クレーム対応が上手い人の特徴は?具体的なテクニック、メンタル管理法も紹介

クレーム対応は、企業の信頼を左右する重要な接点です。特に中小企業では、対応が属人的になりやすく、たった1人の振る舞いがブランド全体に影響を及ぼすこともあります。
だからこそ、“クレーム対応が上手い人”の特徴や行動を理解し、組織的に共有・育成していくことが、企業の「守り」を強化するうえで欠かせません。
本記事では、クレーム対応に長けた人が持つスキルやマインド、現場で役立つテクニック、そして対応する人自身のメンタルの保ち方まで、実践的な視点で詳しく解説します。
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目次
クレーム対応が上手い人の特徴とは?
クレーム対応には、マニュアルだけでは身につかない“人間力”が大きく関係します。
ここでは、クレーム対応が上手な人に共通する4つの特徴を解説しますので参考にしてください。
楽しむというマインドで臨める
クレーム対応が上手な人は、「これは成長のチャンスだ」と前向きに捉えるマインドを持っています。苦情を“攻撃”ではなく“改善のヒント”ととらえ、むしろやりがいを感じながら取り組む姿勢が特徴です。
どんなに冷静な対応スキルがあっても、「苦手だな」「面倒だな」と感じていれば、無意識に表情や声に出てしまいます。
楽しむというと大げさかもしれません。しかしポジティブな捉え方ができる人は、相手の感情を和らげる雰囲気も自然と醸し出せます。
冷静さと感情のコントロールができる
クレームの現場では、相手が感情的になる場面が少なくありません。そんなときでも、声を荒らげたり言い返したりせず、終始落ち着いて対応できる冷静さが重要です。
対応が上手な人は、自分の感情に流されず、呼吸や言葉の選び方、姿勢にまで意識を向けることで、自らの感情をコントロールしています。また、感情を出さないのではなく「怒りに巻き込まれない」姿勢が重要です。
接客・対応力に長けている
「言葉づかいが丁寧」「説明がわかりやすい」「質問の意図を正確にくみ取る」など、対人対応力の高さもクレーム対応において大きな武器になります。
特に中小企業のようにお客様との距離が近い職場では、形式的な敬語だけではなく、その場に応じた対応力が必要です。その場の状況に応じて話しやすい空気をつくれる人は、自然と信頼を得やすいといえます。
相手の心理を読む観察力がある
クレームの背景にあるのは、必ずしも「商品やサービスの問題」だけではありません。相手の個人的事情や心理的な要因も含まれています。
対応が上手な人は、相手の話し方、声のトーン、言葉の選び方、沈黙の間などから相手の感情を読み取れることが特徴です。「何に不満を感じているのか」「本当は何を求めているのか」を察する力に長けています。
観察力は、経験と意識の積み重ねで養える能力であり、研修やOJTの中でも意図的に育成すべきスキルです。
参考記事:コンプライアンス研修とは?目的、効果、研修ネタの事例を徹底解説
クレーム対応が上手い人の具体的な行動・テクニック
“対応が上手い人”には共通する行動パターンがあります。
ここでは、電話・メール・対面のあらゆる場面で活用できる具体的な対応テクニックを5つ紹介しますので参考にしてください。
電話対応では声のトーンと復唱を意識
電話対応では、表情が見えない分、声のトーンと話し方が印象を左右するのが特徴です。落ち着いた声でゆっくり話すことで相手に安心感を与え、怒りを鎮めやすくなります。
さらに、相手の発言を適度に復唱することで「話を聞いてもらえている」という信頼感につながることもポイントです。たとえば「◯◯の件ですね、承知しました」と言い返すことで、伝達ミスも防げます。
メールでは簡潔かつ丁寧な表現を心がける
クレームに対するメール対応では、余計な説明や言い訳を避けましょう。簡潔で丁寧な言葉遣いが求められます。
特に長文や感情的なメールを受けた場合、冷静で端的な文章で返すことで、相手の気持ちを落ち着かせることが可能です。
また、主語・述語を明確にし、相手が読みやすい構成にすることも重要といえます。「お手数をおかけし申し訳ございません」「今後の対応として◯◯を予定しております」といった表現を入れて、安心感と誠意を伝えましょう。
非がない場合も共感を忘れない
企業に明確な過失がない場合でも、「ご不便をおかけしました」「お気持ちはごもっともです」といった共感の言葉を添えるだけで、相手の印象は大きく変わります。
正論や否定だけで押し返すのではなく、相手の気持ちを受け止める姿勢を見せることが信頼回復の鍵です。対応が上手な人は、自分が悪くなくても“相手がつらかったこと”に対して誠実に寄り添う力を持っています。
参考記事:企業倫理とは?コンプライアンスとの違い、種類、具体例まとめ
話を遮らず傾聴し、メモと復唱で信頼を得る
クレーム対応で信頼を得る基本は「最後まで話を聞くこと」です。途中で口を挟むと、相手の不満は一気に強まります。
上手な対応者は、黙って聞くだけではありません。適度な相づちと復唱で「確かに受け止めた」という安心感を与えます。また、話の要点をメモすることで聞き漏らしを防ぐことも重要です。
メモをとりながら、「◯◯についてご不満を感じられたのですね」と繰り返すことで、相手の心情をくみ取る姿勢を形にできます。
時間の見通しや改善案を明示して安心させる
クレームに対して「すぐに確認します」「後日ご連絡します」だけでは、相手に不安を与えかねません。対応が上手な人は、「本日中に担当より折り返します」「3営業日以内にご回答いたします」といった明確な“見通し”を伝えます。
また、原因が明確であれば簡潔に説明し、「今後はこのように対応を改善します」と具体策を提示することも有効です。顧客が求めているのは謝罪だけでなく、「もう起きない」という再発防止の確約であることを覚えておきましょう。
クレーム対応が苦手な人・できない人にありがちな傾向
クレーム対応における失敗は、スキルの不足だけでなく、無意識の行動や思考の癖から生まれることが多くあります。特に中小企業では「担当者の対応が企業の印象そのもの」となる場面が多く、適切な教育やサポートが不可欠です。
ここでは、対応がうまくいかない人に共通する4つの傾向を整理し、その背景や対策のヒントも提示します。
感情的に反応してしまう
顧客から強い言葉や理不尽な指摘を受けたとき、ついカッとなって言い返してしまうのは、クレーム対応の中で最も避けるべき行動です。
たとえ内容に誤解や過剰な主張が含まれていても、対応者が感情をぶつけてしまえば、事態は一気に悪化します。
苦手な人ほど、冷静さを保つ訓練ができておらず、防衛本能として“感情で対抗”してしまいがちです。反応する前に深呼吸する、自分の口調を意識するなど、セルフコントロールを重要視しましょう。
自分を守ろうとして言い訳が先に立つ
「それは私のせいじゃない」「他部署のミスです」など、事実説明の前に“自分を守る”言葉が出てしまう人は、顧客の信頼を得ることができません。
クレーム対応では、誰の責任かよりも“どう対応するか”が重視されます。苦手な人は、非難されることへの恐れから、無意識に責任逃れのような言い訳をしてしまいがちです。
しかしそれは、かえって相手の不信感を強める結果になります。まずは状況の把握と共感を優先し、責任の所在は社内で冷静に整理するのが鉄則です。
共感や感謝の言葉が出てこない
どれだけ丁寧に説明しても、「ご不便をおかけしました」「お知らせいただきありがとうございます」といった一言が抜けていると、顧客は「冷たい」「形式的だ」と感じます。
対応が苦手な人ほど、業務として処理することに意識が向きすぎて、感情のケアを忘れがちです。クレームは「貴重なフィードバック」でもあります。
感情をこじらせる前に対応する機会をくれた顧客に、まず感謝と共感を伝えることが、関係修復の第一歩です。
クレームを「理不尽」と決めつける
「こんな要求はおかしい」「文句を言いたいだけだ」といった先入観を持って対応してしまうと、無意識に態度や言葉遣いに出てしまいます。
なかには過剰な要求もありますが、どんなクレームにも“何らかの不満や期待のギャップ”があることを押さえておきましょう。
苦手な人は、対応の前に判断を下してしまい、相手を敵視してしまう傾向があります。理不尽かどうかはあとで判断すればよく、まずは「相手が不満を感じた事実」に目を向ける姿勢が必要です。
クレーム対応の「さしすせそ」で印象が変わる
クレーム対応では、どんな言葉を選ぶかで顧客の印象は大きく変わります。中でも覚えやすく、実践しやすいフレーズとして注目されているのが「さしすせそ」の法則です。
頭文字 | フレーズ |
さ | さようでございますか |
し | 失礼いたしました |
す | すみません |
せ | 責任をもって、私が対応します |
そ | そうなんですか |
これらの言葉を状況に応じて適切に使うことで、顧客の怒りや不満が和らぎ、対話の雰囲気が大きく改善されます。特に若手や未経験者の教育において、「何を言えばいいかわからない」と感じる場面での指針として有効です。
クレーム対応が上手な人が実践しているメンタル管理法
クレーム対応は、感情のぶつかり合いになりやすく、対応者が疲弊する要因にもなります。以下に代表的なメンタル管理法を表にまとめました。
管理法 | 内容 | 実践のポイント |
切り替えルーティンの活用 | 対応後に深呼吸や散歩などで気持ちをリセット | 気分転換の儀式をルール化する |
感情を外に出す | 上司や同僚と話す、日報に書くなどでモヤモヤを解消 | 独りで抱え込まない環境づくり |
成功体験の記録 | うまくいった対応をメモして自信を維持 | 見返すことで自己効力感を高める |
緊張時の呼吸法 | 怒りや不安を感じたときに呼吸を意識 | 吸う:吐く=1:2で落ち着きを保つ |
自責にしすぎない思考習慣 | クレーム=個人の責任ではないと切り分ける | 業務改善の視点で捉える意識を持つ |
こうした習慣は、特別なコストや時間がかからず始められます。
中小企業では業務量が多く、対応者が孤立しやすいため、チームで共有・実践する仕組みを整えましょう。
中小企業の現場で求められる“対応力”とは?
中小企業では、少人数体制のなかで接客・業務・クレーム対応を並行して行うケースが多く、限られた人材で質の高い対応力が求められます。しかし属人化や教育のばらつきにより、対応の質に差が出てしまうことも少なくありません。
ここでは、現場・管理部門それぞれの立場における立ち回り方と、教育・育成の工夫について解説します。
現場スタッフ vs 管理部で異なる対応の立ち回り
現場スタッフは直接顧客と向き合い、一次対応で感情の受け止めや事実確認を行う立場です。一方、管理部門は背景の把握や再発防止策の立案など、“クレームの後処理と改善”を担っています。
しかし、両者の連携が取れていないと、現場では「ひとりで抱えてしまう」、管理部では「現実感のない判断になる」といったギャップが生まれがちです。理想は、現場と管理が協力し、対応履歴を共有する体制を築くこととなります。
ロールプレイや振り返りで社内教育に活かす
クレーム対応は、実際のやりとりを経験しなければ身につきにくい分野です。座学だけでは限界があるため、ロールプレイを取り入れることで対応スキルを実践的に習得することができます。
さらに重要なのは、「やりっぱなし」にせず、対応後の振り返りを行うことです。「どの言葉が火に油を注いだか」「なぜ収束したのか」などを分析し、チーム内で共有しましょう。
短時間でもよいので、定期的なケース検討の場を持つことが有効です。
参考記事:コンプライアンス研修とは?目的、効果、研修ネタの事例を徹底解説
クレームが多いスタッフへの育成アプローチ
特定のスタッフにクレームが集中する場合、個人の資質の問題と片付けるのではなく、対応方法や接客スキルにどのような課題があるのかを丁寧に確認しましょう。
「言葉の選び方」や「表情・態度」が原因で誤解を招いているケースが少なくありません。感情的な指摘ではなく、録音やメモをもとにしたフィードバックや同行・見学によるOJT、研修が効果的です。
また、“できていない点”ではなく、“できている点”にフォーカスしたポジティブな育成が、本人の成長を促しやすくなります。
まとめ
クレーム対応は、単なる“火消し業務”ではなく、企業の信頼と継続的な成長を支える重要なプロセスです。
特に中小企業では、限られた人材で対応を行うからこそ、個々の力量に加え、組織全体での「対応力の底上げ」が不可欠となります。大切なのは、スキルの属人化を防ぎ、誰でも“一定レベル以上の対応”ができるよう仕組み化することです。
会社の“守り”を強化するために、できるところから一歩ずつ取り組んでいきましょう。
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