状況が悪化するリスクがあるため、丁寧なヒアリングが不可欠です。
3. 原因を説明する
事実確認ができたら、発生した問題の原因をわかりやすく説明します。ここでは専門用語を避け、顧客にとって理解しやすい言葉を使うことがポイントです。
さらに「なぜ起きたのか」だけでなく、「どうすれば防げたのか」という視点も加えると、説明に説得力が生まれます。曖昧な説明や責任のなすり合いと受け取られる表現は、顧客の信頼を損なうため避けましょう。
「調査の結果、◯◯という理由で発生したことがわかりました」と明確に伝えることが大切です。
4. 解決策を提示する
原因を説明したあとは、具体的な解決策を提示します。「今後は気をつけます」といった抽象的な言い回しでは不十分です。
代替対応や返金、再納品など、顧客にとって納得感のある現実的な対応を提示することで、誠意を伝えることができます。
また、解決までのスケジュール感を示すことも重要です。「3営業日以内に◯◯を対応いたします」など、見通しを共有することで、顧客の不安を和らげられます。
5. 再発防止とお礼の言葉で結ぶ
最後に、同じ問題が起きないようにするための再発防止策を簡潔に説明し、「ご指摘いただき、ありがとうございました」と感謝の言葉で締めくくりましょう。
クレームは企業にとって貴重な改善の機会でもあります。顧客の声を無視せず、真摯に受け止めた姿勢を示すことで、むしろ信頼を高めることが可能です。
感謝と再発防止の姿勢は、対応を“ネガティブな終わり方”にせず、前向きな印象で終えるために欠かせません。
メール・手紙、電話のクレーム対応文例テンプレート
クレーム対応では、「何をどう伝えるか」が顧客の印象に直結します。
ここでは、メール・手紙・電話のそれぞれの手段において、すぐに使える例文・フレーズを紹介します。現場の対応品質を均一に保つためにも、テンプレートの活用と応用が重要です。
メール・手紙の例文
以下は、一般的なクレーム対応メールの基本構成に沿った例文です。宛名や内容は状況に応じて調整しましょう。
件名:◯◯に関するお詫びとご対応について 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇様 いつも大変お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇です。 このたびは、弊社の◯◯に関しまして、ご不快な思いをおかけいたしましたことを、心よりお詫び申し上げます。 お客様よりご指摘いただきました内容を確認いたしましたところ、確かに◯◯の不備が確認されました。現在、再発防止策として◯◯の工程を見直し、全社的に再確認を進めております。 改めてご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。 今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇(担当者名) |
電話のフレーズ例・話し方
電話対応は相手の感情をダイレクトに受け取る場面が多いため、「落ち着いたトーン」と「共感の言葉」が鍵になります。以下は場面別のフレーズです。
状況 | フレーズ例 | 解説 |
最初の謝罪 | 「このたびはご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」 | 非がなくてもまずは気持ちに寄り添う |
話を聞く | 「詳しくお話しいただけますでしょうか」「はい、承知しました。○○ですね」 | 傾聴+復唱で信頼感を与える |
解決策の提示 | 「本日中に担当より改めてご連絡差し上げます」「〇〇の対応を進めております」 | 見通しや具体策を明確に伝える |
締めの言葉 | 「このたびは貴重なご意見をありがとうございました」 | クレームを“企業改善の機会”として扱う |
話すスピードは相手の7割程度を意識し、ややゆっくりめに。怒りが強い場合は、低めで落ち着いた声で対応すると効果的です。
【状況別】クレーム対応の例文集
クレーム対応では、状況に応じた言葉選びが求められます。特に「自社に明確な非がある場合」と「顧客の要求が過剰な場合」では、対応のスタンスも変えることが必要です。
ここでは、両ケースにおけるメール・手紙対応の例文をご紹介します。誠意を伝えつつも、企業として守るべき一線を保つ文面がポイントです。
自社に落ち度がある場合の例文
明らかなミスや手違いが原因でクレームが発生した場合は、まず誠実な謝罪が最優先です。
そのうえで、原因の説明と再発防止策を明示し、信頼回復につなげる構成を意識します。謝罪だけで終わらせず、具体的な対応内容を必ず盛り込みましょう。
件名:◯◯に関するお詫びとご対応について 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇様 平素より格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。 このたびは弊社の不手際により◯◯の件でご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。 調査の結果、当該ミスは◯◯の確認工程に不備があったことが原因と判明いたしました。すでに社内にて再発防止策として◯◯を実施しております。 本件に関しましては、◯月◯日までに◯◯の対応を完了させていただきます。 重ねて深くお詫び申し上げますとともに、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇 |
お客様の要求が過剰な場合の例文
顧客からの要求が自社の対応範囲を超えている場合でも、最初から拒否するのでは不十分だといえます。丁寧に背景を説明したうえで、できない理由と姿勢を明確に伝えることが大切です。
誠意を見せつつも、毅然とした線引きをすることで、他の顧客との公平性や従業員の負担も守れます。
件名:◯◯に関するご連絡 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇様 いつも大変お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇です。 このたびはご意見をお寄せいただき、誠にありがとうございます。 ご指摘いただきました◯◯につきまして、社内で確認いたしましたところ、当初のご案内内容に相違はなく、通常対応の範囲内であったことが確認されております。 誠に恐縮ではございますが、今回いただいたご要望(◯◯の全額返金等)につきましては、弊社規定により対応いたしかねますことを、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。 なお、今後のサービス改善の参考とさせていただくため、頂戴したご意見は社内で共有させていただきます。貴重なご指摘をありがとうございました。 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇 |
クレーム対応の改善につなげる社内アクション
クレーム対応は“その場の処理”で終わらせるのではなく、企業全体で改善に活かすことが重要です。特に中小企業では、属人化や、対応履歴の蓄積不足が課題となりがちだといえます。
ここでは、再発防止・情報共有・業務継続の観点から、実践すべき社内アクションを3つ紹介します。
参考記事:社内規定とは?作り方、誰が作るべきか、法的効力の有無や実例を紹介
情報共有で組織として再発防止を図る
クレームの内容や背景を現場だけで抱え込むのではなく、社内全体に共有することが再発防止への第一歩です。特に「何が起きたのか」「どこにミスがあったのか」「顧客は何に不満を感じたのか」を展開することで、注意喚起ができます。
共有の形式は、報告書やチャットツールでの要点整理など、無理のない仕組みづくりが大切です。情報が回る組織こそ、同じミスを繰り返さない強さを持ちます。
参考記事:中小企業もハラスメントの相談窓口設置が義務化!相談対応時のポイント
マニュアル化で属人化を防ぐ
優れた対応ができる人が1人いても、仕組みとして残さなければ、退職や休職とともにノウハウが消えてしまいます。クレーム対応を標準化するためには、「こういうときはこうする」といった簡潔な対応マニュアルを整備することが重要です。
初期対応のフレーズ集や対応手順、判断基準の目安などをまとめたガイドラインを作成するようにしましょう。
応対ログを蓄積しやすくする工夫
トラブル発生時の振り返りをするために電話対応やメールでのやり取りを記録として残すことが重要です。
Excelや簡易なCRMツール、共有フォルダなどを活用し、応対ログを記録・蓄積しやすくする仕組みを整えましょう。テンプレート化した記録フォーマットを用意するだけでも、日常的な記録負担は大きく軽減されます。
まとめ
クレーム対応は、その場の処理にとどまらず、企業全体の信頼を左右する重要な業務です。特に中小企業では、対応の質が属人化しやすく、ノウハウが継承されにくいという課題があります。
大切なのは「誰が対応しても一定の品質を保てる仕組み」をつくることです。日々の記録、共有、マニュアル化を通じて、クレームを“改善と信頼構築のチャンス”へと変えていきましょう。
関連記事
-
労働安全衛生法の健康診断の義務とは?ルールを理解して安定した雇用を実現
労働者の健康を守ることは、企業の重要な責務です。労働安全衛生法では、事業者に労働者への健康診断実施を義務付けており、単なる形式的なものではありません。
労働者の健康状態を定期的に把握し、疾病の早期発見や健康障害の予防につなげることで、労働災害を防ぎ、安心して働き続けられる職場環境を整備するために不可欠な措置です。
労働安全衛生法に基づき健康診断のルールを正しく理解し、適切に実施することは、法令遵守はもちろん、労働者の信頼を得て安定した雇用関係を築く上でも重要なポイントとなります。
この記事では、労働安全衛生法における健康診断の義務、未実施のリスクと罰則、中小企業が適切に実施するための具体的なポイントを解説します。
-
下請法の対象かどうかを確認するには?中小企業が押さえるべきポイントを解説
事業を行う際、自社の取引が下請法の対象になるのか、判断に迷うこともあるでしょう。取引先との関係や事業規模によっては、知らぬ間に下請法に違反するリスクもあるため注意が必要です。
この記事では、どのような場合に下請法の対象となるのか、その判断基準となる「資本金額」や「取引内容」について詳しく解説します。また、子会社を通じた取引における注意点や、親事業者が守るべき義務、違反した場合の罰則についても触れていきます。
下請法に関する疑問を解消し、安心して事業活動を進めるためにも、ぜひ参考にしてください。
-
ビジネスにおける「コンプライアンス」の意味とは?定義を理解してガバナンスを強化
コンプライアンスとは、単に法令を遵守するだけでなく、企業が社会規範や倫理に基づいた適正な経営を行うことを指します。近年、情報化の進展や国際的な規制強化により、重要性が高まっているワードです。この記事では、コンプライアンスの基本的な定義から、企業経営における必要性、中小企業ならではの課題と対策、実効性のある方針策定のポイントまでを網羅的に解説します。
-
個人情報保護法のガイドラインを知っていますか?企業の守りに必要な情報を解説!
個人情報の取り扱いは、企業の信頼性を左右する重要なテーマです。特に、中小企業においては、専門部署や豊富なリソースがない分、「守りの姿勢」をしっかり固めることが求められます。
その指針となるのが「個人情報保護法ガイドライン」です。
本記事では、個人情報保護法のガイドラインの基本を解説するとともに、中小企業が必ず押さえておくべきルールや、違反した場合のリスクについて詳しく掘り下げます。
一度のミスが経営に影響する中小企業だからこそ、リスク管理のための「守り」を強化することが重要です。
-
下請法ガイドラインの役割と改正点!参考にできる取り組み事例を紹介
下請法は、親事業者が下請事業者に対して優越的な地位を濫用することを防ぎ、公正な取引を促進するための法律です。
この記事では、下請法ガイドラインの役割から、過去の改正、違反した場合の罰則、そして中小企業が実践すべきベストプラクティスまで、わかりやすく解説します。
下請法について深く理解し、健全なビジネス関係を築いていきましょう。